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ありか、なしか
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「本当にこの装備で良いのか?」
「良いんですよ~。これから王都に入るのは入谷瞳と一ノ瀬聖良じゃないんですから」
亜種であるワイバーンなどではなく、討伐クエストの竜種から作った革鎧と神銀と鉄鋼が合金された籠手を付けたセイは事も無げに言う。
「流石に過剰戦力じゃないか?」
王国には一応兵士がいて、兵士はそこまででは無いけど騎士はそこそこ強いし、騎士団長は召喚されし者のLv.1よりははるかに強かった。
もちろんそれはレベルが高いからだが──現在Lv.1の一ノ瀬のステータスよりも騎士団長は少し強い──王都周辺は定期的な騎士団による討伐や冒険者へ討伐依頼を出しているし、魔の森から距離がある事もありダンジョンなどでなければ魔物はあまりいない、らしい……と後半は城で聞いた。
それに対してインベントリに入っていた俺のいつもの装備は神銀プレートに神銀と金剛鉄の合金の剣……過剰戦力過ぎるだろ。
俺は魔術系だけど剣を持ちたいから装備は神銀だらけなだけなんだ。ぶっちゃけこの装備、魔術媒体だからな。
実はその辺の武器屋でひのきの棒──これは昔のゲームで名作復刻版をプレイした時の武器?だった──は無さそうだから鉄の剣とか買って、ゴブリンとかコボルトとかスライムに苦戦してみたかった……けど、基礎能力値自体がヤバイから素手でも勝てるんだろうなと俺は一瞬遠い目をした。
もちろん素手でなんて殴らんよ。セイじゃあるまいし。
「良いんですよ、それで。設定は某国のなんちゃらでこの国には冒険者登録をする為に来たって所ですからっ!」
「……何そのなんちゃらって。まぁ、セイに任せるよ」
話し下手な俺が対応するよりは、社交的かつ頭の良いセイにお願いした方が多分上手く行くだろう。買い物のあたりからなんか考えあるみたいだし。
「後はこの弱体化の腕輪二本くらい着けて下さい」
「十分の一の五分の一でも過剰戦力だな」
モンスターを倒したり宝箱から出たりするドロップアイテムだと同じアイテムの効果は重ね掛けにはならず効果が半減していくから二つ着けたら……そう、一万が二百になるとか例えたら分かりやすいのか?えっ、分かり難い?
それでも剣聖Lv.1の一ノ瀬の物理攻撃力と比べたら単純に倍。
そして自分で装備アイテムを創ると一点ものになるから別のアイテムと認識され重ね掛け出来るという公然の裏ワザ。だから物創りにどっぷりハマったわけなんだけどな。
「粉砕したり捻り潰さなくてすみますよ?」
何をとか何がとか聞くのは俺の精神衛生上やめておこう。
「さて、インベントリを誤魔化す用にこの皮のポーチをベルトの所に着けて、それでアイテムバッグに偽装してインベントリから物を出すの」
「さっきの買い物、そこまで考えていたのか」
俺、セイがいなかったら色々やらかしていたかも……と、途端に背筋が寒くなる。まぁやらかしても逃げるけど、主に物理で。
「じゃ、馬車出して下さい。練習がてらポーチから」
「ああ、確かしまってたな」
ごそごそとポーチを漁りながらインベントリから馬車を出す。お、なかなか偽装が上手いんじゃないか?
まぁ、俺が使ってるのはインベントリで実際はアイテムバッグでは無いけど便利には違いないから偽装用じゃなくアイテムバッグ作ってみても良いな。馬車を作った時みたいに空間拡張を付与すればできるだろう。ただ、容量を大きくした上で劣化防止や時間経過の停止を付与するなら亜種でも良いから竜種の革くらいは使わないといけないだろうけど。
「実際はこんな大きさのものがぽんぽん入るアイテムバッグなんて神銀金貨何枚積んだら買えるんだかわかりませんけど……」
「ん?なんか言った、セイ」
「いえ、な~んにも」
俺の能力を駆使して作り上げた究極の一品。
ゴーレム馬とは思えぬ精巧さを誇る白馬に空間拡張とサスペンションetc.
家がいらないんじゃってくらい設備が完備された調理から寝泊まりまで出来ちゃう馬車……エタブレの中でも行った事の無い場所には一度は自力で行く必要があり、その後はスキルを持っていれば転移も可能だったがこの世界ではどうなんだろう。
「あ、紋章消したい」
やはり中二病的な時期に有名な双頭の鷲をモチーフに頭の部分だけ竜にして羽があり剣がクロスするという、いかにもな痛いものをイリヤ印にしてしまって、ゲーム内だしいっかなんてそのまま創ったものにつけて使っていたのだが、現実の自分が使うとなるとこれは恥ずかしい。まさに黒歴史だ。
「せっかくなのでそのまま使いましょうか某国が亡国になりますけど背景が見えない方が神秘的ですし」
「???」
……某国が某国ってなんだ?神秘的って何が?日本語って難しい。
この時、セイの言うなんちゃらってヤツをちゃんと説明してもらっておけばあんな大事にならなかったのに……俺ってただのバカかもしれない。
そしてこの後この世界にもお約束のテンプレってあるんだなと、俺はそっとため息をつく事になる。
ありか、なしか、で言ったら、この目の色味と良い、装備と良い、やっぱなしだろっ!
「良いんですよ~。これから王都に入るのは入谷瞳と一ノ瀬聖良じゃないんですから」
亜種であるワイバーンなどではなく、討伐クエストの竜種から作った革鎧と神銀と鉄鋼が合金された籠手を付けたセイは事も無げに言う。
「流石に過剰戦力じゃないか?」
王国には一応兵士がいて、兵士はそこまででは無いけど騎士はそこそこ強いし、騎士団長は召喚されし者のLv.1よりははるかに強かった。
もちろんそれはレベルが高いからだが──現在Lv.1の一ノ瀬のステータスよりも騎士団長は少し強い──王都周辺は定期的な騎士団による討伐や冒険者へ討伐依頼を出しているし、魔の森から距離がある事もありダンジョンなどでなければ魔物はあまりいない、らしい……と後半は城で聞いた。
それに対してインベントリに入っていた俺のいつもの装備は神銀プレートに神銀と金剛鉄の合金の剣……過剰戦力過ぎるだろ。
俺は魔術系だけど剣を持ちたいから装備は神銀だらけなだけなんだ。ぶっちゃけこの装備、魔術媒体だからな。
実はその辺の武器屋でひのきの棒──これは昔のゲームで名作復刻版をプレイした時の武器?だった──は無さそうだから鉄の剣とか買って、ゴブリンとかコボルトとかスライムに苦戦してみたかった……けど、基礎能力値自体がヤバイから素手でも勝てるんだろうなと俺は一瞬遠い目をした。
もちろん素手でなんて殴らんよ。セイじゃあるまいし。
「良いんですよ、それで。設定は某国のなんちゃらでこの国には冒険者登録をする為に来たって所ですからっ!」
「……何そのなんちゃらって。まぁ、セイに任せるよ」
話し下手な俺が対応するよりは、社交的かつ頭の良いセイにお願いした方が多分上手く行くだろう。買い物のあたりからなんか考えあるみたいだし。
「後はこの弱体化の腕輪二本くらい着けて下さい」
「十分の一の五分の一でも過剰戦力だな」
モンスターを倒したり宝箱から出たりするドロップアイテムだと同じアイテムの効果は重ね掛けにはならず効果が半減していくから二つ着けたら……そう、一万が二百になるとか例えたら分かりやすいのか?えっ、分かり難い?
それでも剣聖Lv.1の一ノ瀬の物理攻撃力と比べたら単純に倍。
そして自分で装備アイテムを創ると一点ものになるから別のアイテムと認識され重ね掛け出来るという公然の裏ワザ。だから物創りにどっぷりハマったわけなんだけどな。
「粉砕したり捻り潰さなくてすみますよ?」
何をとか何がとか聞くのは俺の精神衛生上やめておこう。
「さて、インベントリを誤魔化す用にこの皮のポーチをベルトの所に着けて、それでアイテムバッグに偽装してインベントリから物を出すの」
「さっきの買い物、そこまで考えていたのか」
俺、セイがいなかったら色々やらかしていたかも……と、途端に背筋が寒くなる。まぁやらかしても逃げるけど、主に物理で。
「じゃ、馬車出して下さい。練習がてらポーチから」
「ああ、確かしまってたな」
ごそごそとポーチを漁りながらインベントリから馬車を出す。お、なかなか偽装が上手いんじゃないか?
まぁ、俺が使ってるのはインベントリで実際はアイテムバッグでは無いけど便利には違いないから偽装用じゃなくアイテムバッグ作ってみても良いな。馬車を作った時みたいに空間拡張を付与すればできるだろう。ただ、容量を大きくした上で劣化防止や時間経過の停止を付与するなら亜種でも良いから竜種の革くらいは使わないといけないだろうけど。
「実際はこんな大きさのものがぽんぽん入るアイテムバッグなんて神銀金貨何枚積んだら買えるんだかわかりませんけど……」
「ん?なんか言った、セイ」
「いえ、な~んにも」
俺の能力を駆使して作り上げた究極の一品。
ゴーレム馬とは思えぬ精巧さを誇る白馬に空間拡張とサスペンションetc.
家がいらないんじゃってくらい設備が完備された調理から寝泊まりまで出来ちゃう馬車……エタブレの中でも行った事の無い場所には一度は自力で行く必要があり、その後はスキルを持っていれば転移も可能だったがこの世界ではどうなんだろう。
「あ、紋章消したい」
やはり中二病的な時期に有名な双頭の鷲をモチーフに頭の部分だけ竜にして羽があり剣がクロスするという、いかにもな痛いものをイリヤ印にしてしまって、ゲーム内だしいっかなんてそのまま創ったものにつけて使っていたのだが、現実の自分が使うとなるとこれは恥ずかしい。まさに黒歴史だ。
「せっかくなのでそのまま使いましょうか某国が亡国になりますけど背景が見えない方が神秘的ですし」
「???」
……某国が某国ってなんだ?神秘的って何が?日本語って難しい。
この時、セイの言うなんちゃらってヤツをちゃんと説明してもらっておけばあんな大事にならなかったのに……俺ってただのバカかもしれない。
そしてこの後この世界にもお約束のテンプレってあるんだなと、俺はそっとため息をつく事になる。
ありか、なしか、で言ったら、この目の色味と良い、装備と良い、やっぱなしだろっ!
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