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evil
クリス③
しおりを挟むクリスが居た場所はビルと塀の間にある外通路
真ん中と壁端に日本で言う『シラカシ』の様な
目隠しの役目を果たす樹木が通路の真ん中を中心に
壁端まで均等感覚に縦に植えられていた
景観美しい大広場に繋がる庭園通路だった
燃え盛る炎は広場から火の粉となりて通路側にも
落ちてくるもそこからは影となる場所も時間が
経てば明るく彼を照らすだろう。
【シラカシ】垣根等に日本でも良く見る塀の様な
切り方をした草木
慌てるも抜かりの無いクリスは手持ちの手榴弾を
隠れていた茂みの枝に紐とピンを結び、
その場所から等間隔に持ち合わせた手榴弾による
トラップ三つを次々に仕掛けていく、
一つは天糸でピン先を結びその糸は地面へと
埋れていた、光の反射を防ぐ為だ。
燃え盛る火を押さえ込み敵が通路に侵入する、
視界が通路に向くまで炎のカーテンの効果の
時間は早くて3分、
駆けながら時間を測り急ぐ、時折わざと地面を
えぐる様に踏み込み跡を残す。
庭にある石を取り手早く何かを行う
ガーデンに添えられた説明の板を杭から剥がす。
敵の足音に細心の注意と極限の集中力で距離を
計りながらも焦る事なく丁寧に素早くこなした。
戦う為の資源の少ない彼の戦い方は常に付き纏う
彼はそうやって生き抜いて来た、もはや慣れという
感覚に焦りからの失敗は無い。
毎日作るオムレツでも作るかの様な手捌きだ。
敵『ザッザッザッ……』
近づいては警戒の為、足を止め、辺りを見渡す
慣れた歩行と均等間隔で三角の陣を張るように
繰り返し距離を詰める、敵は通路出口にはもう既に
兵を配備しているだろう、距離を詰めあぶり
出す様に挟み撃ちにするのは定石だ、
だが壁塀の高さもあるが銃に取り付けられたライト
を照らし確認する兵、
逃げ道は何も戻るだけの道のみでは無い
急がねば見失う事もあり雑さもあった。
通路反対の敵「ガー……対面通路配備完了」
敵「了解した、よし詰めていくぞ」
敵が居た位置から換算するとライフルでクリスが
撃った場所からは300mあり、追い込み迄には罠を
全て設置した後である。
敵兵「動くモノあれば躊躇なく撃て」
「了解」
10名ほどが先程より正確に慎重に銃を構え
辺りを見回しジリジリと近寄る。
先ずは一陣3人が先行し進むが足元の紐に気づいた
片手を挙げ後続2人に注意を促す。
「気を付けろトラップだ」
「緊急な事態に罠を張る余裕がある奴か、
手練れだ気を付けろよ」
「……了解」
紐を跨ぎ3人は後方の味方に手の合図で手榴弾が
ある事を知らせた」
後方の兵も合図を促し、先方の味方兵を援護する
形で一定の距離を保つ様に展開して行く。
「よし全員渡ったな、爆破物があるとわかった以上
纏まっての移動は危険だ」
手振り合図で真ん中に一人
左に一人
右に一人
通路幅に合わせ広範囲に展開する指示を出す、
誰かが罠にかかっても全滅を防ぐ為だ。
良い判断だったがクリスにとっては好都合、
敵の視界範囲が大幅に膨れる異常危険が増す事
よりも敵兵同士が近いと銃の先を向けた時の挙動で
味方が言葉を発するよりも早くこちらが行動できる
更に広範囲になった事で一人一人の視界範囲が
それぞれの視界範囲となる、つまり纏まった時は
6個の目、離れた時点で2個の目となる、
全てに於いて完璧などは無い、良い点が増えれば
悪い点も増える、世の理である。
だが先方隊に於いてはクリスにとっては
是が非でも倒しておきたかった、それは後続の兵に
警戒を最大に高めさせ移動出来る時間を稼ぐ為だ
いくら手練れたクリスであっても多勢に無勢、
一気に押し込まれれば負けは確定だからである。
その場で立ち止まり辺りを見回す兵、
銃のライトが先方を映す……
「前方に罠はないか?」
安全を確認した指揮兵が合図を出す。
「よし、指示通り三方に分かれろ」
『……ピンッ』
その音に気付き驚いた顔をした兵士一人が叫ぶ
「ピンが外れた音が!逃げ……!」
その瞬間跨いだ筈の手榴弾が爆破、けたたましい
音を上げ、その場にいた兵士3人を
豪快に吹き飛ばした。
後方待機の兵が闇雲に爆破されたトラップのあった
前方に向けコンバットライフルを立て続けに
乱射する、ライフルから薬莢の焼けた匂いが辺りに
充満し後方の3人のリーダーが手を挙げて
ようやく攻撃は止んだ。
「……やったか?」
硝煙の立ちこめる煙が鼻をつく、
視界が明瞭になってきたその瞬間
50m程の先の茂みからライフルが
撃ち込まれた。
『パシュ』
単発で撃った弾は敵兵の脇を抜け
敵兵には当たらず虚しく壁に穴を開ける
「迂闊な奴め!そこか!撃て!」
兵に居場所を教える事となった発砲は今度は
返される番だ、3人による一斉射撃はまるで蜂の巣
を突くかの様に地面を弾き飛ばし土が宙に舞う。
「迂闊な奴め、まだだ!止めるな」
「撃て!撃て!撃て!」
合図と共に一斉に2陣目の3人が更に激しく追撃の
銃弾を放つ
『ドドドドドドド!』
凄まじいマシンガンの連射撃で土は上がり氷柱が
出来るような形で吹き飛んでいく、辺りの
木は粉々となり地面へと雨の様に降り注いでいった
硝煙の煙が立ち込める中、銃の的となった場所は
土が抉れ小さな穴が開く程だったが人の気配は
しなかった、銃で撃たれた反動か、弾がライフルに
当たったのか、まだ距離のあるその場所に
コンバットライフルから放たれたライトの光も
届きずらい、状況を判断、クリスの遺体が無いか
確かめる為尚、警戒しながら歩を進める兵士が、
撃った場所にライトが当たる位置まで近づき
確認をする。
だが其処にクリスの姿は見えなかった……
「居ない……確かに此処から銃は撃ち込まれた筈」
困惑する兵士
彼等の視界にドラグノフが映る、それは石で
固定された後があった、そしてトリガー付近に
何やら小さな機械の様な物が映る。
「何だこれは?」
「これは!リモートコントロールだ!
罠だ下がれ!」
意図された銃撃に気付き慌て一人の兵の合図と共に
後方へ下がる兵士がその場所から5歩程下がると
地面に浅い穴を掘り薄い板に土をかけて中に隠した
手榴弾と板が糸で繋がれていた。
兵の足が薄い板を踏み割れた板は二つに折れ
仕掛けてあった手榴弾が糸を引っ張る。
板の割れた音が固定された手榴弾のピンが外れる
音を妨げ気づかない兵士は反応が遅れ
気付いた矢先に兵士達の身体は爆発音と共に
宙へと舞った。
クルスはトリガー部分に遠隔操作でスイッチが入る
モーターを仕掛けていた。
電源を入れるとシンバルを叩くお猿人形みたいな
単純な物の類である。
トリガー部分に小さな小枝を刺し固定。
リモコンを入れると電源が入りトリガー
を引ける位の強さあるモーターに電源が入り発射。
誰でも玩具でも作れる簡易的な物ではあったが、
実戦でも応用できる物であった。
敵兵は訓練を受けた正規の兵士と見たクリスは
地面に仕掛けた手榴弾を察知されない様、
囮にドラグノフを犠牲に銃をリモートで発射、
仕掛けを知った兵士は後方に下がる、
敵ライトは常に銃の発射された位置を照らす為、
地面の色の変化に気づかせない為だ。
保険を掛けたクリスの見事な作戦である。
手前で地面の中に仕掛けた踏むとピンが外れる罠に
掛かってもよし、掛からなくてもライフルにより
その場を警戒する為行動は止まる、その場で留まる
以上、人の足は動きトラップを踏む確率は
格段と上がる。
また銃がライフル手前の仕掛けた銃撃に当たり
爆発したとしても先を急ぐ彼等の脳は罠を回避した
事により意識は前方へと向く。
無論正規兵の射撃の正確さをも判断した彼は
手前の手榴弾に当たる様な下手くそな銃の扱いは
しないであろうとの判断もあった。
既に罠を仕掛け彼が潜んでいた場所は前方の
出口付近ではなくUターンしての先方隊が罠に
かかった場所よりももっと手前
つまり彼は元の場所へと戻っていたのである。
訓練され充実した兵器を持つ彼等と違い、
少ない兵器や物資で戦う内戦による市街戦で
培ったゲリラ戦法である。
ゲリラ戦は過去物資の少ない色んなアイデアで
戦った日本も有名。
クリス「お上品な戦い方だねぇ……教科書でも
あんのか?まぁ習ってることは皆同じだからな
訓練を積めば積むほど正確にそして読まれやすい
軍経験者なんてこの世には腐るほどいるからな
そう言う意味では俺達はお前らの教科書の裏を
書く勉強はしたがな独学でだがな」
「そして行動パターンは腐る程見たし
経験してんだよ、人が変わろうが訓練のみで
実戦経験の少ないお前らの行動パターンは
訓練通りだ、読めてんだよ」
「まぁ指示通りしなきゃ怒られんだろうけどな」
「雑種には雑種の戦い方がある事を学びな」
そして残り4名が爆破地点へと三点に分かれ
駆け出した、その地点までは安全と踏んだのだろう
当然仕掛けた場所から先に進んでいると判断
足止めのトラップと考えるのは当然だったからだ。
敵兵は先に倒された銃がライフルとは当然判断して
いる、本来ならばマシンガンや複数が居たならば
最初の奇襲であの場にいた者にはもっと犠牲が
出ている、
□弾は3発、均等間隔の銃撃=ライフル
□敵は一人
□一人で勝てる人数では無い=当然逃げる
□追いつかれるのは当然、その為のトラップ
この思考は当然といえば当然だ。
誰もが多勢に無勢、火力の差も当然ながら
一人で味方救出等、映画でも無い限り、
兵であっても一旦後退するのが当然だ。
しかしクリスは違った。
無論無意識と言ってもいい衝動的な行動も
あったろう、だがライフルを放った以上、
その定石をも超える行動が必要だった。
ーー逃げると思うから逃げないーー
【まさか!】その行動は自分を守る為の行動
でもあった。
暗闇のその先に銃を放ちながら進む敵兵。
しかしクリスは実は最初の爆破地点近くに既に
潜んでいたのだった。
一陣目の爆発はクリスが居た場所を
先ずは悟られない様、視界を前方に向ける為、
ワザと兵の視界に入る位置に紐を仕掛けた。
それを見た兵はクリスが近くにいる事を確信、
そして急ぐ為、仲間に合図し、罠を除去する事無く
それを安全に跨ぎ乗り越える……
通り過ぎた際、極細の紐でピンに結んだ紐を
爆破危険範囲外の安全な場所から引っ張ったと
言う訳だ。
急ぎ仕掛ける作戦ではあったが見つからず倒す、
地の利を生かす戦法はやはり市街戦に長けた彼が
何枚も上だった結果である。
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