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初等部編

まさかの冬の花_1

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「先日の手紙……」

 エリアスが呟いて困った顔をした。
 御礼のためのお茶会を断られたから、かわりに服を仕立てたいと申し出た二通目の手紙。

「お仕立ての件についてなんだけど、お父様が『自分が御礼をしたい』と申しております」

 エリアスがまた『絶望』みたいな顔をした。貴族とは距離を置きたいのに、どんどん関わっていくのがいやなんだろうな。

 私は父に、マルシェでのエリアスの働きについて、どれだけ素晴らしかったのかを滔々と語っていた。(※娘溺愛のお父様は、やきもちをやいたのか途中から若干不機嫌になったので切り上げた)
 危機を救ってくれた友人に御礼を申し出ている、と言うと、父が「公爵家として正式に御礼した方がいいのでは」と私に告げたのだった。

「どうする?ド派手好みのお父様に任せる?それとも私の申し出通り、街で仕立てる?」

 王都には、高級仕立て店メゾンドクチュールがいくつかあり、王侯貴族や豪商がこぞって流行の先端を追う。お父様とお母様はこの国の社交界の華。いわば二人の着るものを皆が真似して流行りが生まれる。いまは、全体的にデコラティブ、つまりゴテゴテして、デコデコしてる派手な服が流行っている。先日のエーメ男爵も襟がひらひらしていた。
 今日の恰好を見ても、エリアスは多分それは好まないんじゃないかな。

 エリアスが、息をのんで、それから大きなため息をついた。

「そもそも、仕立ての件をお断りしようと思っておりました。押し付けられても困ります」
「正式な御礼です。お茶会の護衛に来てくださるならなおのこと」

 我ながら、押し付け、囲い込み、脅迫だな~とは思うが押し通した。

「護衛については引き受けてもいいのですが、そこは騎士服でもよいのでは?」
「さっきも言いましたが、表向きは和やかなお茶会。出来ればあなたも貴族の略礼装で来てほしいの」

 エリアスが諦めたようだった。

「では、アリス様のお申し出をお受けします。ルテール公にはアリス様から『友人』として御礼を頂く旨をお伝えください」
「受けてくださって、ありがとう!『友人』として!」

(やったー!!!!!不審者・ストーカー・他人から、ついに友人に昇格した!!!そして新規絵!!!!!)

 『クラスメイト』というモブキャラでしかなかったエリアスは、高等部の制服姿しか見たことがない。舞踏会で見た騎士服も素敵だし、今日のような平服も素敵だけど、正装と略礼装も絶対カッコイイ!
 ちなみに、言ったら断られるだろうから言わなかったが、私は略礼装と一緒に正装も仕立てるつもりだった。


「どうして」

 エリアスが急に呟いた。

「え?」
「……どうして私にこんなに構うのですか?」

 素朴な疑問だったんだろう。私は思わず素直に答えた。

「え?だってエリアスが好きだから」

 言ってから後悔した。恥ずかしーーー!!!
 エリアスはびっくりした顔をしてるし、横のカーラが何故か赤面していた。
 言っちゃえ!!

「好き」

 エリアスは喜ぶでもなく、どちらかと言えば悲しそうな顔をして言った。

「アリス様……今後一切そのような戯れを口にするのはおやめください。……でないと、俺は二度とアリスには会えない」

 エリアスの目が真剣だったから、私は胸が痛くなった。

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