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第2章 萌葱の血
-23- 新たなる発見
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その後の作業はとどこおりなく進んだ。
帰るまでがダンジョン探査なので、当然帰路もモンスターの襲撃を警戒していたけど、特に何事もなくダンジョンを抜けることに成功。
入口付近に待機していた大型輸送ドローンに破損機体を積んだキャリーバごと載せる。
私は来た時のようにドローンユニットを装着し、マシンベースへひとっ飛びだ。
後は出撃ハッチにアイオロス・ゼロを戻してミッションコンプリート!
なすべきことは、すべて成し遂げた。
「お疲れ様!」
コックピットカプセルから出ると、テンション高めの育美さんが冷たいお茶をくれた。
やっぱり、戦いの後はこれよね!
「大戦果ね、蒔苗ちゃん! 破損機体7機をすべて回収しただけでなく、破損の原因となった新種モンスターの発見と討伐! 誰が見ても文句なしの完璧な仕事よ!」
「ありがとうございます。なんか新種のモンスターと縁がありますね、私」
「そうよね~。2回の探査で2回とも新種に出会うってなかなかないわ。それこそ出会うモンスターすべて新種だった初期のダンジョン探査くらいじゃないと」
「運が良いやら、悪いやら……。いや、きっととても運は良いんでしょうね」
「出会えない人は本当に出会えないからねぇ、新種に関しては。報酬目当てに血眼で探し回ってる人もいるけど、探して見つかるものでもないし。これに関しては完全に運よ」
「私の運を少し分けてあげたい気分です。今回も紙一重の勝負でしたし、連続でこれだとちょっと困っちゃいます」
「本当にお疲れ様! でも、苦労した分今回の報酬はすごいことになるわよ」
「それって黒いオーガよりも上……ってことですか?」
「私の予想だと、まず間違いなくそうなるわね。その根拠はこれよ」
育美さんが部屋の壁に画像を表示する。
それはあのイカが落とした白くきらめく表皮だった。
「この皮はね、電気を通すことで透明になるのよ。それも皮だけでなく、それに包まれている中身まで……ね。だからDMDのカメラはモンスターの姿を捉えられなかった」
「透明になれる皮……! 確かにそれはすごいですね!」
「驚くのはまだ早いわよ、蒔苗ちゃん。透明化するモンスター自体は今までにもいたし、その透明化を実現しているであろう部位が回収されることもあったの。でも、この皮はそんな今までのものと一線を画す違いがある。なんだかわかるかしら?」
「……透明化の原理がハッキリしている……とか?」
育美さんが目を見開く。
私もつられて目を見開く。
まさか……当たってるの!?
「正解よ! その通り! 今までの透明化モンスターは回収した部位をいくら調べても透明化の原理がまったくわからず、技術として取り入れることが出来なかったの。でも、私の見立てが正しければ、このイカの皮は電気を通すだけで透明化する……! 一緒に回収した金色の臓器は発電器官で、エナジーを電気に変換するだけでなく、かなり細かな電力の調整が出来るみたいなの。そうして調整した電気を皮膚に流して透明化したり、攻撃に使ったりしていたと私は考えているわ。もちろん、データ状態のアイテムをザッと解析しただけだから、多少の違いはあるかもしれないけどね」
とりあえず、あのイカは電気の使い方が上手いってことか。
あと、振り返ってみると戦い方も上手かった気がする。
やたらと攻撃してこず、隙をうかがい死角から攻めるところなんかは人間顔負けだった。
いや、もしかしたら……死角から攻撃しないとダメな理由があったのかも。
育美さんは細かい電力の調整で透明化していると言っていた。
だから、攻撃に使うほど強い電気を使えば、透明化が解除されてしまう……みたいな?
うーん、ありえそうな話だ。
「どうして正解がわかったの? やっぱり実際に戦うとわかるものなの?」
「いえ、ただ育美さんが『透明化を実現しているであろう部位』みたいなハッキリしない言葉を使っていたので、他のモンスターに関しては透明化の原理がわかってないんじゃないかな~……みたいな感じです」
「その一言で見抜くとは、流石と言うしかないわね……。蒔苗ちゃんのおかげで、人類は『透明化』という新たな技術を手に入れるかもしれないわ」
「それは困りますね」
「ん? どうして?」
「こっそりお風呂を覗く人とか増えそうです」
育美さんは目を丸くする。
私もつられて目を丸くする。
同時に自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
どうして……どうして急にこんなこと言っちゃったの!?
自分でもビックリするわっ!
育美さんは我慢できずに大笑いする。
そりゃそうよ。私だって真顔でこんなこと言われたら笑う自信がある。
くぅぅ……疲れてるのかなぁ私……。
さっきまで知的な会話をしていたはずなのに……。
恥ずかしすぎてコックピットカプセルの中に逃げ込もうと本気で考えていたその時、部屋のインターホンが鳴った。
この個室はDMD操者がリラックスしやすいように防音設備がしっかりしていて、外から大声で話しかけてもあまり意味がない。
だから、外との連絡用にインターホンが設置されている。
育美さんが応答すると、部屋の中にしおらしい少女の声が響いた。
『黄堂蘭です。蒔苗さんはいらっしゃいますか?』
帰るまでがダンジョン探査なので、当然帰路もモンスターの襲撃を警戒していたけど、特に何事もなくダンジョンを抜けることに成功。
入口付近に待機していた大型輸送ドローンに破損機体を積んだキャリーバごと載せる。
私は来た時のようにドローンユニットを装着し、マシンベースへひとっ飛びだ。
後は出撃ハッチにアイオロス・ゼロを戻してミッションコンプリート!
なすべきことは、すべて成し遂げた。
「お疲れ様!」
コックピットカプセルから出ると、テンション高めの育美さんが冷たいお茶をくれた。
やっぱり、戦いの後はこれよね!
「大戦果ね、蒔苗ちゃん! 破損機体7機をすべて回収しただけでなく、破損の原因となった新種モンスターの発見と討伐! 誰が見ても文句なしの完璧な仕事よ!」
「ありがとうございます。なんか新種のモンスターと縁がありますね、私」
「そうよね~。2回の探査で2回とも新種に出会うってなかなかないわ。それこそ出会うモンスターすべて新種だった初期のダンジョン探査くらいじゃないと」
「運が良いやら、悪いやら……。いや、きっととても運は良いんでしょうね」
「出会えない人は本当に出会えないからねぇ、新種に関しては。報酬目当てに血眼で探し回ってる人もいるけど、探して見つかるものでもないし。これに関しては完全に運よ」
「私の運を少し分けてあげたい気分です。今回も紙一重の勝負でしたし、連続でこれだとちょっと困っちゃいます」
「本当にお疲れ様! でも、苦労した分今回の報酬はすごいことになるわよ」
「それって黒いオーガよりも上……ってことですか?」
「私の予想だと、まず間違いなくそうなるわね。その根拠はこれよ」
育美さんが部屋の壁に画像を表示する。
それはあのイカが落とした白くきらめく表皮だった。
「この皮はね、電気を通すことで透明になるのよ。それも皮だけでなく、それに包まれている中身まで……ね。だからDMDのカメラはモンスターの姿を捉えられなかった」
「透明になれる皮……! 確かにそれはすごいですね!」
「驚くのはまだ早いわよ、蒔苗ちゃん。透明化するモンスター自体は今までにもいたし、その透明化を実現しているであろう部位が回収されることもあったの。でも、この皮はそんな今までのものと一線を画す違いがある。なんだかわかるかしら?」
「……透明化の原理がハッキリしている……とか?」
育美さんが目を見開く。
私もつられて目を見開く。
まさか……当たってるの!?
「正解よ! その通り! 今までの透明化モンスターは回収した部位をいくら調べても透明化の原理がまったくわからず、技術として取り入れることが出来なかったの。でも、私の見立てが正しければ、このイカの皮は電気を通すだけで透明化する……! 一緒に回収した金色の臓器は発電器官で、エナジーを電気に変換するだけでなく、かなり細かな電力の調整が出来るみたいなの。そうして調整した電気を皮膚に流して透明化したり、攻撃に使ったりしていたと私は考えているわ。もちろん、データ状態のアイテムをザッと解析しただけだから、多少の違いはあるかもしれないけどね」
とりあえず、あのイカは電気の使い方が上手いってことか。
あと、振り返ってみると戦い方も上手かった気がする。
やたらと攻撃してこず、隙をうかがい死角から攻めるところなんかは人間顔負けだった。
いや、もしかしたら……死角から攻撃しないとダメな理由があったのかも。
育美さんは細かい電力の調整で透明化していると言っていた。
だから、攻撃に使うほど強い電気を使えば、透明化が解除されてしまう……みたいな?
うーん、ありえそうな話だ。
「どうして正解がわかったの? やっぱり実際に戦うとわかるものなの?」
「いえ、ただ育美さんが『透明化を実現しているであろう部位』みたいなハッキリしない言葉を使っていたので、他のモンスターに関しては透明化の原理がわかってないんじゃないかな~……みたいな感じです」
「その一言で見抜くとは、流石と言うしかないわね……。蒔苗ちゃんのおかげで、人類は『透明化』という新たな技術を手に入れるかもしれないわ」
「それは困りますね」
「ん? どうして?」
「こっそりお風呂を覗く人とか増えそうです」
育美さんは目を丸くする。
私もつられて目を丸くする。
同時に自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
どうして……どうして急にこんなこと言っちゃったの!?
自分でもビックリするわっ!
育美さんは我慢できずに大笑いする。
そりゃそうよ。私だって真顔でこんなこと言われたら笑う自信がある。
くぅぅ……疲れてるのかなぁ私……。
さっきまで知的な会話をしていたはずなのに……。
恥ずかしすぎてコックピットカプセルの中に逃げ込もうと本気で考えていたその時、部屋のインターホンが鳴った。
この個室はDMD操者がリラックスしやすいように防音設備がしっかりしていて、外から大声で話しかけてもあまり意味がない。
だから、外との連絡用にインターホンが設置されている。
育美さんが応答すると、部屋の中にしおらしい少女の声が響いた。
『黄堂蘭です。蒔苗さんはいらっしゃいますか?』
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