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第1部 最終章

オレオ会戦(中)2

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 敵が後退せず何とか踏み留まって戦闘を継続する様子を見てアマンダは敵が予備を投入した事を確信する。
「ここで予備戦力を投入してきたと言う事は後方には騎兵を除けば対した戦力は残っていないと見て良い……か。」
 アマンダはそうつぶやいた後、側にいる副将の方を向いた。
「モンバル、ここは任せる。」

「承知いたしました。お嬢様はどちらへ……」
 前線から離れようとするアマンダに副将は尋ねる。
「私は敵の左側面に周り、一気に敵将を狙う。」
 アマンダは副将の問いに不敵な笑みを浮かべて答えた。



☆☆☆☆☆☆



 その頃旧フラリン王国王都バリにあるヴェルサルユス宮殿の一室。
 ジルの所に顔を出し、執務室に戻ったフェリオル王の元に教皇の使節団が旧フラリン王国領南東の都市シュトラースに到着したと言う報が入ったのである。
「いよいよか。」
 フェリオルの言葉に報告に来たギニアスは頷いて、口を開く。
「戦争準備は万端ですが、ロアーヌ帝国やトスカナ王国の交渉等を誰に任せるかと言う問題があります。爵位を持つ貴族が必要となりますが……」
 ギニアスの言葉にフェリオルは苦笑を浮かべる。
「ロドリゲス男爵……今は子爵だったか。奴に任せよ。」

「ロドリゲス子爵でありますか?能力は申し分ないですが、あまり重用するのも危険かと。」
 ギニアスの助言にフェリオルは苦笑を浮かべる。
 ロドリゲス子爵はフェリオルが王位を簒奪すべく挙兵した時からフェリオルに従った唯一の貴族である。所領はフラリン王国領に転封されるが、2倍に加増され、さらに旧フラリン王国王都バリの代官を務める事が内定している。
 先見性もあるし、才覚もある男であるが、ギニアスから見ても相当の野心家でもあった。隙を見せれば寝首をかく事も躊躇しないだろう。今回も手柄を立てすぎれば、伯爵になる事は固い。

「確かに子爵は野心は強いが、あやつは私が相当追い詰められない限り裏切れぬよ。簒奪王に取り入る事で成り上がった者等高位貴族が決して許さぬからな。それが解らぬ程愚かではない。」
 フェリオルは外国や一部諸侯が用いている自分への蔑称を用いた。自国の諸侯にすらここまで嫌われている者から重用されて出世した者をプライドだけ高い高位貴族が認める訳がない。フェリオルがいなくなれば、ロドリゲス子爵は高位貴族達によって排斥されるしか道はないのだ。子爵とフェリオルはある意味一蓮托生なのである。

「確かに陛下のおっしゃる通りであります。しかし……それでも警戒は必要です。歴史に名を遺す英雄を討つのは大抵そのような小者なのですから。」

 ギニアスの助言をフェリオルは苦笑を浮かべて頷く。

「そうだな。確かにお前の言う通り警戒は必要だ。しかし、同時にあの才は有用だ。役に立つ間はせいぜい我々の野望のために役立てようではないか……」



☆☆☆☆☆☆




 アマンダが騎兵50騎を率いてフリーランス軍の左側面に回り込んだ時、敵部隊にも動きがあった。
 敵の軍勢から騎兵が出てきた。敵騎兵部隊は隊列を整えながら、こちらに向かってきた。
「敵は60騎から80騎か。面白い。」
 アマンダは楽しそうな笑みを浮かべる。
「こちらも隊列を整えよ。敵騎兵を殲滅するぞ」
 アマンダを先頭にオレンボー辺境伯軍の騎兵部隊も突撃体制に入りフリーランス軍の騎兵が速歩から突撃に変わる。

「小娘、その首もらい受ける!!」
 フリーランス軍騎兵の先頭にいた鮮やかな甲冑を着た隊長らしき騎士が叫ぶ。
 それを聞いたアマンダが眼を険しく据わらせる。

 加速した両軍の騎兵部隊が激突した。
 槍に貫かれ馬から落馬する騎士、馬が傷つけられ、馬とともに倒れる騎兵が両軍に相次いだ。
 そんな中、アマンダに挑んだ騎士隊長は兜と鎧の間で別れて首が飛んでいた。
「敵騎士隊長、アマンダ・オレンボーが討ち取った!!」
 アマンダの叫びにオレンボー辺境伯軍の騎士達は歓声を上げ、一方のフリーランス軍の騎兵は動揺が走る。そして指揮官を失ったフリーランス軍の騎兵隊はすぐに壊走に移った。
「追撃しますか?」
 オレンボー辺境伯軍の騎士の1人がアマンダの側に馬を近づけて尋ねる。
「逃走する敗残兵等放っておけ。」
 そうアマンダは答えながら敵軍を観察する。
「やはり、後衛が薄いな。」
 アマンダは笑みを浮かべてそうつぶやいた後、部下に号令を出す。
「敵将を狙う。我に続け!!」
 アマンダが馬を走らせ、オレンボー辺境伯軍の騎士が後に続いた




 リューベック軍左翼を預かるバルトルト・チェルハの元にラトム大隊長から伝令が到着した。
 ベール伯とその軍勢が降伏したとの事であった。
 これで大勢は決した。
 後は左翼が敵中央軍の側面をつくだけ。
「隊列を組みなおすぞ。オレンボー辺境伯軍が抑えている敵援軍を殲滅し、敵中央軍を討つ。この戦我らの勝ちだ。」
 バルトルトの命を受け、本営に詰めていた将校達も動き出した。
 黒狼隊は降伏に対応する部隊を残し、それ以外の隊は東へ進路を取る。



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