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1 そっちが本命!?

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「エリアナが婚約!?」

 
 知らせを届けたのは、彼の父親。
 それは私の婚約者の父親。
 つまり未来の義父。


「おめでとう、ブランドン!」
 

 感動した私は、つい彼の腕を力いっぱい叩いてしまった。
 ぐらりと揺らぐ彼、マーニー伯爵令息ブランドン・コーンウェル。


「ハッハッハ! お祝いだぁッ!!」


 未来の義父マーニー伯爵は、豪快に笑って人の波に自ら溺れていった。
 喜ぶのも当然。エリアナというのはブランドンの幼馴染ソマーズ伯爵令嬢の事で、マーニー伯爵にとっては娘か姪のような存在。

 ちなみに、私は面識がない。
 でも、とても喜ばしい事だ。


「ねえ、ブランドン。私からもお祝いを言いたいわ。今日こそは紹介して!」

「嘘だ……」

「え?」


 ここへきて、やっと異変に気付いた。
 ブランドンは真っ青だ。


「ど、どうしたの? 酔っぱらった?」

「馬鹿な……」


 今にも泣き出しそうな顔で、ブランドンはふらりと身を翻す。

 そして。


「取り返さなくては!!」

「え?」


 気合たっぷりに叫んだブランドンが、またこっちを向いて私の腕をガシッと掴んだ。


「こうしちゃいられない。ルシア、君との婚約は破棄させてもらう!!」

「──」


 頭が、まっしろに。


「……」


 婚約、破棄……?


「ええ?」


 そんな、まさか。
 と思ったのだけれど、言い切ったブランドンは今度こそ勢いよく駆け出した。


「エリアナ~! 目を覚ますんだぁ~っ!! 愛してるぅ~ッ!!」

「……」


 走り去る婚約者を凝然と見つめる私はウィッカム伯爵令嬢ルシア・フラトン。
 ロイエンタール侯爵家主催の秋の昼食会にはたくさんの貴族が招かれていて、マーニー伯爵家とも現地集合だった。そんな事はどうでもいい。

 昼食会にはソマーズ伯爵家も招かれていた。
 ブランドンが妹のように大切に思っている幼馴染のエリアナに、会えるのを……楽しみに……してたのに。


「……ど、して……?」


 私、棄てられたの?


「おい、馬鹿! なんで止めないんだ!」

「お兄様……」


 怒鳴られて、その存在に気づく。
 兄のエドウィンも、同じく招かれていたバルバーニー伯爵家の令嬢イヴェット・シューリスと行動していた。なぜなら婚約者だから。

 イヴェットは苦手。
 大人の魅力あふれる彼女は、私を見下している。


「嘘だろ……あいつ、突っ込む気だ。相手はクレヴァリー伯爵だぞ」


 兄が驚愕と絶望感たっぷりに呟いた。
 その目の先で、確かに、ブランドンが叫んでいた。


「エリアナを返せぇーッ!」

 
 それを見て私は、


「──!」


 号泣した。
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