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 私の婚約者はコールマン公爵家嫡男オルフェオ様。
 金髪碧眼の完璧美青年で、商才にも長け優秀な方ではあるが、彼は女たらしだった。
 この婚約は随分前から決まっていた政略結婚で、領地も小さいブロウズ伯爵家には避けられない。

 オルフェオ様はいつもブロウズ邸に訪れる度に花や菓子、装飾品など、地方の領地視察へ行った土産品を私にプレゼントしてくれる。
 それも、その領地のご令嬢の話とセットで。

「サーマン侯爵令嬢お勧めの菓子だ。美しく高貴な彼女の口には合うそうだが、伯爵令嬢のエミリアにはどうだろうか?」
「これはストワール伯爵家の庭園の薔薇だ。深窓の令嬢と名高いレイア嬢自ら摘んでくれたのだよ。金色の髪と赤い薔薇がとても美しく見えたのだが、エミリアの飴色の髪とは合わないな」

 いつもそんな事を言われ、私は戸惑うばかりだった。
 綺麗なご令嬢方と比べ、オルフェオ様はいつも私を蔑んで微笑む。
 何をいただいても、自分には不釣り合いな気がして喜べない。
 困り果てる私に変わって、アニスがプレゼントを受け取ってくれていた。

「オルフェオ様。アニスはこのお菓子、大好きですわ」
「オルフェオ様。アニスの金髪なら、赤い薔薇も似合うとは思いませんか?」

 何を言われてもアニスは笑顔でオルフェオに言葉を返す。
 お姉様もそう思うでしょう?
 とこちらに笑顔を向けて、釣られて私まで笑顔になる。

 私は妹のように自分の気持ちを伝えたり、甘えたりすることは苦手だった。
 でも、アニスは違う。

「アニスは、オルフェオ様が大好きですわ」

 屋敷に来る度に、オルフェオはアニスと二人で過ごすようになっていった。


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