2 / 13
2 やめときなさいって。
しおりを挟む
「あのね、アラベラ」
「なによ」
「もう一度だけ言うけど、『君もそう思うだろ?』『いいえ』だけの事で因縁をつけて婚約を破棄するような殿方はまともじゃないわ。今からでも考え直して」
「プハハハハハッ!」
妹の唾が宙を舞って光る。
これで殿方の前ではお淑やかな令嬢を演じ切るんだから、凄いわ。
「えっと、なんて言うんだっけ? そう! 負け惜しみ!!」
「アラベラ」
「自分が不幸のどん底に落ちたから、私をなんとしても結婚させたくないのね! 僻んじゃって、惨めねぇ~。ま、そりゃそうよね。元はお姉様の愛しのルーシャンだったのに、今では私を愛しているんですもの!」
「愛してない」
「いいえ、愛してるわ」
「違う。私はルーシャンを愛してはいない。親が決めた相手よ」
「その親が決めた結婚を台無しにしたお姉様の尻拭いをやってあげるのよ? もっと感謝してよね! まあ、私は嫌じゃないけど? だってルーシャンは素敵だし、私を愛してくれるものっ♪」
「愛ってなに? 他を貶してあなたを持ち上げる事?」
「少なくとも誰を愛するべきかわかっているって事でしょう? わかったわ。お姉様は自分に非があったとは認めたくないのよね。だからルーシャンを悪く言って、私との結婚を台無しにしてやろうって魂胆なのよ。ほんと、そういう嫌がらせには頭が回るんだから」
「目が回りそうだわ」
「言ってなさい! ひとりぼっちになれば自分がバカだったって気づくわよ。なんの価値もない、偏屈で生意気な行き遅れ女だってね! お父様がやっとまとめてくださった結婚話だったのに、それを『いいえ』の一言でぶち壊したのよ? 自分のした事をよく考えて反省しなさい! バーカ!!」
私を口喧しいと称する、なかなか口喧しいこの2才下の妹。
こんな妹でも、明日からは顔も合わさないと思うと、少し寂し……いいえ。妹に会えないというより、常にさらされていた刺激が途絶えて反射的に体が戸惑う、という感じかも。
「ねえ、ひとつ聞いていい?」
「なあに? 可愛さの秘訣?」
「違う」
ずっと聞いてみたかった事だった。
煩いから黙っていたけれど、実は気になっていた。
なにを言っても私の負け惜しみと捉えるようだから、この際だ。
「姉の婚約者を奪って自分が結婚するって、どういう気持ちなの?」
とても興味深い。
「ざまぁって感じ!」
「なるほど」
こうして私たちは、それぞれの人生を歩み始めた。
「なによ」
「もう一度だけ言うけど、『君もそう思うだろ?』『いいえ』だけの事で因縁をつけて婚約を破棄するような殿方はまともじゃないわ。今からでも考え直して」
「プハハハハハッ!」
妹の唾が宙を舞って光る。
これで殿方の前ではお淑やかな令嬢を演じ切るんだから、凄いわ。
「えっと、なんて言うんだっけ? そう! 負け惜しみ!!」
「アラベラ」
「自分が不幸のどん底に落ちたから、私をなんとしても結婚させたくないのね! 僻んじゃって、惨めねぇ~。ま、そりゃそうよね。元はお姉様の愛しのルーシャンだったのに、今では私を愛しているんですもの!」
「愛してない」
「いいえ、愛してるわ」
「違う。私はルーシャンを愛してはいない。親が決めた相手よ」
「その親が決めた結婚を台無しにしたお姉様の尻拭いをやってあげるのよ? もっと感謝してよね! まあ、私は嫌じゃないけど? だってルーシャンは素敵だし、私を愛してくれるものっ♪」
「愛ってなに? 他を貶してあなたを持ち上げる事?」
「少なくとも誰を愛するべきかわかっているって事でしょう? わかったわ。お姉様は自分に非があったとは認めたくないのよね。だからルーシャンを悪く言って、私との結婚を台無しにしてやろうって魂胆なのよ。ほんと、そういう嫌がらせには頭が回るんだから」
「目が回りそうだわ」
「言ってなさい! ひとりぼっちになれば自分がバカだったって気づくわよ。なんの価値もない、偏屈で生意気な行き遅れ女だってね! お父様がやっとまとめてくださった結婚話だったのに、それを『いいえ』の一言でぶち壊したのよ? 自分のした事をよく考えて反省しなさい! バーカ!!」
私を口喧しいと称する、なかなか口喧しいこの2才下の妹。
こんな妹でも、明日からは顔も合わさないと思うと、少し寂し……いいえ。妹に会えないというより、常にさらされていた刺激が途絶えて反射的に体が戸惑う、という感じかも。
「ねえ、ひとつ聞いていい?」
「なあに? 可愛さの秘訣?」
「違う」
ずっと聞いてみたかった事だった。
煩いから黙っていたけれど、実は気になっていた。
なにを言っても私の負け惜しみと捉えるようだから、この際だ。
「姉の婚約者を奪って自分が結婚するって、どういう気持ちなの?」
とても興味深い。
「ざまぁって感じ!」
「なるほど」
こうして私たちは、それぞれの人生を歩み始めた。
11
お気に入りに追加
1,799
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されました。あとは知りません
天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。
皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。
聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。
「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」
その時…
----------------------
初めての婚約破棄ざまぁものです。
---------------------------
お気に入り登録200突破ありがとうございます。
-------------------------------
【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…
西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。
最初は私もムカつきました。
でも、この頃私は、なんでもあげるんです。
だって・・・ね
妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても
亜綺羅もも
恋愛
クリスティーナ・デロリアスは妹のエルリーン・デロリアスに辛い目に遭わされ続けてきた。
両親もエルリーンに同調し、クリスティーナをぞんざいな扱いをしてきた。
ある日、エルリーンの婚約者であるヴァンニール・ルズウェアーが大火傷を負い、醜い姿となってしまったらしく、エルリーンはその事実に彼を捨てることを決める。
代わりにクリスティーナを押し付ける形で婚約を無かったことにしようとする。
そしてクリスティーナとヴァンニールは出逢い、お互いに惹かれていくのであった。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。
はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」
「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」
「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」
「ああ…なるほど。わかりました」
皆が賑わう昼食時の学食。
私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。
マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。
全くこの人は…
全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる