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<おまけ> ライジング4
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「まあっ、本当なの!? すぐヴェロニカに報せなくてはッ!!」
「シエラ!」
強面の優しい夫、王太子殿下である彼の制止を振り切って、私は走った。
「まあっ! シエラ様!?」
「走ってるわ!」
「ほんと! 走ってる!!」
「母子ねぇ……、ファニタもああして、王女様を追いかけていたわ」
「フェリシダード様は御怪獣でいらしたから」
「シエラ様! 転ばないように、お気を付けくださいましねぇ~ッ!!」
宮廷の方々は、本当にみんな優しい。
「ありがとう!!」
そして走り続けた。
王太子妃となった私の侍女として残ったのは、アドラシオンだけ。
マリサは熱意を買われて、5年間限定で新人の教育係に抜擢された。
ヴェロニカはピンタード伯爵夫人に気に入られて王妃様の侍女に仲間入り。
ルシンダは造園スキルを積み過ぎて、お庭係になった。
そしてこの曜日のこの時間、ヴェロニカはレース編みレースに向けてレースの整理をしている。
──シュタッ!!
私は目的の部屋の前で見事に止まり、勢いよく扉を開けた。
「ヴェロニカ! ついにライジングする時がきたわ!!」
「えっ、シエラ様!?」
こっそり隠れてレースを編んでいたヴェロニカに突進。
「聞いて! 同盟国アルノーリィのクリスティアン殿下があなたと結婚したいんですって!!」
「──ぅええええっ!?」
気持ちはわかる!
「あなた王太子妃殿下でその数十年後には王妃になるのよーッ!!」
「……」
見つめあう。
「「キャアアアァァァァッ!!」」
重なる歓喜の叫び。
「……」
「……」
また見つめあって、
「「キャアアアァァァァッ!!」」
歓喜。
そしてひっしと抱きしめあった。
ライジング……!!
♡
自室に戻ると、アドラシオンが真顔で私の腕を掴んだ。
「シエラ様。お伝えしたい事が」
「どっ、えっ、どどっ、どうしたの?」
真剣過ぎて、私は身構えた。
いったい、なにが起きたというの……!?
「私……」
「な、なに……」
「に」
「に?」
にんまり、アドラシオンが笑う。
「!?」
美しいのになぜか不気味!
「妊娠しましたぁぁぁぁぁっ!!」
アドラシオンは元から宮廷内の評価が高かったのだけれど、私の結婚式直後に、ピンタード伯爵令息からの求婚を受け電撃結婚していた。ピンタード伯爵令息ビクトールは、父親であり執政官であるピンタード伯爵の補佐として宮廷で働いている。つまりピンタード伯爵家は代々、王家や国政と密接な関りがあるのだ。
それは置いといて。
私たちは、新妻同士。
ほかでは話せない事も語り合える、強い絆で結ば──
「これであなたのそのうち生むであろうお世継ぎの乳母になれますッ! フェリシダード様は乳母がお好き!! そんなフェリシダード様が愛してやまないあなたの可愛い可愛い赤ちゃんの乳母を私が務めたらきっとフェリシダード様からの評価も爆上がりすること間違いなしッ!! やったあああッ!!」
「アドラシオン……あなた……」
フェリシダード様の事となると、本当に、正気を失うわね。
そして計り知れない……
でも、彼女の話を聞いていれば、きちんと夫婦で心から愛しあっているのはわかる。彼女の独特の愛が少し正気ではないからといって、忌むべき事ではぜんぜんない。
それに、アドラシオンと一緒に子育てできたら、それって……
「なんて素晴らしいのッ!! おめでとう! アドラシオン!!」
「でも見るからに私よりシエラ様のほうがいいお乳が出そうですね」
「……アドラシオン」
急に、正気に戻らないで。
(完)
「シエラ!」
強面の優しい夫、王太子殿下である彼の制止を振り切って、私は走った。
「まあっ! シエラ様!?」
「走ってるわ!」
「ほんと! 走ってる!!」
「母子ねぇ……、ファニタもああして、王女様を追いかけていたわ」
「フェリシダード様は御怪獣でいらしたから」
「シエラ様! 転ばないように、お気を付けくださいましねぇ~ッ!!」
宮廷の方々は、本当にみんな優しい。
「ありがとう!!」
そして走り続けた。
王太子妃となった私の侍女として残ったのは、アドラシオンだけ。
マリサは熱意を買われて、5年間限定で新人の教育係に抜擢された。
ヴェロニカはピンタード伯爵夫人に気に入られて王妃様の侍女に仲間入り。
ルシンダは造園スキルを積み過ぎて、お庭係になった。
そしてこの曜日のこの時間、ヴェロニカはレース編みレースに向けてレースの整理をしている。
──シュタッ!!
私は目的の部屋の前で見事に止まり、勢いよく扉を開けた。
「ヴェロニカ! ついにライジングする時がきたわ!!」
「えっ、シエラ様!?」
こっそり隠れてレースを編んでいたヴェロニカに突進。
「聞いて! 同盟国アルノーリィのクリスティアン殿下があなたと結婚したいんですって!!」
「──ぅええええっ!?」
気持ちはわかる!
「あなた王太子妃殿下でその数十年後には王妃になるのよーッ!!」
「……」
見つめあう。
「「キャアアアァァァァッ!!」」
重なる歓喜の叫び。
「……」
「……」
また見つめあって、
「「キャアアアァァァァッ!!」」
歓喜。
そしてひっしと抱きしめあった。
ライジング……!!
♡
自室に戻ると、アドラシオンが真顔で私の腕を掴んだ。
「シエラ様。お伝えしたい事が」
「どっ、えっ、どどっ、どうしたの?」
真剣過ぎて、私は身構えた。
いったい、なにが起きたというの……!?
「私……」
「な、なに……」
「に」
「に?」
にんまり、アドラシオンが笑う。
「!?」
美しいのになぜか不気味!
「妊娠しましたぁぁぁぁぁっ!!」
アドラシオンは元から宮廷内の評価が高かったのだけれど、私の結婚式直後に、ピンタード伯爵令息からの求婚を受け電撃結婚していた。ピンタード伯爵令息ビクトールは、父親であり執政官であるピンタード伯爵の補佐として宮廷で働いている。つまりピンタード伯爵家は代々、王家や国政と密接な関りがあるのだ。
それは置いといて。
私たちは、新妻同士。
ほかでは話せない事も語り合える、強い絆で結ば──
「これであなたのそのうち生むであろうお世継ぎの乳母になれますッ! フェリシダード様は乳母がお好き!! そんなフェリシダード様が愛してやまないあなたの可愛い可愛い赤ちゃんの乳母を私が務めたらきっとフェリシダード様からの評価も爆上がりすること間違いなしッ!! やったあああッ!!」
「アドラシオン……あなた……」
フェリシダード様の事となると、本当に、正気を失うわね。
そして計り知れない……
でも、彼女の話を聞いていれば、きちんと夫婦で心から愛しあっているのはわかる。彼女の独特の愛が少し正気ではないからといって、忌むべき事ではぜんぜんない。
それに、アドラシオンと一緒に子育てできたら、それって……
「なんて素晴らしいのッ!! おめでとう! アドラシオン!!」
「でも見るからに私よりシエラ様のほうがいいお乳が出そうですね」
「……アドラシオン」
急に、正気に戻らないで。
(完)
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