1 / 1
全ての始まり
しおりを挟む
夕暮れ空の下、辺り一面を無数の火柱が駆ける。
その渦中にいるのはまだ小さな男の子、そして倒れた女性だった。
「お母さん…!お母さん…!!」
少年は幾度となく声をかけるが倒れた女性に反応はない。
「おか…」
母を揺する少年が触る肌は焼け焦げて灰に。
ーー数分もするとそこにはもう何一つ残っていなかった。と言う
◆◇◆◇
「今まででお世話になりました。ありがとうございました」
「元気でね。寂しくなったらいつでもかえっておいで」
少年はあの日からお世話になっていた【バァーヤおばさん】に礼を告げ家を後にした。
家から数分も歩くと林を抜けられる。
が、その途中。
少年に立ちはだかる3つの影。
「よぉ?見ない顔だな!ちょっと待てよ」
少年よりわずかばかり歳下の少年達が行先を邪魔する。
「俺は急いでるんだ。どけてくれ」
「そうはさせられねぇんだなぁ~持ち物検査だ!」
急ぐ少年を更に煽る様に持ち物を物色し始める3人。
「これも…これも…これも…う~ん…これは…?」
3人のうち1人が少年の首にかかった赤く透き通ったペンダントに手をかけようとした。
瞬間、少年は形相を変え3人を睨む。
「これは大事なものだ。お前らが触って良いものじゃない。遊びはここまでだ俺は先を急ぐからな」
しかし、3人は見た。
眼前、黒く霞んでいたはずの瞳が赤く煌めき出す瞬間を。
「お前…。その目ってまさか」
何かに気づいたかの様に3人は後ずさる。
「こ、これは違うんだ。カ、カラコンだよ!じゃ、じゃあな!」
瞳について言われた瞬間、明らかに少年は動揺してはいたが、3人組の方が先程までとは打って変わって、何かに怯えている様に縮こまっていた。
その場を足早に去る少年を目だけで追う3人。
「ここで正体を明かす訳には行かないんだ」
◆◇◆◇
ーーやっとついた。少年はそう言うと、深呼吸をした。
眼前、立ちはだかる建築物の多数そして、見渡す限り人・人・人。
『ここは少年が夢にまで見た街【アルス】様々な職業があり、貿易が盛んで、極め付けは【アルス魔法学園】この学園に入学できれば、将来は確立されたも同然と言う。そして少年は、アルス魔法学園に入学をする為に今日この街へと足を踏み入れた』
「す、すげぇー!イテッ。すいません。イテッ。すいません。イテッ。すいません」
少年は大通りを眺めながら歩いていると次から次へとぶつかる大人達。
人が多すぎるが故にそうなってしまう。
「裏路地から行くか…」
裏路地に入ると人は全くと言って良いほどおらず、30メートルに1人と言う程。
少年がアルス魔法学園に向かい少し足を早めていた時だった。
「ねぇ、まだあの日の事件の犯人捕まってないんだって」
「嫌だねぇ。この街焼かれたらひとたまりもないからね。はやく殺されてしまえば良いのに」
すれ違い様に2人のおばさんが呟く会話が少年の耳に入る。
ーー少年は何処か悲しげな表情を見せ、フードを深くかぶり走り出した。
無我夢中で走っていると、肩に何かの感触があった。
「いっててて。痛いのぉ」
気づけば、眼前、尻餅をつくお爺さんの姿。
少年は慌てた様子で手を差し伸べお爺さんを起こしあげた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫じゃ。ん?お主その目は…」
起こしてもらう時にお爺さんは少年の瞳の色が変わったことに気づき何かを考えているように顎髭をモサモサといじり始める。
「お、お爺さんには関係ないでしょ?俺は急いでアルス魔法学園に行かなきゃならないから。でも、ぶつかったのはごめんね」
少年はそう言うと足早にその場を後にした。
一方、取り残されたお爺さんは少年の向かう先をアルス魔法学園と知り、徐に独り言を呟く。
「こ奴が今年の目玉じゃのぉ」
◆◇◆◇
「これよりアルス魔法学園入学試験を開始する」
「試験開始!!」
大きな声と同時に総勢300人弱の試験受験者は紙をめくる。
紙に答えを書く音が何重にも重なりホールに反響する。
ガチャ
「ついたー!!」
ドアを開けるのと同時に達成感に満ちた声がホールに響き渡る。
瞬間、ペンの音は止み一同の目線はドアを開けた少年へと集まる。
「ーーん?」
少年も現状の理解が追いついていない様子だった。
困惑した少年へ歩み寄る姿。
試験監督だ。
「あなたはなぜ遅れて来たんですか?」
「知らない少年に足止めされたり…街が混んでたり…知らないお爺さんにぶつかっちゃったりして…」
少年は試験監督の質問に対して今日の出来事を洗いざらい吐いた。
しかし
「そんな証拠も何もない事を信じることはできません。よってあなたを失格とみなします」
試験監督の言葉は正しかった。
誰も少年の動向を証明できるものはいなかった。あちらの立場からすれば、少年が嘘をついていると言う事も考えなければならないのだ。少年はそれも踏まえて何も言い返す事が出来なかった。
少年は、憧れの学校へ入学出来ない現実を実感しひどく落ち込んだ。
うつむきながら、先程開けたドアをまた開けその場を後にしようと足を進めた時だった。
またしても、肩に感触。
「痛いのぉ。前を向きなさいなぁ」
肩の感触は先程のお爺さん。
「な、なんでお爺さんがここに?」
少年は、どうしてライセンスを持った者しか入れないこの学校に先程のお爺さんがいるのかが不思議でならなかった。
「ん?ちょっとなぁ」
誤魔化すお爺さんに近づく影。
試験監督だ。
「校長先生!今日は散歩に行かないでくださいってあれほど言いましたよね?!」
試験監督は強い口調で校長先生を怒鳴る。
「す、すまんのぉ」
謝る校長に動揺を隠せない受験者達、そして少年。
しかし、少年は少し時間が経つと、正気に戻ったのかまた歩き出し外へと足を運ぶ。
が、
「どこへ行く、少年よ」
「時間に遅れたから…失格だから…」
少年は、うなだれながらお爺さんにそう伝えると、お爺さんは、またしても髭をモフモフしながら考え始める。
すると、
「お主はわしが【特別審査枠】に選んだから、入学は決定しとるぞぉ?」
「ほ、ほ、ほ、ほんとですか?!」
「わしゃ嘘は付かん」
お爺さんは校長。故に特別審査枠を決める事ができるのもお爺さん。
少年は入学できると言う現実を噛み締めると同時にお爺さんへの感謝からか、目には涙が浮かんでいた。
「いんですか?校長先生!」
「いいんじゃ、わしゃ決めた事はかえん」
「今日からお主はアルス魔法学園の生徒じゃ!!」
その渦中にいるのはまだ小さな男の子、そして倒れた女性だった。
「お母さん…!お母さん…!!」
少年は幾度となく声をかけるが倒れた女性に反応はない。
「おか…」
母を揺する少年が触る肌は焼け焦げて灰に。
ーー数分もするとそこにはもう何一つ残っていなかった。と言う
◆◇◆◇
「今まででお世話になりました。ありがとうございました」
「元気でね。寂しくなったらいつでもかえっておいで」
少年はあの日からお世話になっていた【バァーヤおばさん】に礼を告げ家を後にした。
家から数分も歩くと林を抜けられる。
が、その途中。
少年に立ちはだかる3つの影。
「よぉ?見ない顔だな!ちょっと待てよ」
少年よりわずかばかり歳下の少年達が行先を邪魔する。
「俺は急いでるんだ。どけてくれ」
「そうはさせられねぇんだなぁ~持ち物検査だ!」
急ぐ少年を更に煽る様に持ち物を物色し始める3人。
「これも…これも…これも…う~ん…これは…?」
3人のうち1人が少年の首にかかった赤く透き通ったペンダントに手をかけようとした。
瞬間、少年は形相を変え3人を睨む。
「これは大事なものだ。お前らが触って良いものじゃない。遊びはここまでだ俺は先を急ぐからな」
しかし、3人は見た。
眼前、黒く霞んでいたはずの瞳が赤く煌めき出す瞬間を。
「お前…。その目ってまさか」
何かに気づいたかの様に3人は後ずさる。
「こ、これは違うんだ。カ、カラコンだよ!じゃ、じゃあな!」
瞳について言われた瞬間、明らかに少年は動揺してはいたが、3人組の方が先程までとは打って変わって、何かに怯えている様に縮こまっていた。
その場を足早に去る少年を目だけで追う3人。
「ここで正体を明かす訳には行かないんだ」
◆◇◆◇
ーーやっとついた。少年はそう言うと、深呼吸をした。
眼前、立ちはだかる建築物の多数そして、見渡す限り人・人・人。
『ここは少年が夢にまで見た街【アルス】様々な職業があり、貿易が盛んで、極め付けは【アルス魔法学園】この学園に入学できれば、将来は確立されたも同然と言う。そして少年は、アルス魔法学園に入学をする為に今日この街へと足を踏み入れた』
「す、すげぇー!イテッ。すいません。イテッ。すいません。イテッ。すいません」
少年は大通りを眺めながら歩いていると次から次へとぶつかる大人達。
人が多すぎるが故にそうなってしまう。
「裏路地から行くか…」
裏路地に入ると人は全くと言って良いほどおらず、30メートルに1人と言う程。
少年がアルス魔法学園に向かい少し足を早めていた時だった。
「ねぇ、まだあの日の事件の犯人捕まってないんだって」
「嫌だねぇ。この街焼かれたらひとたまりもないからね。はやく殺されてしまえば良いのに」
すれ違い様に2人のおばさんが呟く会話が少年の耳に入る。
ーー少年は何処か悲しげな表情を見せ、フードを深くかぶり走り出した。
無我夢中で走っていると、肩に何かの感触があった。
「いっててて。痛いのぉ」
気づけば、眼前、尻餅をつくお爺さんの姿。
少年は慌てた様子で手を差し伸べお爺さんを起こしあげた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫じゃ。ん?お主その目は…」
起こしてもらう時にお爺さんは少年の瞳の色が変わったことに気づき何かを考えているように顎髭をモサモサといじり始める。
「お、お爺さんには関係ないでしょ?俺は急いでアルス魔法学園に行かなきゃならないから。でも、ぶつかったのはごめんね」
少年はそう言うと足早にその場を後にした。
一方、取り残されたお爺さんは少年の向かう先をアルス魔法学園と知り、徐に独り言を呟く。
「こ奴が今年の目玉じゃのぉ」
◆◇◆◇
「これよりアルス魔法学園入学試験を開始する」
「試験開始!!」
大きな声と同時に総勢300人弱の試験受験者は紙をめくる。
紙に答えを書く音が何重にも重なりホールに反響する。
ガチャ
「ついたー!!」
ドアを開けるのと同時に達成感に満ちた声がホールに響き渡る。
瞬間、ペンの音は止み一同の目線はドアを開けた少年へと集まる。
「ーーん?」
少年も現状の理解が追いついていない様子だった。
困惑した少年へ歩み寄る姿。
試験監督だ。
「あなたはなぜ遅れて来たんですか?」
「知らない少年に足止めされたり…街が混んでたり…知らないお爺さんにぶつかっちゃったりして…」
少年は試験監督の質問に対して今日の出来事を洗いざらい吐いた。
しかし
「そんな証拠も何もない事を信じることはできません。よってあなたを失格とみなします」
試験監督の言葉は正しかった。
誰も少年の動向を証明できるものはいなかった。あちらの立場からすれば、少年が嘘をついていると言う事も考えなければならないのだ。少年はそれも踏まえて何も言い返す事が出来なかった。
少年は、憧れの学校へ入学出来ない現実を実感しひどく落ち込んだ。
うつむきながら、先程開けたドアをまた開けその場を後にしようと足を進めた時だった。
またしても、肩に感触。
「痛いのぉ。前を向きなさいなぁ」
肩の感触は先程のお爺さん。
「な、なんでお爺さんがここに?」
少年は、どうしてライセンスを持った者しか入れないこの学校に先程のお爺さんがいるのかが不思議でならなかった。
「ん?ちょっとなぁ」
誤魔化すお爺さんに近づく影。
試験監督だ。
「校長先生!今日は散歩に行かないでくださいってあれほど言いましたよね?!」
試験監督は強い口調で校長先生を怒鳴る。
「す、すまんのぉ」
謝る校長に動揺を隠せない受験者達、そして少年。
しかし、少年は少し時間が経つと、正気に戻ったのかまた歩き出し外へと足を運ぶ。
が、
「どこへ行く、少年よ」
「時間に遅れたから…失格だから…」
少年は、うなだれながらお爺さんにそう伝えると、お爺さんは、またしても髭をモフモフしながら考え始める。
すると、
「お主はわしが【特別審査枠】に選んだから、入学は決定しとるぞぉ?」
「ほ、ほ、ほ、ほんとですか?!」
「わしゃ嘘は付かん」
お爺さんは校長。故に特別審査枠を決める事ができるのもお爺さん。
少年は入学できると言う現実を噛み締めると同時にお爺さんへの感謝からか、目には涙が浮かんでいた。
「いんですか?校長先生!」
「いいんじゃ、わしゃ決めた事はかえん」
「今日からお主はアルス魔法学園の生徒じゃ!!」
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
母は姉ばかりを優先しますが肝心の姉が守ってくれて、母のコンプレックスの叔母さまが助けてくださるのですとっても幸せです。
下菊みこと
ファンタジー
産みの母に虐げられ、育ての母に愛されたお話。
親子って血の繋がりだけじゃないってお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まだ連載中だと思うのですがタグでは「完結」となっていますよ。
「連載中」のタグにしないと条件検索時に間違って表示されてしまいますので
一度ご確認されたほうがいいと思いましてコメントしました。
ちなみにこのコメントはお知らせしたいだけなので非承認してくださいませ。
コメントが途中で切れていたので確認のため、承認させていただきました。
ご指摘ありがとうございます。
ちなみに、この作品は現在のアルファポリスのニーズを調べる為にあげさせていただいた次第です。