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045☆例えば赤が朱く染まれども③

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「い、きてるっ!」

 死因が──なぜだか本来は頑丈な柵ごと──高所から突き落とされての転落死だった私は無意識にぺたぺたと顔や頭を触って無事を確認していた。正確には無事ではないのだが。
 激しい動悸の中恐る恐るステータスを確認すればやはり名前の横にある花が一つ減っている。
 花の数はあと三個。これがゼロに……無くなったら私はどうなるんだろう。背筋がゾクリと震えた。

「ど、どうかなさいましたの?」

「急に大声は辞めていただきたいわ。ああ、わたくしとしたことが……」

 手が当たり零れてしまったお茶をつかず離れずいた給仕の係が即座に片付けた。ほぼ一瞬だよ。
 シャルロッテ様が予約したからもあり給仕係も熟練者で仕事が早い。
 そう、巻き戻った私はなんとお茶会の真っ最中。
 色とりどりの花が咲き乱れるガゼボのようなものがあるこの広大な庭は生徒が交流に使える学園の施設。ちなみにこちらも要予約。
 今度殿下とギルバート様と来ても良いかも、なんて。

「アリー?」

「ふぎょわっ!」

 ふいに肩口から真横にベルシュ様がひょいと顔を出す。気配なんて無いからとてつもなく変な声が漏れた。ベルシュ様もつかず離れずの距離だったのにぃ~。マシューくんはこの中で家格が一番下……
公爵家私・ベルシュ様 > 侯爵家 シャルロッテ様・メリルラーナ様> 伯爵家マシューくん
なので、どうして良いのか分からないのもあって少し離れた所でわたわたしている。可愛いかよ。

「(なんかさっき一瞬だけどアリーの周り魔力が揺らいでいたよー。なんでかな?)」

 それだけ言うといつの間にやら元の位置に……って忍者かよっ!って、あながち間違っちゃいないのよねぇ。だって殿下が即位したらベルシュ様が暗部のボスだ。……闇が深すぎやしないかい?

「あ、その、む、虫が……びっくりして。申し訳ありません。その、シャーリーは火傷とかされませんでしたか?」

わたくしは大丈夫よ、アリー」

 テーブルの上も既に元通りでアナタは魔法使いかって給仕のお姉さんに聞きたい気分。
 自然に笑えているかしら?
 傾きかけたお日様が目に染みる。

「綺麗だけれど、傾きはじめると目に優しくありませんね」

 自分からを……切っ掛けを振る。
 少し歪な笑顔かもしれないのはきっと夕日が目に染みたから。

「そうそう、あちらでとても綺麗な夕日が見られますのよ。湖面に沈むとても綺麗な夕日が。ご案内しようと思ってわたくし塔への立ち入り許可はとってあるのよ」

「あら残念ですわ。わたくしこの後に個人授業がありますのよ」

「あら残念。ではご一緒いたしませんこと、アリー」

「ええ、



 きっとあの花が無くなったら私は二度と目覚めないのだろう。
 とりあえずの回避方法は一人にならない事。
 否、正確な回避方法は護衛ベルシュ様を遠ざけない事だろう……
 ベルシュ様と比べると魔力の低いマシューくんではきっと防げない。は巻き添えでマシューくんを死なせない事も大事。





「定時連絡と報告はマシューくんにお願いして西塔までご一緒して下さいませ、ベルシュ様」

 あんな理由で死んでたまるものですか……
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