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閑話:高天原の神々(三人称視点)
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河伯とアリスがゲームセンターで遊んでいる頃、明蓮、五輪、天照、玉藻の四名はネットゲームの『高天原』で遊んでいた。最新技術によりプレイヤーの感覚がゲーム内と完全に同期する、いわゆるフルダイブ型のVRMMOというやつだ。
「あれ? 明蓮のキャラは此花咲夜姫じゃなかった?」
天照が操る天鈿女命が言う。天鈿女命は天照の有名な神話で天岩戸の前で踊りを披露した神だ。神話に即して露出度の高い衣を着た女神の姿である。ちなみにこの天照はその踊りを見ることが出来なかった。
「そういえば前からやってるって言ってたもんねー、レベル1だから新しく作ったの? そのキャラ……」
五輪が操るカセドリがもじもじしながら言った。カセドリは雌雄のつがいになった鶏の姿だが、一応雌の方を使っているらしい。
「好きなキャラ使いたくなるもんねー、わかるわかる!」
玉藻が操る素戔嗚尊が剣を振り回しながら言う。素戔嗚尊は天照の弟でとても荒々しい神だ。九尾は強い男を好むので、妥当なチョイスと言える。
このようにそれぞれ自分の好きな神を選んでいるようだ。カセドリのような特殊な神までカバーしているのは制作者のこだわりを感じさせる。
そして注目を浴びている明蓮のキャラは、巨大な白い竜。つまり河伯だった。以前河伯が用意した、ある程度プレイしている状態のキャラは此花咲夜姫だったのだが、明蓮はゲームを始めるにあたって新たにキャラを作ったのだった。
「す、好きって言うか、いつも見慣れてるし、アイツの神通力なんか便利じゃない? 再現されてるかはわからないけど、何となくいいなって思ってさ」
実際のところ、此花咲夜姫は美人で有名な神だ。河伯がそれを明蓮のキャラとして設定していたことになんとなく気恥ずかしさを覚えて新しいキャラを作ろうとしたというのが新キャラ作成の経緯なのだが、それで河伯を選んだ理由は、言うまでもない。
「素直になりなさいよ」
ニヤニヤしながら身体をクネクネさせる天鈿女命もとい天照。五輪は「仲良いなぁ」と呟いて明蓮を恥ずかしがらせる。
「そっ、そんなんじゃないってば!」
「まあまあ、それよりレベル上げしましょ。天照以外みんなレベル低いんだし」
玉藻が話題を変えると、明蓮は助かったと内心感謝する。玉藻は本当に話題にあまり興味がなく、自キャラの素戔嗚尊を使ってみたくて仕方がなかったのだが。
「まずはお使いクエストよ! 禍津神について教えてもらえるからちゃんと聞いておいた方がいいわ」
上級者の天照に従い、ゲームキャラの天照から仕事を請け負う。こちらの天照は威厳ある女性の姿である。本物を知っている明蓮達は何とも言えない気持ちになった。
高天原では、長い間多くの神々が人の世界を支えてきた。だが近年になって人々の信仰の心が薄れ、神の力も届かなくなっていく。それによって各地に封印されていた禍津神達が姿を現し始めたのだ。人間の世界に現れた禍津神は、様々な禍を世にもたらした。地震、津波、台風……数多くの災害に見舞われた人間は急激にその数を減らし、何とか生き残った者達は強大な禍に対抗する術を持たないために、この苦しみから助かりたい一心で再び神に祈りを捧げ始めたのだ。
「その祈りの力を集めてくるのが最初の目的ね。人間世界を回って祈りの声を見つけるのよ」
明蓮達はゲーム内の人間世界に向かったが、そこは現実世界とはまったく違う地形の、架空の世界だった。
「実際の世界と同じ地図にするとプレイヤーが現実世界でゲーム内のイベントがあったのと同じ場所に行こうとするでしょ? 今の世界は人間には危険な場所が多すぎるから、そういうことをしないように架空の世界にしてあるのよ」
天照の説明に納得する一同だが、五輪が天照に質問する。
「このカセドリがいる佐賀県って今どんな感じ? やっぱり危険なのかな」
「佐賀? あそこは危ないわねぇ。どうしても行きたかったら河伯に連れていってもらえば?」
「河伯君と一緒なら大丈夫なんだ! あっ、でも……」
河伯と行けばいいと聞いて明るい表情になった五輪だったが、すぐに困惑した顔で明蓮をチラチラと見る。
「えっ何? 河伯の姿だけど私は河伯じゃないからね」
鶏の姿をした五輪に視線を送られ、意図が掴めずに首を傾げる明蓮。その様子に玉藻が吹き出した。
「プッ、五輪ちゃんは明蓮に遠慮してるのよ。お気に入りなんでしょ?」
玉藻の言葉もすぐには理解できなかったが、少ししてその意味するところを理解した明蓮は自分の部屋で顔を真っ赤にした(河伯は竜なので顔色が変わらない)。
「べべ別に、そんなんじゃないから!」
「はいはい、ご馳走様」
天照がニヤニヤしながら、ゲーム世界を案内していく。内心アリスちゃんも誘うべきだったわね等と思いつつ。
そのアリスが今話題になっている河伯を独り占めしているとは誰も知らないのだった。
「あれ? 明蓮のキャラは此花咲夜姫じゃなかった?」
天照が操る天鈿女命が言う。天鈿女命は天照の有名な神話で天岩戸の前で踊りを披露した神だ。神話に即して露出度の高い衣を着た女神の姿である。ちなみにこの天照はその踊りを見ることが出来なかった。
「そういえば前からやってるって言ってたもんねー、レベル1だから新しく作ったの? そのキャラ……」
五輪が操るカセドリがもじもじしながら言った。カセドリは雌雄のつがいになった鶏の姿だが、一応雌の方を使っているらしい。
「好きなキャラ使いたくなるもんねー、わかるわかる!」
玉藻が操る素戔嗚尊が剣を振り回しながら言う。素戔嗚尊は天照の弟でとても荒々しい神だ。九尾は強い男を好むので、妥当なチョイスと言える。
このようにそれぞれ自分の好きな神を選んでいるようだ。カセドリのような特殊な神までカバーしているのは制作者のこだわりを感じさせる。
そして注目を浴びている明蓮のキャラは、巨大な白い竜。つまり河伯だった。以前河伯が用意した、ある程度プレイしている状態のキャラは此花咲夜姫だったのだが、明蓮はゲームを始めるにあたって新たにキャラを作ったのだった。
「す、好きって言うか、いつも見慣れてるし、アイツの神通力なんか便利じゃない? 再現されてるかはわからないけど、何となくいいなって思ってさ」
実際のところ、此花咲夜姫は美人で有名な神だ。河伯がそれを明蓮のキャラとして設定していたことになんとなく気恥ずかしさを覚えて新しいキャラを作ろうとしたというのが新キャラ作成の経緯なのだが、それで河伯を選んだ理由は、言うまでもない。
「素直になりなさいよ」
ニヤニヤしながら身体をクネクネさせる天鈿女命もとい天照。五輪は「仲良いなぁ」と呟いて明蓮を恥ずかしがらせる。
「そっ、そんなんじゃないってば!」
「まあまあ、それよりレベル上げしましょ。天照以外みんなレベル低いんだし」
玉藻が話題を変えると、明蓮は助かったと内心感謝する。玉藻は本当に話題にあまり興味がなく、自キャラの素戔嗚尊を使ってみたくて仕方がなかったのだが。
「まずはお使いクエストよ! 禍津神について教えてもらえるからちゃんと聞いておいた方がいいわ」
上級者の天照に従い、ゲームキャラの天照から仕事を請け負う。こちらの天照は威厳ある女性の姿である。本物を知っている明蓮達は何とも言えない気持ちになった。
高天原では、長い間多くの神々が人の世界を支えてきた。だが近年になって人々の信仰の心が薄れ、神の力も届かなくなっていく。それによって各地に封印されていた禍津神達が姿を現し始めたのだ。人間の世界に現れた禍津神は、様々な禍を世にもたらした。地震、津波、台風……数多くの災害に見舞われた人間は急激にその数を減らし、何とか生き残った者達は強大な禍に対抗する術を持たないために、この苦しみから助かりたい一心で再び神に祈りを捧げ始めたのだ。
「その祈りの力を集めてくるのが最初の目的ね。人間世界を回って祈りの声を見つけるのよ」
明蓮達はゲーム内の人間世界に向かったが、そこは現実世界とはまったく違う地形の、架空の世界だった。
「実際の世界と同じ地図にするとプレイヤーが現実世界でゲーム内のイベントがあったのと同じ場所に行こうとするでしょ? 今の世界は人間には危険な場所が多すぎるから、そういうことをしないように架空の世界にしてあるのよ」
天照の説明に納得する一同だが、五輪が天照に質問する。
「このカセドリがいる佐賀県って今どんな感じ? やっぱり危険なのかな」
「佐賀? あそこは危ないわねぇ。どうしても行きたかったら河伯に連れていってもらえば?」
「河伯君と一緒なら大丈夫なんだ! あっ、でも……」
河伯と行けばいいと聞いて明るい表情になった五輪だったが、すぐに困惑した顔で明蓮をチラチラと見る。
「えっ何? 河伯の姿だけど私は河伯じゃないからね」
鶏の姿をした五輪に視線を送られ、意図が掴めずに首を傾げる明蓮。その様子に玉藻が吹き出した。
「プッ、五輪ちゃんは明蓮に遠慮してるのよ。お気に入りなんでしょ?」
玉藻の言葉もすぐには理解できなかったが、少ししてその意味するところを理解した明蓮は自分の部屋で顔を真っ赤にした(河伯は竜なので顔色が変わらない)。
「べべ別に、そんなんじゃないから!」
「はいはい、ご馳走様」
天照がニヤニヤしながら、ゲーム世界を案内していく。内心アリスちゃんも誘うべきだったわね等と思いつつ。
そのアリスが今話題になっている河伯を独り占めしているとは誰も知らないのだった。
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