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初等部編

だ、だからフラグを折ろうとしたのに_3

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 公爵家の敷地内に入り、車寄せで馬車の扉を開けたのは、召使ではなくお父様だった。

「アリス!」

 待ちきれなかったんだろう。心配かけて申し訳なかったなあと思いながら飛び降りるようにしてお父様に抱きついた。すぐに母も兄弟も来て抱き締めてくれる。

「無事で本当に良かった」

 気丈なお母様が泣いている。ちょっとびっくりした。家族なんだなあと改めて思った。
 お兄様は優しく髪を撫でて、たくさんキスしてくれたので、私はちょっとしにそうになっていた。多分、心臓が一回くらいはとまってたと思う。
 夜遅いのに弟も待っていてくれて、「お姉様になにかあったら僕絶対許さなかった」と言ってて可愛いなと思った。

 あー! 帰って来られて本当によかったー!


 家族と一緒にオスカーも帰りを待ってくれていた。

「俺はお前の騎士だろ、って俺は全然役に立てなかったんだけどね」
「ありがとう」

 私の方から抱きついた。びっくりしていたけど、しっかり抱き締めてくれる。幼馴染の声に安心して涙が出る。皆優しいなあと思っていたら、アレックスが「エリアス……」と呟いたのが聞こえた。


 振り返ると青毛の馬から下りてきたエリアスが、ふらつきながらこちらへ歩いてくる。着替えたらしく、騎士服を着ていた。

「アリス様、お守り出来ず、申し訳ありませんでした」
「エリアスが無事で何よりよ」

 エリアスが片膝をついて低頭するから、私は座り込んでそう言った。本当は抱きつきたかったけど、肩に触れるだけで我慢した。顔をあげたエリアスが何かを言いかけた気がしたから、お互い無言で見つめ合ってると、サシャが叫んだ。

「ちょっとお、アリスちゃんに新たな男~~~?!」

「え、サシャいつ来たの」

「今。アリスちゃんが無事見つかったって、リュカが教えてくれたから。アタシだって心配だったから顔みにきたの。それなのに、なにその男前。なにその親密な雰囲気」

「僕たちみんな修業が足りないみたいだね」

 アレックスが言い、オスカーが俺も本気で騎士を目指そうかなと言っていた。



 夜も遅かったが、お母様がとりあえず中で休憩しましょうと促して、エリアスも含めて幼馴染達と屋敷のサロンへ行った。私は着替えないといけないから私室へ行こうとしたときに、お父様に呼び止められた。

「アリスが見つかったと報告を受けた直後に、王家から遣いが来た」
「はあ、心配かけてすみません」

 きっとラファエル様だろう。立場上、幼馴染たちのように真夜中にホイホイ出歩けないからとりあえず何か伝言なのかなと思っていたら、お父様が私が絶望するようなことを言った。

「王太子殿下が『アリスと正式に婚約したい』とおっしゃっているそうだ。詳しくは明日話すが、早く伝えた方がいいかと。まだ私とクロエしか知らないから口外はしないでおくれ。……おめでとう、アリス」

 ――私、ラファエル様に、私の気持ちも考えろって言わなかったっけ?

 びりびりのスカートをもっとびりびりに引き裂きたいくらい暴れたいのを私は我慢した。


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