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046☆例えば赤が朱く染まれども④
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「あちらからですととても綺麗に見えますのよ」
メリルのその言葉に優美ながらも頑丈に作られたはずの柵を横目にしながらベルシュ様に念をのせて視線を送ると、あんた魔法使いか何かかよってくらい的確に思考を読み取ってくれる。
「アリシア姫、お手を」
それはもう可及的速やかにを超えてマッハで。……まさか頭ん中読めるとか?王太子殿下ばりに妖怪?!怖い、それ怖すぎるからっ!
今現在私の護衛といえど家格が上のベルシュ様にメリルは意見する事は無い。マシューくんだと何だかんだ理由をつけて遠ざけたりできるもんね。公爵家出身の護衛とか最強じゃあるまいかね?……別に殿下に感謝なんてしないんだから。
そして薄らと歪んだ微笑みを見逃しはしない。ふん、こちとら二度目よ。
ベルシュ様にエスコートされ湖に沈みゆく茜色の夕日を堪能する。ふむ、美しきかな。
「そういえばメリルはもう直ぐお誕生日でしたかしら」
「ええ、ちょうど10日後ですわ」
なんで今そんな会話するかって?それは私が事故に見せかけて殺された理由というか元凶がソレだから。
くだらない、ほんと馬鹿なの?って大声で叫びたい。まぁ叫ばないけど。
「でしたら今度ドレスのデザイン画を見せていただく時にご一緒しませんか?」
「……っ……是非、ご一緒させて下さい」
釣れたっ!!
やんなっちゃう。フェアリーの熱狂的ファンのメリルは予約の順番が回ってこないのは私の所為だと思い込み、だったらその原因が無くなれば良いと私を突き飛ばして偶然(細工して)壊れている柵と共に落とそうとする。前回は私を助けようとしたマシューくんと一緒にあえなく落ちた。幸か不幸かマシューくんに庇われたからもあり即死を免れた私はその理由を恍惚とした微笑みを浮かべ話すメリルの声を聞きながら最期を迎えた。
「では暗くなる前に戻りましょうか」
「ええ、」
帰り際にチラリと柵を見て、私のかわりに誰か落ちても困るので後で直しておかなくちゃと思案する。
「……へぇ、なるほどね」
そしてポソリと聞こえるか聞こえないか、ベルシュ様の呟きが聞こえた。
「シャーリー、ごきげんよう」
「あら、アリーごきげんよう。もう体調はよろしくて?そのたっぷりなレースは病み上がりに重くないのかしら」
そう、あの日死を回避して安心した私は気が抜けたのか熱を出し養生の為に暫くお休みしていた。ちなみに公務から帰ってきた殿下が枕元で右往左往するのが邪魔だったのはここだけの話だ。
そして翻訳するとシャーリーはレースがたくさんで可愛いけど重いのは病み上がりで大丈夫なのって言ってる。
「あれ、メリルは?」
「……アリー、あなた知らないの?」
穏健派だった前侯爵が急死したのがふた月前。メリルの兄が侯爵になったものの過激派の残党と通じていたらしく、前侯爵の暗殺疑惑が浮上。調査の結果その他にも色々と明るみに出てお家の代替わりと相成ったらしい。
もともとメリルの兄のウォルターレスは側室の子で正当な継嗣の一年前の事故死も再捜査されているとか。正室の子であるメリルラーナが何故ウォルターレスに協力していたのかは謎だとシャーリーから聞いた。
「……ベルシュ様、メリルは」
「えっ、聞きたいの~?」
「例えどんな真実でも」
「赤い髪をメデューサみたいに振り乱しながら『ドレスの素晴らしさが分からないお父様なんて死んで当然ですわ。私がこんなにも焦がれ待ち続けているのに贈られたドレスを顧みないなんて何様なの?ほんと死ねば良いのに』とか言ってたかな~。もともと美しいものに狂信的だったみたいだし」
うわ~、怖っ。
「故侯爵夫妻はまともだったみたいだけど、側室であるウォルターレスの母親とメリルラーナは仲が良かったみたいだね。ギルが『朱に交われば赤くなる』とか言ってたけど、追跡調査では赤どころか真っ黒だったし、元から赤ければ朱なんて些細な事だろうね~」
「赤なのか黒なのか……」
どこが穏健派かよ、とほほ……
例えば赤が朱く染まれども、その本質も色合いもさほど変わらないものだよなんて目の前のその人は笑う。
朱色が入り混じれば赤味を帯びてしまうように、人は付き合う人の良し悪しによって善悪どちらにも感化されるけど、元々が赤ければ?
私は死にたくないから私が死なない様にと手探りで道を模索する。
それが他の人を不幸に……死に追いやるとしても。
悪い事をしている人が悪いのだものと私は目を瞑る。
例えば赤が朱く染まれども……ねぇ、私は今いったい何色かしら?
メリルのその言葉に優美ながらも頑丈に作られたはずの柵を横目にしながらベルシュ様に念をのせて視線を送ると、あんた魔法使いか何かかよってくらい的確に思考を読み取ってくれる。
「アリシア姫、お手を」
それはもう可及的速やかにを超えてマッハで。……まさか頭ん中読めるとか?王太子殿下ばりに妖怪?!怖い、それ怖すぎるからっ!
今現在私の護衛といえど家格が上のベルシュ様にメリルは意見する事は無い。マシューくんだと何だかんだ理由をつけて遠ざけたりできるもんね。公爵家出身の護衛とか最強じゃあるまいかね?……別に殿下に感謝なんてしないんだから。
そして薄らと歪んだ微笑みを見逃しはしない。ふん、こちとら二度目よ。
ベルシュ様にエスコートされ湖に沈みゆく茜色の夕日を堪能する。ふむ、美しきかな。
「そういえばメリルはもう直ぐお誕生日でしたかしら」
「ええ、ちょうど10日後ですわ」
なんで今そんな会話するかって?それは私が事故に見せかけて殺された理由というか元凶がソレだから。
くだらない、ほんと馬鹿なの?って大声で叫びたい。まぁ叫ばないけど。
「でしたら今度ドレスのデザイン画を見せていただく時にご一緒しませんか?」
「……っ……是非、ご一緒させて下さい」
釣れたっ!!
やんなっちゃう。フェアリーの熱狂的ファンのメリルは予約の順番が回ってこないのは私の所為だと思い込み、だったらその原因が無くなれば良いと私を突き飛ばして偶然(細工して)壊れている柵と共に落とそうとする。前回は私を助けようとしたマシューくんと一緒にあえなく落ちた。幸か不幸かマシューくんに庇われたからもあり即死を免れた私はその理由を恍惚とした微笑みを浮かべ話すメリルの声を聞きながら最期を迎えた。
「では暗くなる前に戻りましょうか」
「ええ、」
帰り際にチラリと柵を見て、私のかわりに誰か落ちても困るので後で直しておかなくちゃと思案する。
「……へぇ、なるほどね」
そしてポソリと聞こえるか聞こえないか、ベルシュ様の呟きが聞こえた。
「シャーリー、ごきげんよう」
「あら、アリーごきげんよう。もう体調はよろしくて?そのたっぷりなレースは病み上がりに重くないのかしら」
そう、あの日死を回避して安心した私は気が抜けたのか熱を出し養生の為に暫くお休みしていた。ちなみに公務から帰ってきた殿下が枕元で右往左往するのが邪魔だったのはここだけの話だ。
そして翻訳するとシャーリーはレースがたくさんで可愛いけど重いのは病み上がりで大丈夫なのって言ってる。
「あれ、メリルは?」
「……アリー、あなた知らないの?」
穏健派だった前侯爵が急死したのがふた月前。メリルの兄が侯爵になったものの過激派の残党と通じていたらしく、前侯爵の暗殺疑惑が浮上。調査の結果その他にも色々と明るみに出てお家の代替わりと相成ったらしい。
もともとメリルの兄のウォルターレスは側室の子で正当な継嗣の一年前の事故死も再捜査されているとか。正室の子であるメリルラーナが何故ウォルターレスに協力していたのかは謎だとシャーリーから聞いた。
「……ベルシュ様、メリルは」
「えっ、聞きたいの~?」
「例えどんな真実でも」
「赤い髪をメデューサみたいに振り乱しながら『ドレスの素晴らしさが分からないお父様なんて死んで当然ですわ。私がこんなにも焦がれ待ち続けているのに贈られたドレスを顧みないなんて何様なの?ほんと死ねば良いのに』とか言ってたかな~。もともと美しいものに狂信的だったみたいだし」
うわ~、怖っ。
「故侯爵夫妻はまともだったみたいだけど、側室であるウォルターレスの母親とメリルラーナは仲が良かったみたいだね。ギルが『朱に交われば赤くなる』とか言ってたけど、追跡調査では赤どころか真っ黒だったし、元から赤ければ朱なんて些細な事だろうね~」
「赤なのか黒なのか……」
どこが穏健派かよ、とほほ……
例えば赤が朱く染まれども、その本質も色合いもさほど変わらないものだよなんて目の前のその人は笑う。
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それが他の人を不幸に……死に追いやるとしても。
悪い事をしている人が悪いのだものと私は目を瞑る。
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