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第1章 ゼロの継承者
-08- レベル5ダンジョン『燐光風穴』
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『きゃあああああああああっ!!』
と、飛んでる!
眼下のマシンベースがどんどん小さくなっていく!
頭上では2つのプロペラがぶんぶん回っている!
輸送用ドローンユニットは背中に装備し、2つのプロペラでDMDを飛行させるメカのようだ!
「ごめんね、蒔苗ちゃん。びっくりさせちゃって」
『ほんとですよ! まだ空を飛ぶ心の準備が出来てなかったのに! まあ、空を飛ぶ心の準備ってなんなのか、私にもわかりませんけど……』
「発進は迅速に行うのがルールだから、思い切って飛ばしちゃった。気分はどう? 本当に怖かったら下ろすことも出来るわ」
『いえ、問題ありません。もう慣れましたから。むしろ、ちょっと楽しくなってきたところです』
今の私は体にプロペラくっつけて飛んでいるようなものだから、ある意味夢のような体験をしているのよね。
体に当たる風の強さや冷たさも、アイオロス・ゼロは伝えてくれる。
訓練場の時はそこまで敏感に風や温度を感じ取れなかったから、これも育美さんの調整のおかげかな。
『でもこれ、落ちたら危ないですよね。DMDはまだしも、下に人がいたら……』
「大丈夫。基本的に人のいないコースを選んで飛んでるし、もし下に人がいたらリングを通して注意喚起を行うことになってるから。それにアイオロス・ゼロはスラスターの推進力がなかなかのものだから、このくらいの高さからの落下なら、無理やり勢いを殺して着地も出来るはずよ。まあ、そんなことにはならないと思うけど、もしもの時は頑張ってスラスターを吹かせてね」
『あはは……努力します』
スラスターを思うように吹かせる方法、実はよくわかってないのよね……。
育美さんの話だと、回避テストをしていた時には、それはそれは華麗にスラスターを制御して訓練場を跳び回っていたというけど、ほぼほぼ無意識だったし、歩くとか走るならまだしも、スラスターを吹かせるって、人間本来の動きではないからなぁ。
まあ、緊急事態となれば上手く出来そうな気がする。
それこそ、火事場の馬鹿力って奴でね!
「蒔苗ちゃん、そろそろダンジョン上空に到着するわ」
『はい……あっ! まさか、ここから地上に投下する気ですか!?』
「いや、ちゃんと着陸させるから安心して」
育美さんの言うように、アイオロス・ゼロは山の比較的平らな場所にゆっくりと着陸した。
うんうん、案外空の旅も楽しかったな。
ダンジョンに挑むたびに飛ぶことになるなら、楽しめる方がお得ってもんよ。
「さて、そこからも見えてると思うけど、あの山肌に入った亀裂のようなものが、ダンジョン『燐光風穴』への入口よ」
まるでそこだけが切り裂かれたかのように、広がるダンジョンの入口……。
この世のものとは思えない。
いや、本当にあれはこの世のものではないんだ。
「まずはドローンユニットを外すわね」
『装備したまま探査したらダメなんですか? 空を飛べるってかなり便利そうですけど』
「これはあくまでも輸送用だから、戦闘にはあまり向いていないわ。飛行の必要がある時には、戦闘用ドローンユニットを使うの。ただ、燐光風穴はだだっ広いダンジョンってわけじゃないから、ドローンユニットは逆に邪魔になると思う。それにこのドローンはレンタルだから、壊しちゃうと修理費用が……」
『はい! ドローンユニットは無しで行きます!』
「よし、これで準備は完了よ。そのまま目の前の亀裂に飛び込んでみて」
『……了解!』
怖気づくことはない。
私はダンジョンに行くと決めたんだ!
『突入します!』
特に衝撃も、変化もなく、私はぬるりとダンジョン内部に突入した。
そこはさっきまでいた山とまったく違う場所だった。
見たこともない鉱石がそこら中から生えた、淡く輝く洞窟……。
思っていたよりも天井が高く、横の幅もそれなりに広い。
おかげで圧迫感はあまり感じないけど、違和感というか、別世界に来たという感覚を否応なしに押し付けられる。
「この空気に飲まれちゃダメよ、蒔苗ちゃん。むしろ、ダンジョンを制圧してやるってくらいの気持ちでいた方が上手くいくわ」
『大丈夫です。アイオロス・ゼロはダンジョンを制した迷宮王のDMDの兄弟ですから』
実際、恐怖は感じない。
だが、恐れることを忘れてはいけない。
ここはモンスターがはびこる異次元空間なのだから。
右手にネオアイアンソードを握りしめる。
前に使った時よりも、重くなっている気がした。
もしかして、これも調整のおかげかな?
武器の重みを感じることで、より強く握れるようになった気がする。
流石は育美さんだ。
「焦らず慎重にいきましょう、蒔苗ちゃん」
『はい……あれ? そういえばダンジョンの内部と外部では通信できないって聞いたことあるんですけど、普通に出来てますよね?』
「いえ、私はあくまでもマシンベースにいる蒔苗ちゃんに話しかけているだけで、ダンジョン内部にいるアイオロス・ゼロには話しかけてないわ」
『あ、なるほど!』
そうだそうだ、私の本体はマシンベースにあるじゃないの。
そりゃいくらでも会話し放題よね。
『ちなみにダンジョンの内部にいるDMD同士での通信は出来るんですか?』
「外部との通信のようにまったく不可能というわけじゃないわ。でも、とても不安定で実用的じゃないというのが正直なところね。だから、ダンジョン内での意思疎通はDMDに内蔵されているスピーカーによるシンプルな会話ってことになるわね」
『となると、遠くにいる人とは意思の疎通が出来ないってことですか?』
「その通りよ。だから、高レベルのダンジョンでは数機のDMDが密集し、お互い会話で連携をとりながら戦うことになるの」
『ある意味、古い時代の戦い方に戻ってるんですね』
「確かにそうね。でも、戦っているDMDは人類の英知とダンジョンの恵みが融合した新しい時代の力よ。人間だって、少しは成長してるのよ」
『私もこのダンジョンを踏破して、DMD操者として成長したいです!』
「そうそう、その意気よ!」
今回の目的はダンジョンに慣れつつ、最深部であるダンジョンコアまで進むことだ。
その後、コアは破壊せず、来た道を戻って地上へと帰還する。
なんだか、やってることが肝試しみたいだ。
行くことや帰ってくることよりも、その過程で体験することが大事……みたいな?
『萌葱蒔苗、燐光風穴の探査を開始します!』
と、飛んでる!
眼下のマシンベースがどんどん小さくなっていく!
頭上では2つのプロペラがぶんぶん回っている!
輸送用ドローンユニットは背中に装備し、2つのプロペラでDMDを飛行させるメカのようだ!
「ごめんね、蒔苗ちゃん。びっくりさせちゃって」
『ほんとですよ! まだ空を飛ぶ心の準備が出来てなかったのに! まあ、空を飛ぶ心の準備ってなんなのか、私にもわかりませんけど……』
「発進は迅速に行うのがルールだから、思い切って飛ばしちゃった。気分はどう? 本当に怖かったら下ろすことも出来るわ」
『いえ、問題ありません。もう慣れましたから。むしろ、ちょっと楽しくなってきたところです』
今の私は体にプロペラくっつけて飛んでいるようなものだから、ある意味夢のような体験をしているのよね。
体に当たる風の強さや冷たさも、アイオロス・ゼロは伝えてくれる。
訓練場の時はそこまで敏感に風や温度を感じ取れなかったから、これも育美さんの調整のおかげかな。
『でもこれ、落ちたら危ないですよね。DMDはまだしも、下に人がいたら……』
「大丈夫。基本的に人のいないコースを選んで飛んでるし、もし下に人がいたらリングを通して注意喚起を行うことになってるから。それにアイオロス・ゼロはスラスターの推進力がなかなかのものだから、このくらいの高さからの落下なら、無理やり勢いを殺して着地も出来るはずよ。まあ、そんなことにはならないと思うけど、もしもの時は頑張ってスラスターを吹かせてね」
『あはは……努力します』
スラスターを思うように吹かせる方法、実はよくわかってないのよね……。
育美さんの話だと、回避テストをしていた時には、それはそれは華麗にスラスターを制御して訓練場を跳び回っていたというけど、ほぼほぼ無意識だったし、歩くとか走るならまだしも、スラスターを吹かせるって、人間本来の動きではないからなぁ。
まあ、緊急事態となれば上手く出来そうな気がする。
それこそ、火事場の馬鹿力って奴でね!
「蒔苗ちゃん、そろそろダンジョン上空に到着するわ」
『はい……あっ! まさか、ここから地上に投下する気ですか!?』
「いや、ちゃんと着陸させるから安心して」
育美さんの言うように、アイオロス・ゼロは山の比較的平らな場所にゆっくりと着陸した。
うんうん、案外空の旅も楽しかったな。
ダンジョンに挑むたびに飛ぶことになるなら、楽しめる方がお得ってもんよ。
「さて、そこからも見えてると思うけど、あの山肌に入った亀裂のようなものが、ダンジョン『燐光風穴』への入口よ」
まるでそこだけが切り裂かれたかのように、広がるダンジョンの入口……。
この世のものとは思えない。
いや、本当にあれはこの世のものではないんだ。
「まずはドローンユニットを外すわね」
『装備したまま探査したらダメなんですか? 空を飛べるってかなり便利そうですけど』
「これはあくまでも輸送用だから、戦闘にはあまり向いていないわ。飛行の必要がある時には、戦闘用ドローンユニットを使うの。ただ、燐光風穴はだだっ広いダンジョンってわけじゃないから、ドローンユニットは逆に邪魔になると思う。それにこのドローンはレンタルだから、壊しちゃうと修理費用が……」
『はい! ドローンユニットは無しで行きます!』
「よし、これで準備は完了よ。そのまま目の前の亀裂に飛び込んでみて」
『……了解!』
怖気づくことはない。
私はダンジョンに行くと決めたんだ!
『突入します!』
特に衝撃も、変化もなく、私はぬるりとダンジョン内部に突入した。
そこはさっきまでいた山とまったく違う場所だった。
見たこともない鉱石がそこら中から生えた、淡く輝く洞窟……。
思っていたよりも天井が高く、横の幅もそれなりに広い。
おかげで圧迫感はあまり感じないけど、違和感というか、別世界に来たという感覚を否応なしに押し付けられる。
「この空気に飲まれちゃダメよ、蒔苗ちゃん。むしろ、ダンジョンを制圧してやるってくらいの気持ちでいた方が上手くいくわ」
『大丈夫です。アイオロス・ゼロはダンジョンを制した迷宮王のDMDの兄弟ですから』
実際、恐怖は感じない。
だが、恐れることを忘れてはいけない。
ここはモンスターがはびこる異次元空間なのだから。
右手にネオアイアンソードを握りしめる。
前に使った時よりも、重くなっている気がした。
もしかして、これも調整のおかげかな?
武器の重みを感じることで、より強く握れるようになった気がする。
流石は育美さんだ。
「焦らず慎重にいきましょう、蒔苗ちゃん」
『はい……あれ? そういえばダンジョンの内部と外部では通信できないって聞いたことあるんですけど、普通に出来てますよね?』
「いえ、私はあくまでもマシンベースにいる蒔苗ちゃんに話しかけているだけで、ダンジョン内部にいるアイオロス・ゼロには話しかけてないわ」
『あ、なるほど!』
そうだそうだ、私の本体はマシンベースにあるじゃないの。
そりゃいくらでも会話し放題よね。
『ちなみにダンジョンの内部にいるDMD同士での通信は出来るんですか?』
「外部との通信のようにまったく不可能というわけじゃないわ。でも、とても不安定で実用的じゃないというのが正直なところね。だから、ダンジョン内での意思疎通はDMDに内蔵されているスピーカーによるシンプルな会話ってことになるわね」
『となると、遠くにいる人とは意思の疎通が出来ないってことですか?』
「その通りよ。だから、高レベルのダンジョンでは数機のDMDが密集し、お互い会話で連携をとりながら戦うことになるの」
『ある意味、古い時代の戦い方に戻ってるんですね』
「確かにそうね。でも、戦っているDMDは人類の英知とダンジョンの恵みが融合した新しい時代の力よ。人間だって、少しは成長してるのよ」
『私もこのダンジョンを踏破して、DMD操者として成長したいです!』
「そうそう、その意気よ!」
今回の目的はダンジョンに慣れつつ、最深部であるダンジョンコアまで進むことだ。
その後、コアは破壊せず、来た道を戻って地上へと帰還する。
なんだか、やってることが肝試しみたいだ。
行くことや帰ってくることよりも、その過程で体験することが大事……みたいな?
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