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【完結】「結婚してください」(太志視点)
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出来るなら、せっかくの早閉めの日に職場の飯会なんて来たくなかった。そんなんバイト連中もみんなそうだと思ってたのに、何故か俺が出した「会社からの金で菓子買って配布」っていう安牌より、増田が出した「店長の顔を肴に酒を飲む会」がバイトたちに支持された。意味がわからない。
仕方ないから居酒屋には来たが、明日も朝から営業だ。酒は控えろ飯を食えと事前に言い含めてある。
「誰が肴の真正面に座るかじゃんけんな」
「一発勝負?」
「あとで席替えしようよー」
「酒一杯だけだったら飲んで良いですか?」
「しゃぶしゃぶ食いてえ」
「あんま高いの勝手に頼むなよ」
バイトたちが案の定騒がしい。
俺も長谷さんみたいに家族理由があればさっさと帰れるのに。さっさと帰れれば少しくらい莞爾に会えたかもしれない。
今更どうしようもないことにぐだぐだ頭を使いたくなくて、一番奥の席に陣取ってさっさとメニューを開く。
「店長の隣誰座る?」
女子大生の西井だ。俺にまで筒抜けでそういう話をするな。さすがに傷付く。
「門脇。お前ここ座れ」
俺の隣を譲り合いされるのを見るのは気まずいので、さっさと生贄を指名してしまう。門脇ならそれくらいで恨まねえだろ。
「わーい。不戦勝ってやつですね。店長から指名してもらえるなんて名誉っす」
「は?嫌味かよ」
「ええ~なんで急にそんな捻くれるんですか。カンジさんも苦労しますね~」
莞爾の名を出されてつい顔が強張る。
「…なんでそこで莞爾が出てくるんだよ」
「あの人さっき、店長の顔見たさに斜向かいの靴屋から角まで三往復くらいしてて不審者でしたよ」
「莞爾、店に来てたのか?いつ?」
来たなんて聞いてない。莞爾からも特に連絡はなかったはずだ。何で、門脇が知っていて俺が知らない?
同棲を断られた時の黒く暗い感情の澱が、憤りで混ぜっ返されてしまいそうだ。
「ああ、と。えー…今日、休憩中に会いませんでしたか?」
門脇にしては珍しく言い淀んだが、言わない方が拗れると察してか、すんなりと「今日、休憩中にカンジさんに会って、この後店長に声をかけてみたらどうかと話してたんです」と白状した。
「結局、会わずに帰ったんですね。何か急用でも出来たのかもしれませんよ」
優秀な部下は、俺がぐるぐる余計なことを考え始める前に、先回りして妥当な意見を言い含めてくれる。
「……そうか。トラブルじゃないといいけど」
気遣いを無にして、胸奥の澱を巻き上げてしまうことのないよう、出来るだけ心平らかに保とうとするが、それでもやはり寂しいものは寂しい。
どうしようもなく会いたい。会いたいのに、会ったらいじけた気持ちが前面に出てきて嫌なことを言ってしまいそうな自分もいる。
乾杯後の最初の一口で、自分が持っているグラスが茶じゃなく誰かの酒のだったとは気付いていた。ただ、もう口をつけたもんをバイトに返すわけにもいかないし、一杯くらい酒が入ったところで明日に出るほど弱くもないので、何も言わずに飲み続けた。
ただ、アルコールの入ったぼけた頭が、考えなくていいことを考え出してしまうのを止められない。「どうせなら莞爾と飲みたかった」「なんで莞爾はいないんだ」「莞爾は何で帰っちゃったんだ」「莞爾が俺より優先する用って何なんだ」「莞爾にとって俺ってどこまでの存在なんだ」「莞爾はいつまで俺と恋人でいてくれるんだろう」
莞爾莞爾莞爾、莞爾ばっかりで我ながら嫌になる。
「ちょっと便所行ってくる」
隣に軽く告げて席を立つ。何をそんなに心配しているのか、門脇が「ついて行きますよ」と立ち上がったが、見計らったかのように門脇のスマホが着信したようだった。
「電話出ろよ。すぐ戻る」
何か言いたげな門脇を無視して、さっさと手洗いに立つ。用を済ませても気分は切り替わらず、不毛な脳味噌がうだうだ恋人への未練を反芻する。
この後はもうグラスを水に切り替えて、飯食ったらさっさと帰ろう。そう決めて、手洗いのドアを開けた。
「ふうちゃん」
びくりと情けなく体が硬直した。
静かに視線を上げる。しかし、目の前には望んだ人はいない。
「店長ってあだ名で呼ばせたりするんすね」
「…んだよ。俺は今気分悪いんだ。ダル絡みすんなら別のヤツのとこ行けよ、増田」
俺の進路を阻むように立つ増田は、目線にスマホを掲げた。クリアカバーの付いたのオフホワイトのスマホには、莞爾からのLINEの通知画面が表示されていた。嬉しい。現金なもので、莞爾からの連絡ひとつで俺の気分はすぐさま上昇する。
「なんでお前が俺のスマホ持って歩いてんだよ。返せ」
すぐ返すだろうと手のひらを出したが、何故か増田は俺の手を無視して、俺のスマホ画面をじっと見る。今新しいメッセージが届いたのだろう。
「店長、こいつ誰ですか?」
「誰でもいいだろ。お前には関係無いんだから」
手を伸ばすと増田は特に抵抗もせず、スマホはすんなり俺の手に戻った。すぐ莞爾からの連絡内容を確認したい衝動に駆られるが、増田の目の前でそれは憚られて、仕方なくスマホを尻ポケットに突っ込む。
「関係無くないです。店長、俺の気持ち気付いてますよね?」
「…さあな」
増田の横をすり抜けようとするが、案の定それを腕で阻まれて反射的に舌打ちが出る。
「今連絡来てるその男と、付き合ってるんですか?」
「は?」
何か察せられるような通知内容があったのだろうか。だとしても、今こいつ相手に肯定したらややこしくなる。
「店長、結婚したい彼女がいるんじゃなかったんですか?なのに男と遊んでるんですか?」
そう解釈するのかよ。二股に幻滅して引いてくんねえかな。
「だとしたら何だよ。それこそお前に関係あるか?」
高圧的に嘲笑って増田を押し退ける。半歩下がった増田の横を通り抜けようとして、油断した。腕を掴まれて体制を崩した先にあったのは、馴染まない温かさに包まれる感覚だった。それが、増田に抱きつかれたのだと理解した瞬間、怖気が走った。
「俺とも遊ぼうよ、ふうちゃん」
気持ち悪い。腕を振り払いたいのに、心臓が変な動きをしていて、体に思っている程力が入らない。なんで。
「ふうちゃんは抱く方?抱かれる方?もし抱かれる方なら最高なんだけど」
その呼び方をするな。そう呼んで良いのは一人だけだ。
パーカーの下に着たTシャツの中に、生ぬるい手が入り込んで脇腹を撫でる。気持ち悪さに鳥肌が立つ。
その手を掴んで引き剥がしたいのに、指が、手が、腕が震えてちゃんと掴めない。なんで、なんで。
「震えてんのかわいーね。ね、俺んち行こうよ。ちゃん介抱してあげる」
「やめろ…」
自分でも驚く程弱々しい声が出た。
嫌だ。
助けて、莞爾。
「そのくそ汚え手離せ。その可愛い子、俺のもんなんだよ」
そんな、俺に都合のいいことが、あるわけない。
「誰だよ。今取り込み中なの見てわかんだろ?」
「こんなとこで取り込むんじゃねえよ。店の迷惑考えろ。こっちは正直ぶん殴りてえの我慢してんだよ。わかれよ」
幻聴だったらどうしよう、なんて思いながら、恐る恐る振り返る。
「莞爾…」
短い黒髪、男らしい彫りの深い顔と密度の濃い睫毛、俺より少し高い背と、俺より厚い体。求めて止まなかった男が立っていた。
莞爾に会えたことが嬉しくて嬉しくて、まとわりついていた邪魔くせえ男を全力で引っ剥がして顔をぶん殴る。狭い通路の壁に頭をぶつける鈍い音がした。
「くそキモかった」
莞爾に抱きつけば、俺の大好きな腕が片手で腰を抱き寄せて、もう片手で頭を引き寄せてくれる。思う存分莞爾の首元に顔を埋める。
「遅くなってごめんね、ふうちゃん。ちょっと忘れもの取りに行ってた」
「鈍くせえな。それ俺より大事なもんなのかよ」
「いや。断然ふうちゃんの方が大事」
顔を上げて、莞爾の頬に俺の鼻先が触れそうな程の距離で睨む。思っていたよりずっと真っ直ぐ優しい目で見つめ返された。たぶん、嘘はない。
「じゃあ次はさっさと来い。俺を優先しろ」
「おっけーい」
楽しそうに笑った莞爾が軽いキスをする。くそ。カッコいい。こんなん許すわ。
「っんだよ!くっそ痛えな!さっきまで乗り気だったくせにセフレが来た途端俺は用無しかよ!」
頭を押さえて蹲ったまま増田ががなる。涙目だ。相当痛いらしい。
「全然乗り気じゃねえよ。キモ過ぎてビビっただけだ。お前まじでセフレ作るにしても場所とやり方考えろ。酒くせえし、キモいし、さっきの忘れてやるから今日は帰れよ」
「うう…キモいキモい言い過ぎ」
まじでヘコみ出した増田が不憫になったのか、莞爾が俺から離れて増田の目の前にしゃがみこんだ。
「やっぱり君が噂のマスダくんか。ふうちゃんとどうこうなりたいなら俺を負かしてみろよ。俺見た目以上にスペック高いから相当頑張んねえと無理だろうけど。あと頭コブになりそうだからちゃんと冷やせよ」
莞爾に優しく肩を叩かれた増田は拗ねたような微妙な顔で莞爾を睨んだが、すぐ脱力したような溜め息を吐いて立ち上がると「アホくさ」と呟いて席に戻っていった。
それを見送ってから振り返った莞爾は、俺の目を真っ直ぐ見てにこりと笑った。
「ふうちゃん、俺と一緒に帰ろうぜ」
「おう」
荷物を取りに一度席に戻った俺に、莞爾もべったりついて来た。莞爾がすげえ満面の笑みで「君らの可愛い井上店長の彼氏でーす。井上は俺がお持ち帰りしまーす」とえげつのないアピールをバイトたちにしまくる横で、俺は門脇に会社からの激励金に俺からの色を付けた金額を渡してこの場の仕切りを引き継いだ。馴れ初めから話そうとする莞爾の悪ノリに、何故か門脇がめちゃくちゃ大笑いしていた。笑いのツボがわからん。
「ふうちゃん、金は俺が出すからタクシーで帰るよ」
「金もったいねえよ。なんか急いでんのか?」
いつも通り駅に入ろうとする俺を莞爾がやんわりと止めた。
「ふうちゃんとゆっくり話したいこといっぱいあるんだ」
ネガティブなものを想像してしまって、心臓がどきりと跳ねる。ただ、莞爾は穏やかに微笑んでいて、そんな悪い話を引っ張り出そうとしているようには見えない。しばし躊躇ったが、俺は莞爾に従って駅前の乗り場に停車していたタクシーに乗り込んだ。
「遅くなったけど、これはクリスマスプレゼントね」
タクシーが走り出すとすぐに、莞爾は自身のリュックの中から小さな箱を取り出した。珍しくリュックなんか背負ってると思ったら、この小さな箱の為だったらしい。車内は暗く良く見えないが、なんとなく中身を察してしまうサイズ感だ。
「指輪か?」
「そう」
プレゼント、と言いつつもすぐ渡す気はないようで、小さな箱は莞爾の手のひらに握り込まれている。
言いたいことがあるのだろうと、「何?」と尋ねると莞爾はゆったりと口を開いた。
「指輪自体はふうちゃんへのプレゼントなんだけどさ、着ける指は俺へのプレゼントだと思ってここにして欲しいんだよね」
そう言って莞爾が優しく指先で撫でたのは、俺の左手の薬指だった。
「…なんだそれ。プロポーズみてえ」
嫌味のつもりで鼻で笑った俺に、莞爾は嫌な顔ひとつしないで、ただゆっくり頷いた。
「ふうちゃん、結婚してください」
「へ?」
嬉しさより戸惑いが先立って間抜けな声が出た。
「えー、何その雰囲気も色気も無い声。可愛いからいいけどさ」
「…本気じゃないだろ?」
「本気じゃないプロポーズなんてある?」
車窓から射し込む光に照らされた莞爾の表情は、ずっと変わらず優しいままだ。
でも。
「……お前、俺とは同棲できないって言ったじゃん」
「ええ?ふうちゃんそこから引っかかってたの?」
「引っかかるだろ」
「あー、あの時そんな気はしたんだよね。ふうちゃん、やっぱ忘れてたんだな」
「は?何?」
莞爾が苦笑いを浮かべて長く息を吐く。
「俺らの職業って同棲出来ないって話したことあるじゃん」
「……………………知らね」
聞いた、ような、気も、しなくも、ない、ような。
思いっきり目をそらすと、莞爾が吹き出した。
「忘れてたんじゃねえか」
「うるっせえなハゲ」
「うっわ。可愛くなくて可愛いなあ、もー」
俺が何しても可愛いなんて言うのはお前だけなんだよ。俺が可愛いなんて言われて嬉しいって思うのもお前だけなんだ。
「それで、返事は?」
莞爾の期待のこもった目と声が心地良い。
俺は悪い顔で、わざと仰々しく左手を莞爾に差し出した。
「浮気したらお前の薬指とちんこ噛み千切ってやるからな」
「ん。いいよ。嬉しい」
俺の手を恭しく取った莞爾が、薬指に銀色の指輪をはめると、その指先にキスをした。
「じゃあ、俺年明けたら寮出るからさ。ひとまずお互い通い婚な」
「は?寮出るなんて聞いてねえぞ」
「言ってねえもん。でも結婚するのに独身寮居座れないじゃん」
「結婚、たって、俺ら正式な結婚できるわけじゃねえし…」
「正式とかどうでもいいんだよ。形とかどうでもいい。俺とお前が結婚したって思える形ならなんでもいい。俺が寮を出んのは、俺がそうしたいからするだけ」
“こちら側”に道連れにすることへの、罪悪感に似たざらざらとした俺の感情を、莞爾は知ってか知らずか、「寮は狭えし汚えし緊急招集されまくるしパチと風俗に誘われまくるし、家賃安いこと以外いいことねえよ」と笑う。
「俺はふうちゃんと結婚して一つも後悔しねえよ。信じなくてもいいけど、せっかく俺すげえ幸せなのに肝心のふうちゃんがしけた顔すんなよ。可愛い顔で笑え」
「…逃さねえぞ」
俺が湿り気を帯びた瞼を誤魔化すように、唇を大きく歪めて笑うと、「すげえ可愛い」と莞爾はうっそりと笑い返した。
「ふうちゃん、勘違いすんなよ。俺がお前に捕まったんじゃなくて、お前が俺に捕まったんだよ」
年始の繁忙期が落ち着き、やっと莞爾の休みと被ったとある休日の朝。莞爾と会えるかとそわそわしていた俺の気分は、「今日の休みから五連休とって引っ越しする」「荷物ぶち込んだらすぐふうちゃん呼ぶから来てね」「通い妻ぐうシコ」というテンションの狂った連投連絡にへし折られた。一人暮らしとは言え、引っ越しの荷解きがそんなすぐ終わるわけねえだろが。
返信するのも面倒になってそのまま二度寝をした。
空腹を覚えて昼過ぎに起き出してみたものの、連勤でまともな買い物もしてなかったストッカーの中はほぼほぼ空っぽでどうしようもなかった。仕方なく、部屋着のスウェットの上にダウンを羽織り、財布と家鍵だけ持って部屋を出た。
近所のファミレスで飯を食ってる最中に家にスマホを置いてきたことに気付いたが、考えるとダルくなるので開き直ってデザートのチョコパフェまで食って、スーパーに寄ってからアパートに帰った。
アパートの前にくそ邪魔なサイズのトラックが停まっていて、胸がざわついた。よくテレビCMをやってる引越し業者のものだ。
いや。さすがに、そんな、まさかな。
荷物が運び込まれているのは、去年の秋頃空室になった俺の隣室だ。その前を通りつつさり気なく、扉が開けられたままの隣室の中をちらりと視線だけで覗く。
くっそ見知った俺の旦那と目が合った。
「ふうちゃん!おかえり!もうちょいしたら大物の運び込みも終わるから声かけようと思ってたんだよ!」
引越し業者と家電の配置か何かを確認をしていたらしい莞爾が、やたら元気よく俺に手を振った。
なんかムカついたのでスルーして自室に引っ込んだ。
買ってきたものを冷蔵庫にしまい、あえてスマホは見ずにゆっくり風呂に入って、インスタントコーヒーを淹れているとインターホンが鳴った。
「ふうちゃんが来てくれないなら俺が通えばいいんだよな」
玄関を開けると全く悪びれていない莞爾が楽しそうに押し入ってきた。
「…なんでここに越して来るって黙ってたんだよ。趣味悪いわ」
今淹れた方のカップを莞爾に渡しながら毒づけば、自分で思っていたよりだいぶ拗ねた子供のような言い方になった。誤魔化すように新しいカップにインスタントコーヒーの粉を入れる。
「つい悪戯心が出てしまいました」
「次やったら俺増田と遊び行くわ」
「絶対やりません許してください」
言われたわけでもないのに、自主的に冷たいフローリングの上に正座した、従順な旦那を見下ろす。しょげた様子がなんだか可哀想可愛くて、その横にしゃがんで「冗談だよ。行くわけねえだろ」と頬にキスを落とす。
「ふうちゃん、ぎゅーしたい」
「カップちゃんと置けよ」
体重を思いっきりかけるように上半身を預ける。莞爾を押し潰すつもりでいったが、予想されていたようでがっつり抱き留められた。
「あー、幸せだ」
「お前部屋の片付け終わってないのにいいのか?」
「いい。俺今日はふうちゃんちで寝る」
「最初からそのつもりだったな」
「お世話になります」
これから、莞爾がそばにいてくれるのだと、俺の人生に莞爾を巻き込んでいいんだと、そう思うと幸せな夢を見ているようで、胸が多幸感で張り裂けそうに軋む。
莞爾の体を後ろに軽く押して横たわらせ、その上に俺が馬乗りになる。腰を意味深に揺すれば、すぐに尻の下に硬さを感じる。
「ねえ、ふうちゃん?俺その気になってもいいのかな?」
「ちんこはもうその気だろ?」
体を這わせて、莞爾のジャージの上から唇で難くなったモノの形を強めになぞると、頭上から熱っぽい吐息が聞こえてくる。
「最初から俺だって、お前を帰らせる気なんか無かったよ。楽しもうぜ。なあ、莞爾」
俺があざとく誘えば、莞爾は俺の期待通り、幸せそうににっこり笑った。
仕方ないから居酒屋には来たが、明日も朝から営業だ。酒は控えろ飯を食えと事前に言い含めてある。
「誰が肴の真正面に座るかじゃんけんな」
「一発勝負?」
「あとで席替えしようよー」
「酒一杯だけだったら飲んで良いですか?」
「しゃぶしゃぶ食いてえ」
「あんま高いの勝手に頼むなよ」
バイトたちが案の定騒がしい。
俺も長谷さんみたいに家族理由があればさっさと帰れるのに。さっさと帰れれば少しくらい莞爾に会えたかもしれない。
今更どうしようもないことにぐだぐだ頭を使いたくなくて、一番奥の席に陣取ってさっさとメニューを開く。
「店長の隣誰座る?」
女子大生の西井だ。俺にまで筒抜けでそういう話をするな。さすがに傷付く。
「門脇。お前ここ座れ」
俺の隣を譲り合いされるのを見るのは気まずいので、さっさと生贄を指名してしまう。門脇ならそれくらいで恨まねえだろ。
「わーい。不戦勝ってやつですね。店長から指名してもらえるなんて名誉っす」
「は?嫌味かよ」
「ええ~なんで急にそんな捻くれるんですか。カンジさんも苦労しますね~」
莞爾の名を出されてつい顔が強張る。
「…なんでそこで莞爾が出てくるんだよ」
「あの人さっき、店長の顔見たさに斜向かいの靴屋から角まで三往復くらいしてて不審者でしたよ」
「莞爾、店に来てたのか?いつ?」
来たなんて聞いてない。莞爾からも特に連絡はなかったはずだ。何で、門脇が知っていて俺が知らない?
同棲を断られた時の黒く暗い感情の澱が、憤りで混ぜっ返されてしまいそうだ。
「ああ、と。えー…今日、休憩中に会いませんでしたか?」
門脇にしては珍しく言い淀んだが、言わない方が拗れると察してか、すんなりと「今日、休憩中にカンジさんに会って、この後店長に声をかけてみたらどうかと話してたんです」と白状した。
「結局、会わずに帰ったんですね。何か急用でも出来たのかもしれませんよ」
優秀な部下は、俺がぐるぐる余計なことを考え始める前に、先回りして妥当な意見を言い含めてくれる。
「……そうか。トラブルじゃないといいけど」
気遣いを無にして、胸奥の澱を巻き上げてしまうことのないよう、出来るだけ心平らかに保とうとするが、それでもやはり寂しいものは寂しい。
どうしようもなく会いたい。会いたいのに、会ったらいじけた気持ちが前面に出てきて嫌なことを言ってしまいそうな自分もいる。
乾杯後の最初の一口で、自分が持っているグラスが茶じゃなく誰かの酒のだったとは気付いていた。ただ、もう口をつけたもんをバイトに返すわけにもいかないし、一杯くらい酒が入ったところで明日に出るほど弱くもないので、何も言わずに飲み続けた。
ただ、アルコールの入ったぼけた頭が、考えなくていいことを考え出してしまうのを止められない。「どうせなら莞爾と飲みたかった」「なんで莞爾はいないんだ」「莞爾は何で帰っちゃったんだ」「莞爾が俺より優先する用って何なんだ」「莞爾にとって俺ってどこまでの存在なんだ」「莞爾はいつまで俺と恋人でいてくれるんだろう」
莞爾莞爾莞爾、莞爾ばっかりで我ながら嫌になる。
「ちょっと便所行ってくる」
隣に軽く告げて席を立つ。何をそんなに心配しているのか、門脇が「ついて行きますよ」と立ち上がったが、見計らったかのように門脇のスマホが着信したようだった。
「電話出ろよ。すぐ戻る」
何か言いたげな門脇を無視して、さっさと手洗いに立つ。用を済ませても気分は切り替わらず、不毛な脳味噌がうだうだ恋人への未練を反芻する。
この後はもうグラスを水に切り替えて、飯食ったらさっさと帰ろう。そう決めて、手洗いのドアを開けた。
「ふうちゃん」
びくりと情けなく体が硬直した。
静かに視線を上げる。しかし、目の前には望んだ人はいない。
「店長ってあだ名で呼ばせたりするんすね」
「…んだよ。俺は今気分悪いんだ。ダル絡みすんなら別のヤツのとこ行けよ、増田」
俺の進路を阻むように立つ増田は、目線にスマホを掲げた。クリアカバーの付いたのオフホワイトのスマホには、莞爾からのLINEの通知画面が表示されていた。嬉しい。現金なもので、莞爾からの連絡ひとつで俺の気分はすぐさま上昇する。
「なんでお前が俺のスマホ持って歩いてんだよ。返せ」
すぐ返すだろうと手のひらを出したが、何故か増田は俺の手を無視して、俺のスマホ画面をじっと見る。今新しいメッセージが届いたのだろう。
「店長、こいつ誰ですか?」
「誰でもいいだろ。お前には関係無いんだから」
手を伸ばすと増田は特に抵抗もせず、スマホはすんなり俺の手に戻った。すぐ莞爾からの連絡内容を確認したい衝動に駆られるが、増田の目の前でそれは憚られて、仕方なくスマホを尻ポケットに突っ込む。
「関係無くないです。店長、俺の気持ち気付いてますよね?」
「…さあな」
増田の横をすり抜けようとするが、案の定それを腕で阻まれて反射的に舌打ちが出る。
「今連絡来てるその男と、付き合ってるんですか?」
「は?」
何か察せられるような通知内容があったのだろうか。だとしても、今こいつ相手に肯定したらややこしくなる。
「店長、結婚したい彼女がいるんじゃなかったんですか?なのに男と遊んでるんですか?」
そう解釈するのかよ。二股に幻滅して引いてくんねえかな。
「だとしたら何だよ。それこそお前に関係あるか?」
高圧的に嘲笑って増田を押し退ける。半歩下がった増田の横を通り抜けようとして、油断した。腕を掴まれて体制を崩した先にあったのは、馴染まない温かさに包まれる感覚だった。それが、増田に抱きつかれたのだと理解した瞬間、怖気が走った。
「俺とも遊ぼうよ、ふうちゃん」
気持ち悪い。腕を振り払いたいのに、心臓が変な動きをしていて、体に思っている程力が入らない。なんで。
「ふうちゃんは抱く方?抱かれる方?もし抱かれる方なら最高なんだけど」
その呼び方をするな。そう呼んで良いのは一人だけだ。
パーカーの下に着たTシャツの中に、生ぬるい手が入り込んで脇腹を撫でる。気持ち悪さに鳥肌が立つ。
その手を掴んで引き剥がしたいのに、指が、手が、腕が震えてちゃんと掴めない。なんで、なんで。
「震えてんのかわいーね。ね、俺んち行こうよ。ちゃん介抱してあげる」
「やめろ…」
自分でも驚く程弱々しい声が出た。
嫌だ。
助けて、莞爾。
「そのくそ汚え手離せ。その可愛い子、俺のもんなんだよ」
そんな、俺に都合のいいことが、あるわけない。
「誰だよ。今取り込み中なの見てわかんだろ?」
「こんなとこで取り込むんじゃねえよ。店の迷惑考えろ。こっちは正直ぶん殴りてえの我慢してんだよ。わかれよ」
幻聴だったらどうしよう、なんて思いながら、恐る恐る振り返る。
「莞爾…」
短い黒髪、男らしい彫りの深い顔と密度の濃い睫毛、俺より少し高い背と、俺より厚い体。求めて止まなかった男が立っていた。
莞爾に会えたことが嬉しくて嬉しくて、まとわりついていた邪魔くせえ男を全力で引っ剥がして顔をぶん殴る。狭い通路の壁に頭をぶつける鈍い音がした。
「くそキモかった」
莞爾に抱きつけば、俺の大好きな腕が片手で腰を抱き寄せて、もう片手で頭を引き寄せてくれる。思う存分莞爾の首元に顔を埋める。
「遅くなってごめんね、ふうちゃん。ちょっと忘れもの取りに行ってた」
「鈍くせえな。それ俺より大事なもんなのかよ」
「いや。断然ふうちゃんの方が大事」
顔を上げて、莞爾の頬に俺の鼻先が触れそうな程の距離で睨む。思っていたよりずっと真っ直ぐ優しい目で見つめ返された。たぶん、嘘はない。
「じゃあ次はさっさと来い。俺を優先しろ」
「おっけーい」
楽しそうに笑った莞爾が軽いキスをする。くそ。カッコいい。こんなん許すわ。
「っんだよ!くっそ痛えな!さっきまで乗り気だったくせにセフレが来た途端俺は用無しかよ!」
頭を押さえて蹲ったまま増田ががなる。涙目だ。相当痛いらしい。
「全然乗り気じゃねえよ。キモ過ぎてビビっただけだ。お前まじでセフレ作るにしても場所とやり方考えろ。酒くせえし、キモいし、さっきの忘れてやるから今日は帰れよ」
「うう…キモいキモい言い過ぎ」
まじでヘコみ出した増田が不憫になったのか、莞爾が俺から離れて増田の目の前にしゃがみこんだ。
「やっぱり君が噂のマスダくんか。ふうちゃんとどうこうなりたいなら俺を負かしてみろよ。俺見た目以上にスペック高いから相当頑張んねえと無理だろうけど。あと頭コブになりそうだからちゃんと冷やせよ」
莞爾に優しく肩を叩かれた増田は拗ねたような微妙な顔で莞爾を睨んだが、すぐ脱力したような溜め息を吐いて立ち上がると「アホくさ」と呟いて席に戻っていった。
それを見送ってから振り返った莞爾は、俺の目を真っ直ぐ見てにこりと笑った。
「ふうちゃん、俺と一緒に帰ろうぜ」
「おう」
荷物を取りに一度席に戻った俺に、莞爾もべったりついて来た。莞爾がすげえ満面の笑みで「君らの可愛い井上店長の彼氏でーす。井上は俺がお持ち帰りしまーす」とえげつのないアピールをバイトたちにしまくる横で、俺は門脇に会社からの激励金に俺からの色を付けた金額を渡してこの場の仕切りを引き継いだ。馴れ初めから話そうとする莞爾の悪ノリに、何故か門脇がめちゃくちゃ大笑いしていた。笑いのツボがわからん。
「ふうちゃん、金は俺が出すからタクシーで帰るよ」
「金もったいねえよ。なんか急いでんのか?」
いつも通り駅に入ろうとする俺を莞爾がやんわりと止めた。
「ふうちゃんとゆっくり話したいこといっぱいあるんだ」
ネガティブなものを想像してしまって、心臓がどきりと跳ねる。ただ、莞爾は穏やかに微笑んでいて、そんな悪い話を引っ張り出そうとしているようには見えない。しばし躊躇ったが、俺は莞爾に従って駅前の乗り場に停車していたタクシーに乗り込んだ。
「遅くなったけど、これはクリスマスプレゼントね」
タクシーが走り出すとすぐに、莞爾は自身のリュックの中から小さな箱を取り出した。珍しくリュックなんか背負ってると思ったら、この小さな箱の為だったらしい。車内は暗く良く見えないが、なんとなく中身を察してしまうサイズ感だ。
「指輪か?」
「そう」
プレゼント、と言いつつもすぐ渡す気はないようで、小さな箱は莞爾の手のひらに握り込まれている。
言いたいことがあるのだろうと、「何?」と尋ねると莞爾はゆったりと口を開いた。
「指輪自体はふうちゃんへのプレゼントなんだけどさ、着ける指は俺へのプレゼントだと思ってここにして欲しいんだよね」
そう言って莞爾が優しく指先で撫でたのは、俺の左手の薬指だった。
「…なんだそれ。プロポーズみてえ」
嫌味のつもりで鼻で笑った俺に、莞爾は嫌な顔ひとつしないで、ただゆっくり頷いた。
「ふうちゃん、結婚してください」
「へ?」
嬉しさより戸惑いが先立って間抜けな声が出た。
「えー、何その雰囲気も色気も無い声。可愛いからいいけどさ」
「…本気じゃないだろ?」
「本気じゃないプロポーズなんてある?」
車窓から射し込む光に照らされた莞爾の表情は、ずっと変わらず優しいままだ。
でも。
「……お前、俺とは同棲できないって言ったじゃん」
「ええ?ふうちゃんそこから引っかかってたの?」
「引っかかるだろ」
「あー、あの時そんな気はしたんだよね。ふうちゃん、やっぱ忘れてたんだな」
「は?何?」
莞爾が苦笑いを浮かべて長く息を吐く。
「俺らの職業って同棲出来ないって話したことあるじゃん」
「……………………知らね」
聞いた、ような、気も、しなくも、ない、ような。
思いっきり目をそらすと、莞爾が吹き出した。
「忘れてたんじゃねえか」
「うるっせえなハゲ」
「うっわ。可愛くなくて可愛いなあ、もー」
俺が何しても可愛いなんて言うのはお前だけなんだよ。俺が可愛いなんて言われて嬉しいって思うのもお前だけなんだ。
「それで、返事は?」
莞爾の期待のこもった目と声が心地良い。
俺は悪い顔で、わざと仰々しく左手を莞爾に差し出した。
「浮気したらお前の薬指とちんこ噛み千切ってやるからな」
「ん。いいよ。嬉しい」
俺の手を恭しく取った莞爾が、薬指に銀色の指輪をはめると、その指先にキスをした。
「じゃあ、俺年明けたら寮出るからさ。ひとまずお互い通い婚な」
「は?寮出るなんて聞いてねえぞ」
「言ってねえもん。でも結婚するのに独身寮居座れないじゃん」
「結婚、たって、俺ら正式な結婚できるわけじゃねえし…」
「正式とかどうでもいいんだよ。形とかどうでもいい。俺とお前が結婚したって思える形ならなんでもいい。俺が寮を出んのは、俺がそうしたいからするだけ」
“こちら側”に道連れにすることへの、罪悪感に似たざらざらとした俺の感情を、莞爾は知ってか知らずか、「寮は狭えし汚えし緊急招集されまくるしパチと風俗に誘われまくるし、家賃安いこと以外いいことねえよ」と笑う。
「俺はふうちゃんと結婚して一つも後悔しねえよ。信じなくてもいいけど、せっかく俺すげえ幸せなのに肝心のふうちゃんがしけた顔すんなよ。可愛い顔で笑え」
「…逃さねえぞ」
俺が湿り気を帯びた瞼を誤魔化すように、唇を大きく歪めて笑うと、「すげえ可愛い」と莞爾はうっそりと笑い返した。
「ふうちゃん、勘違いすんなよ。俺がお前に捕まったんじゃなくて、お前が俺に捕まったんだよ」
年始の繁忙期が落ち着き、やっと莞爾の休みと被ったとある休日の朝。莞爾と会えるかとそわそわしていた俺の気分は、「今日の休みから五連休とって引っ越しする」「荷物ぶち込んだらすぐふうちゃん呼ぶから来てね」「通い妻ぐうシコ」というテンションの狂った連投連絡にへし折られた。一人暮らしとは言え、引っ越しの荷解きがそんなすぐ終わるわけねえだろが。
返信するのも面倒になってそのまま二度寝をした。
空腹を覚えて昼過ぎに起き出してみたものの、連勤でまともな買い物もしてなかったストッカーの中はほぼほぼ空っぽでどうしようもなかった。仕方なく、部屋着のスウェットの上にダウンを羽織り、財布と家鍵だけ持って部屋を出た。
近所のファミレスで飯を食ってる最中に家にスマホを置いてきたことに気付いたが、考えるとダルくなるので開き直ってデザートのチョコパフェまで食って、スーパーに寄ってからアパートに帰った。
アパートの前にくそ邪魔なサイズのトラックが停まっていて、胸がざわついた。よくテレビCMをやってる引越し業者のものだ。
いや。さすがに、そんな、まさかな。
荷物が運び込まれているのは、去年の秋頃空室になった俺の隣室だ。その前を通りつつさり気なく、扉が開けられたままの隣室の中をちらりと視線だけで覗く。
くっそ見知った俺の旦那と目が合った。
「ふうちゃん!おかえり!もうちょいしたら大物の運び込みも終わるから声かけようと思ってたんだよ!」
引越し業者と家電の配置か何かを確認をしていたらしい莞爾が、やたら元気よく俺に手を振った。
なんかムカついたのでスルーして自室に引っ込んだ。
買ってきたものを冷蔵庫にしまい、あえてスマホは見ずにゆっくり風呂に入って、インスタントコーヒーを淹れているとインターホンが鳴った。
「ふうちゃんが来てくれないなら俺が通えばいいんだよな」
玄関を開けると全く悪びれていない莞爾が楽しそうに押し入ってきた。
「…なんでここに越して来るって黙ってたんだよ。趣味悪いわ」
今淹れた方のカップを莞爾に渡しながら毒づけば、自分で思っていたよりだいぶ拗ねた子供のような言い方になった。誤魔化すように新しいカップにインスタントコーヒーの粉を入れる。
「つい悪戯心が出てしまいました」
「次やったら俺増田と遊び行くわ」
「絶対やりません許してください」
言われたわけでもないのに、自主的に冷たいフローリングの上に正座した、従順な旦那を見下ろす。しょげた様子がなんだか可哀想可愛くて、その横にしゃがんで「冗談だよ。行くわけねえだろ」と頬にキスを落とす。
「ふうちゃん、ぎゅーしたい」
「カップちゃんと置けよ」
体重を思いっきりかけるように上半身を預ける。莞爾を押し潰すつもりでいったが、予想されていたようでがっつり抱き留められた。
「あー、幸せだ」
「お前部屋の片付け終わってないのにいいのか?」
「いい。俺今日はふうちゃんちで寝る」
「最初からそのつもりだったな」
「お世話になります」
これから、莞爾がそばにいてくれるのだと、俺の人生に莞爾を巻き込んでいいんだと、そう思うと幸せな夢を見ているようで、胸が多幸感で張り裂けそうに軋む。
莞爾の体を後ろに軽く押して横たわらせ、その上に俺が馬乗りになる。腰を意味深に揺すれば、すぐに尻の下に硬さを感じる。
「ねえ、ふうちゃん?俺その気になってもいいのかな?」
「ちんこはもうその気だろ?」
体を這わせて、莞爾のジャージの上から唇で難くなったモノの形を強めになぞると、頭上から熱っぽい吐息が聞こえてくる。
「最初から俺だって、お前を帰らせる気なんか無かったよ。楽しもうぜ。なあ、莞爾」
俺があざとく誘えば、莞爾は俺の期待通り、幸せそうににっこり笑った。
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小説家になろう、pixiv、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、fujossyにも掲載しています。
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