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2 お姉様たちの慈愛
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サラッと済ませたけど、私20日くらいサロモン様を追いかけ回していたみたいなのよね。それで入って来た時と同様に、唐突に、彼女は出て行った。
後には気まずい姉妹関係と、もっと気まずいエスキベル伯爵サロモン・マンサネラ卿との見つめ合いが待っていた。
「スティナ」
「はい、ごめんなさい」
「起きたか」
「はい」
「俺が好きか?」
「いえ。顔がタイプじゃありません」
「よし」
この人がいなければ、私は修道院にぶち込まれていた。
私のクリスタルを割った諸悪の根源もとい元婚約者のモンターニョ様が、
「あの女には悪魔が憑りついている! 魔女だ! 処刑だァッ!!」
と、めんどくさい裁判を起こしている最中に悲恋で死亡の乙女に憑りつかれていたので、信憑性が増してしまって、手を差し伸べる感じでエクソシストも派遣されちゃって、本当に危機一髪だった。
サロモン様が眼力で追い返してくれたのだ。
「まったく、あなたには困ったものねぇ。ふざけているわけではなく、本気で幽霊はいるって思っているんだもの」
「お姉様……」
愛してるけど、分かり合えない事もある。
「はぁぁぁぁぁ。お父様とお母様は『先祖返りだ』なんて言って、野放しどころか喜んでいるし。事態がわかっていないのよ。あなた、この先どうするつもりなの? 一生面倒を見てあげるわけにはいかないのよ?」
姉のクリスタには霊感がない。
ただ、無敵のホーリーパワーで、常にシールドが……
「目を見なさい、目を。私に妙な膜が張っているみたいな風に目玉を動かさないで」
「あ、はい」
「あなたを心配して言っているのよ? さっきはああ言ったけど、あなたが変人だって理由で一生独身でいるなら、私とサロモンはあなたを見棄てたりしない。ずっと一緒よ。一生こうして小言を言いながら可愛い妹の顔を睨んで過ごすわ。愛してるもの」
それは知ってる。
仲いいし。
「でもね。いくら愛があっても、宗教裁判には勝てない」
「はい」
「また同じ事が起きてあなたを庇えば、私とサロモンも悪魔憑き認定を受けて火炙りよ」
「はい」
「もしくは、水攻め」
「はい。ごめんなさい」
家出しかないかなぁー……
しんどいなぁ……
霊感商法で食べていくとしても、教会に睨まれたらまたエクソシスト来ちゃうし、詰んだかしら。
「クリスタ。俺に考えがある」
「?」
「!?」
困った時のサロモン様よ。
ヒーローに愛されるお姉様のポテンシャルに感謝。
「例の新米エクソシストに吐かせたんだが、あ、聞いたんだが」
何をしたんですか、サロモン様。
その眼力以外に何をしたんですか。
「フロールマン辺境伯領の若い領主が、なにやら幽霊騒ぎを揉み消したらしい」
「え?」
食いつくわよ。
生き延びるために。
「はい?」
姉は懐疑的。
サロモン様は鋭い眼力で遠くを見て続ける。
「揉み消したはいいものの、とにかく恐がられて求婚を跳ね返されるらしい。それで、ふしぎな現象を受け入れられる年頃の令嬢を探しているらしい」
「そんな変人に差し出せって言うの? 可愛い妹を? たとえ幽霊を信じる変人でも私はスティナを愛しているのよ?」
「わかっている。だが、クリスタ。人間、何事も相性が重要だろう?」
「……」
姉の中で、何かが合致したみたい。
真顔で私に向き直って、ソフトタッチで肩に触れて、物凄い眼力で覗き込んでくる。
「フロールマン辺境伯領は遠いわよ? 辺境なんだから」
「はい」
「何かあっても助けてあげられない。すぐには」
「はい。自分で切り抜けます」
「魔女にだけはならないで」
「はい」
「いってらっしゃい、スティナ」
額に姉の柔らかなキスを受ける。
サロモン様が、
「決まりだな」
と、最高のイケボで呟いた。
後には気まずい姉妹関係と、もっと気まずいエスキベル伯爵サロモン・マンサネラ卿との見つめ合いが待っていた。
「スティナ」
「はい、ごめんなさい」
「起きたか」
「はい」
「俺が好きか?」
「いえ。顔がタイプじゃありません」
「よし」
この人がいなければ、私は修道院にぶち込まれていた。
私のクリスタルを割った諸悪の根源もとい元婚約者のモンターニョ様が、
「あの女には悪魔が憑りついている! 魔女だ! 処刑だァッ!!」
と、めんどくさい裁判を起こしている最中に悲恋で死亡の乙女に憑りつかれていたので、信憑性が増してしまって、手を差し伸べる感じでエクソシストも派遣されちゃって、本当に危機一髪だった。
サロモン様が眼力で追い返してくれたのだ。
「まったく、あなたには困ったものねぇ。ふざけているわけではなく、本気で幽霊はいるって思っているんだもの」
「お姉様……」
愛してるけど、分かり合えない事もある。
「はぁぁぁぁぁ。お父様とお母様は『先祖返りだ』なんて言って、野放しどころか喜んでいるし。事態がわかっていないのよ。あなた、この先どうするつもりなの? 一生面倒を見てあげるわけにはいかないのよ?」
姉のクリスタには霊感がない。
ただ、無敵のホーリーパワーで、常にシールドが……
「目を見なさい、目を。私に妙な膜が張っているみたいな風に目玉を動かさないで」
「あ、はい」
「あなたを心配して言っているのよ? さっきはああ言ったけど、あなたが変人だって理由で一生独身でいるなら、私とサロモンはあなたを見棄てたりしない。ずっと一緒よ。一生こうして小言を言いながら可愛い妹の顔を睨んで過ごすわ。愛してるもの」
それは知ってる。
仲いいし。
「でもね。いくら愛があっても、宗教裁判には勝てない」
「はい」
「また同じ事が起きてあなたを庇えば、私とサロモンも悪魔憑き認定を受けて火炙りよ」
「はい」
「もしくは、水攻め」
「はい。ごめんなさい」
家出しかないかなぁー……
しんどいなぁ……
霊感商法で食べていくとしても、教会に睨まれたらまたエクソシスト来ちゃうし、詰んだかしら。
「クリスタ。俺に考えがある」
「?」
「!?」
困った時のサロモン様よ。
ヒーローに愛されるお姉様のポテンシャルに感謝。
「例の新米エクソシストに吐かせたんだが、あ、聞いたんだが」
何をしたんですか、サロモン様。
その眼力以外に何をしたんですか。
「フロールマン辺境伯領の若い領主が、なにやら幽霊騒ぎを揉み消したらしい」
「え?」
食いつくわよ。
生き延びるために。
「はい?」
姉は懐疑的。
サロモン様は鋭い眼力で遠くを見て続ける。
「揉み消したはいいものの、とにかく恐がられて求婚を跳ね返されるらしい。それで、ふしぎな現象を受け入れられる年頃の令嬢を探しているらしい」
「そんな変人に差し出せって言うの? 可愛い妹を? たとえ幽霊を信じる変人でも私はスティナを愛しているのよ?」
「わかっている。だが、クリスタ。人間、何事も相性が重要だろう?」
「……」
姉の中で、何かが合致したみたい。
真顔で私に向き直って、ソフトタッチで肩に触れて、物凄い眼力で覗き込んでくる。
「フロールマン辺境伯領は遠いわよ? 辺境なんだから」
「はい」
「何かあっても助けてあげられない。すぐには」
「はい。自分で切り抜けます」
「魔女にだけはならないで」
「はい」
「いってらっしゃい、スティナ」
額に姉の柔らかなキスを受ける。
サロモン様が、
「決まりだな」
と、最高のイケボで呟いた。
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