47 / 50
終章
4
しおりを挟む
大変申し訳ありません。4話と5話逆でした。
本当に申し訳ありません。訂正致しましたので、4話からお読みお願い致します。感想で教えてくださった皆様、ありがとうございます(TT) お詫びの気持ちですが、最終話まで予約投稿解除致しました。
プリシラはシャーリーと別れると、元来た街道へと戻った。そして、先ほど見かけた新聞を配っていた若い男を見つけると、プリシラは彼に詰め寄った。
「ちょ、やめてくださいよ!」
男がプリシラを引き払う。だが、プリシラは気にも止めず、淡々と告げる。
「貴方、いくら?」
「……は?」
見知らぬ女の口から放たれた意味不明な言葉に、男の口から戸惑いの声が漏れた。
「今の10倍出すわ。だから、貴方、私に雇われなさい」
そう言って、プリシラは手首にかけてある腕輪を男に押し付ける。外国の商人から手に入れた、純金とダイアモンドから成る腕輪だ。これを売り払えば小さな屋敷なら余裕で一軒建てられるだろう。
プリシラの要求は理不尽であると自覚はしていたが、腕輪を見た男の目の色が変わった。
「も、もちろんです! お嬢様。……ですが、俺は一体何をしたら良いんですか?」
先ほどの無愛想な態度とは一変、男は見るからにプリシラに胡麻をすりはじめた。
「簡単なことよ。新しく新聞を刷って欲しいの。できる?」
「……そりゃあ、お安いご用ですけど、こんな時に何でまた?」
ボナパルトでは印刷技術が優れているため、紙媒体の情報源の刷新は早さが効く。
プリシラは男の疑問に、口の端を吊り上げて言った。
「それはこれからのお楽しみよ」
◇◇◇
「本当にこの内容でいいんですか?」
「もちろんよ」
新聞記者の男が冷や汗をかきながら、プリシラに尋ねる。
「何か問題が生じても、私が全ての責任を負うわ」
プリシラがこの言葉を述べると「本当にですか? 本当に?」と何度も確認され、漸く男は新聞を刷りに行った。
プリシラは男が作業に入ったのを確認すると、貧民街へと戻った。シャーリーもプリシラが頼んだ人を搔き集め終えたようで、プリシラの姿を見かけると、彼女に駆け寄った。
「シャーリー、お願いを聞いてくれてありがとう」
「お安い御用よ。……で、次は何をすればいいの?」
シャーリーが小首を傾げる。
「今から新聞を配りに行くのだけれど、それを手伝ってもらいたいの。いい?」
「ええ、もちろんよ」
プリシラはシャーリーと彼女に集めてもらった人たちを引きつれて、再び新聞記者の元へ戻った。記者の近くには、プリシラが頼んだ内容の新聞が大量に積み重なっている。
「これを街にいる人に配ってほしいの」
「いいぜ!」
ティムが新聞を奪うように掲げ、眺める。
「ま、俺達には字なんて読めないけどな!」
そう言って、彼はニカっと笑った。
(だからあなた達に頼むのよ……)
「……」
ロートリンゲンとボナパルトの新聞に混じって、新しい新聞を配布する。すると、人々は新聞の内容に目を通し、悲鳴を上げた。
「なんだこれは!」
「いったいどうなっているんだ!」
「この女のせいなのか!」
プリシラは民衆の反応を察すると早々に貧民街に引き上げた。
「ねえ、あの新聞には何が書かれていたの?」
シャーリーが民衆の阿鼻叫喚を見て、困惑した顔でプリシラに尋ねる。
「……シャーリー、貴女もう疲れたでしょう。ゆっくり休むといいわ」
プリシラは話を転換する。
「……でも」
「いいわね?」
「……分かったわ」
プリシラがシャーリーに詰め寄ると、彼女は渋々頷いた。心優しい彼女には、これ以上自分の都合に振り回す訳にも行かない。
シャーリーはプリシラを心配そうに振り返り、それからとぼとぼと貧民街に帰っていった。
「……行くわよ」
プリシラは貧民街に消えて行くシャーリーの後ろ姿を眺め、それからロザリーが待つメディチ家へと足を進めた。
◇◇◇
数日振りに帰って来たメディチ家は散々な有り様だった。屋敷中を民衆が取り囲み、窓は石を投げられたのか、割れた硝子があちこちに散乱している。
「……酷いわね」
プリシラが呟く。
まあ、これも自分のせいなのだが。
プリシラが屋敷の凄惨な光景に目を細めていると……
「やめなさいよ!!!」
「私を誰だと思っているんだ!!」
屋敷の中からピンクゴールドの髪の少女と金髪碧眼の男性……ロザリーとヨハネス、それからミレーヌとダグラス、ダミアンが民衆たちの手によって引きずり出されていた。
彼らを見つめる民衆たちは皆憎悪に瞳を染め、その顔は悪鬼のように醜く歪んでいた。
「……」
プリシラは、口の端がつり上がらないように注意しながら、できるだけ平静を保った。
「……お姉さま?」
地面に引きずられ、髪もドレスもぐちゃぐちゃになり、土埃にまみれたロザリーがプリシラに気づいた。
そして
「助けてください!」
悲鳴を上げた。
ロザリーのプリシラを呼んだ「お姉さま」という声に、民衆から戸惑いの声が上がる。
「あの人がこの女の姉?」
「……けれど、あの人は俺たちに真実を伝えてくれたじゃないか」
「だが、姉というなら同罪じゃないか?」
民衆からプリシラに疑惑の目が向けられる。
そしてプリシラは──
本当に申し訳ありません。訂正致しましたので、4話からお読みお願い致します。感想で教えてくださった皆様、ありがとうございます(TT) お詫びの気持ちですが、最終話まで予約投稿解除致しました。
プリシラはシャーリーと別れると、元来た街道へと戻った。そして、先ほど見かけた新聞を配っていた若い男を見つけると、プリシラは彼に詰め寄った。
「ちょ、やめてくださいよ!」
男がプリシラを引き払う。だが、プリシラは気にも止めず、淡々と告げる。
「貴方、いくら?」
「……は?」
見知らぬ女の口から放たれた意味不明な言葉に、男の口から戸惑いの声が漏れた。
「今の10倍出すわ。だから、貴方、私に雇われなさい」
そう言って、プリシラは手首にかけてある腕輪を男に押し付ける。外国の商人から手に入れた、純金とダイアモンドから成る腕輪だ。これを売り払えば小さな屋敷なら余裕で一軒建てられるだろう。
プリシラの要求は理不尽であると自覚はしていたが、腕輪を見た男の目の色が変わった。
「も、もちろんです! お嬢様。……ですが、俺は一体何をしたら良いんですか?」
先ほどの無愛想な態度とは一変、男は見るからにプリシラに胡麻をすりはじめた。
「簡単なことよ。新しく新聞を刷って欲しいの。できる?」
「……そりゃあ、お安いご用ですけど、こんな時に何でまた?」
ボナパルトでは印刷技術が優れているため、紙媒体の情報源の刷新は早さが効く。
プリシラは男の疑問に、口の端を吊り上げて言った。
「それはこれからのお楽しみよ」
◇◇◇
「本当にこの内容でいいんですか?」
「もちろんよ」
新聞記者の男が冷や汗をかきながら、プリシラに尋ねる。
「何か問題が生じても、私が全ての責任を負うわ」
プリシラがこの言葉を述べると「本当にですか? 本当に?」と何度も確認され、漸く男は新聞を刷りに行った。
プリシラは男が作業に入ったのを確認すると、貧民街へと戻った。シャーリーもプリシラが頼んだ人を搔き集め終えたようで、プリシラの姿を見かけると、彼女に駆け寄った。
「シャーリー、お願いを聞いてくれてありがとう」
「お安い御用よ。……で、次は何をすればいいの?」
シャーリーが小首を傾げる。
「今から新聞を配りに行くのだけれど、それを手伝ってもらいたいの。いい?」
「ええ、もちろんよ」
プリシラはシャーリーと彼女に集めてもらった人たちを引きつれて、再び新聞記者の元へ戻った。記者の近くには、プリシラが頼んだ内容の新聞が大量に積み重なっている。
「これを街にいる人に配ってほしいの」
「いいぜ!」
ティムが新聞を奪うように掲げ、眺める。
「ま、俺達には字なんて読めないけどな!」
そう言って、彼はニカっと笑った。
(だからあなた達に頼むのよ……)
「……」
ロートリンゲンとボナパルトの新聞に混じって、新しい新聞を配布する。すると、人々は新聞の内容に目を通し、悲鳴を上げた。
「なんだこれは!」
「いったいどうなっているんだ!」
「この女のせいなのか!」
プリシラは民衆の反応を察すると早々に貧民街に引き上げた。
「ねえ、あの新聞には何が書かれていたの?」
シャーリーが民衆の阿鼻叫喚を見て、困惑した顔でプリシラに尋ねる。
「……シャーリー、貴女もう疲れたでしょう。ゆっくり休むといいわ」
プリシラは話を転換する。
「……でも」
「いいわね?」
「……分かったわ」
プリシラがシャーリーに詰め寄ると、彼女は渋々頷いた。心優しい彼女には、これ以上自分の都合に振り回す訳にも行かない。
シャーリーはプリシラを心配そうに振り返り、それからとぼとぼと貧民街に帰っていった。
「……行くわよ」
プリシラは貧民街に消えて行くシャーリーの後ろ姿を眺め、それからロザリーが待つメディチ家へと足を進めた。
◇◇◇
数日振りに帰って来たメディチ家は散々な有り様だった。屋敷中を民衆が取り囲み、窓は石を投げられたのか、割れた硝子があちこちに散乱している。
「……酷いわね」
プリシラが呟く。
まあ、これも自分のせいなのだが。
プリシラが屋敷の凄惨な光景に目を細めていると……
「やめなさいよ!!!」
「私を誰だと思っているんだ!!」
屋敷の中からピンクゴールドの髪の少女と金髪碧眼の男性……ロザリーとヨハネス、それからミレーヌとダグラス、ダミアンが民衆たちの手によって引きずり出されていた。
彼らを見つめる民衆たちは皆憎悪に瞳を染め、その顔は悪鬼のように醜く歪んでいた。
「……」
プリシラは、口の端がつり上がらないように注意しながら、できるだけ平静を保った。
「……お姉さま?」
地面に引きずられ、髪もドレスもぐちゃぐちゃになり、土埃にまみれたロザリーがプリシラに気づいた。
そして
「助けてください!」
悲鳴を上げた。
ロザリーのプリシラを呼んだ「お姉さま」という声に、民衆から戸惑いの声が上がる。
「あの人がこの女の姉?」
「……けれど、あの人は俺たちに真実を伝えてくれたじゃないか」
「だが、姉というなら同罪じゃないか?」
民衆からプリシラに疑惑の目が向けられる。
そしてプリシラは──
19
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
エメラインの結婚紋
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
見た目普通の侯爵令嬢のよくある婚約破棄のお話ですわ。
しゃち子
恋愛
侯爵令嬢コールディ・ノースティンはなんでも欲しがる妹にうんざりしていた。ドレスやリボンはわかるけど、今度は婚約者を欲しいって、何それ!
平凡な侯爵令嬢の努力はみのるのか?見た目普通な令嬢の婚約破棄から始まる物語。
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる