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2 やめときなさいって。

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「あのね、アラベラ」

「なによ」

「もう一度だけ言うけど、『君もそう思うだろ?』『いいえ』だけの事で因縁をつけて婚約を破棄するような殿方はまともじゃないわ。今からでも考え直して」

「プハハハハハッ!」


 妹の唾が宙を舞って光る。
 これで殿方の前ではお淑やかな令嬢を演じ切るんだから、凄いわ。


「えっと、なんて言うんだっけ? そう! !!」

「アラベラ」

「自分が不幸のどん底に落ちたから、私をなんとしても結婚させたくないのね! 僻んじゃって、惨めねぇ~。ま、そりゃそうよね。元はお姉様の愛しのルーシャンだったのに、今では私を愛しているんですもの!」

「愛してない」

「いいえ、愛してるわ」

「違う。私はルーシャンを愛してはいない。親が決めた相手よ」

「その親が決めた結婚を台無しにしたお姉様の尻拭いをやってあげるのよ? もっと感謝してよね! まあ、私は嫌じゃないけど? だってルーシャンは素敵だし、私を愛してくれるものっ♪」

「愛ってなに? 他を貶してあなたを持ち上げる事?」

「少なくとも誰を愛するべきかわかっているって事でしょう? わかったわ。お姉様は自分に非があったとは認めたくないのよね。だからルーシャンを悪く言って、私との結婚を台無しにしてやろうって魂胆なのよ。ほんと、そういう嫌がらせには頭が回るんだから」

「目が回りそうだわ」

「言ってなさい! ひとりぼっちになれば自分がバカだったって気づくわよ。なんの価値もない、偏屈で生意気な行き遅れ女だってね! お父様がやっとまとめてくださった結婚話だったのに、それを『いいえ』の一言でぶち壊したのよ? 自分のした事をよく考えて反省しなさい! バーカ!!」


 私を口喧しいと称する、なかなか口喧しいこの2才下の妹。
 こんな妹でも、明日からは顔も合わさないと思うと、少し寂し……いいえ。妹に会えないというより、常にさらされていた刺激が途絶えて反射的に体が戸惑う、という感じかも。


「ねえ、ひとつ聞いていい?」

「なあに? 可愛さの秘訣?」

「違う」


 ずっと聞いてみたかった事だった。
 煩いから黙っていたけれど、実は気になっていた。
 
 なにを言っても私の負け惜しみと捉えるようだから、この際だ。


「姉の婚約者を奪って自分が結婚するって、どういう気持ちなの?」


 とても興味深い。


「ざまぁって感じ!」

「なるほど」


 こうして私たちは、それぞれの人生を歩み始めた。
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