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025☆ラティルに潜む悪意と癒やしの力②

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「まず茶葉を蒸して——暫くお待ち下さい——それを今回は手揉みでこうやってこう!そして風魔法で乾燥させて……これで完成です。
では次に緑茶の入れ方の実演を!まず沸騰させた湯を今回は魔法で適温のものを出しますけれど、本来ならば湯のみという茶器をあたため…………急須というティーポットの緑茶版で蒸らしてこう回し入れるのです。入れ方は順に回し入れてはダメなのです!戻るのがポイントなのです。
またシャルム特製の急須ですがカゴ網タイプではなく注ぎ口が茶こしタイプになっているので茶葉が対流しやすく湯の量が少なくとも…………
こちらが緑茶となります。緑色の水色だからなのかお茶の葉が緑だからなのか緑茶という名前が本当にぴったりで香り高い上に餡子にあうすっきりとした渋みというか独特のお味がこれまた…………と言うことで、ここはレ′スュクルリーの試作品お饅頭を皆さまに…………こちらは黒糖という砂糖が入った薄皮でこし餡を包みやはり蒸し上げた究極の逸品となっております。
それに緑茶の特筆すべき部分はですね、普通の煎茶、深蒸しした煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、抹茶、焙じ茶、玄米茶と加工によって味の幅が広くそれは「アリー!もうそろそろ止めてあげて!!!」」

「あら、いかがなさいましたギルバート様?」

 いささか顔色の悪いような気がする村長さんや遠巻きにこちらを見ている村の人達……ギルバート様も近衛の皆さまも以前の王太子殿下みたいな目をしている様に見える。
 変わらないのは王太子殿下だけ。優雅に緑茶を飲みフォークで綺麗に切り分け饅頭を口に運んでいる……てか饅頭にフォークはないわ。

「シア、緑茶の生産をラティルに、レ′スュクルリーが発信元、販路は希少価値を持たせる為にゆっくり広げる構想か?」

「ええ、そうです!レ′スュクルリーには喫茶スペースがございますので新製品と一緒にと考えております」

「まぁ、珍しいとなれば貴族には流行るだろうね。茶色いし黒いし正直微妙かと思ったけれど緑茶にあわせると上品な甘さで美味しいしお饅頭これ

「ええ、最初の数年は生産を限定して希少価値を出してはいかがかと。数年後に起こりるだろう天候不順に備えられますし、わたくし緑茶好きなので紅茶の片手間にでも生産していただければ僥倖ですわ」

 たとえレナーンス地方が大雨で作物が育たなくとも手元に資金の余裕があれば他の地方から食料をる事が出来る。未曾有の死傷者を出すズュートに比べれば不作となるラティルはまだマシなのかもしれないけれど、そもそも売るものがなければ生活するのでギリギリの場合いくら減税されたとしてもそれを払う事なんて到底出来やしない。……大雨による災害が起こる事を知っていても何もかも出来るわけじゃない。だけどこうやって村の特産品を増やしたり避難する山の伐採をとめればせめてナタリーやエマのように売られてしまう子供を減らせるんじゃないかと思う。
 自由に動ける今回のアリシア。もっともっと、たくさんの知識を持っていたらと何度となく思った。そうしたら豊かな領地を、そして国を作れる。
 飢える事なく健やかに人として最低限なんて言わずに豊かな暮らしを、今以上に誰でも学べる環境を、階級にとらわれずに能力が生かせるそんな世界を……たとえそれは夢物語と言われようとも私はそんな世界を知っている。この世界には魔法があるから医療が発展していないのかもしれないし、きっと何百年も時代が違うのもあるのかもしれない。だから陛下や殿下達の統治が間違っているわけではないけど、……前世のアリシアが税金が払えなかったり家族の薬代の為に売られる子供がいるのは、それは違うとそれだけは間違っていると私の中で主張する。
 そういえば殿下やギルバート様くらいの子供は見かけるけど、私くらいの子供がいないなんて珍しいなとふと思う。
 自由に駆け回る子供達が豊かさの証しみたいに感じるのだけれど。



 何度もアリシアとして死に戻り、死の恐怖に辛いと嘆き、それでも死にたくないと足掻く私は一概には不幸とは言えない。公爵家に生まれたから最低限どころではなく衣食住は保障され、今は足掻く為のお金もその手段としての特殊能力チートさえ持っている。もちろんそれに付随する責任も発生するわけだけど。

 本当の悪意も不幸もそこいらへんに普通に潜んでいてそれこそ転がっていて此方を嘲笑っているものだと、それを私は知る事になる。


 そう、このラティルで……










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