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〈おまけ〉レジナルドの憂鬱

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 父が国外追放というのは、実に肩身の狭いものだ。
 だが母の気苦労に比べればその比ではないだろう。

 僕が物心ついた頃にはすでに、両親の仲は冷え切っていた。
 なぜこうも互いに罵り合うのか、ふしぎでならなかった。

 どうやら、父が母に不満を持っているらしいと気づいた時、僕は祖父に尋ねた。

 そして、伯母の素晴らしさ、それを逃した悔しさを訥々と語られた。

 たしかに、母の姉にあたる伯母の性格及び性質は伯爵夫人として申し分ない。
 父の求めた「可愛げ」というのは、極めて正体不明のものだった。
 母に可愛いと称すべき点は、ひとかけらもない事が、僕の疑念に拍車をかけた。

 なにより驚いたのは、貴族学校に入り対面した伯母が、母と似ていなかった事だ。
 伯母は母より小さく、細く、健康的で、光り輝いて見えた。
 知的かつ合理的で、適度に情があり、親切だった。

 こういう人が母であったらよかったのにと思ったくらいだ。

 恐らく祖父は自身が好ましいと感じる婦人を、息子と婚約させたのだろう。
 父の事を考えれば、僕は恋愛などに現を抜かすべきではない。
 婚約者は祖父に選んでもらえば間違いないと確信していた。

 ただ、問題は、僕が国外追放された男の息子だという事だ。
 しかしそれは、勤勉かつ優秀であれば問題にならないと言われた。

 実際、どうなのだろうか。

 僕はいばらの道を歩く、孤独な男として生きていかなければ──


「レジナルド!」

「?」


 従妹のフレデリカが僕を呼んだ。
 王女と手を繋いでいる。


「こんなところでなにをしているの? 考え事?」


 伯母が善良で賢い義伯父との間に設けた従妹は、非の打ち所がない。
 王子が求婚するのも頷ける。

 本当に伯母が母であってくれたら……

 いや、よそう。
 それでは僕がこの世に生まれてこなかったのだから。


「こっちへ来て」

「どうして」

「いいから」


 王女と従妹が笑顔を残して背を向け、歩き始める。
 僕は一抹の不安を胸に抱えながら後を追った。

 はたして、一室には見知った面々が集まり、焼き菓子を囲んでいた。


「レジナルド! 8才のお誕生日、おめでとう!」

「「「おめでとう!!」」」


 
                               (完)
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