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救出作戦
純衣戦 7 証明
しおりを挟む純衣と黒田の戦いは続く、が黒田の攻撃は純衣の舞と言う表現が
相応しい程の技の前にただ踊らされていたのだった。
負の感情を力の根源とする黒田だったが激しさが増せば増す程に
力を利用する純衣の攻撃はカウンターで黒田を追い詰めていった、
純衣に敵意は全く見られ無い有様に怒りが、妬みが込み上げる、だ
が思いとは反対に憎悪の一つ一つが標的から自分に返っていく感覚
に黒田も戸惑う、主に回転技を多用する純衣の棍棒は腕の回転だけ
でなく自身の体を棍棒と密着させる事により自身の体重+回転スピ
ード+カウンターによる敵の攻撃力が加わり女性の力とは思え無い
程の威力を放出していた。
黒田「俺の攻撃が鏡の様に跳ね返る、いや其れ以上になって自身に
返って来ているっ!なんだアイツは!何だあの技は!奴は体調が悪
い筈だ、女は動けば動くほど不利になる筈だ!何故俺が傷つく!」
常軌を逸した目から憎悪はまるで黒田自身を原料で燃やすかの様
に一層怪しく黒い光を纏いはじめた、俯き自分の腕を見つめ笑った。
「ヒヒ、そうか届かぬのなら手を増やせばいい……足を、刃を」
自軍に置いたサーベルを抜き取ると徐ろに右腕に向かい自身を刺し
貫いたのだった。
来栖「狂ってやがる……」
黒田「ヒャハッは痛てぇ!糞が!」
更にもう一方の腕にも刺し貫くと両足にも同じ事をするのだった。
黒田「ハハハ!痛い!痛い!この痛みの恨みはお前が倒れ無いから
だ、……はは、お前は俺を捨てた、お前は俺を裏切った!お前は……
お前は!どいつもこいつも、俺の邪魔しやがって!」
筋肉の裂け目を狙ったサーベルは彼の動きを妨げる事は無かった、
だが動く度に傷口は広がり出血していく、其れでも尚、彼の憎悪は
止まる事なく彼女に襲いかかる。
純衣「かかって来な」
微笑む彼女は本数が増えようが其れすらも全く問題にはしなかった
其れどころか、攻撃するたびに鋭い突きを放つ純衣の棍棒は黒田の
体に刺したサーベルを的確に剣先を狙い突き、彼の腕や脚からサー
ベルは弾け抜かれていった。
黒田「俺の苦労もお前は無にするのか、何故認めてはくれ無い」
瞬時の隙に純衣の鋭い無拍子が一直線に彼の額めがけた時、黒田
の背後から鞭が純衣の持つ棍棒目掛け飛んで来た、鞭の攻撃をも軽
くバックステップで躱す純衣の目に黒田を庇うように前に立ちはだ
かった女がいた『菅』である。
菅「やらせはしないよ……悔しいがアンタの方が強い、けど連携な
ら、アンタが戦う理由の力が強さなら私にだって強さはある」
純衣「ほぇ……なんでアンタが?」
来栖が横から口を出した。
「俺は仕事を済ませた、これ以上の補助はしないが周りを見ろ」
純衣は言われた通り周りを見渡すと混沌とした状況が目に飛び込
んだ、其れはコミュニティーの壁が大きく壊れ、其処から湧いてく
る様に侵入する大量のゾンビと目が赤く凶暴な熊ゾンビに翻弄され
ている観客達だった。
純衣「……ほぇ」
来栖「気づいてなかったか……お気楽な女だ、まぁ拷問具の後だ、
朦朧とするのも仕方ない、だが普通気付かないかねぇ」
呆れ顔の来栖は続いて語った。
「お前が目覚める前だ、カードが引かれ内容は追加メンバーだった、
恐らく敵の指令だろう、お前の異変に気づいた奴らは早々にトドメ
を刺すつもりだったのだろう、現にお前の仲間は試合があるから出
れない、というか出る暇もないか……で俺が補充要員として此処に
立っている、黒田との戦いの中、菅を抑えてたのは俺だ」
純衣「ほぇ……」
純衣が辺りを見渡すと誠にクリス、裕太、ヌク、孝雄が群がるゾン
ビと戦っている姿が映ったのだった。
来栖「で問題のこの最悪な状況を作った原因は……」
指差す方向を見るとハクが其処にいた。
ハク「すいません、ちとやりすぎちゃった……」
来栖は顔を手で覆うと呆れ顔で言った。
「塀の上から会場に飛び込んできたコイツが現れた瞬間、会場の壁
をゾンビ熊が破壊し入って来たのさ、しかも大量にな、囮になって
連れて来たのだろう、背中にリュック背負って腕と足にオモチャで
ある筈の電動ローラースケートつけてだ」
戦う中からヒロが此処ぞとばかりに愚痴を叫び始めた。
ヒロ「そうですよ!めちゃくちゃですこの人!もう怖いのなんのっ
て、此処に来るまでに壁や狭い通路お構いなしでそのローラーで四
つんばで渡ったり、モーターいかれたらリュックに入った予備渡さ
れて走りながら交換しながら此処まで来たんですよ!僕が転んだ時
なんて電動スケートボード背負わされた意味解りましたよ、この人
紐一本で仰向けの僕を引き摺りながら走った上に時間が無い!って
土管の中なんて一本の棒2人で持って遠心力で外に体持っていかれ
るから支えあっていけば大丈夫とか!」
半泣き状態のヒロだった……
孝雄「男が泣くな」
ヌク「そうじゃそうじゃ、泣き虫ヒロ」
ヒロ「泣くわぁあああああ!」
錯乱しながらもハクが次々と作り放り投げ込まれる武器を手に戦
う皆だった。
ハク「ごめんよぉ……」
ヒロ「で挙句ノロケやがってぇええ!許すまじっ!ハク!」
ハク「……すいません」
話を聞いた純衣の心は益々トキめいたようで……。
純衣「私の為に……なのなのね!燃えてきた萌えてきたああ!」
それぞれが混乱を極める中ゾンビに噛まれようがグリマンだけは
座したまま虫でも払う様にゾンビをいなしながらも座したまま動か
なかった。
司会も渡されたマシンガンを手に闘技場所へと戻り試合を進めた。
司会「混乱の中でも試合は続行されますとの事です……」
対峙する黒田と菅の前に純衣がいた、そして菅は言った。
菅「この人はもう駄目だ……最早、仲間な筈の私の区別も付かない
だろう、だが私は其れでもこの人の味方でいたい」
そういう菅の背後に不気味な笑みを浮かべた黒田が立っている、そ
して菅は会話を続けた。
菅「アンタの勝ちだ充分見せてもらった、これより虎は豹に付く、
私以外な……私は言った確かに言ったさ、その男に」
指を刺した方向にハクがいた、菅はらしからぬ笑顔で言った。
「選択肢は二つだ、私が差し向けた女達を抱けばお前の女の解毒剤
を渡してやると、それともう一つ、それが出来ないなら冬の食糧問
題を解決して見せろ、肉を5t、短時間で出来る筈は絶対に無い
ーー命を差し出すか、心を捨て命を救い愛を捨てるかーー
「筈だった、普通思わないだろ、まして女を選ぶだろ……そしたら
コレだ、まさか生きたまま連れてくるとはな」
ハク「以前、熊と戦ったことがある時にゾンビの習性に本能、そし
て連帯性に獲物への執着心が異常に高い事をね、何頭か疲れを知ら
ないゾンビ熊は生命の限界を越え心筋梗塞で倒れたけど此処まで連
れてくる事が出来た、塀に囲まれ安全な暮らしに慣れた敵への研究
不足だね、山も近かった事もあった、それに僕は彼女を守りたい、
そしてそれは他の女性を抱く事じゃない、其れは体だけ命だけ守っ
ても心を守れなかった事になる、全てを守ると僕は誓ったから」
菅「……そうか選択肢は元々お前自身選択に悩む事すら無かったと
言うことか、あるんだな、だが叶わぬ現実もある」
すると菅の口から赤い血が流れ落ちた、背後に居た黒田が背中から
剣を差し貫いたのだった。
菅「虎の事は頼……む」
黒田「何と言った……解毒剤だと?あの女の体調が悪いのはお前の
仕業だったのか、体調管理は戦闘者にとって最も最優先すべき事項
故に俺はあの女の怠慢、女が背負う事柄だとしても其れは運だと思
った……そうか私はお前の様な蛆虫にすら憐れみや慈悲の目で見て
いたか、俺ではその女に勝てはし無いと決めつけていたのか」
菅「ち、違います、私はただ貴方に勝って」
黒田「黙れっ!弱者の言う事に意味はない!お前は俺に語る資格等
無いわ!その蛆虫が更に俺の神聖な戦いを汚した!その罪は重い、
やはり人間は全て俺の敵だ、見ろ!お前の言う愛がこの女を狂わせ、
戦いを汚し、お前の命すら危うくした現実を、俺はやはり正しかっ
た、この剣を抉り2度と目を開ける事すら出来なくしてやる!」
黒田が剣を捻り上げようと力を込めたその時、純衣の棍棒が剣の先
に寸分違わぬ無拍子で黒田の持つ剣を正確に直線で突きを入れ、狂
気の刃は菅の体と黒田の手から離れ彼の背後へと弾け飛んでいった。
菅「彼は意識が混濁してる、最後の頼みだ……お前に決して頼れる
立場で無い事は承知の上で頼む、彼を……彼を助けて」
黒田「私を助けるだと?虫ケラめ!まだ俺を憐れむか!」
黒田が菅の傷ついた腹を蹴ると菅はうずくまり涙を流しながらも立
ち上がり尚、黒田を庇うように前に立った。
菅「……其れでも私は貴方が愛おしい、自身の命よりも、純衣、支
離滅裂な事を言っているのはわかってる、だが私は最後までこの人
を守る、背後から刺されようが、それが私の愛の証明」
来栖「敵であり続けながら敵に助けを乞う……か都合がいい話極ま
り無いな」
菅「其れでもだ!其れでも私は……私は私の愛に真っ直ぐで居たい
から!」
純衣はニコリと笑った、その表情の意味するものがわからなかっ
た菅だったが言葉より確かなモノを笑顔から感じた、そして黒田は
その笑顔に恐怖しながらも葛藤を心に芽生え始めさせていた。
純衣「私、菅の事好きだよ」
ハク「なら僕も好きだな」
純衣「えー!」
ハク「あ、いやそういう好きじゃなくて」
黒田「目障りだ!どけ!」
菅を突き飛ばし前へでる黒田に対し純衣は構えた。
純衣「誰も殺させはし無い、お前が狂気を力にするなら私は愛を見
せてやると言った筈だ」
黒田「愚か者が、敵すら救うと言うのか、なら見せて見ろ、どんな
手を使おうが勝って証明してやる」
そう言うと黒田は投げナイフを横一列状に純衣に、むけて投げた
がそのナイフは純衣の上を通り過ぎるとモニターに当たり激しい音
を立て壊れ落ちていった。
黒田が手を挙げると5人の男達が何処からともなく現れる、
黒田「俺の部下だ」
その中にはボス側近である幹部のトップも居た、幹部を裏で掌握
していたのは実は黒田であった、
司会「ちょっと待った!試合カードは引かれていません、いくら貴
方とてボスの命令に従うのはこのコミュニティーの最優先法律、そ
れは認めるわけには行きませんよ」
黒田「ボスは試合は見れてはいない、モニターは全て壊した、他に
あるモニターも全てコイツらに壊させた」
司会「だが其れでもです!」
黒田「黙らなければお前も殺す」
司会「其れでもです!」
マシンガンを構える司会
黒田が指示を出すと背後に回った幹部が司会を締め上げ落とした。
黒田「見せて貰おう、俺は手段は問わ無い、全ての力を使ってでも
お前を這いつくばらせてやる、権力もそのうちの一つ」
幹部「舐め無い方がいい、俺達は伊達にここの幹部をやっている訳
では無い、いくらお前が凄かろうが5人の攻撃に耐える事は出来は
しないぞ」
黒田「そう言うことだ、いいか幹部ども、不甲斐ない動きを見せれ
ば俺はお前達の背後から必ず剣を刺す」
衆の体に刺し傷が皆あった、其れは過去、この男がそれを実行して
いた証だった。
ハク「……あれは」
純衣「だね、決まりだ」
5人衆が純衣に詰め寄るが純衣は微動だにしない、その横に寄り
添うようにハクが立つ。
5人衆「2人で何が出来る?ククク」
ニタニヤ笑いながら一歩一歩近づくと三節棍を持つ1人が猛然と
襲い掛かった、だが2人は避けることも無く動きもしない。
1衆「もらった!どこに避けようが背後にいる2、3、4、5が逃し
はしない、俺の背後で姿も確認でき無い攻撃がお前達を襲うのだ」
ハクの頭上に棍が振り下ろされた瞬間、棍は衆の攻撃を弾き、後へ
と下がらされたのだった。
「舐めてんのはお前達の方じゃねぇか?」
声の主は誠だった。
誠「お前達に仲間がいる様に俺達にも居るんだよ」
その背後からまた1人の男が出てきた。
クリス「お前達が黒田の恐怖に駆られ出るなら俺達は仲間の為に此
処に集う、其れはお前達とは正反対の意味でな」
衆「……」
裕太「僕も入れてもらうよ、モニターを壊した君達のお陰だ」
来栖「……まぁ関係ないが俺も関わった以上な」
クリス「兄貴……」
来栖「まさかこんな所でお前と共に戦うとはな、だが私情ではない
俺は俺の志の為に今はその線が重なっただけだ」
ヒロ「ひぇ……手が空いてるので一応来ました、宛にはし無いでく
ださい、だけど女の人が戦ってるのに僕だけ何もしない訳には行き
ませんから」
ゾンビと戦いながら叫ぶ2人。
ヌク「こりゃ!ワシも入れてくれ!ワシも参加したい!」
孝雄「俺もです!入れてくれ!だけどゾンビが多くて手が離せ」
悔しがる2人だった。
ヒロ「えーん変わって欲しいよぉおおお」
ヌク「ええい!こうなったらいいか!試合場所にゾンビと熊が入ら
無い様に裏方に周ってやる!いいか存分に見せてやれ、戦いとは何
かを」
頷く一同ーー
クリス「誠、目大丈夫か」
誠「ブレてるが心配無い、お前こそ腕上がらなくて戦えるのか?」
クリス「ハッお前に心配されるとは落ちぶれたモノだ俺も」
笑い合う2人は共に背後を重ね合わせ互いの弱点を覆う様に構えた。
『2人なら問題無ぇ』
来栖「おい、そこのヒロとやら、俺の武器はサーベルだ、前の敵は
必ず倒してやる、だが横の攻撃には弱い、フェンシングの弱点、武
器を持つ手の方向、右サイドだけでいい、お前は俺のカバーに入れ」
ヒロ「は、はい、右横だけなら何とかなるかも」
ハク「裕太、久々にアレやりますか」
裕太「ふふ、アレ?いいね、僕とヒロ、純衣、体重の軽い2人と僕
だけが出来るアレだね」
ハク「僕は併用してやる事もあるから一気に行くよ」
裕太「了解」
誠「いいか1チーム5人衆の内2人は倒せ、ハクと裕太は1人、早々
に倒しハクは純衣のサポートに回す、純衣と黒田の戦いに入らせる
な、アイツらに最高の舞台を用意するぞ、いいか勝てよ必ずだ!」
皆「了解だ!」
ハク「行くぞ!みんな!」
皆「おぉおおおお!」
其々が駆け出した、ぶつかり合う手下と仲間、激しい戦闘は始まっ
た、其々が引け無い想いを胸にーー
『命』『恐怖』『狂気』『愛』『志』『友情』を其々が抱きーー
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