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「何が深窓の令嬢だっ!? ただの干物女じゃないかっ! 婚約は破棄だっ!」

 私の顔を見るなり、この国の第二王子コルネリウス=フィアルカ様はそう叫ぶ。
 
 ですよね。わかりみが深いです。

 だって、私の肌ガッサガサで、髪もパッサパサだもの。大好きな野生動物達は夜行性が多いので、私もそれに合わせて普段から不摂生な生活を送っているからですけど。
 でも、今日の目の下のクマは化粧で作っておきました。
 いつもなら天然のクマがあるのですが、最近拾ったモフモフの銀狼様が気持ち良すぎて熟睡してしまい、こんな大切な日なのにクマが無かったので、慌てて化粧したから化け物みたいに。

 でもいいんです。勝手に私を深窓の令嬢となど呼んだのは俗世の方々ですから。

「ベリス侯爵。こんなのがあのシェレスティーナの姉の筈がない。私を騙そうとしているのかっ!?」

 妹は夜会の蝶と呼ばれて社交界に華を添える美少女。
 ついでに姉は才色兼備の麗人で公爵家へと嫁いでいる。
 だからと言って私まで美しいとは限りません。
 事前に会いもせず婚約したそっちが悪いのに詐欺呼ばわりとは何と失礼な方でしょうか。

「コルネリウス様。エヴァンジェリーナは病弱なのです。今日は特に体調が悪く、普段はもう少し――」
「あー。もういい。話しにならない。私は帰る。一体何のためにここまで来たのか……」

 わざわざベリス侯爵領まで足を運んで下さったのに申し訳ないですが、お帰りいただけるなんて嬉しく存じます。

「こ、コルネリウス様っ。お待ち下さいっ」
「失礼させていただくっ」

 引き留める父を無下に扱い、コルネリウス様は帰っていった。

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