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高等部編
人の話を聞けーー!_3
しおりを挟む翌日、私はエリアスに借りたハンカチを返す機会を伺っていた。刺繍などもない質素な木綿の白いハンカチは、我が家の有能な侍女が丁寧に洗ってから炭火アイロンで綺麗に整えてくれている。席が前後ろだからすぐに返せるけど、私は下心があったから、そうはしなかった。
出来れば二人きりがいい!
お礼も言いたい!!
お昼休みに、ジュリエットとカミーユが席を外したのを狙って、私は修練場へ向かった。昼休みや放課後にエリアスが修練場によくいるのは知ってた。昨日もいたそうだし。
エリアスの事を考えてると心が弾む。私は自分が置かれた状況を一時忘れて、のんきにスキップしながら広い庭園を横切っていた。
暖かいから庭園でランチしたり、散策したりしている生徒も多い。生徒会室や修練場、倉庫などの施設がある一角が見えてきた頃、花の蔭に見慣れた姿を見つけてしまった。
目を疑ったが事実で、あまりの事に呆然と立ち尽くすしかなかった。
――そこでは、
私の弟ジュリアンが、
ソフィアと一緒に、
お菓子をつまみながら談笑していた――。
今年13歳になるジュリアンは、まだあどけなさも残るが背も伸びてだいぶ男の子らしくなっている。活き活きとした青い瞳には、負けん気の強さも垣間見えて、可愛い弟からカッコイイ弟になっていた。
二人で笑い合っている姿はまるでお花見デートイベント。ソフィアは頬がほんのりピンク色でとても可愛い。うちのカッコイイ弟も、楽しそうに何かを話している。
何これ……。
……どうして? 攻略対象のはずのマクシムお兄様がルイーズ嬢と結婚したから? ストーリーにずれが生じて、本来登場しなかったはずのジュリアンが表舞台に出てきてしまったの?
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足掻いても未来が変えられないとしたらどうしよう。あと約一年で、私はやっぱり死んでしまうの?
予鈴が鳴り、ジュリアンが初等部の方へ帰るのを見送って、私はソフィアに近づいた。
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