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034☆閑話 マシューくんの視察同行遠征にっき…………という名の独白③

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 スミナル伯爵領視察。
 そして事件はラティルでおこった——……

 まずは病が発生している兆しがあり、何故かアリシア様とギルバート様が殿下の命により近衛三名を連れてその場所へ突撃される暴挙に出られた。
 殿下、病ですよ?病といえば光魔法で治す事の出来ないとても厄介なものだ。殿下の護衛である私とベルシュ様は離れた所でそのみすぼらしい小屋の様子を伺う事となる。

『ウィル、少し離れるよ~』

 はぁあああ?!
 ウィル?
 ベ、ベルシュ様っ、い、今、王太子殿下の事をウィルとか呼びませんでした?!

『任せたルーシュ』

 ギルバート様を愛称で呼ばれるようにベルシュ様を愛称で呼ばれる殿下。ギルバート様がギルなのにベルシュ様はベルじゃないんだな~なんて余計な事を考える。
 うん。そういえばベルシュ様と王太子殿下は一応従兄弟だった。……よくよく考えると、ギルバート様もアリシア様も大なり小なり王家の血筋。公爵家ぇぇ。
 ここを離れてどこかに行かれるベルシュ様と目があうと、パチリとウィンクされた……何故なにゆえ



 小屋の方からなにやら爆発音が聞こえたかと思うと同時に殿下が走り出す……ってか速いです、速すぎです!護衛を振り切ろうとするの故意でないにしろやめて貰えませんか?!

『あっ、ウィル~!ちょっとアリーが空気の入れ換えしたくて壁を破壊したけど大丈夫だから』

『そうか』

 殿下~、"そうか"じゃないです。どうやったら五歳の女の子が壁をあんな音で破壊できるんですか……。ああ、でもアリシア様はあんなに凄いクッションを作れる幼女。だからありなのかも知れない。

 それからアリシア様が病を治せる聖魔法が使える事がわかり、他言無用が山の如く増えていく。
 治療で魔力を使いすぎて殿下に接触による魔力譲渡されているアリシア様はそうして殿下に抱えられていると年相応に見えるのに、途轍もない力を秘めていらっしゃる。だからこそ婚約で準王族となり殿下の庇護下におかれるのは理にかなっている。

『既に確保済みだけど……尋問は?』

『私が行う』

『りょーかいっ』

 無表情の殿下にへらりと笑うベルシュ様。
 系統的に似ているのにまったく違く見えるのはその表情の所為なのかも知れない。
 そういえば、殿下もベルシュ様もとても綺麗な金髪に紫水晶アメジストや菫色の瞳で羨ましい。ギルバート様だってバターブロンドとかいう殿下より少し薄いけど綺麗な金髪で翡翠のような瞳、アリシア様は妖精姫と名高いエリシア様と同じ銀髪——傾国と言われた曾祖母である白銀の魔女とも同じ——に殿下と同じ紫水晶アメジストの瞳になる。
 自分のブリュネットと言えば聞こえは良いものの栗毛に茶色の目は非常に地味だ。



閑話休題それはさておき



 殿下の尋問……なんで私まで同席しているのか、謎。ああ、ベルシュ様……とても楽しそうですね。Sか?Sなのか?!可愛らしい顔してどSなのか!!!

 そして、その結果……非常にまずい状況。どうやらアリシア様とギルバート様を置いてきた家のものが協力者とか…………

『ルーシュっ!』

『マシューも掴まって!』

『は、はいぃっ?!』

 よく分からないけど、殿下と共にベルシュ様に掴まる。ほんとよく分からないけど。
 一瞬で世界が反転するような、身体の中身が浮くような不快感が襲う。

『……ここは』

 目の前にはさっき見たことのある家で、殿下はその壁をぶっ壊して……続いて中でも凄い音がする。

『ベ、ベルシュ様っ?!だ、大丈夫ですか?』

 足元には這い蹲るベルシュ様……あれは多分血統魔法だろうけど、重要機密だろ、それ……と心の中で突っ込んでみる。

『ちょっと補充、させてもらう、ね?』

『ん、むぐぅ』

 この日、開いてはいけない扉をこじ開けられた——……
 近衛だからお付き合いしている人もいないけど、零細伯爵家の三男だから婚約者もいないけど……できれば初めては可愛い女の子が良かったです。いくらベルシュ様がそこいらの女の子より可愛らしくとも。ああ、でもこれは魔力譲渡。ノーカウントで!
 そして私の魔力を根こそぎ奪ったベルシュ様といえば、しれっと宣った。

『ふふ、暗部に欲しかったんだよね~、魔力相性が抜群に良い可愛いコ。今回ようやく許可貰えたからさ』

 なんかその後に近衛の零細伯爵家三男なんてうってつけだよね~とか聞こえてきそうだし、色々と聞いたらいけない事を言っていると思うのは気のせいかな。
 …………どうやらこの度私はベルシュ様の補給係に就任した様です。











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