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きっかけ
魔法使いのギルド
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今は2018年、足首まで積もっている山雪を越えて、山頂でポツンと佇んでいるギルドへと歩んでいた。
ここは地図上では名目だけ廃村となった、とある県にある冒険者の街『茜坂町』冒険者や魔法使いを始め、荒れくれ共が集う場所だ。
「淡路島変異種、玉ねぎの討伐賞金は一回でサラリーマン月収貰えるんだよなぁ。今日は沢山がんす食べるぞー!」
◇この世界は皆が魔法を使う世界。箒で空を飛んだり杖で火を起こしたり、無から物体を作ったり。魔法を使える者、使えない者が人口の半数を占めているので科学も発展している世界。モンスターやドラゴンまでいる世界。
俺はしがないソロ冒険者。昨日、魔王幹部に襲われて命からがら逃げ帰ってきた男だ。依頼自体は達成してたので、今日はギルドにその報告をしにきたのだ。
「あの茶髪の男、あの独特の歩き方、アイツって」
「ああ、あいつはギルド三大変人。高橋和暉だ」ヒソヒソ
「少し前に『がんすを買わせろ』『がんすの首置いてけ』と言いながら酒場で暴れてたよな……」
受付嬢に依頼完了の通知と賞金を貰った僕は懐をホクホクしながら街へと繰り出した。
◇
場面は変わって俺は今、友人に会うためギャンブル場へ来ている。確かいつも後ろの席で……
「おっ、いたいた。やっ、泰真。また競艇で金を減らしてるのかい?」
「今いいところなんだ話しかけるなやぁ!」
後ろ姿だけでもわかる。相当不機嫌らしい。
嫌な予感がしたので光魔法リフレクターを眼前に展開。その数秒後、友人はノールックで僕に炎を放ってきた。
「前負けて10万溶かしたはずなのに懲りないねぇ。ギャンブル中毒もほどほどにしろよ」
「お前も同類だろクソが」
焦りやイライラを一切隠せずに競艇の戦況を見守る男。二級魔導士、九条泰真。頬に斬り傷跡を持つ学生時代からの戦友だ。
「あっ、負けた……」
◇
「んで? お前の用はなんだよ?」
そう言いながら奏真は炎の矢を顕現させて空中の鳥を焼却処分している。この様子だと相当不貞腐れてるなと思った。あと憂さ晴らしの被害に遭った鳥達かわいそう。
「そうそう、本題に入ろう。前貸した20万の返済日が今日なんだけど」
「ああん? ねえよんなもん」
「はっ?」
めんどくさげな口調で返さない宣言をする眼前の男。
俺はこっそり右手に氷魔法を使うための魔力を溜めた。返答次第では喉に目掛けてぶちかましてやる。
「おい、20万稼ぐのにどれだけクエストこなせばいいかお前分かってんのか?」
奏真は目を逸らしながら口笛を吹き出した。
「それと数年前、事業上げるとかなんだか言って10万貸したやつも返してもらってないんだけど」
「そうだ。お前守銭奴だし、一攫千金に興味はあるよな?」
今露骨に話逸らしやがったな? もう堪忍袋が切れた。今から痛い目見せて、って一攫千金だと?
「なんだ藪から棒に。一攫千金? 競艇でってこと?」
「違う違う。そんなちゃちいもんじゃないわ。ほら、このインターネット記事見てみろよ!」
奏真が見せてきた記事を要約すると、4個各地に散らばってる球の1つを巡って紛争が起きているというものだった。
数年前の記事だから今は分からないが。最近異世界にあるという魔界の魔王勢力も活発化してると聞くし。
「100年前の大魔導士が作った球のやつか。てか随分前の記事だな」
「そう、4つの球を集めたら願いがなんでも一つだけ叶えられるらしいぞ。夢のある話やんか」
「へぇ~。夢のある話だね~」(棒ヨミー)
そういえば少し前にも、遊んで暮らしていける一攫千金の埋蔵金とかなんとか話題になったっけ。
4個集めたら願いが叶うドラ〇〇ボールかよ。
「厳密には財宝と魔導士が残したとされる呪具、世界を滅ぼしかけた兵器が眠ってるんだっけなぁ。どっちみち無理だよ集めるなんて」
そうこうしている内に九条が掛けていたレーサーが負けた。
「凄いな泰真。こんなに負けれるなんてある意味才能じゃない?」
負けた腹いせか、炎魔法が飛んできたので即座にリフレクターを発現させ防御。
「やつあたりは良くないぞロリコン」
「シスコンだ」
そうして散々暴れた挙句に、『また外して一文無しになっちまったわ。あーあー、帰るわ』と言って不貞腐れた様子の奏真は帰っていった。
「帰るか……」
あっ、結局お金返してもらってない。
いやいいか。またの機会にしよう。
◇
4個ある球のうち3個は行方不明。すなわち全部無い。唯一存在が確認されてる球も遠い異国にある。
現実的に考えて集めるのは無理だと思う。ていうか集めるメリットがない。
『この球はワシら一族が代々守ってきた家宝じゃ……ワシが死んだら、頼むぞ……』
「あっ!」
あることを思い出したと同時に身体中が白く光る。興奮すると光魔法が自動的に溢れ出してしまう自分の悪癖は一旦置いといて。
そういえば実家にそれらしき球があったことを思い出した。
……一回実家覗いてみるか。
◇続く
ここは地図上では名目だけ廃村となった、とある県にある冒険者の街『茜坂町』冒険者や魔法使いを始め、荒れくれ共が集う場所だ。
「淡路島変異種、玉ねぎの討伐賞金は一回でサラリーマン月収貰えるんだよなぁ。今日は沢山がんす食べるぞー!」
◇この世界は皆が魔法を使う世界。箒で空を飛んだり杖で火を起こしたり、無から物体を作ったり。魔法を使える者、使えない者が人口の半数を占めているので科学も発展している世界。モンスターやドラゴンまでいる世界。
俺はしがないソロ冒険者。昨日、魔王幹部に襲われて命からがら逃げ帰ってきた男だ。依頼自体は達成してたので、今日はギルドにその報告をしにきたのだ。
「あの茶髪の男、あの独特の歩き方、アイツって」
「ああ、あいつはギルド三大変人。高橋和暉だ」ヒソヒソ
「少し前に『がんすを買わせろ』『がんすの首置いてけ』と言いながら酒場で暴れてたよな……」
受付嬢に依頼完了の通知と賞金を貰った僕は懐をホクホクしながら街へと繰り出した。
◇
場面は変わって俺は今、友人に会うためギャンブル場へ来ている。確かいつも後ろの席で……
「おっ、いたいた。やっ、泰真。また競艇で金を減らしてるのかい?」
「今いいところなんだ話しかけるなやぁ!」
後ろ姿だけでもわかる。相当不機嫌らしい。
嫌な予感がしたので光魔法リフレクターを眼前に展開。その数秒後、友人はノールックで僕に炎を放ってきた。
「前負けて10万溶かしたはずなのに懲りないねぇ。ギャンブル中毒もほどほどにしろよ」
「お前も同類だろクソが」
焦りやイライラを一切隠せずに競艇の戦況を見守る男。二級魔導士、九条泰真。頬に斬り傷跡を持つ学生時代からの戦友だ。
「あっ、負けた……」
◇
「んで? お前の用はなんだよ?」
そう言いながら奏真は炎の矢を顕現させて空中の鳥を焼却処分している。この様子だと相当不貞腐れてるなと思った。あと憂さ晴らしの被害に遭った鳥達かわいそう。
「そうそう、本題に入ろう。前貸した20万の返済日が今日なんだけど」
「ああん? ねえよんなもん」
「はっ?」
めんどくさげな口調で返さない宣言をする眼前の男。
俺はこっそり右手に氷魔法を使うための魔力を溜めた。返答次第では喉に目掛けてぶちかましてやる。
「おい、20万稼ぐのにどれだけクエストこなせばいいかお前分かってんのか?」
奏真は目を逸らしながら口笛を吹き出した。
「それと数年前、事業上げるとかなんだか言って10万貸したやつも返してもらってないんだけど」
「そうだ。お前守銭奴だし、一攫千金に興味はあるよな?」
今露骨に話逸らしやがったな? もう堪忍袋が切れた。今から痛い目見せて、って一攫千金だと?
「なんだ藪から棒に。一攫千金? 競艇でってこと?」
「違う違う。そんなちゃちいもんじゃないわ。ほら、このインターネット記事見てみろよ!」
奏真が見せてきた記事を要約すると、4個各地に散らばってる球の1つを巡って紛争が起きているというものだった。
数年前の記事だから今は分からないが。最近異世界にあるという魔界の魔王勢力も活発化してると聞くし。
「100年前の大魔導士が作った球のやつか。てか随分前の記事だな」
「そう、4つの球を集めたら願いがなんでも一つだけ叶えられるらしいぞ。夢のある話やんか」
「へぇ~。夢のある話だね~」(棒ヨミー)
そういえば少し前にも、遊んで暮らしていける一攫千金の埋蔵金とかなんとか話題になったっけ。
4個集めたら願いが叶うドラ〇〇ボールかよ。
「厳密には財宝と魔導士が残したとされる呪具、世界を滅ぼしかけた兵器が眠ってるんだっけなぁ。どっちみち無理だよ集めるなんて」
そうこうしている内に九条が掛けていたレーサーが負けた。
「凄いな泰真。こんなに負けれるなんてある意味才能じゃない?」
負けた腹いせか、炎魔法が飛んできたので即座にリフレクターを発現させ防御。
「やつあたりは良くないぞロリコン」
「シスコンだ」
そうして散々暴れた挙句に、『また外して一文無しになっちまったわ。あーあー、帰るわ』と言って不貞腐れた様子の奏真は帰っていった。
「帰るか……」
あっ、結局お金返してもらってない。
いやいいか。またの機会にしよう。
◇
4個ある球のうち3個は行方不明。すなわち全部無い。唯一存在が確認されてる球も遠い異国にある。
現実的に考えて集めるのは無理だと思う。ていうか集めるメリットがない。
『この球はワシら一族が代々守ってきた家宝じゃ……ワシが死んだら、頼むぞ……』
「あっ!」
あることを思い出したと同時に身体中が白く光る。興奮すると光魔法が自動的に溢れ出してしまう自分の悪癖は一旦置いといて。
そういえば実家にそれらしき球があったことを思い出した。
……一回実家覗いてみるか。
◇続く
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