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本編【22時投稿】

VIll 『アイクとリュー』前編

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 場所は変わり、エターナル王国・城下町郊外、ゴミ捨て場付近。

「と、まぁ。おふざけはここまでにして…女の子についてなんだけど…」

リューは今までのやり取りは『おふざけだった』とひとまとめにし、単刀直入に正体不明の『女の子』について切り出す。

「絵、踏んでなかったし魔族デビリアなんじゃねーの?」

対して、アイクは頭を掻き面倒臭そうにして適当に応答する。

 その態度は、アイク含め他の4人からしたら特に何の感情も抱く事はなかっただろう。
 が、ただ1人その態度を気に食わない様子の男がいた。

「お前は、彼女が心配じゃないのか?」

「はぁ?なに言ってんだよリュー。」

「だから、心配じゃないのかって聞いてるんだよ」

「心配じゃないと言ったら嘘になるが心配だと言っても嘘になる」

 アイクの適当ぶりがリューの琴線を掠る。
 2人の討論は徐々に激しさを増し、ついには、座っていたはずのリューが立ちそれに応じるかの様にアイクも立つ。
 
「リュー…!頭を冷やしてください。あなたらしくない」

いつ2人が拳と拳のぶつかり合い。つまり、喧嘩をしてもおかしくない程の緊張感が走る中、リューの名前を力強く叫ぶ者がいた。

「ーーーー」
 
 それを聞いたリューは、我を取り戻し少し、冷静になる。

「どうしたんですか?あなたともあろうお方が」

2人の言い合いに口を挟み、仲裁したのはソルトだった。
 今、このタイミングでソルトが口を挟まなければ、恐らく彼の口論は激しさを増し、最悪乱闘にまでなる可能性すらあっただろう。

「ーーいや、ごめんな。何でもないんだ」 

  リューは多少黙った後、自分に「ダメだ」と言い聞かせるかの様に首を振る。      
 そして、続けざまに口を開き…

「でも、アイクーー」

 リューは名前を呼び何かを言いたげだったが、少し躊躇いを見せる。そう、リューの心はまだ決まっていなかった。
 彼は、ここで先ほどのアイクの行動について言及すればまた、喧嘩になる可能性を懸念していたのだ。
 が、瞬間。彼の脳裏をある言葉がよぎった。
 それは遡る事20年。

                  【20年前】

 その時、彼らレジェンド達5人は戦場にいた。

「ーーーーッ!」

「ヤバイにゃ!!ガチでマジでヤバイにゃ!!」

 ーーレジェンド達5人は極限状態に追い込まれていた。

 彼ら5人の任務は敵陣で『本隊』を叩くという任務だった。常識的に考えると、5人で100人以上の『隊』を壊滅させるのは
 が、彼らには強みがあった。
 そう、彼らの真骨頂は神速で走り抜け敵を切るリューをアイクが鋼鉄をも砕く頑丈な盾で守り、それをソルトが回復。同時、シャルが後方から攻撃。という他の誰にも真似をする事が出来ないだった。(ちなみに、この時シズクは、腹痛のため戦線離脱中。

 しかし、この日に限ってまるで連携がなってない。原因はアイクだった。
 彼の役割はリューを守るという役割だったのだが、何故かこの日は守るのではなく攻撃をしていた。

「アイク!お前ーー」

 リューはここで次の言葉をいうのを踏みとどまった。
 理由は明確。アイクが我を見失って暴走していたからだ。そんな彼に今、刺激をしたら、こちらに飛び火するかもしれない。そう考えたからだ。

そうして、リューは思いとどまった。


ーーこの日は連携が出来ていなかったせいか、ぼろ負けだった。レジェンド全員が傷を負っており、特にアイクは深手。
 場の雰囲気は最悪だった。

「どうして、あんな行動したんだアイク?」

「ーー操られてた」

 アイクが放った言葉は場を静寂に包ませた。 
 一同が理解に苦しむ中、1人即座に言葉の意味を理解し、顔色を変える。
 その顔は『絶望』と言う2文字がくっきりと見える程だった。

「言えばよかった…言えなきゃだめだった…。どうして…どうして俺は…!!」

 リューが絶望の渦に飲み込まれ、自分を責め立てることしか出来なくなってる中、その渦に手を差し伸べるかの如く、その声はリューの耳に入った。

「リュー。終わった事は仕方ねぇ。後悔はするな。気づかなかった俺も悪い。だが、これだけは言わせてくれ」

「戦場で迷うな。声をかけようと最初に思ったなら行動に出ろ。」

「俺は、おめぇの声を頼りに絶対正気に戻る。でも、それでも。ダメな様なら俺を殺してくれ。そこまでの人間だったってことだから。」

 




 
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