7 / 11
おまけ
1. お見合い相手がうちに来ました
しおりを挟む
本編6話の翌週のお話。付き合い始めた二人がえろいことしてるだけです。
ご笑覧ください~
-----------------------
土曜日の昼下がり、私はリビングの窓辺に飾ってあるブーゲンビリアをぼんやりと眺めていた。熱帯の低木だから、南国を思い起こさせる。
花のように鮮やかな赤い苞の真ん中に、小さな可愛い白い花。
このブーゲンビリアは、先週の日曜日に柊平さんが贈ってくれた。
初めて一緒に過ごしたあの夜、お風呂に入らせてもらってふかふかの上質なベッドに横になっていると、疲れていたのか私はそのまま眠ってしまった。
翌朝起きて「親に無断で外泊してしまった!」と私は慌てた。
私はいわゆる"箱入り娘"として育てられ、社会人になるまで外泊なんてしたこともなかったし、それが当たり前だった。男性と付き合ったこともなかった。
もう未成年でもないし、残業で遅くなって深夜帯に帰り、親と顔を合わせることもなく早朝出て行く、なんて日もあったから、今更怒ったりはしないだろう。でも、柊平さんと一緒にいることはわかってるのだから、帰宅して両親に会うのが物凄く恥ずかしかった。
私を家まで送ってくれた柊平さんが、玄関先で丁寧に挨拶をしてそのまま客間へあがり、改めて結婚の申し込みをしてくれた。結納や結婚式の場所や時期等といった具体的な話がすすんでいった。私は現実味が無いまま、時折頷きながらそれを聞いていた。
柊平さんが帰った後、「しばらく自分の部屋にいるから」と言って引きこもって、私は部屋のベッドの上で悶絶した。
ついに彼氏が出来た!
変態だけど……。
柊平さん優しくてかっこよかった!!
ド変態だったけど…………。
そして結婚まで決まった!!!
……足と結婚したいのかもしれないが……。
昨夜を思い出して枕や毛布をばふばふさせていると、母に呼ばれた。
怒られるのかな、とちょっと怖かったが、二階にある自室からリビングへおり、目に飛び込んで来たのが、この赤いブーゲンビリアだった。
突然、自宅に届けられた花の送り主は柊平さんで、まるで後朝だと思った。男の人に花を贈られるなんてことも初めてだったから私はとてもびっくりした。鉢植えだから一週間経った今日もまだ綺麗に咲いている。
「楓子ちゃん、アイス買ってきたから食べる?」
先刻、買い物から帰宅した母が話しかけてきたので「うん、食べる」と返事をしたが、私は上の空だった。花を眺めながら、柊平さんに会いたいなあと思っていたから。
週末は仕事と家の用事が立て込んでいて会えないから、と昨日の夜は一緒にお食事をした。
住宅地の中にあるイタリアンレストランは、長年、西麻布でオーナーシェフをしていた方が開いたお店で、口コミで評判が広がり、常連客のリクエストでメニューが増えていったそう。
こじんまりとした気取らない雰囲気のお店で、柊平さんが好む理由がわかる気がした。お料理もとても美味しくて、柊平さんと話すのはとても楽しかった。
別れ際の柊平さんは、いつものように穏やかに、綺麗な顔で微笑みながら私を見ていた。否、私の足を見ていた……。
「渋谷まで行って買ってきたの」と、母が女子高生のような事を言いながら、可愛らしい箱を開けてアイスを出してくれる。母はいつまでたっても少女のような人なので、柊平さんと私の事も「一目惚れだなんて素敵!」と勝手にラブストーリーを想像して喜んでいる。
一見紳士ですが、あの人は私の足に一目惚れした変態なんですよ。
再来月の結納で着る色留袖について嬉しそうに話している母に、適当に相槌を打ちながらアイスを食べていると、父が帰宅した。
「おかえりなさーい!」と母が対応しているインターホンの画像を見ると、何故か柊平さんも一緒にいる。予想外だったので私は動揺した。
仕事で会えないんじゃなかったの?
特に事前の連絡もなく彼氏が家に来たら、そりゃびっくりする。
スーツを着ていると細く見えるけど、意外に腕とか胸とか逞しくてしっかりしてるんだよね……と思い出してしまった私は、多分真っ赤になってたと思う。
玄関には、爽やかイケメンが立っていた。柊平さんが私を見て微笑んでるけど、何故か妙に恥ずかしくなった私は「いらっしゃいませ」の挨拶すら言えなかった。
「まあ、まあ! いらっしゃいませ」
「こんにちは、突然すみません。お邪魔します」
「どうぞ、どうぞ~自分の家だと思って寛いでくださいな」
イケメンの登場に母は上機嫌。アイス買っといてよかったわ~頂いたお菓子もあるわよね~とキッチンをパタパタと走り回っている。
父は取引先との打ち合わせを兼ねた会食に行っていたはずだが、偶然そのホテルのロビーで居合わせたそう。
お互い用も済んだなら、是非にと誘ったのはうちの父の方だと聞いて私は、(迷惑だったんじゃ……)と思ってしまった。うちの両親は、この良縁に完全に浮かれてしまっている。
ただ、クマの形をしたファンシーなアイスを食べている柊平さんは、とても可愛かった。リビングでお茶を飲み、「そろそろお暇を」と言った柊平さんを、母が引き留めた。
「お夕飯、ご一緒にいかが?」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」
すっかり息子みたいに扱ってますけど、大丈夫かな。そんな心配をよそに、柊平さんは私の方へ向き直って言った。
「夕食までの間に、楓子ちゃんの部屋を見てみたいんだけど、いい?」
「え? えええ?? 部屋? ですか?」
何されるかわからないからいやだ!と思ったが、親公認の彼氏相手に断るのも不自然だし承諾した。両親もいるのに変なことはしないだろう、多分。
多分……。
ご笑覧ください~
-----------------------
土曜日の昼下がり、私はリビングの窓辺に飾ってあるブーゲンビリアをぼんやりと眺めていた。熱帯の低木だから、南国を思い起こさせる。
花のように鮮やかな赤い苞の真ん中に、小さな可愛い白い花。
このブーゲンビリアは、先週の日曜日に柊平さんが贈ってくれた。
初めて一緒に過ごしたあの夜、お風呂に入らせてもらってふかふかの上質なベッドに横になっていると、疲れていたのか私はそのまま眠ってしまった。
翌朝起きて「親に無断で外泊してしまった!」と私は慌てた。
私はいわゆる"箱入り娘"として育てられ、社会人になるまで外泊なんてしたこともなかったし、それが当たり前だった。男性と付き合ったこともなかった。
もう未成年でもないし、残業で遅くなって深夜帯に帰り、親と顔を合わせることもなく早朝出て行く、なんて日もあったから、今更怒ったりはしないだろう。でも、柊平さんと一緒にいることはわかってるのだから、帰宅して両親に会うのが物凄く恥ずかしかった。
私を家まで送ってくれた柊平さんが、玄関先で丁寧に挨拶をしてそのまま客間へあがり、改めて結婚の申し込みをしてくれた。結納や結婚式の場所や時期等といった具体的な話がすすんでいった。私は現実味が無いまま、時折頷きながらそれを聞いていた。
柊平さんが帰った後、「しばらく自分の部屋にいるから」と言って引きこもって、私は部屋のベッドの上で悶絶した。
ついに彼氏が出来た!
変態だけど……。
柊平さん優しくてかっこよかった!!
ド変態だったけど…………。
そして結婚まで決まった!!!
……足と結婚したいのかもしれないが……。
昨夜を思い出して枕や毛布をばふばふさせていると、母に呼ばれた。
怒られるのかな、とちょっと怖かったが、二階にある自室からリビングへおり、目に飛び込んで来たのが、この赤いブーゲンビリアだった。
突然、自宅に届けられた花の送り主は柊平さんで、まるで後朝だと思った。男の人に花を贈られるなんてことも初めてだったから私はとてもびっくりした。鉢植えだから一週間経った今日もまだ綺麗に咲いている。
「楓子ちゃん、アイス買ってきたから食べる?」
先刻、買い物から帰宅した母が話しかけてきたので「うん、食べる」と返事をしたが、私は上の空だった。花を眺めながら、柊平さんに会いたいなあと思っていたから。
週末は仕事と家の用事が立て込んでいて会えないから、と昨日の夜は一緒にお食事をした。
住宅地の中にあるイタリアンレストランは、長年、西麻布でオーナーシェフをしていた方が開いたお店で、口コミで評判が広がり、常連客のリクエストでメニューが増えていったそう。
こじんまりとした気取らない雰囲気のお店で、柊平さんが好む理由がわかる気がした。お料理もとても美味しくて、柊平さんと話すのはとても楽しかった。
別れ際の柊平さんは、いつものように穏やかに、綺麗な顔で微笑みながら私を見ていた。否、私の足を見ていた……。
「渋谷まで行って買ってきたの」と、母が女子高生のような事を言いながら、可愛らしい箱を開けてアイスを出してくれる。母はいつまでたっても少女のような人なので、柊平さんと私の事も「一目惚れだなんて素敵!」と勝手にラブストーリーを想像して喜んでいる。
一見紳士ですが、あの人は私の足に一目惚れした変態なんですよ。
再来月の結納で着る色留袖について嬉しそうに話している母に、適当に相槌を打ちながらアイスを食べていると、父が帰宅した。
「おかえりなさーい!」と母が対応しているインターホンの画像を見ると、何故か柊平さんも一緒にいる。予想外だったので私は動揺した。
仕事で会えないんじゃなかったの?
特に事前の連絡もなく彼氏が家に来たら、そりゃびっくりする。
スーツを着ていると細く見えるけど、意外に腕とか胸とか逞しくてしっかりしてるんだよね……と思い出してしまった私は、多分真っ赤になってたと思う。
玄関には、爽やかイケメンが立っていた。柊平さんが私を見て微笑んでるけど、何故か妙に恥ずかしくなった私は「いらっしゃいませ」の挨拶すら言えなかった。
「まあ、まあ! いらっしゃいませ」
「こんにちは、突然すみません。お邪魔します」
「どうぞ、どうぞ~自分の家だと思って寛いでくださいな」
イケメンの登場に母は上機嫌。アイス買っといてよかったわ~頂いたお菓子もあるわよね~とキッチンをパタパタと走り回っている。
父は取引先との打ち合わせを兼ねた会食に行っていたはずだが、偶然そのホテルのロビーで居合わせたそう。
お互い用も済んだなら、是非にと誘ったのはうちの父の方だと聞いて私は、(迷惑だったんじゃ……)と思ってしまった。うちの両親は、この良縁に完全に浮かれてしまっている。
ただ、クマの形をしたファンシーなアイスを食べている柊平さんは、とても可愛かった。リビングでお茶を飲み、「そろそろお暇を」と言った柊平さんを、母が引き留めた。
「お夕飯、ご一緒にいかが?」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」
すっかり息子みたいに扱ってますけど、大丈夫かな。そんな心配をよそに、柊平さんは私の方へ向き直って言った。
「夕食までの間に、楓子ちゃんの部屋を見てみたいんだけど、いい?」
「え? えええ?? 部屋? ですか?」
何されるかわからないからいやだ!と思ったが、親公認の彼氏相手に断るのも不自然だし承諾した。両親もいるのに変なことはしないだろう、多分。
多分……。
15
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる