20 / 25
銀のとまりぎ亭──side セイ──①
しおりを挟む
イリヤ様に手を引かれてギルドを出ると、通りをまっすぐに噴水があるという方に馬車を走らせた。
「一番良い部屋をお願い」
「はい、そうしますと商家の方などが使う部屋になりまして簡易ですが応接間と主寝室に従者用の部屋があり、こちらのお部屋は一泊六万ガルド、馬車が二頭立てとなりますので一泊二千ガルド、お食事が一食千ガルドとなります。特別室は簡易の風呂がついておりますので湯のご利用は魔石で湯をはりますのでお声掛け下さい」
銀のとまりぎ亭に着いてまずは馬車を厩に預け、私が受付で部屋を押さえている間にイリヤ様は天然人たらしの実力を遺憾なく発揮する。その様子にちょっとため息が零れそうになるのは仕方ない。あれはパッシブなのかしら?
「へぇ、テレーザちゃんって言うのか。その歳で家の手伝いとか偉いな」
この世界ではそれが普通ですからね、イリヤ様……なんて、一人心の中で突っ込んでみる。
「お兄ちゃんキラキラでカッコイイね!」
学校では長すぎ……長い前髪に隠されていて誰も気付かなかったみたいだけどイリヤ様は昔から可愛……カッコイイんだから。ものすごく鈍感でヘタレですけど。
ついでに昔一度会ってる事なんてこれっぽっちも覚えて無いみたいですけどね……とか、つい思考が恨みがましくなってしまうのも仕方ないと思う。
「そうかな?えっと、ありがとう?」
お礼に疑問符がついているのは自分が目立たず地味だと思っているからで、きっと鎧がカッコイイんだろうなとか思っていそう。私なんてあの時、王子様が来てくれたのかと思ったのに。
「とりあえず三日、食事は明日から二人分を朝晩でお願い。お湯は魔法で出せるから必要無いのと、それと馬の世話はこちらでするから水も餌もいらないわ」
実は私は魔法の細かい調節は苦手だけど器用貧乏……じゃなくて、魔力操作完璧なイリヤ様がちょちょいのちょいとお湯を出してくれるだろうから大丈夫。なんなら付与大好きだから言えば湯をはるだけじゃなく簡易シャワーくらい作ってくれるだろうし。
そして立派な白馬に見えるけど、実際はゴーレムだから水も餌もいらないのよね。なんて省エネ。
普通なら作成されたゴーレムは動力としての魔石に魔力の充填が必要で、核の魔力が無くなると活動を停止してしまうものが殆どだ。なんとなく燃費が悪いイメージ、というか燃費が悪い。
でもこの白馬型ゴーレムはイリヤ様が無駄に良い材料使っているからちょっとやそっとじゃ魔石の魔力が減らない上に、大気中の魔素を変換して充填するというなんともエコな付与をこれまたイリヤ様が刻んでいるから、実質的には半永久的に使用可能とかいう末オソロシイ性能。
ゲームの中では省エネで便利ーくらいにしか思ってなかったけど、この世界基準で言えばただただヤバイ代物だ。
にもかかわらず材料費も技術力もほぼタダだからこれはもう実質タダじゃないか?とか言い出すイリヤ様に、呆れながらも私たちがしっかりしなきゃと、三人で力強く頷きあったのも今では良い思い出だ。
もちろん魔物として現れるゴーレムは何らかの方法で核である魔石に魔力を充填しているのだろうけど、それこそ倒す時に核を壊してしまうから真実どうなのかわからない。もしかするとイリヤ様が刻んだような魔素を充填するような付与が核にされているのかもしれない。
宿代で十八万ガルド、馬車で六千ガルド、食事代で四千ガルド。
金貨を一枚、小金貨を九枚と横にずらして一枚で合計十枚……トータル二十万ガルドを渡す。とりあえずチップの相場がわからないから一万ガルドにしておく。こういう時はケチっちゃダメだけど多すぎてもダメ。
わざわざ金貨二枚で出さなかったからか横にずらしたからかチップの意図は伝わった模様。この変はチップ出しすぎをやらかしそうなイリヤ様には任せられない。考えなしに金貨とかほいほい出しちゃいそうだもの。
「そうだ、テレーザちゃんにこれあげるよ」
「うわ~、お兄ちゃんありがとう!」
なんだかとてつもなくイヤな予感がして声の方を見れば、盛大なやらかしの現場を目撃した。
なんで今ソレほいほいと出したりして下さってますの?びっくりし過ぎて日本語が変になったじゃない。
「一番良い部屋をお願い」
「はい、そうしますと商家の方などが使う部屋になりまして簡易ですが応接間と主寝室に従者用の部屋があり、こちらのお部屋は一泊六万ガルド、馬車が二頭立てとなりますので一泊二千ガルド、お食事が一食千ガルドとなります。特別室は簡易の風呂がついておりますので湯のご利用は魔石で湯をはりますのでお声掛け下さい」
銀のとまりぎ亭に着いてまずは馬車を厩に預け、私が受付で部屋を押さえている間にイリヤ様は天然人たらしの実力を遺憾なく発揮する。その様子にちょっとため息が零れそうになるのは仕方ない。あれはパッシブなのかしら?
「へぇ、テレーザちゃんって言うのか。その歳で家の手伝いとか偉いな」
この世界ではそれが普通ですからね、イリヤ様……なんて、一人心の中で突っ込んでみる。
「お兄ちゃんキラキラでカッコイイね!」
学校では長すぎ……長い前髪に隠されていて誰も気付かなかったみたいだけどイリヤ様は昔から可愛……カッコイイんだから。ものすごく鈍感でヘタレですけど。
ついでに昔一度会ってる事なんてこれっぽっちも覚えて無いみたいですけどね……とか、つい思考が恨みがましくなってしまうのも仕方ないと思う。
「そうかな?えっと、ありがとう?」
お礼に疑問符がついているのは自分が目立たず地味だと思っているからで、きっと鎧がカッコイイんだろうなとか思っていそう。私なんてあの時、王子様が来てくれたのかと思ったのに。
「とりあえず三日、食事は明日から二人分を朝晩でお願い。お湯は魔法で出せるから必要無いのと、それと馬の世話はこちらでするから水も餌もいらないわ」
実は私は魔法の細かい調節は苦手だけど器用貧乏……じゃなくて、魔力操作完璧なイリヤ様がちょちょいのちょいとお湯を出してくれるだろうから大丈夫。なんなら付与大好きだから言えば湯をはるだけじゃなく簡易シャワーくらい作ってくれるだろうし。
そして立派な白馬に見えるけど、実際はゴーレムだから水も餌もいらないのよね。なんて省エネ。
普通なら作成されたゴーレムは動力としての魔石に魔力の充填が必要で、核の魔力が無くなると活動を停止してしまうものが殆どだ。なんとなく燃費が悪いイメージ、というか燃費が悪い。
でもこの白馬型ゴーレムはイリヤ様が無駄に良い材料使っているからちょっとやそっとじゃ魔石の魔力が減らない上に、大気中の魔素を変換して充填するというなんともエコな付与をこれまたイリヤ様が刻んでいるから、実質的には半永久的に使用可能とかいう末オソロシイ性能。
ゲームの中では省エネで便利ーくらいにしか思ってなかったけど、この世界基準で言えばただただヤバイ代物だ。
にもかかわらず材料費も技術力もほぼタダだからこれはもう実質タダじゃないか?とか言い出すイリヤ様に、呆れながらも私たちがしっかりしなきゃと、三人で力強く頷きあったのも今では良い思い出だ。
もちろん魔物として現れるゴーレムは何らかの方法で核である魔石に魔力を充填しているのだろうけど、それこそ倒す時に核を壊してしまうから真実どうなのかわからない。もしかするとイリヤ様が刻んだような魔素を充填するような付与が核にされているのかもしれない。
宿代で十八万ガルド、馬車で六千ガルド、食事代で四千ガルド。
金貨を一枚、小金貨を九枚と横にずらして一枚で合計十枚……トータル二十万ガルドを渡す。とりあえずチップの相場がわからないから一万ガルドにしておく。こういう時はケチっちゃダメだけど多すぎてもダメ。
わざわざ金貨二枚で出さなかったからか横にずらしたからかチップの意図は伝わった模様。この変はチップ出しすぎをやらかしそうなイリヤ様には任せられない。考えなしに金貨とかほいほい出しちゃいそうだもの。
「そうだ、テレーザちゃんにこれあげるよ」
「うわ~、お兄ちゃんありがとう!」
なんだかとてつもなくイヤな予感がして声の方を見れば、盛大なやらかしの現場を目撃した。
なんで今ソレほいほいと出したりして下さってますの?びっくりし過ぎて日本語が変になったじゃない。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す
金峯蓮華
恋愛
卒業パーティーで婚約破棄され、国外追放された公爵令嬢ルナベルは、国外に向かう途中に破落戸達に汚されそうになり、自害した。
今度生まれ変わったら、普通に恋をし、普通に結婚して幸せになりたい。
死の間際にそう臨んだが、気がついたら7歳の自分だった。
しかも、すでに王太子とは婚約済。
どうにかして王太子から逃げたい。王太子から逃げるために奮闘努力するルナベルの前に現れたのは……。
ルナベルはのぞみどおり普通に恋をし、普通に結婚して幸せになることができるのか?
作者の脳内妄想の世界が舞台のお話です。
笑うとリアルで花が咲き泣くと涙が宝石になる化け物の俺は、おひとり様を満喫しようと思っていたのに何故か溺愛されています。
竜鳴躍
BL
生前スタイリストだった俺は、子どもの頃からお人形遊びや童話が大好きな男の子だった。童話であるだろう?すごくかわいい子の表現で、バラ色の頬から花が咲き、目から宝石が落ちるとかなんとか。
それがリアルだったらどう思う?グロだよ?きもいよ?化け物だよ…。
中世ヨーロッパのような異世界の貴族に転生した俺は、自分の特異体質に気付いた時、無表情を貫くことにした!
当然、可愛がられないよね!
貴族家の次男でオメガとして生まれた俺は、おそらく時期が時期がきたら変態さんにお嫁に出される。
だけど、前世で男のストーカーに悩まされていた俺は、それは嫌なんだ。
なので、出入りのドレスショップに弟子入りして、将来はデザイナーとして身を立てようと思う!
おひとり様で好きなこと仕事にして、生きていきたい。
なのになんでかな?
どうして侯爵家に養子に行って公爵令息様が俺を膝に乗せるのかな??
子どもだから?!
でもドキドキする!心は大人なんだってば!
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
2度目の人生は愛されて幸せになります。
たろ
恋愛
【愛されない王妃】
ジュリエットとして生き不治の病で亡くなった。
生まれ変わったのはシェリーナという少女。
両親を事故で亡くし、引き取られた親族に虐められ疎まれた。
そんな時シェリーナを引き取ってくれたのは母の友人だった。
しかし息子のケインはシェリーナが気に入らない。ケインが嫌うことで屋敷の使用人達もやはり蔑んでいい者としてシェリーナを見るようになり、ここでもシェリーナは辛い日々を過ごすことになった。
ケインがシェリーナと仲良くなるにつれシェリーナの屋敷での生活が令嬢らしくないことに気がついたケイン。
そして自分の態度がシェリーナを苦しめていたことに気がつき、落ち込み後悔しながらもう一度関係を新たに築くために必死で信用を得ようと頑張る。
そしてシェリーナも心を開き始めた。
悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています
廻り
恋愛
治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。
その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。
そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。
後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。
本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。
猫不足の王子様にご指名されました
白峰暁
恋愛
元日本人のミーシャが転生した先は、災厄が断続的に人を襲う国だった。
災厄に襲われたミーシャは、王子のアーサーに命を救われる。
後日、ミーシャはアーサーに王宮に呼び出され、とある依頼をされた。
『自分の猫になってほしい』と――
※ヒーロー・ヒロインどちらも鈍いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる