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第5章 蟻の巣抹消作戦

-75- 蟻の巣抹消作戦Ⅴ〈人型〉

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 クワガタムシ型の他には1本角と分厚い装甲が特徴のカブトムシ型。
 細身だが背中に巨大な発光する翼を持つチョウ型。
 全身に鋭い針、両手に長い槍を持つ小型のハチ型。

 どいつもこいつも個性豊かなものだ。
 優先すべきなのはコアの探索だけど、こいつらは今までの敵と違いすぎる……!
 ならば、するべきことは1つ!

『全機戦闘態勢! 目の前の4体のモンスターを排除する!』

 チームのみんなから『了解』の声。
 脅威を感じているのは私だけじゃなさそうだ。

『私が包囲を乱す!』

 4機はそれぞれ通路を塞ぐように立っている。
 つまり、フロアの中央にいる私たちは包囲されている。
 とりあえずはこの陣形を崩した後は敵の1体を集中的に狙い撃破。
 4体3の数的有利を作って押し切るのが無難だけど……。

『まあ、そんなに弱くはないよね……!』

 クワガタムシ型をオーガランスで突く!
 しかし、その槍の穂先は2本の湾曲した刀で受け流されてしまった。
 なら左腕の盾に仕込まれたDエナジーソードで斬る!
 だが、クワガタムシの腕は4本ある。
 残った2本の腕で盾を掴み、Dエナジーの刃が振り下ろされないように支える!

『こっちにはまだ武器がある!』

 背中に背負ったスタビライザーソードと腰にマウントされている2丁のシューターを使って至近距離で射撃を浴びせていく!
 いくら装甲が分厚くても、ずっと食らってるわけにはいかないでしょう!
 装甲を損傷したクワガタムシ型は羽を広げ空中へと逃れる。
 そうか、こいつら全員飛べるのか……!

 他の虫たちに目を向けると、全員が飛行しながらチームを翻弄していた。
 こっちで飛べる機体は私だけ……。
 他の機体には何とか射撃で敵を撃ち落としてもらわないといけない。

 でも、敵の中には飛ぶのが苦手そうなのもいる。
 カブトムシ型は重装甲な分、機動力に難があるようだ。
 こういう長所と短所の関係もDMDに似ている……。
 逆に言えば、こちらの常識の範囲内の敵とも言える。

『チャージ……チャージ……チャージ完了!』

 葵さんのポラリス・グリントがそのライフルでカブトムシ型に狙いを定める。
 そう思った瞬間には引き金が引かれていた!
 照準を合わせるのが速い……!

 放たれた高エナジーの弾丸は正確にカブトムシ型の胴体を貫く!
 DMDにとって胴体は重要なパーツがたくさん集まる場所で、そこを破壊されれば機能が停止するけど、こいつらは果たして……。
 不安とは裏腹にカブトムシ型は通常のモンスターと同じように消滅した。

 DMDの姿を模していてもモンスターはモンスター。
 胴体を貫けば倒すことが出来る!
 こいつらは私たちにとってまったく正体不明の敵じゃないんだ。

『蒔苗さん! チョウ型の相手をお願いしますわ! こいつ速い上にエナジーを弾きますの!』
『了解!』

 カブトムシ型とは逆に飛ぶのが得意そうなチョウ型は脆そうな体で華麗に宙を舞う。
 攻撃のほとんどを回避しているし、偶然カスってもそれがDエナジーによる攻撃なら特殊な装甲で弾いてしまうようだ。
 ここは飛べる私がオーガランスのような実体武器で倒すべき!
 それに飛行の華麗さなら私だって負けていない。

 数十秒間のドッグファイトの後、私の槍はチョウ型の細い胴体を捉えた。
 刺さってしまえば脆い脆い。
 2体目の人型昆虫を撃破し、残りは2体……。
 いや、ディオス・ロゼオがハチ型と交戦している。

 ハチ型が両手に持った長細い槍でディオス・ロゼオに突撃。
 それに対してロゼオは槍を両手で掴み取って止める。
 力と力の押し合いが始まったかと思ったけど、ロゼオにはショルダーキャノンがある。
 ハチ型が百華さんの作戦に気づき、槍を手放して逃れようとしたときにはもう遅い。
 ショルダーキャノンから放たれた桜色の光がハチ型を消し飛ばしていた。

 これで残りは1体……!
 他のモンスターに比べたら強いけど、対応出来ないレベルではない。
 それこそ出てくるモンスターがすべてこのレベルにならない限りは……。

『……今日は悪い予感が当たる日ね』

 聞こえてくる無数の足音、現れる漆黒の機体……。
 このダンジョンの名前は蟻の巣だったよね。
 仮の名前とはいえ、ピッタリなものをつけるじゃない!
 通路から押し寄せてくる複数のアリ型モンスター!
 そのすべてが人型で、機械の体を持っている……!

 ただ、サイズはさっきのハチ型よりも小型で特徴的な武器も持っていない。
 おそらく戦闘能力では最初の4機に劣るはず……。
 でも、何よりも数が多い!
 見える範囲でも10機以上!
 これから増える可能性だってある!

 全滅を狙っていたら時間の大幅なロスは避けられない。
 しかし、これだけの数の敵を無視して、もし地上にでも出られたら……!

『蒔苗さん! ここはわたくしたちに任せて、あなたはコアの破壊を!』

『でも、これだけの数を3機だけじゃ……!』

『なんとか耐えますわ!』

 確かにコアさえ破壊してしまえばモンスターは増えなくなる。
 万事解決なのは間違いないけど……!

『蒔苗様、私も蘭さんの提案に賛成です。このダンジョンはモンスターを生み出し続けます。しかも、短時間でどんどん強く進化しています。1分1秒でも早くコアを破壊するのが最善の策だと思います。ただ、この人型昆虫を野放しにすることも出来ません。誰かがこの敵を足止めし、誰かがコアを破壊しなければならないのです』

『百華さん……! 了解しました! 萌葱蒔苗、突貫します!』

 そもそも私が単独でコアの破壊に向かうプランは存在する。
 なぜなら、蘭と葵さんはブレイブ・レベルが足りなくて、ダンジョンの最奥に来ることが出来ないからだ。
 レベル45にあるコアに手が届くのは私と百華さんのみ……。

 だから、百華さんに何かトラブルがあった場合は自動的に私の単独行動になる。
 可能性としては全然ありえた話なんだ。
 ゆえに心の準備は出来ている……!
 私が1人でもコアを破壊して見せる!

『でも、こいつだけは倒していきます!』

 アリ型の登場で存在感が薄くなっていたけど、まだクワガタムシ型のあいつは生きている!
 数で押してくるアリの中に戦闘能力に優れたあいつが混ざるのは危険この上ない!
 だから、倒してから行く!

『貫けオーガランス!』

 その時だった。
 オーガランスから萌葱色のオーラが伸び、クワガタムシ型のボディを貫いた!
 突然のことに対応出来なかったクワガタムシ型はそのまま消滅した。

 今回もオーラを出そうなんて思っていなかったのに出た……!
 ありがたい話だけど、もっと素直に出て来てくれたらここにいる敵だってさっさと全滅させられるのに!
 まあ、今そんなことを考えてもしょうがないか。

『みんな、無理しないでね!』

 私はフロアから伸びる4本の通路の内1本を直感で選んだ。
 そして、最大加速でその通路に突っ込んでいった。
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