22 / 35
021 近衛騎士と王子(レオナルド視点)
しおりを挟む
「はぁぁぁぁぁっ!? 貴様っ。今何と言ったんだ!?」
王城にレオナルド王子の叫び声がこだました。しかし、目の前の近衛騎士は変わらず満面の笑みで祝辞を述べた。
「おめでとうございます! 陛下もお喜びで、ガブリエラ=ルロワ嬢との婚約を認めてくださいました。王命、すぐにでも出してくださるそうですよ~」
「おめでたくなんかない! 昨日のことを話したのか!?」
「はい! レオナルド様がいつまで経ってもお話にならないので」
「ふざけるなっ。そんな王命認められるかっ。僕は――」
どうしたいのだろうか。皆が噂しているから、どんなものかと思って精霊の加護を受けた娘に婚約を申し込んでみた。
でも、ガブリエラは恐ろしほど美しく冷淡で、化け物伯爵の息子との婚約が嫌で僕に狙いを定めてくるような女だった。
婚約するなら、あいつだけは絶対に嫌だ。僕が間違えて婚約を申し込んだ姉のシェーラは、平凡だが優しく心に残る女性だったのに。
姉のせいで無理やり結婚させられるとか言ってたけど、絶対に嘘だ。しかも、逆に貪欲な姉に婚約をプレゼントしてあげるとか言っていたから、シェーラ嬢の方こそ無理やりあの化け物の息子との結婚させられてしまうんだ。
「王命なら、あの化け物は引き下がるかな?」
「はい?」
「王命で出された婚約なら、他の誰にも奪われないか。って聞いたんだ」
「そりゃあ逆らう者などいませんよ。って、レオナルド様ってば、ガブリエラ様のこと、どんだけ独占したいんですか? ――あっ。今すぐ王命欲しい感じですか?」
「馬鹿かっ。そんな事を言いたいんじゃないんだ。……父上には、王命は暫しお待ちいただくように伝えておいてくれ」
「ん?」
至極不満そうに聞き返す近衛騎士に、何を言ってもガブリエラに都合の悪い解釈は出来ないものなのだと理解した上ではぐらかすことにした。
「……こういうことはタイミングが重要なんだ」
「おぉっ。レオナルド様。好きな女性が出来たら、急に成長されましたね!」
「ああ。それから、この事は内密に頼む」
「はい! サプライズですね!」
近衛騎士はスキップしながら部屋を出ていった。交代の時間だが、絶対に他の近衛騎士に言いふらすんだろうな。
取り敢えず僕も婚約を喜んでいるように思わせておこう。余計なことは言わない方がいい。
どうせガブリエラに魅せられ騒ぎ立てるだけの阿呆な騎士に成り下がってしまった奴らなのだから。
それよりも、シェーラ嬢が心配だ。あんな化け物の婚約者を押し付けられてしまったのだから、落ち込んでいるに決まっている。屋敷に婚約者を名乗る男がいたけれど、あの化け物を目にしたら直ぐに逃げ出すだろう。
でも、きっと僕なら止められる。王命の婚約者の名前をシェーラ嬢にすることが出来れば守れるはずだ。
僕はシェーラ嬢の様子を見に行くことにした。今日は学園にいるはずだ。部屋を出て、扉の前に待機している近衛騎士に声をかけた。
「暫し、花を摘みに行ってくる」
「は?」
「だから、付くてくるなって言ったんだ!」
「ああ。では、一定の距離を取っての護衛を致しますね」
「……。ふんっ」
僕は近衛騎士をその場に残し(多分付いてくるけど)、学園へ足を向けた。
王城にレオナルド王子の叫び声がこだました。しかし、目の前の近衛騎士は変わらず満面の笑みで祝辞を述べた。
「おめでとうございます! 陛下もお喜びで、ガブリエラ=ルロワ嬢との婚約を認めてくださいました。王命、すぐにでも出してくださるそうですよ~」
「おめでたくなんかない! 昨日のことを話したのか!?」
「はい! レオナルド様がいつまで経ってもお話にならないので」
「ふざけるなっ。そんな王命認められるかっ。僕は――」
どうしたいのだろうか。皆が噂しているから、どんなものかと思って精霊の加護を受けた娘に婚約を申し込んでみた。
でも、ガブリエラは恐ろしほど美しく冷淡で、化け物伯爵の息子との婚約が嫌で僕に狙いを定めてくるような女だった。
婚約するなら、あいつだけは絶対に嫌だ。僕が間違えて婚約を申し込んだ姉のシェーラは、平凡だが優しく心に残る女性だったのに。
姉のせいで無理やり結婚させられるとか言ってたけど、絶対に嘘だ。しかも、逆に貪欲な姉に婚約をプレゼントしてあげるとか言っていたから、シェーラ嬢の方こそ無理やりあの化け物の息子との結婚させられてしまうんだ。
「王命なら、あの化け物は引き下がるかな?」
「はい?」
「王命で出された婚約なら、他の誰にも奪われないか。って聞いたんだ」
「そりゃあ逆らう者などいませんよ。って、レオナルド様ってば、ガブリエラ様のこと、どんだけ独占したいんですか? ――あっ。今すぐ王命欲しい感じですか?」
「馬鹿かっ。そんな事を言いたいんじゃないんだ。……父上には、王命は暫しお待ちいただくように伝えておいてくれ」
「ん?」
至極不満そうに聞き返す近衛騎士に、何を言ってもガブリエラに都合の悪い解釈は出来ないものなのだと理解した上ではぐらかすことにした。
「……こういうことはタイミングが重要なんだ」
「おぉっ。レオナルド様。好きな女性が出来たら、急に成長されましたね!」
「ああ。それから、この事は内密に頼む」
「はい! サプライズですね!」
近衛騎士はスキップしながら部屋を出ていった。交代の時間だが、絶対に他の近衛騎士に言いふらすんだろうな。
取り敢えず僕も婚約を喜んでいるように思わせておこう。余計なことは言わない方がいい。
どうせガブリエラに魅せられ騒ぎ立てるだけの阿呆な騎士に成り下がってしまった奴らなのだから。
それよりも、シェーラ嬢が心配だ。あんな化け物の婚約者を押し付けられてしまったのだから、落ち込んでいるに決まっている。屋敷に婚約者を名乗る男がいたけれど、あの化け物を目にしたら直ぐに逃げ出すだろう。
でも、きっと僕なら止められる。王命の婚約者の名前をシェーラ嬢にすることが出来れば守れるはずだ。
僕はシェーラ嬢の様子を見に行くことにした。今日は学園にいるはずだ。部屋を出て、扉の前に待機している近衛騎士に声をかけた。
「暫し、花を摘みに行ってくる」
「は?」
「だから、付くてくるなって言ったんだ!」
「ああ。では、一定の距離を取っての護衛を致しますね」
「……。ふんっ」
僕は近衛騎士をその場に残し(多分付いてくるけど)、学園へ足を向けた。
11
お気に入りに追加
1,990
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
「婚約の約束を取り消しませんか」と言われ、涙が零れてしまったら
古堂すいう
恋愛
今日は待ちに待った婚約発表の日。
アベリア王国の公爵令嬢─ルルは、心を躍らせ王城のパーティーへと向かった。
けれど、パーティーで見たのは想い人である第二王子─ユシスと、その横に立つ妖艶で美人な隣国の王女。
王女がユシスにべったりとして離れないその様子を見て、ルルは切ない想いに胸を焦がして──。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
うちのおじさんはロリコン。
槙璃人
恋愛
主人公の叔父さん(34)がヲタク独身でロリコンな理由を調べるちょっぴりHで、笑ったり泣いたりの物語。
※タイトルは仮タイトルです。
《登場人物》
桧山理(ひやまさとり)
高校二年生。
いい歳した叔父さんがロリコンな理由を知りたくて家に居候している。雨彦を雨くんと呼んでいる。
冴嵜雨彦(さえざきあまひこ)
34歳のエリートサラリーマン。
社内では仕事が出来てかっこいいと評判だが実はヲタクでロリコン。メガネが似合いすぎてエロい。
次期ご当主様の花嫁選び
ツルカ
恋愛
平凡な女子高生、美月。
異能力学園に通うただ一人の無能力者。
次期ご当主様の花嫁が学園で選ばれるのだと噂されていても、自分には関係がないと思っていた。
なのに、若君様に一瞬で一目惚れ。
一族の冷たい視線に耐えながら、近づいてくる若君様への恋心を膨らませていく。
「花嫁など、最初から決まっているのだとしたらどうする?」
「……はい?」
一族若手の絶対君主、強大な能力者である彼には何か事情があるみたい。
美月の恋が叶うまでのお話。
若君様×美月 無自覚イチャイチャ(させたい)
---
小石 美月/ミツキ、陽奈/ヒナ(双子)
犀河原 慧十郎/ケイジュウロウ(若君様)
犀河原 累/ルイ(先輩、チャラっぽい)
犀河原 剣/ケン(親戚、ツンっぽい)
犀河原 瑠璃/ルリ(3年生、妖艶な美女)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる