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第1部
エリアス15歳 ①
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友人達は5月のバカンスを楽しみにしていたが、エリアスはそれほどでもなかった。
バカンスといえど、いつも視察や外交などで潰れてしまうためだ。
今回は冬の国ロートブルへ兄と姉とで訪問し、日中は施設を案内され、夜は兄と姉は舞踏会へ出席していた。
舞踏会は16歳からと決まっており、エリアスは一人で、ロードブルの貴族の子弟らと食事会に参加していた。
気が張る会に疲れていたところ、兄から次の日の夜は一緒にいようと誘われた。
「エリアス、明日はここに高級娼婦を呼ぶぞ」
兄で王太子であるスコットがニヤリと言う。
「ユリアは舞踏会に行くらしい。
僕は明日は欠席だ。
ユリアは帰ったらそのまま自分の部屋で寝てしまうだろ。羽目をはずそう」
スコットはエリアスの4つ上の19歳、エリアスと同じ金髪に碧眼だが体つきはほっそりと痩せ型で、少し神経質そうな印象を受ける。
学業にも、王太子としての取組も優秀で、レーゲンブルクの将来は安泰だと世間では評判だ。
「愛だの恋だのは僕はまだ必要ない。
日々の王太子としての精進に努めるので精一杯なんだよ。
だからまあ、たまにこうやって息抜きするんだ」
エリアスの周りでも、ちらほらと童貞を卒業した友人がいた。
相手は恋人であったり、娼婦に筆下ろししてもらった友もいた。
「エリアス、僕の初体験は14歳だった。
相手は当時1番人気の高級娼婦で、素晴らしい経験だったよ。
お前もこれから、処女を相手にすることも考えて女性の体を教えてもらうといい」
確かに、いざ恋人とそういう時になって、自分がリードできるよう学んでおくのはアリか。
何より、女性の裸は見てみたい…、エリアスも15歳になって、性に目覚める年頃になってきた。
エリアスは頷き、
「分かった。
俺は全然そういったところも詳しくないし、兄上におまかせしてもいい?」
スコットはニコニコと、
「まかせろ。ロードブルの女性は色白で美しいぞ。
僕は前回と同じ女性にしたいと思ってる。
エリアスは、可愛い系、綺麗系、どちらがよい?」
可愛い系…綺麗系…よく分からない…、うーんとエリアスは目を瞑った。
パッと浮かんだのは、凛としたアイシャの微笑みだった。
「…綺麗系」
「了解。侍従に伝えておく。
綺麗でロードブル一番の高級娼婦を、とな」
そんな話をした翌日、アイシャに会うとは思わなかった。
キースも一緒だ。幼馴染らしいな。
アイシャは濃い紫色のケープに薄い紫のワンピース、暖かそうなラビットの毛のストールと手袋をはめて、とても美しかった。
キースとお似合いだな…、アイシャのダークブルーに近いグレーの瞳が大きくなる。
向こうの出店をみてキースと笑いあっている。
…可愛いな。
だが、何かを見たアイシャはハッとした顔で、ざわついているサンドイッチの屋台に小走りで向っていき…、そこからはエリアスも同行し子供達の保護に立ち会う事になった。
自分は何もできなかった。
今まで庶民の家に入った事もなく、余りの狭さと匂いに驚いた。
衰弱した子供を間近で見てどうすればよいかも分からない。自分が情けなかった。
アイシャは迅速に指示を出し、子供を優しく抱き上げる。…天使のようだ。
そして気づいた。
ずっと前から、エリアスはアイシャに惹かれていたのだ。
改めてそう自覚する。
アイシャともっと話したい、仲良くなりたい、その愛らしい唇に、触れてみたい…、娼婦なんてどうでもいい!
アイシャといたい!
エリアスはアイシャが乗馬が好きな事を思い出して誘ってみた。
明日も明後日も用事があるとつれない返事。
自分の予定を思い出しながら他の候補日を探していた時に、傍らにいるキースを見て、ん?もしかしてと嫌な予感がする。
アイシャが通信のため少し離れたところで、
「キース殿は、アイシャ殿と恋人同士なのか」と尋ねてみた。
キースは、一瞬間を空けて、
「…はい、お付き合いしています。
ですが、アイシャが恥ずかしがるので、周りには話していないのです」
嫌な予感が当たり頭が真っ白になる。
恋人のキースの前でアイシャを誘うとは申し訳なかった、とぼそぼそと謝ると、キースは何か言っていたがほとんど分からないほど、気分は急速に滅入る。
早く帰ろう、と歩き出すと、
「エリアス王子!握手して下さい!」
「エリアス様かっこいい!」
護衛騎士が止めるほどロードブルの人達に囲まれながら何とか馬車に乗り込む。
エリアスは自分の見目が人気があり、大いにモテることは自覚していたが、それをこれほど虚しいと感じたことはなかった。
好意を抱いた女性には思われず、なのにな。
…そして、今滞在している王宮の別邸に到着すると、侍従に
「兄上に、少し時間を遅らせてほしいと伝えてくれ。…しばらく休む」と伝えた。
バカンスといえど、いつも視察や外交などで潰れてしまうためだ。
今回は冬の国ロートブルへ兄と姉とで訪問し、日中は施設を案内され、夜は兄と姉は舞踏会へ出席していた。
舞踏会は16歳からと決まっており、エリアスは一人で、ロードブルの貴族の子弟らと食事会に参加していた。
気が張る会に疲れていたところ、兄から次の日の夜は一緒にいようと誘われた。
「エリアス、明日はここに高級娼婦を呼ぶぞ」
兄で王太子であるスコットがニヤリと言う。
「ユリアは舞踏会に行くらしい。
僕は明日は欠席だ。
ユリアは帰ったらそのまま自分の部屋で寝てしまうだろ。羽目をはずそう」
スコットはエリアスの4つ上の19歳、エリアスと同じ金髪に碧眼だが体つきはほっそりと痩せ型で、少し神経質そうな印象を受ける。
学業にも、王太子としての取組も優秀で、レーゲンブルクの将来は安泰だと世間では評判だ。
「愛だの恋だのは僕はまだ必要ない。
日々の王太子としての精進に努めるので精一杯なんだよ。
だからまあ、たまにこうやって息抜きするんだ」
エリアスの周りでも、ちらほらと童貞を卒業した友人がいた。
相手は恋人であったり、娼婦に筆下ろししてもらった友もいた。
「エリアス、僕の初体験は14歳だった。
相手は当時1番人気の高級娼婦で、素晴らしい経験だったよ。
お前もこれから、処女を相手にすることも考えて女性の体を教えてもらうといい」
確かに、いざ恋人とそういう時になって、自分がリードできるよう学んでおくのはアリか。
何より、女性の裸は見てみたい…、エリアスも15歳になって、性に目覚める年頃になってきた。
エリアスは頷き、
「分かった。
俺は全然そういったところも詳しくないし、兄上におまかせしてもいい?」
スコットはニコニコと、
「まかせろ。ロードブルの女性は色白で美しいぞ。
僕は前回と同じ女性にしたいと思ってる。
エリアスは、可愛い系、綺麗系、どちらがよい?」
可愛い系…綺麗系…よく分からない…、うーんとエリアスは目を瞑った。
パッと浮かんだのは、凛としたアイシャの微笑みだった。
「…綺麗系」
「了解。侍従に伝えておく。
綺麗でロードブル一番の高級娼婦を、とな」
そんな話をした翌日、アイシャに会うとは思わなかった。
キースも一緒だ。幼馴染らしいな。
アイシャは濃い紫色のケープに薄い紫のワンピース、暖かそうなラビットの毛のストールと手袋をはめて、とても美しかった。
キースとお似合いだな…、アイシャのダークブルーに近いグレーの瞳が大きくなる。
向こうの出店をみてキースと笑いあっている。
…可愛いな。
だが、何かを見たアイシャはハッとした顔で、ざわついているサンドイッチの屋台に小走りで向っていき…、そこからはエリアスも同行し子供達の保護に立ち会う事になった。
自分は何もできなかった。
今まで庶民の家に入った事もなく、余りの狭さと匂いに驚いた。
衰弱した子供を間近で見てどうすればよいかも分からない。自分が情けなかった。
アイシャは迅速に指示を出し、子供を優しく抱き上げる。…天使のようだ。
そして気づいた。
ずっと前から、エリアスはアイシャに惹かれていたのだ。
改めてそう自覚する。
アイシャともっと話したい、仲良くなりたい、その愛らしい唇に、触れてみたい…、娼婦なんてどうでもいい!
アイシャといたい!
エリアスはアイシャが乗馬が好きな事を思い出して誘ってみた。
明日も明後日も用事があるとつれない返事。
自分の予定を思い出しながら他の候補日を探していた時に、傍らにいるキースを見て、ん?もしかしてと嫌な予感がする。
アイシャが通信のため少し離れたところで、
「キース殿は、アイシャ殿と恋人同士なのか」と尋ねてみた。
キースは、一瞬間を空けて、
「…はい、お付き合いしています。
ですが、アイシャが恥ずかしがるので、周りには話していないのです」
嫌な予感が当たり頭が真っ白になる。
恋人のキースの前でアイシャを誘うとは申し訳なかった、とぼそぼそと謝ると、キースは何か言っていたがほとんど分からないほど、気分は急速に滅入る。
早く帰ろう、と歩き出すと、
「エリアス王子!握手して下さい!」
「エリアス様かっこいい!」
護衛騎士が止めるほどロードブルの人達に囲まれながら何とか馬車に乗り込む。
エリアスは自分の見目が人気があり、大いにモテることは自覚していたが、それをこれほど虚しいと感じたことはなかった。
好意を抱いた女性には思われず、なのにな。
…そして、今滞在している王宮の別邸に到着すると、侍従に
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