上 下
85 / 97

惨劇

しおりを挟む


ランテルムを襲う魔人騎士団。その集団の団長らしき男は、ランテルム騎士団や冒険者達を無造作に魔刃で切り伏せていく。


剣を振るうだけで、魔力の刃が飛ぶ。遮る鎧も盾も無視し、剣で受けることすら許さず、その生命を切り刻む。


何の労も要らず、ひたすら自分の思うままに、憎い騎士や冒険者を殺す。



殺す殺す殺す殺す殺殺コロコロコロコロ……


このような力をくれた混沌の渦とその支配者に感謝を。


あの日、絶望した自分を乗せた馬車はゴブリン共に襲われ、自分は鉱山送りから逃げ出すことが出来た。その森の奥で出会った混沌の渦により自分は生まれ変わったのだ。


生まれ変わったことは理解しているが、元の自分が誰であったのかは覚えていない。覚えているのは、只々騎士団が憎いこと。生意気なメスガキ冒険者が憎いこと。ランテルムに復讐がしたいこと。



デーモン・ロードであるその存在は、混沌の渦の支配者に好きに生きよと言われた。だから、好きに生きる。好きなように暴れる。


ランテルムを壊滅させて騎士団と冒険者を根絶やしにすることしか考えられない。

先程はなにやら生意気な氷の魔剣を使う冒険者も魔刃で容易く始末したし、最早この場に我に敵うものなど居ないであろう。


ジェコス・ゴリデスであったデーモン・ロードは、魔人騎士団団長として殺戮の宴に歓喜の雄叫びを上げた。



アタシ達は影異相転移でランテルムに到着したのだけど、現界を影空間から見ると、凄惨な場面が制止画像で見えてしまった。魔物の死骸もあるけど、街の近くには騎士団や冒険者の屍が多い。そして、それを産み出している魔人騎士団らしき集団。


どうしよう。アタシ達には回復役が居ないんだ。今、傷つき倒れている人達を助けられない。


出来ることは、これ以上の被害を出さないよう、魔人騎士団を倒すことのみ。


アタシ達は、街を右手に見るように、戦場に出現した。


まずはユリースとミシェルの広域魔法で開幕。有象無象がアタシ達に気がつき襲い掛かるけど、アタシとアリシア、召還した黒騎士がガードだ。ナツコさんとマーニャ、ピナッチが後ろから魔法をばら蒔いて援護、スーリヤも弓で援護だ。


ユリースの魔法は、地属性で地面広範囲に穴を開けまくる、一見地味な魔法。でも、馬相手には効果は絶大だ。魔人騎士団の魔馬は次々と転倒し魔人達も地面に投げ出された。


それに対してミシェルの魔法は苛烈だ。


「ウフフフ、狼藉を働くあなた方にはこれですわ。炎斬輪!」


ミシェルの前方に、大人三人が手を広げた位の直径の、炎の輪が水平に現れる。

炎の輪は回転し始め、火の粉を撒き散らしながら腰高で飛び始めた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...