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救出作戦

場外乱闘 6

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武丸「こいつ……こんな鋭い視線にも一向に動じないなんて」
『だけど何だ、この不思議な顔と目、動揺のかけらも無いなんて』
ハク「……」
 しばし流れる時に周りの心臓の鼓動も早くなっていく、誰もがこ
の緊張に耐えれなく感じていた矢先に道明の方が目線を逸らしたが
何故か笑みが出るのだった。
道明「ククク……」
武丸「何がおかしい!」
 声を荒げて怒りを露わにする武丸の方を見る。
『チッ情けねぇ……気を抜くと後に下がりそうだ、自然と体が冷た
くなって行く様だ、震えるな、震えたら筋肉は動かねぇ!』
 鋭い視線に負けじと筋肉を震えを抑えるように硬直させ一歩あえ
て踏み込む武丸であった。
道明「ほう、若いねぇ……合格だ」
次に雪丸に向かい睨みを効かせるも微動だにしない。
『まっこいつには無駄か』
 ゆっくりと仲間のいる所に戻る道明に彼の仲間が通りすがりに声
をかけた。

仲間「どうだった、やるか?」
道明は小声で答えた。
道明「まだだ、雪丸はこの人数でも微動だにしねぇ、自信がある眼
だ、勝てねぇ訳でもねぇがリスクは負わねぇ、坊主はやる気だ、怯
みはねぇ、戦力として計算の内に入る、そしてアイツだ……その視
線は、ククク、まぁいい計算が上手く出来ねぇ、撤退する」
仲間「相手は3人だぞ?おいおい」
道明「気づかねぇか?まぁ仕方ねぇ、ハクの側に行った時俺だけに
強烈な殺意を感じた、恐らくあの姉ちゃんだろ、あの実力が3人も
いたとなっちゃ話は別だ、戦力はまだこちらが有利とはいえ」
仲間「実力者3人?あのガキだろ、雪丸、ハクとか言うやつ、どう
見ても実力者は雪丸だけにしか見えねぇが」
道明「……お前らもうちと周りに気を配ってかねぇと生きてけねぇ
ぞ、此処から見えねぇが確かにいる、多分前戦の姉ぇちゃんだろ」

仲間の表情が変わった。
「あの姉ちゃんか……ありゃヤバイ奴だったな」
「まっあの姉ちゃんがしゃしゃり出る前に出鼻挫く為のタイミング
ってこった」
仲間「そうなのか?」
道明「クク、出るタイミングも引くタイミングも戦略においては重
要なのさ、アイツは今裕太戦にも必要だからな、此方に来ちまえば
裕太にとって支えがなくなる、それにグリマンが負けるとも思え
ねぇが敵の大将がやられれば乱戦になる可能性も0じゃねぇ、更に
抽選によって複数戦の戦いがあるかも知れねぇ可能性、あの姉ちゃ
んにとっては参戦にも難しい判断だからな、戦力は削ぐに越した事
は無い故のあのタイミングだ」
『だがあの殺意からして手を出せば必ず出て来たろうがな、故に引
いたまでだ、それに姉ちゃんにまとわりついてる異様な気、恐らく
黒田だな、アイツまで来られちゃコチラも無傷とはいかねぇからな
後気になるのは……』

仲間「ハクか?道明が戦いにおいての勝算の計算が出来ねぇ?珍し
いじゃねぇか」
道明「アイツねぇ……違う次元でもねぇしそうでもある」
仲間「?意味不明だぞ言ってる事」
道明「はは、そう意味不明なんだわこれが」

武丸「引き下がるだと?」
道明「あぁ、下がるさ、俺たちの第一目的、それはお前らの護衛、
試合はして貰わねぇとそもそも契約もヘッタクてもねぇからな、
やるのはその後だ」
『でも無いんだがな、殺せればここで殺しても問題は無かった、あ
いつらをけしかけ台風が近いとなれば、奴を殺しこの時点で試合を
終了する手も笠田には筋が通る、だが今の状況ならば体力が落ちた
試合後の方が有利、数で押し切るこのチャンスはもう無いとなれば
プラン変更という訳だ』
武丸「殺すにしても利用してからって言う事か……何処までもクソ
野郎って事か」
道明「ハク、残念だが時間だ、さっき言った答え合わせだ、言葉で
なくとも真意は理解できる、お前の目的が何であれ其れを試合で証
明して見せろ、雪丸に壊される様ならそれまで、いくら奴の様に超
人でも人数にはかなわねぇ、俺達にとって敵では無い、お前に大志
があるならば雪丸に納得の行く試合を見せろ、一つだけ言ってお
く、この混沌な世界の中誰がどの様な意思を持って行き残るか、そ
れがどのやり方が正解かだけだ、失敗すれば人類は終わる、自由に
生きる俺達にとってもその世界は願ってはいねぇ、故の俺達は何処
に付くかも俺たちにも分からねぇ、今は笠田の考えが一番確率が高
いってことは事実だ、だが其れも保証は無ぇ、なんせ相手はグリマ
ン、いや世界を含めるとまだアジアはマシと言って良い、そして同
時にチャンスであり最悪だとも言える、俺達は俺達の為に生きる道
を選んだ、故にその先にチラチラ見え隠不穏分子があれば排除し未
来が見えるならば其れを支援してやる」

 ただ生き残る者達と人類の復興に賭ける者達、人はほっておいて
も君が天から見下ろす存在だったとしていずれも命ある共同体は同
じ時をかけ進か衰退し絶滅という2択に結果は見るだろう、彼等も
またその分子の一つである。

「それと言っておくがお前達の此処での目的はおよそ想像が出来て
る、そして笠田はそれをまだ知らねぇ、同じく笠田の目的もお前達
はまだしらねぇ筈だ、いいか全てを知っているのは俺達だけだ、そ
して時間の猶予」
そう言うと指を天に掲げた。
ハク「……」
道明「まだ時間はあるが時間はねぇ?だろ?」

 言うが早いか素早く雪丸の前に5人の道明の仲間が襲い掛かる。
一際でかい男1人目は盾を構え突進、そのすぐ後に影で隠れながら
背の低い敵ともう1人がその影に隠れた、左右に素早く動く2人は
雪丸から大きく左右に離れた、素早い反応で雪丸は目の前の盾男の
影で隠れる男達に警戒し盾の真正面から吹き飛ばし効果の高い技を
選択、軸足である左を地面に捻り込むと体重をかけた目に見えない
バネが一気に跳ねるような蹴りをまっすぐに盾に向かい放った、だ
が其れには厚みがあったにもかかわらず柔らかい段ボールでも曲げ
るようであった、その蹴り足がめり込むと咄嗟に敵の太い腕が張り
詰め鈍い音と共に衝撃により後へ後ずさりする、が耐えた瞬間更に
張り詰めた筋肉は盾の端を握り始めると素早く盾にめり込んだ雪丸
足を盾ごと瞬時に曲げ絡め捻り込んだ、そこから体重を生かし地面
へと自ら倒れ見事に体勢を崩させたのだった、だが無理な体勢で空
いた顔面が雪丸から丸見えだ、その顔面に倒れ込んだ勢いを利用し
て体を捻り込み拳を放つもすぐ後ろにいる小盾を構えた男が大盾男
を庇う様にその脇の隙間の横から拳に向けて盾で阻む、だが目にも
止まらぬ互いの連鎖攻撃は止まる事は無かった、その影に隠れた男
が宙を舞い離れていた左右に離れた男残り3人が左右そして背後か
同時に雪丸目掛けた剣で刺し貫こうとする、それも三方向高さも変
え逃げらる場所も隙も与えずだった。

武丸「雪丸さん!」
 武丸の叫び声が辺りに響いたその時雪丸の手は大盾男の盾を奪い
力を込める折れ込んた盾は無理やり元の状態へと伸ばされる、大盾
男も盾にしがみ付き防ごうとするも男ごと背後に向け豪快に其れを
横振りしたのだった、その方向の先には剣を振りかざす男2人を巻
豪快に巻き込みながらまたも軽快な音を立てて敵を弾き飛ばした。

盾男『すげぇ、まさか俺ごと飛ばすなんて!だが残念だ、もう一度
振り戻す時間にはコンマ数秒足らねぇぞ』
 剣先が雪丸の顔面に近づいてくる、振り戻す時間はない、だが雪
丸の盾は戻すのではなく手元に引き戻した。
男『はっ!直線でコンマ数秒短くしたか、だがそれで俺の体を防ご
うとも、その体勢では弾き飛ばすには筋肉の動きが変化するまでに
また時間がかかる、これで終わりだ』
 男の手に持った剣の握りを素早く変え握り拳の下に剣を構え直し
盾で防いだ脇から刺し貫く体勢へと変化した。

 敵の飛びかかりながらの体勢により密着した彼の体重がずしんと
重くのしかかる、更に動きを封じるため残り2人も盾に全体重を一
気に被せる様に重なった、唸りを挙げて盾の脇から重なる3人の体
重に三つの剣先が同時に容赦なく雪丸に襲いかかって来る。
 だが無表情の雪丸の掌がくるりと方向転換を素早く起こし盾裏側
に密着し添えられたその時だった、敵の腹辺りの肉が妙な凹み方を
したとき既にその男達の体は皆同時に宙を舞っていたのだった。
男達『は?』
 何が起こったのか分からず空中に舞う男に既に意識は無かった、
地面へと倒れると辺りは驚きと状況判断が出来ずただ静けさが漂っ
たのだった。
仲間「……何だ今の?」
雪丸「……発勁」
ざわつく辺りに道明の笑い声が響いた。
道明「はは!そう来たか!まさかそんな技、漫画しか見た事ねぇわ
な!言ったろ、だから油断は出来ねぇってこった」
高笑いの道明は笑いながらも彼等に背をむけた。
道明「うっし撤退だ」
武丸「ザマァ見ろ!さっさと尻尾巻いて逃げやがれ!」
道明は軽く後を見せながらも手を振っていた。
「はははっすげぇすげぇ、やはり隠し玉持ってやがったか、あ、
其れと後一つ、俺からの餞別だハクいい試合期待してるぜ?」

武丸「何だあいつ?負け惜しみ言いやがって」
 そういう武丸の背後で雪丸は自身の手をしばし見つめていた、そ
の手は少し震えていた……



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