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三部 反骨の国

6 タクヤの焦り

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「なるほど、少年の話によると王都の南におる森の奥に木を倒してそこに集落を作り籠っていたとすると、そこに魔族達が現れたと──」

 村長は少年から聞いた話を端的に要約する。

「はい、なので私だけがそこに行き何が起きてるのか、そしてあわよくば民の救出を」

「ならん」

 村長はタクヤの発言を止めじっと見つめると、

「何故ですか村長、早く行かなければ助けられる命が!!」

「行くなとはいっとらんだろう、だがな今のお主を一人で行かせるわけにはいかない」

「ハック達をつれていけと……」

「そうじゃ」

 タクヤは気難しい顔をしながら、

「彼らを連れていくとこの村が襲われたら」

「先日の村合併の際に神器があるだろ、魔力を出せるものならある程度は使える、お前達が帰ってくるまでにはどうにか出来る」

 村長はそう言うも、タクヤは中々納得した顔をしないので、

「タクヤさん」

 と、僕は声を出す、

「どうなされましたかハック殿?」

「ユウキをここに残していきます、僕達の中では一番速いしあの機動力があれば村全体を守れると思います」

「だがそれでも、ユウキ殿の体力と言うものが簡単に尽きるのでは?」

「いえ、それだけではありません、おぼてませんかユウキが神器を使ったときのあれを」

「ユウキ殿が放った攻撃が四方に分かれすべての怪物を光に飲み込んだ攻撃の事か」

「はい、そうです、僕が使ったらああはなりませんでしたし一番扱いの上手そうなので置いていきます」

「そうか、それなら……」

「それにタクヤ、いつもならこのくらいの事は考えられると思うが気持ちが焦り冷静に考える事が出来てないのではないか、ワシは見てないがお主は見ていたはずじゃ、そんなお主を一人行かせることはなおできんな」

 村長は口うるさくタクヤに言う、

「す、すいません」

 そうるすと、タクヤは村長に頭を下げ僕の方を向き、

「では、ハック殿、一緒に来て頂けるだろうか?」

 と、丁寧にこちらに言ってきたので、

「もちろんです」

 と応えた。

 ────

 翌日明朝

「本当に君も行くのか?」

「勿論です、場所わからないでしょ」

 と、そこいたのはあの少年だった。
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