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第3章 友情と日常
-31- 蒔苗会議
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食堂のテーブルには案の定大量の料理が並ぶことになった。
でも一番驚くべきなのは、その大量の料理を昼休みという短い時間でペロリと平らげてしまうみんなの食欲だと思う。
特に芽衣なんて細い体してるのに、どこにあんな量が入っていくんだろうか……。
まあ、そういう私もみんなの食べっぷりに釣られて結構食べてしまったけど、おしゃべりしながらの昼食は楽しかったし、案外自分もたくさん食べられるんだなぁと思っていた。
この時までは……。
「ね、眠すぎる……」
午後の授業も眠気との戦いになった。
たくさん食べた結果、消化にエネルギーを持っていかれ頭はボーッとして仕方ない。
結果として1日のほとんどをボーッとして過ごしたわけだけど、脳を休めるというミッションは確実に果たせているので……良しとしよう。
そんなこんなですべての授業を切り抜け、私は終礼まで戦い抜いた。
この時の解放感は何事にも代えがたいものがある。
軽いカバンを片手に学校を出て、愛莉たちと一緒に家路につく。
みんな途中まで帰る道が一緒なのだ。
「なにはともあれ、今日は元気な蒔苗が見れて良かったよ~。授業は相変わらずつまんないけど、蒔苗に会えるだけで学校に来る価値があるってね」
「流石に芳香はもう少し勉強した方が良いと思うけどね……。まあでも、元気な姫に会えて良かったっていうのは同意よ! ぶっちゃけ、休む前より元気になってない?」
「そりゃ休む前より後の方が元気になるのは普通じゃない? お葬式って普通は2日間だけだから、土日は好きに過ごせるわけだし~」
「あー、それもそうか。でも、疲れが取れて元気になったって感じでもないような……。もっとこう、根本的なところから『元気元気!』みたいな?」
「雑な説明だな~。まっ、わからんでもないけどさ」
芳香と芽衣が私について分析している……!
確かに言葉としては雑だけど、芳香の分析は当たっている。
休んで疲れが取れたわけじゃなくて、もっと根本的な部分から私は変わったんだ。
でも、言い出しにくい~!
実は自分が日本を代表する大企業の創始者の孫でしたってカミングアウトするタイミングは学校では教えてくれない!
「私も蒔苗ちゃんの雰囲気が変わったと思う……。でも、そうなるのが当然の出来事だったと思うし、変わった結果前よりも元気な蒔苗ちゃんになれたなら、それは嬉しいことだなって……」
「愛莉……ありがとう。でも、そんな大幅に変わったわけじゃないからね! コンビニの『さらにおいしくなりました!』ってシールが貼ってるおにぎりくらい微々たる変化だから!」
「あれ、本当に変わってるのかな……って、そういうことじゃなくて、私は蒔苗ちゃんにもう会えなくなるんじゃないかなって思ってたくらいだから、また会えたのがすごく嬉しかったの」
「ど、どうしてそこまで思い詰めてたの……?」
「だって、高校生で1人暮らしって珍しいし、蒔苗ちゃんは親戚がいないから仕方なく1人で暮らしてたわけだし、お葬式でもし親戚の人に会ったら、引き取られて遠くに行っちゃうんじゃないかなって考えちゃった……」
「あー、なるほどね……」
割と論理的な不安の感じ方だった……。
確かにお父さんが亡くなって、お母さんが病に倒れてるのに、そのまま娘が1人で放置っていうのは、常識で考えればおかしな話だ。
親戚の人が見つかれば、引き取られる可能性は全然あるだろう。
「大丈夫だよ。私は自分の意思でここにいるし、これからも自分の力でここにいる。愛莉から離れたりしないよ」
愛莉の手をぎゅっと握る。
あったかくて柔らかい感触が伝わってくる。
「うん……わかった。蒔苗ちゃんのこと信じてるから」
「あー! いいなぁ~! 私も蒔苗と手をつなぎたい~!」
「私も! 私にも姫のお手を!」
「はいはい、わかったわかった!」
少しの間握手会を開いた後、私たちは再び帰り道を歩く。
そして、別れの交差点までやってきた。
この大きな交差点を芳香は右に、芽衣は左に、私はまっすぐに帰る。
愛莉は交差点の手前のマンションに住んでいるので、この交差点を渡らない。
「じゃ、今日はみんな大人しく帰るってことで!」
「りょうか~い」
「また明日」
「うん、みんなまた明日! 今日はいろいろありがとう!」
4人それぞれの方向へ帰っていく。
今日は楽しかったなぁ~。
あんなに心配してくれる友達がいるなんて私は幸せ者だ。
これからはあんまり無茶は出来ないなぁ。
でも、戦っている最中は無茶かどうか判断がつかないのも事実。
そこんところは育美さんとか周りの人の意見をしっかり聞いていかないとね。
「さて、育美さんが来る前にパーティの準備をしておかないと!」
近所のスーパーで材料の買い込みよ!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
みんなが去った交差点に、愛莉は立ち尽くしていた。
友人の背中を見送り、普段なら家に帰るところを彼女は帰れずにいた。
そこへ特に示し合わせたわけでもないのに戻ってくる芳香と芽衣。
交差点に集った3人の想いはほぼほぼ一緒だった。
代表して口を開いたのは……愛莉だ。
「蒔苗ちゃん……流石にちょっと変わりすぎじゃないかな……」
その言葉にうなずく芳香と芽衣。
彼女たちは蒔苗に起こった変化がコンビニの『さらにおいしくなりました!』ってシールが貼ってるおにぎり程度では済まないと確信していた。
「棚ごとごっそり別の商品に入れ替わってるレベルの変化よ、これは……」
「一体、お葬式で何があったんだろうね~。良いことだとは思うんだけど、お葬式で良いことってのが思い当たらないや」
3人の少女による蒔苗会議が……始まった。
でも一番驚くべきなのは、その大量の料理を昼休みという短い時間でペロリと平らげてしまうみんなの食欲だと思う。
特に芽衣なんて細い体してるのに、どこにあんな量が入っていくんだろうか……。
まあ、そういう私もみんなの食べっぷりに釣られて結構食べてしまったけど、おしゃべりしながらの昼食は楽しかったし、案外自分もたくさん食べられるんだなぁと思っていた。
この時までは……。
「ね、眠すぎる……」
午後の授業も眠気との戦いになった。
たくさん食べた結果、消化にエネルギーを持っていかれ頭はボーッとして仕方ない。
結果として1日のほとんどをボーッとして過ごしたわけだけど、脳を休めるというミッションは確実に果たせているので……良しとしよう。
そんなこんなですべての授業を切り抜け、私は終礼まで戦い抜いた。
この時の解放感は何事にも代えがたいものがある。
軽いカバンを片手に学校を出て、愛莉たちと一緒に家路につく。
みんな途中まで帰る道が一緒なのだ。
「なにはともあれ、今日は元気な蒔苗が見れて良かったよ~。授業は相変わらずつまんないけど、蒔苗に会えるだけで学校に来る価値があるってね」
「流石に芳香はもう少し勉強した方が良いと思うけどね……。まあでも、元気な姫に会えて良かったっていうのは同意よ! ぶっちゃけ、休む前より元気になってない?」
「そりゃ休む前より後の方が元気になるのは普通じゃない? お葬式って普通は2日間だけだから、土日は好きに過ごせるわけだし~」
「あー、それもそうか。でも、疲れが取れて元気になったって感じでもないような……。もっとこう、根本的なところから『元気元気!』みたいな?」
「雑な説明だな~。まっ、わからんでもないけどさ」
芳香と芽衣が私について分析している……!
確かに言葉としては雑だけど、芳香の分析は当たっている。
休んで疲れが取れたわけじゃなくて、もっと根本的な部分から私は変わったんだ。
でも、言い出しにくい~!
実は自分が日本を代表する大企業の創始者の孫でしたってカミングアウトするタイミングは学校では教えてくれない!
「私も蒔苗ちゃんの雰囲気が変わったと思う……。でも、そうなるのが当然の出来事だったと思うし、変わった結果前よりも元気な蒔苗ちゃんになれたなら、それは嬉しいことだなって……」
「愛莉……ありがとう。でも、そんな大幅に変わったわけじゃないからね! コンビニの『さらにおいしくなりました!』ってシールが貼ってるおにぎりくらい微々たる変化だから!」
「あれ、本当に変わってるのかな……って、そういうことじゃなくて、私は蒔苗ちゃんにもう会えなくなるんじゃないかなって思ってたくらいだから、また会えたのがすごく嬉しかったの」
「ど、どうしてそこまで思い詰めてたの……?」
「だって、高校生で1人暮らしって珍しいし、蒔苗ちゃんは親戚がいないから仕方なく1人で暮らしてたわけだし、お葬式でもし親戚の人に会ったら、引き取られて遠くに行っちゃうんじゃないかなって考えちゃった……」
「あー、なるほどね……」
割と論理的な不安の感じ方だった……。
確かにお父さんが亡くなって、お母さんが病に倒れてるのに、そのまま娘が1人で放置っていうのは、常識で考えればおかしな話だ。
親戚の人が見つかれば、引き取られる可能性は全然あるだろう。
「大丈夫だよ。私は自分の意思でここにいるし、これからも自分の力でここにいる。愛莉から離れたりしないよ」
愛莉の手をぎゅっと握る。
あったかくて柔らかい感触が伝わってくる。
「うん……わかった。蒔苗ちゃんのこと信じてるから」
「あー! いいなぁ~! 私も蒔苗と手をつなぎたい~!」
「私も! 私にも姫のお手を!」
「はいはい、わかったわかった!」
少しの間握手会を開いた後、私たちは再び帰り道を歩く。
そして、別れの交差点までやってきた。
この大きな交差点を芳香は右に、芽衣は左に、私はまっすぐに帰る。
愛莉は交差点の手前のマンションに住んでいるので、この交差点を渡らない。
「じゃ、今日はみんな大人しく帰るってことで!」
「りょうか~い」
「また明日」
「うん、みんなまた明日! 今日はいろいろありがとう!」
4人それぞれの方向へ帰っていく。
今日は楽しかったなぁ~。
あんなに心配してくれる友達がいるなんて私は幸せ者だ。
これからはあんまり無茶は出来ないなぁ。
でも、戦っている最中は無茶かどうか判断がつかないのも事実。
そこんところは育美さんとか周りの人の意見をしっかり聞いていかないとね。
「さて、育美さんが来る前にパーティの準備をしておかないと!」
近所のスーパーで材料の買い込みよ!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
みんなが去った交差点に、愛莉は立ち尽くしていた。
友人の背中を見送り、普段なら家に帰るところを彼女は帰れずにいた。
そこへ特に示し合わせたわけでもないのに戻ってくる芳香と芽衣。
交差点に集った3人の想いはほぼほぼ一緒だった。
代表して口を開いたのは……愛莉だ。
「蒔苗ちゃん……流石にちょっと変わりすぎじゃないかな……」
その言葉にうなずく芳香と芽衣。
彼女たちは蒔苗に起こった変化がコンビニの『さらにおいしくなりました!』ってシールが貼ってるおにぎり程度では済まないと確信していた。
「棚ごとごっそり別の商品に入れ替わってるレベルの変化よ、これは……」
「一体、お葬式で何があったんだろうね~。良いことだとは思うんだけど、お葬式で良いことってのが思い当たらないや」
3人の少女による蒔苗会議が……始まった。
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