上 下
184 / 222
救出作戦

純衣戦 終結 それぞれの力

しおりを挟む


 

 その様子を眺めていたハクが替わりの棒を純衣に投げ入れる、武
器を失った黒田は辺りに武器はないか目で追った、だが近くに武器
は落ちてはいない、だがなんとハクが手に持っていた自らの棒を黒
田に投げ入れると俯いたまま手にしっかりと持った黒田だった。

黒田「……何故、俺はお前の女を殺すぞ」
夏帆「そうだ!何してんだこの野郎!頭おかしくなったのか」
ハクは周りの怒号の声を無視し鼻歌混じりに座して武器をそしてゴ
ムチューブやらを集めて何かを作っていた。

由美「あんたの男頭おかしい!」
黒田「……よかろうならば殺す」

其れを見ていた輩の1人が剣を投げ入れる。
輩「よろしいよろしい勝つ為ならばプライドを捨て敵の武器をも躊
躇せず使う、勝てば正義、主張は生きて勝ったからこそ言葉に出来
る、踏みにじれ、人の感情など甘さなど全てを奪い取れ、そうだそ
れでいい、ようやく吹っ切れた様だな、使え」

 長尺の大型の剣が黒田の前へと放り込まれる、その武器は重く棒
の長さに負けてはいない程の禍々しい剣だ、重さ長さ共に純衣の持
つひ弱な棒と比べると勇猛果敢という言葉がピタリとあった剣で
あった投げ入れられた剣が黒田の視界に入る、怪しく光る剣を空い
た片方の手を伸ばし力
強い腕で強く振ると見た目に反しない轟音が辺りに響いた、幾つもの
快楽で斬り殺した人間の怨念の様な禍々しい音を立てる、右手
に剣、左手に棒を持つ黒田はその両方をしばしじっと見つめた。

 打ち震える体に苦悶の表情を浮かべ目を閉じる、だが黒田の手か
ら離れたのは剣の方だった……
輩「テメェ何してやがる!棒切れなど重さと切れ味で勝る剣で力で
なぎ倒せばよかろうが!」
理解に苦しむ輩達の中でハクが呟く。
ハク「そういう事」
輩「何、どういう意味だ?」
ヌク「幹部が何故あんな刺されても運動能力に支障なく動けてる
か、そういう事なんだろうな、余程の長けた技術と知識が無いと急
所を外し後遺症を残さないなんて事は出来ん、それ程に奴は努力し
た証か……だが許される物ではないが、まだ落ち切ってないと……
拷問器具に苦しんだ分、あんなに悪鬼羅刹となった訳もそれなら頷
けるの、奴も後悔と懺悔に押し潰されそうだったのかもしれんな」

輩「……そう言われれば確かにクソ気づかなかった、あいつも偽善
者側の人間だとは、だが罪は同じ、いや理解してやっている俺達の
方がまだマシだ」
ヌク「かもな、だが奴は罪を償う事ができる向きに気が付いた、お
前らはその道を破壊しようとした、この差は埋められるものではな
い、落ちた人間にも這い上がれる者とそうで無いものも居る」
ヌク「だが……罪は罪、償える事なんか何をしても出来ないのじゃ
どれだけ人を救おうが罪は一生背負わねばならん、だがその先には
何かあるか無いかは神のみぞ知る、だが光は常に人の希望である事
には変わらんのだよ」

 俯いた純衣の震える体に皆が心配した、がその中で1人ハクだけ
は楽しそうに純衣を見ていた、ハクの笑顔で誠達は皆心配する純衣
から目を離し再び己たちの戦闘に集中し始めた。

豹「なんでだ!お前ら仲間を見捨てる気か!」
誠「ハクがあんな楽しそうにしてんだ、大丈夫、疑う余地なんて純
衣とハクの2人の中には無ぇんだよ」

 夕陽が戦闘場を照らし始め互いが同時に顔を上げた時、黒田は驚
く、それは純衣の表情が笑顔だったからだ、其れもとびっきりの笑
顔だった、震えていると思われた仕草は足でリズムをとり歌を口ず
さんでいたからだ、対し黒田の表情は険しく顔色も悪い、怒りに紅
葉し赤は青の顔色と交わり紫に見える程だった、苦しい闘い、かつ
て経験したことがない程の苦しみの中、同じ環境での違いに驚きを
隠せずにいた。

 黒田は棒をもう一度見つめた、思う気持ちに躊躇いながら再び激
しくぶつかり合うのだった、全く動きの読めない攻防が続く、

黒田(何故俺は棒を選んだ……)
 自身にもよくわからない選択だった、だが先程までと違う点はた
だ純粋に自身の憎悪を相手にぶつける事のみである、脳で考える点
よりも純衣に向かい全ての気持ちをぶつけた時、標的である純衣に
対し勝ちたい欲望を勝りひた向きに気持ちをぶつける子供的発想の
みが支配していた他ならない、だがその思想は犯罪者特有の自己満
足やプライド等ではない、一見八つ当たりにも似ているが大きく
違った、過去複雑な思いで日々を過ごし脳を使いマイナス思考を増
長させ僻み切った心で戦う黒田に初めて均等さ、つまりバランスが
生まれた思考になったと言うべきか

 心と体のバランスは健康においても重要だ、理性と本能も然り、
どちらに偏りすぎてもその心は正常とは言えない、そこに信念が加
わり人は物事を判断するからこそ己が生み出した価値観や常識とい
う幻に振り回されないでいけるとも言える、武器を殺人の為だけに
選んだのなら迷う事なく剣をとった筈、だが其れは優位性を履き違
えた結果となる、スピード勝負まして相手は純衣だ、ゾーンに入っ
た相手に対しパワーは最早武器ではない、この戦いにおいて棒は勝
つための最善の物でもあったと言えた、あえて虚を捨て動きの良く
なった自身の動きを妨げている物、それは自身の培った無駄な動き
で相手を翻弄するスタイル自体にあったと言っても過言ではない、
越えられない壁に直面した彼は最も得意とした戦法を変え挑む勇気
を自身の中で生み出したからこそ過去を越え新しい力を過去から学
んだ経験を基に昇華させる事が出来たのだった、現実を捉えあえて
今乗っている自身よりも得意な惑わされスタイルを変えたのなら
彼は即座に倒されていただろう、だが純衣はあえて倒さないだろう
そしてもう一つの最大の心の変化が黒田の中で大きくなって行く、
そんな中、純衣の声呟いた。

純衣「黒田……見えるか、私の後方で戦う由美の事を」
 ゾンビに押されながらもその後ろにいる乙音を庇いながら戦う姿
が映った、戦闘力は乙音の方が上に見えた、だが弱い筈の由美の声
が聞こえた乙音の動きが良くなって行くのも感じていた。
由美「乙音!踏ん張りな!」
乙音「ネェさん達がいるから安心して戦える、私より自分の戦闘に
集中して!」
純衣「あの子は気丈だが戦闘は弱い、だが力の弱さだけが強さでも
無い、弱さの中に優しさを持って守べき相手と守べき対象者を見失
わない女だ、弱いからこそ強い力もある。

黒田「……」
 その時ゾンビが由美の背後からその美しい背中に歯を立て覆いか
ぶろうとした。
乙音「姉さん、後ろっ危ない!」
 孝雄が気づき駆け寄ろうとするが間に合わない、悲痛な声が孝雄
の叫びとなって響いた。
孝雄「や、やめてくれ!」
 瞬間、黒田の棒が純衣の回転の威力が加わった横薙ぎ払いの威力
に弾かれ、スルスルと黒田の持つ棒が手から離れようとした、手に
力を入れ吹き飛ぶのを力ずくで繋ぎ止めた棒からその方向性へ加わ
る力を利用し大きく回転させると純衣の顔目がけ襲う、屈んで避け
たその棒の先が由美を襲うゾンビの顔を抉り玩具の様にゾンビが吹
き飛んでいった。

由美「あれ……」
孝雄が駆け寄ると強く由美を抱きしめた。
由美「孝雄……お礼はまだ先よ、てか苦しい」
孝雄「すまぬ、すまぬ私が側にいる、もう危害は加えささない」
由美「……ありがとう、でも守られてるだけの女じゃアンタに好か
れる資格は無いからね、戦おう一緒に」
孝雄「……そんな女だから惹かれたのだろうな、2人!ありがとう
私の全てを守ってくれた、本当にありがとう」
黒田「……」

ーー再び戦いは続く
純衣「あれがリーダーの夏帆だ、リーダーらしく弱音を見せる事が
出来ず数ある家族の安全と平和に貢献している、こんな時代だ女は
弱い、彼女だって平和に生きてきた女だというのに誰かが立たねば
仲間を救えない現実に立った1人だ、菅だってそうだろう仲間に生
きる為に体を捧げる商売なんてやりたくてやっている訳じゃない者
が殆どだろう、そして恨みや蔑み、仲間からの恨まれ、時には八つ
当たりの対象とされ其れでも生きるために彼女は仲間を守る道を選
んだ、お前が見た目で判断してきた女の中にはクズもいただろう、
人は悪い方へとすぐに流される傾向がある、その中に1人でも正し
い人がいたとしても悪い人間に心囚われてしまう生物だ、その人生
の苦労や努力をお前は見た目で判断が出来たのか?一見悪い奴に見
えながら自身を犠牲にして悪意を一身に受ける者もいる事を少しで
も考えたことがあるか?お前もお前の嫌う人と同じ事をした結果が
今では無いのか、お前が言うお前が感じたお前が悩んだ、お前が恨
んだ……そうお前自身がお前自身を結局恨み妬み、蔑んだんだ」

 人を蔑み己が心の弱さに1人を選んだんじゃないか?逃げたん
じゃないのか、だが彼女たちは違う、力を鍛えるのが強さと思い
込み逃げたんじゃないのか、其れでもお前に彼女達を蔑む事が出来
るのか、その答えを気づき始めたお前の目に彼女達、今まで蔑んだ
その眼と同じようにお前の目には未だ映るのか?その答えを頭では
なく感動や悲哀、劣等感、其れを感じた場所で感じてみろ。

 憎悪の燃やす心で感じる……黒田の中で黒く歪んだ場所の中にそ
の言葉が混ざっていく、少しの痛みを感じたがその光は大量の闇に
再び埋もれていくーー

 円に動く純衣に対し線で応戦する黒田、口に含んだ仕込み針が3
発鋭い動きで純衣を捉えようと走るが純衣は既にその場所には居な
かった、ただその針は夏帆を襲う輩の顔に突き刺さるのだった。

 戦いは続く、その隙に輩達が更に多くの血を吸う為に縦横無尽に
暴れわ舞っていた誠含めゾンビと戦いながら蹴散らすも数が増えて
いく敵に翻弄される、だが気がつけば辺りで戦いの場を移動しなが
ら戦う黒田達に巻き込まれるように次々と倒れゆく輩達がいた。

 激しい横の攻撃と純衣の円がぶつかり合って身体事飛ばされる2
人、そして嵐の様に激しくぶつかった後2人の距離が空いた……俯
く黒田の動きが止まると地面を見つめていた、そして静かに瞼を閉
じ束の間の時間が流れた、彼の感じた瞬間の今は彼の人生の中で最
も短くそして最も長い時だった。

 再び目を開けるとゆっくりとした動きで静かに懐から出された物
は黒く妖しく光る銃だった……
黒田「……俺はもう戻れない」
寂しそうに銃を見つめる黒田は呟いた。
純衣「戻る時は誰にも無いんだよ」
夏帆「今更銃だと!どこまでも汚ぇ!」
黒田「汚いか……」
純衣「汚いね」
 だが其れでいいと言う満足げな表情を見せた純衣だった、ゆっく
りと銃の的を純衣に向ける、銃を握り締めると直ぐ様躊躇う事なく
銃口が純衣に向けられようとした、それは人を傷つける為にのみ作
られた冷たい鉄の塊から発射された悪意のみの弾が命の灯火の熱さ
に向けて放たれた。
『ドン』1発目
弾丸の軌跡がまるでスローモーションの様に黒田には感じ取れた。
(なんでこうなった……いつから私は)
 撃鉄を起こした瞬間、純衣は身を丸くし異常なまでの低さの姿勢
からまるでバネのように弾けた、その弾は純衣の影に砂埃を撒き散
らした、容赦なく2発目の引き金を引いた、躊躇いなどない悪意を
込めた銃声が辺りにこだますると戦う者達も戦いながらもも注目し
ていた。
2発目『ドン、ドン』
(全てが妬ましかった、憎かった……出会った時からムカついた、
そして……楽しかった)
 ジグザクに動く純衣に低い姿勢での的は当たりにくい、凄まじい
動きの彼女はスピードを生かし身を素早く反転させながらも器用に
棒先を地面に刺しそこを支点に半円を描き跳ねる、時には小さく、
時には大きく、そして棒の刺す勢いを乗せ光の様なスピードを感じ
させた、長い髪はゆるりとその影を追い踊るような髪は美しい曲線
を描いた、トリガー式短銃での連発の間もあり3発目の引き金を引
く時、既に純衣は彼の目の前まで迫っていた。

トリガーの引く指が止まる……だが反し純衣が叫ぶ。
純衣「引け!全てを込めて今こそお前の全てを込めて放て!」
その声に黒田は条件反射で本気の引き金を引いたーー
3発目『ドンドンドン』
黒田「当たるな……当たるな当たるな当たるなぁああああああ!」
 引き金を引いた瞬間彼にも何故その言葉を呟いたか分からなかっ
た言葉と反し彼の引き金の殺意は本物だった、だが同じく反し脳の
思考は追いつかず出た言葉もまた本心だった、燃やし尽くされる寸
前の悪意は最後の炎を燃やす様に殺意となりて最後の弾に込められ
た、ほんの瞬きの間もない程のほんの小さな小さな時間の中、全て
が消えるか生かされるか……時と場所ほんのコンマで全ては本当に
消え彼女のみならず彼ら仲間とそれを取り囲む全ての運命は消える
現実があった……ほんのコンマの差の中に、そしてそれは逆も然り
現実になり得るかは人の運命の別れ道などそんなほんの小さな時の
中で交差し、またどれも現実となり得るのだ……

「アンタのためにも当たらないよ……」
 微かに聞こえたその言葉を聞いた時、黒田の視界は歪み黒く染め
られて行った……彼の体は大きく空へ舞い純衣は棒を回転させると
綺麗な髪の毛が彼女を取り巻く様に下へと流れる中、言った。

『愛から出直して来な』
 その瞬間歓声が地響きの様に辺りに響いた、考える事もなく意識
のない筈のゾンビも一際大きい歓声の圧に動きが一瞬止まる程に、
そして多くの者達が敵味方問わずその戦いに魅了されていたことを
証明する様に大きく激しく歓声が地響きのように響き渡った。
 
 黒田の巨躯が地面へと落ちると視界がぼやけながらも気を失う寸
前の光景が目に入った……その光景を彼はすがる様に心に焼き付け
たのだった……その目には懸命に菅を救おうとするヌクの姿、今ま
で敵の様に争っていた虎や豹達も我先にと言わんばかりに輸血に協
力している姿、そんな仲間を囲み皆懸命に守ろうと戦う姿が目に
入った……

 黒田の思考はもう働いてはいなかった、ただ心の見えるまま、そ
して感じるままに震える唇を噛み締めて心の声を現実にしようと絞
り出す声で言った、そう確かに言った……それは一言だった。
ーー『ありがとう』
 皆が懸命に戦った、救助活動を妨げささないよう戦った、
そう『力』で……皆が懸命に戦った、消えゆく灯火の中、敵味方問
わず自身の血を菅に与え戦ったそう『力』で……戦う彼女を信じ、
こうなる事を躊躇いもなく信じ、仲間達の力となる武器を懸命に作
りながらもハクが大事に作っていた物、それは気管挿管だった、そ
れを使い気道を確保する姿を、戦った、そう『力』で……

 見窄らしく汚いだけの老害である筈のヌクが彼女の体から噴き出
る血を顔に浴び拭いながらも懸命に戦った、そう『力』で……

 決して敵と戦うだけの『力』では救えない命の灯火、其れを皆の
違う『力』で繋ぎ止め、そして一つの希望に向かい先のわからぬ結
果に向かい誰1人諦める事なく最初から戦う姿に、そして『力』に
はいろんな種類がある事に、そして其れを繋ぎ一つの新しい『力』
を生み出す『力』誰1人として1人では成し得ない『力』を見たの
だった。

 そして黒田は気を失った……大歓声が止まない中、2人の戦いは
闘いとなりて今終結の時を迎え新たな命を吹き込んだ。

「反吐が出る……偽善者のペテン師集団が」
 だがそんな中、不審な影が一つ……豹達に倒された輩の1人が銃
を片手に的に銃口の標準を合わせていた、獲物それは美しい髪を靡
かせた純衣の背中にだった、皆、菅の治療に気を取られ気付かな
かった……長いゾーンに入っていた純衣も戦いが終わり普段の彼女
に戻った事で気付けなかった、この場で生まれた希望という光が全
てが一瞬でひっくり返るほどの悪意、其れは銃という名の人工物。

輩「茶番劇か、反吐が出る、だがこの状況からあの女が倒れれば状
況は一変する、完全なる絶望ってやつだ、面白ぇ!」

 引き絞る引き金に最後の力を込めた瞬間、輩の手に緑の大きい手
が上からかぶさると一瞬でその手ごとメキメキと嫌な音をたて歪な
鉄の塊と肉の塊に変化する、ほんの一瞬何が起こったか理解出来な
い輩は己の手を眺めた後痛烈な痛みが脳に認識した瞬間、悲鳴にも
似た怪奇音の様な叫び声を上げたのだった、だが背後に立つ恐怖そ
の物の圧に振り返ると其処にいたのはグリマンだった。

 大きいグリマンは人間にはわからない言葉で囁いた。
「戦いは神聖、戦う者達の戦いを汚すものは許さない」
 戦闘民族であるグリマンだったからかもしれないだが、彼等に於
いて戦いとは神聖なもの、母なるマザーに捧げる儀式としての認識
だった、侵略時大勢の人間を殺めた時の感情は作業ではあったが真
の戦いに於いては戦うものに敬意を持つ民族でもあった。

 そして辺りを見ると騒ぎはいつの間にか沈静化していた……原因
は静観を決めていたグリマン達が動き出したから他ならない、その
巨大な体躯と力で熊やゾンビ、輩達を次々と軽く薙ぎ倒していたか
ら他ならなかった。

豹「何故あいつらが?今まで静観していただけだったのに」
虎「心を動かした……きっとそういう事なんだろうな」
豹「へーアンタらの口からそんな言葉が出るなんてね」
虎「あんな戦い見たら誰でもそう思うでしょ、それに私達だって人
間だ、善悪の良し悪し位するさ、時代によって感覚は麻痺していく
ものだけどさ、色々大切なものはまだこの地上に残されてるって思
うとさ……嬉しいし賭けてみたくなるよね」
豹「そうだね……どんな時代が腐ろうが、まだあんな純な子がいる
と思うと色々考えさせられるよね」

 皆思った、皆感じた、彼女に過去の平和な時代の匂いを、荒んだ
世界の中、平和な時代の自由を、彼女の真っ直ぐさはまた平和な時
代に於いても理想とする生き方そのものであった事に、その心は少
女の様に世界に染まらず世界を作り出していた時を……

 沈静化した状況になり無言で立ち去るグリマン、そして1人のグ
リマンがハッチの前で振り返るも何も言わず立ち去ったのだった。

丁度其処に現れた笠田は辺りの凄惨な光景に目を疑った、
笠田「何が起きていた」
秘書「……」

誠「毒は完全に消えた様だな
純衣「ほぇ……そういえば私元気だ」
ヒロ「そりゃそうでしょうよ」
純衣「どう言う事?」
裕太「ふふふ」
クリス「気楽なもんだな」
ヒロ「菅さんから約束通り解毒剤を勝ち取ったハクさんが飲ませた
んですよ」
夏帆「アンタもう自力で飲む力さえ無かったんだよ」
由美「ハクさん解毒剤一気に口に含んでさ」
純衣「まさか……まさかまさか」
ヒロ「熱いキスだったっす!俺も彼女欲しいっす!」

純衣「えー!えーーー!馬鹿ばか私!気がつかなかったヨォおお」
 おどける彼女を取り囲む皆の中にあれだけ澱んでいた闇は消え去
り皆の明るい話し声だけが辺りを照らした。

 こうして闘いは終結した、大きな歓声と共に、そして試合は第三
試合、明日の朝開催される。
不安な影は人のみにあらず、停滞と進行を繰り返す巨大台風はその
数を増やし歪な進路を取りながらも近づいていく……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ゾンビのプロ セイヴィングロード

石井アドリー
SF
『丘口知夏』は地獄の三日間を独りで逃げ延びていた。 その道中で百貨店の屋上に住む集団に救われたものの、安息の日々は長く続かなかった。 梯子を昇れる個体が現れたことで、ついに屋上の中へ地獄が流れ込んでいく。 信頼していた人までもがゾンビとなった。大切な屋上が崩壊していく。彼女は何もかも諦めかけていた。 「俺はゾンビのプロだ」 自らをそう名乗った謎の筋肉男『谷口貴樹』はアクション映画の如く盛大にゾンビを殲滅した。 知夏はその姿に惹かれ奮い立った。この手で人を救うたいという願いを胸に、百貨店の屋上から小さな一歩を踏み出す。 その一歩が百貨店を盛大に救い出すことになるとは、彼女はまだ考えてもいなかった。 数を増やし成長までするゾンビの群れに挑み、大都会に取り残された人々を救っていく。 ゾンビのプロとその見習いの二人を軸にしたゾンビパンデミック長編。

クラウンクレイド零和

茶竹抹茶竹
SF
「私達はそれを魔法と呼んだ」 学校を襲うゾンビの群れ! 突然のゾンビパンデミックに逃げ惑う女子高生の祷は、生き残りをかけてゾンビと戦う事を決意する。そんな彼女の手にはあるのは、異能の力だった。 先の読めない展開と張り巡らされた伏線、全ての謎をあなたは解けるか。異能力xゾンビ小説が此処に開幕!。 ※死、流血等のグロテスクな描写・過激ではない性的描写・肉体の腐敗等の嫌悪感を抱かせる描写・等を含みます。

データワールド(DataWorld)

大斗ダイソン
SF
あらすじ 現代日本、高校生の神夜蒼麻は、親友の玄芳暁斗と共に日常を送っていた。しかし、ある日、不可解な現象に遭遇し、二人は突如として仮想世界(データワールド)に転送されてしまう。 その仮想世界は、かつて禁止された「人体粒子化」実験の結果として生まれた場所だった。そこでは、現実世界から転送された人々がNPC化し、記憶を失った状態で存在していた。 一方、霧咲祇那という少女は、長らくNPCとして機能していたが、謎の白髪の男によって記憶を取り戻す。彼女は自分が仮想世界にいることを再認識し、過去の出来事を思い出す。白髪の男は彼女に協力を求めるが、その真意は不明瞭なままだ。 物語は、現実世界での「人体粒子化」実験の真相、仮想世界の本質、そして登場人物たちの過去と未来が絡み合う。神夜と暁斗は新たな環境に適応しながら、この世界の謎を解き明かそうとする。一方、霧咲祇那は復讐の念に駆られながらも、白髪の男の提案に悩む。 仮想世界では200年もの時が流れ、独特の文化や秩序が形成されていた。発光する星空や、現実とは異なる物理法則など、幻想的な要素が日常に溶け込んでいる。 登場人物たちは、自分たちの存在意義や、現実世界との関係性を模索しながら、仮想世界を揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。果たして彼らは真実にたどり着き、自由を手に入れることができるのか。そして、現実世界と仮想世界の境界線は、どのように変化していくのか。 この物語は、SFとファンタジーの要素を融合させながら、人間の記憶、感情、そしてアイデンティティの本質に迫る壮大な冒険譚である。

国家存亡の危機

環境
SF
20xx年、新型伝染病によって暴徒化した国民に対して、戦後一度も戦いを経験したことが無い日本政府が国家というものを守るべく奮闘する物語である。

乾坤一擲

響 恭也
SF
織田信長には片腕と頼む弟がいた。喜六郎秀隆である。事故死したはずの弟が目覚めたとき、この世にありえぬ知識も同時によみがえっていたのである。 これは兄弟二人が手を取り合って戦国の世を綱渡りのように歩いてゆく物語である。 思い付きのため不定期連載です。

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第三部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。 一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。 その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。 この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。 そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。 『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。 誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。 SFお仕事ギャグロマン小説。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...