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修行の日々

起きた

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「ん~」

そんな言葉を零しながら体を伸ばす。
遥斗がそうしていると身体中の節々から音が鳴る。

(そういえば音が鳴るのって、関節に溜まった泡が潰れる音ってテレビで言ってたような)

そんな事を考えながら下のリビングへ向かう

「ん?」

「兄さんか、おはよう」

「おはよう」

リビングには健二がいた。

(あれ?健二達学校始まってたっけ?)

そんな事を考えながら冷蔵庫の扉を開ける。

「全く無い」

冷蔵庫の中は本来あるはずの食品が一切無かった。

「兄さん寝惚けてるの?」

「へ?」

健二が目の前で手を動かすと水の入ったペットボトルがでてきた。

「はい」

それを遥斗に渡した。

(あぁ、思い出した)

「OK?」

「大丈夫」

そう言って遥斗はペットボトルのキャップを回す。
喉を通る水は適度に冷えていて、遥斗の眠気を振り払う。

「どうしてここに?」

「見張りだよ」

(やっぱりか)

基本は美雪が作った『モンスター除け』で寄りつかないのだが、たまに例外がいるのだ。

「どれくらい来た?」

遥斗がそう聞くと、健二は空を見上げるようにして考え始めた。

「2回くらいかな」

「ごめん」

そう言って遥斗は頭を下げた。

「な、なんで頭を下げるのさ!?」

健二は慌てる。

「勝手に寝ちゃったからさ」

「でも、「気にしなくていいぞ!」」

遥斗と健二が話し合っていると、渡が割って入ってきた。

「お前はあんなことが合ったんだ。仕方ない」

「そうだよ兄さん」

渡の言葉に健二も賛同する。

「.......それも、そうだな」

遥斗はモヤモヤした気持ちになりつつもそう返した。

「兄さん風呂にでも入ってきたら?昨日入らないまま寝たでしょ」

健二にそう言われて体の匂いを嗅いでみる。

(うわぁ汗臭い)

「ありがとう入ってくるよ」

遥斗は『持ち物』から着替え1式とバスタオルを出した。

「兄さんそのまま開いてて」

「ん?分かった」

その直後にメッセージが表示された。

佐藤健二からアイテムが送られました受け取りますか?YES/No

「えっ?」

「YESって押して」

健二に言われるがまま操作すると、持ち物欄に水と表示されたアイコンが出来ていた。

「昨日兄さんが寝てる間に調べてたら出来たんだよ」

「なかなか便利だな」

「じゃあ入って行きなよ」

「じゃっ」
 
遥斗はそう言って脱衣所に向かった。

┄┄┄┄脱衣所

遥斗が服を脱ぐ。

「ん?」

上半身まで脱いだ時に鏡の存在に気付いた。

「ふっ!」

鏡に向かって体の力を入れてみる。

「.......ふぅ、入るか」

マッチョになった気分を味わえた気がしたが、力を抜いた瞬間に遥斗はとてつもない悲しみを覚えた。

残りの服を脱いだ遥斗は浴室に入った。

「こんな感じでいいのか?」

そう言いながら遥斗は手馴れた様子で、『持ち物』から水を浴槽に出現させる。

水と言っているが白い蒸気が上がっている。

(お湯も水と表記されるのか)

そして今度は遥斗の頭上に湯が現れる。湯が重量に従っていき遥斗に降りかかる。

「あっつ!」

冷める前提で湯は作られていたのか、遥斗が思っていた以上に熱かった。
そんなアクシデントを迎えたがその後は普通に頭と体を洗った。

「ふいぃ」

遥斗は湯船に浸かると、そのような変な声を出した。

(体に染み渡る)

先程出した湯は程よく冷めており、体が温まる程度になっていた。

「兄さーん」

「ん?どうした?」

外から健二の声が聞こえた。

「雪が風呂のお湯は『持ち物』に戻してだってさ」

「はいはーい」

遥斗は適当に返事をする。

「さて、そろそろ上がるか」

そう言って浴槽から出ると遥斗は湯を持ち物に入れた。

┄┄┄┄リビング 

「おはよう」

「おはよ」

「おはようございます」

遥斗が脱衣所から出てくると、起きたばかりなのか眠そうな雪とその彼氏である海音の姿があった。

「海音君は眠たくないの?」

「はい、慣れているので」

「へー」

(夜更かしは女の敵って言われるぐらいなのに海音は綺麗な肌してるけどな)

「そんなことより早く食べに行こう」

食卓には既に朝食の準備がされていた。

「そうだな」

そして遥斗達は朝食を取り始めた。




この話はフィクションです
キャラの名前、企業、団体は現実とは関係ありません

さっき風呂入りましたけど「あっつ!」の部分は全く関係ありませんよ、本当だよ!

あと更新遅れてゴメンなさい(ついでみたいに言ううんじゃねよ)
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