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VSクリスタルゴーレム

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 シェリルが扉に手を掛け、一気に押し開く。
 その瞬間、扉の奥の部屋に松明の火が灯った。
 なんというか、ボス部屋らしい趣向だね~。無駄に凝っている。
 部屋の中は円形のドーム型で、広さは40メートル四方ってところか。超広い。
 大暴れしても大丈夫な設計ってことか。

 で、肝心のボスなんだけど……。

「なあ、シェリルさんや……」

「ん? どうかしたの、ヨシマサ?」

「あんたさっき、『あたしが突っ込んで倒して来る』って言っていたよね」

「うん。言ったね」

「俺の目が節穴でなければ、ゴーレムさんが2体いるように見えるのですが……」

 おかしいな。ドームに真ん中で、ゴーレムさんが2体、シャドーボクシングしているように見えるぞ。
 ハハッ!
 そうか。俺、疲れて目が霞んじゃってんだな、きっと。
 ダンジョンをあれだけ走り回ってきたわけだし、疲れだって溜まってるよな。
 うん。きっとそうだ。

「安心して、ヨシマサ。あんたの目は節穴じゃないよ。あたしの目にも2体見える!」

 聞いていたよりも強そうだね、あのゴーレム……、と笑うシェリル。
 ちょっと待てぃ!

「話違うじゃん! どうすんだよ、これ。お前、2体同時に相手できんの!?」

「あはは。――うん、これはさすがに無理そうだわ!」

「笑いごとじゃねえだろ、へっぽこトレジャーハンター! マジでどうすんだよ!」

「うーん、そうだね~……。――あ、いいこと思いついた!」

 名案を閃いたという顔で、シェリルが俺の肩を叩く。
 うん。
 シェリルさんや、これはどういう意味かな?

「ヨシマサ、1体はあんたに任せるよ。二人で頑張ろう!」

「ふざけんな!」

「大丈夫、大丈夫。あの罠を越えるタフネスがあれば、そうそう簡単に死なないって」

 確かに死なないかもしれない。
 自慢じゃないが、今の俺は超頑丈設計なので。
 でもそれは死なないだけであって、攻撃されれば痛いんだ。どこかのクソ邪神の手抜き工事のせいで。
 そして俺は、マゾじゃない。よって、痛いのは大嫌いなんだ。

「え!? お主、マゾじゃなかったのか?」

「どういう意味だ!」

「いや、だってお主、無謀な勝負ばかりして振られ続けておったし……。てっきりそういうのに快楽を覚える変態かと……」

「…………」

 最早テレパシークラスで心が読めるくせに、なんと心が通じていないパートナーなのだろう。
 てか、俺はフラれるのを喜んでいるわけじゃねえ。
 そこに快楽を感じ始めたら、人間終わりだろうが!
 人間には、越えちゃならん一線ってもんがあるんだ!

「大丈夫。ヨシマサなら越えられるよ」

「マジで!?」

 どういうことだよ!
 まさか俺、いずれはフラれて喜ぶ体になっちゃうのか?
 最悪過ぎんだろ、それ!?

「違う、違う。あんたならこれくらいの相手、簡単に乗り越えられるってこと。あんた、自分が思っているよりずっと強いんだから」

「褒めてくれているところ悪いんだが、俺、弱くていいんで戦いたくないです」

「仕方ないな~。じゃあ、あいつ倒したらデートしてあげるから……」

「クソゴーレムども、どこからでもかかってこいや!?」

 とりあえず啖呵を切りながら飛び出す。

「それじゃあ、そっちのやつはよろしくね。あたしはこっちの倒しとくから」

 言うが早いか、シェリルが矢のようにゴーレムへ突撃した。

 ああ、任せてもらおう。
 それと、約束忘れんなよ。

 俺は走り去るシェリルへ向かって超いい笑顔でサムズアップし、ゴーレムへと向き直った。
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