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第三章 セイラン王国編
コスプレ大会?
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夕食の席は、終始ラオールとアイリの楽しそうな話し声が響いており、たまに息子のエルモンドにもラオールから話が振られるが、その度にビクつく彼をルークは少し同情の面持ちで見つめていた。
(息子と言えど、やはり王の無意識の威圧には耐えられないか⋯)
これは王となるものの宿命とも言えるもので、他の者達を従える立場ゆえの弊害とも言える。
ルークも、かつては王である父の威厳と威圧に子供の頃は怯えていたのだ。今でこそ心身ともに成長し、あの頃の父の愛情を知ることができた。
しかしそれが獣人で、更にライオンの王ともなると人よりも難しいのかもしれない。
獣人は、本能的に圧倒的強者に恐れ慄く。王ともなれば、その存在感だけで周りを圧倒してしまうのだ。
それがこの幼い王子にはまだ耐えられないのだろう。
ここまでアイリを溺愛している姿を見れば多少は警戒も解けるかと思ったが、どうやら未だ目の前の状況を飲み込めていないらしい。
ただモクモクと食事をするエルモンドの姿に、ルークはかつての自分の姿が少し重なった。
(まぁ、他国の王族の問題に首を突っ込む訳にもいかない。こればっかりは、本人同士で解決してもらうしかないな⋯)
こうして、その時楽観的に考えて放置してしまったことを後ほど後悔するとは、この時のルークは思いもしなかった⋯⋯
翌日、朝食をそれぞれの部屋に用意してもらい、ルークは久しぶりにアイリとの二人っきりの時間を堪能しながら食事をとった。それから町に出る支度をし、各々の準備が終えて皆が揃った所でアイリ達とは別行動となる。
「アイリ、ミリーナの言う事をちゃんと聞くんだぞ。ラオール王が後で王妃の所に連れて行ってくれるそうだ。王の側にいれば危険はないと思うが⋯あまりベタベタしてはダメだぞ!」
「べたべたぁ~?」
「その愛らしい笑みをむやみやたらと向けてはダメだと言う事だ!」
「ん~?むじゅかちい。」
アイリは少し困った表情を浮かべる。
「ルークさん、こんな幼い子相手に何言ってるんですか!アイリちゃん、気にしなくていいですよ。そのまま可愛く笑っていて下さいね~。」
すかさずミリーナが間に入って、ルークの見苦しい嫉妬を一刀両断にする。
「じゃあそろそろ行きましょうか?ギルドでデュランとララも待っているでしょうから。」
クリスの言葉に、ミリーナはまだ何か駄々を捏ねているルークをアレクに押し付け「いってらっしゃ~い」とアイリ達と共に笑顔で見送った。
そうして今現在、残った女性陣三人とシロちゃんは、何故かとある部屋で大勢の王宮の侍女達に囲まれていた。
「これも可愛いわ~!」
「こっちも捨てがたいわね⋯」
「次、こっちも着てみましょうか?」
三人は王宮の侍女達によって、着せ替え人形のようにあれこれ服を当てられては着替えさせられ、部屋には洋服とそれに合わせたあるモノが散乱していた。
「うん。やっぱりアイリ様はこちらが一番お似合いだわ!」
「白銀の御髪にこの黒耳がとてもよく映えていらっしゃって、艶めく瞳の漆黒ともとても良く合いますわ!」
侍女達に可愛い可愛いと持て囃され、アイリはモジモジして恥ずかしそうにしているが、その姿もまた可愛いのだから仕方ない。
今のアイリは、淡い紫の可愛いワンピースを着ており、その頭には黒い猫耳が付いている。そしてお尻部分には取り外し可能な尻尾を付ければ、猫獣人のアイリが完成だ。
そしてこれらの猫耳と尻尾に魔力を流すと、何と本物のようにピクピク動かせると言う力の入れようである。
「本当に可愛らしいですわ~!」
「アイリ様っ!そのまま『にゃぁ』と仰って下さいませ!」
「アイリだにゃぁ~」
バタバタッと、数名の侍女が倒れた。
「ミリーナ様も、とてもよくお似合いですわ。」
「折角ですから、アイリ様とお色違いでお揃いに致しましょう。」
「あ⋯そうですね。もうそれでお願いします。」
ミリーナは色もデザインも少し落ち着いたワンピースを何とか死守し、あとはもう抵抗する気力もなくされるがままとなっていたら、気付けば髪色に合わせたピンクの猫耳と尻尾で、アイリとお揃いになっていた。
「リオ様、如何ですか?」
「どっちがいいかな~?さっきのも良かったけど、やっぱり僕はこっちかな~♪」
リオは「ガオーッ」とポーズをとりながら、髪色より少しだけ明るい茶色の丸耳と縞模様の尻尾を付けて、虎の獣人に成り切ってノリノリである。
シロちゃんも隣で一緒にポージングをキメている。
「皆様、とても素敵ですわ!あとはこちらの『匂い消し』をつけさせて頂きますね。効果は三時間程で消えますので。では、今から王妃様のお部屋へとご案内させて頂きます。陛下は後ほど見えられると思いますので。」
こうしてアイリ達は、侍女に連れられて王妃様と赤ちゃんのいる部屋へと案内された。
(息子と言えど、やはり王の無意識の威圧には耐えられないか⋯)
これは王となるものの宿命とも言えるもので、他の者達を従える立場ゆえの弊害とも言える。
ルークも、かつては王である父の威厳と威圧に子供の頃は怯えていたのだ。今でこそ心身ともに成長し、あの頃の父の愛情を知ることができた。
しかしそれが獣人で、更にライオンの王ともなると人よりも難しいのかもしれない。
獣人は、本能的に圧倒的強者に恐れ慄く。王ともなれば、その存在感だけで周りを圧倒してしまうのだ。
それがこの幼い王子にはまだ耐えられないのだろう。
ここまでアイリを溺愛している姿を見れば多少は警戒も解けるかと思ったが、どうやら未だ目の前の状況を飲み込めていないらしい。
ただモクモクと食事をするエルモンドの姿に、ルークはかつての自分の姿が少し重なった。
(まぁ、他国の王族の問題に首を突っ込む訳にもいかない。こればっかりは、本人同士で解決してもらうしかないな⋯)
こうして、その時楽観的に考えて放置してしまったことを後ほど後悔するとは、この時のルークは思いもしなかった⋯⋯
翌日、朝食をそれぞれの部屋に用意してもらい、ルークは久しぶりにアイリとの二人っきりの時間を堪能しながら食事をとった。それから町に出る支度をし、各々の準備が終えて皆が揃った所でアイリ達とは別行動となる。
「アイリ、ミリーナの言う事をちゃんと聞くんだぞ。ラオール王が後で王妃の所に連れて行ってくれるそうだ。王の側にいれば危険はないと思うが⋯あまりベタベタしてはダメだぞ!」
「べたべたぁ~?」
「その愛らしい笑みをむやみやたらと向けてはダメだと言う事だ!」
「ん~?むじゅかちい。」
アイリは少し困った表情を浮かべる。
「ルークさん、こんな幼い子相手に何言ってるんですか!アイリちゃん、気にしなくていいですよ。そのまま可愛く笑っていて下さいね~。」
すかさずミリーナが間に入って、ルークの見苦しい嫉妬を一刀両断にする。
「じゃあそろそろ行きましょうか?ギルドでデュランとララも待っているでしょうから。」
クリスの言葉に、ミリーナはまだ何か駄々を捏ねているルークをアレクに押し付け「いってらっしゃ~い」とアイリ達と共に笑顔で見送った。
そうして今現在、残った女性陣三人とシロちゃんは、何故かとある部屋で大勢の王宮の侍女達に囲まれていた。
「これも可愛いわ~!」
「こっちも捨てがたいわね⋯」
「次、こっちも着てみましょうか?」
三人は王宮の侍女達によって、着せ替え人形のようにあれこれ服を当てられては着替えさせられ、部屋には洋服とそれに合わせたあるモノが散乱していた。
「うん。やっぱりアイリ様はこちらが一番お似合いだわ!」
「白銀の御髪にこの黒耳がとてもよく映えていらっしゃって、艶めく瞳の漆黒ともとても良く合いますわ!」
侍女達に可愛い可愛いと持て囃され、アイリはモジモジして恥ずかしそうにしているが、その姿もまた可愛いのだから仕方ない。
今のアイリは、淡い紫の可愛いワンピースを着ており、その頭には黒い猫耳が付いている。そしてお尻部分には取り外し可能な尻尾を付ければ、猫獣人のアイリが完成だ。
そしてこれらの猫耳と尻尾に魔力を流すと、何と本物のようにピクピク動かせると言う力の入れようである。
「本当に可愛らしいですわ~!」
「アイリ様っ!そのまま『にゃぁ』と仰って下さいませ!」
「アイリだにゃぁ~」
バタバタッと、数名の侍女が倒れた。
「ミリーナ様も、とてもよくお似合いですわ。」
「折角ですから、アイリ様とお色違いでお揃いに致しましょう。」
「あ⋯そうですね。もうそれでお願いします。」
ミリーナは色もデザインも少し落ち着いたワンピースを何とか死守し、あとはもう抵抗する気力もなくされるがままとなっていたら、気付けば髪色に合わせたピンクの猫耳と尻尾で、アイリとお揃いになっていた。
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「皆様、とても素敵ですわ!あとはこちらの『匂い消し』をつけさせて頂きますね。効果は三時間程で消えますので。では、今から王妃様のお部屋へとご案内させて頂きます。陛下は後ほど見えられると思いますので。」
こうしてアイリ達は、侍女に連れられて王妃様と赤ちゃんのいる部屋へと案内された。
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