44 / 76
これは妖獣の花嫁となったお姉様を虐げた罰なの?
しおりを挟む
お父様がある日突然、私たちは平民に戻ると言った。
お母様はそんなお父様のことを健気に支えるように隣にいた。
私はそんな二人を気持ち悪いなぁと思いつつも、話を聞いた。
なんでもお父様が投資詐欺にあったらしい。
話を聞いて、馬鹿だなぁと思う。
「お父様…どうか気を落とさないで。そんなことでお父様を嫌いになったりしません」
「ブルローネ…!すまない、すまない…」
「いいんです、お父様」
使えない男。
とはいえ、この世界で女性が一人で生きていける方法は少ない。
あの婚約者との婚約はどうせおじゃんなので、適当に新たな結婚が決まるまではこの親に頼るしかない。
媚はまだ売る。
「お父様は鉱夫として働くことにした。寮付きの職場だ」
「そうなのですね!私もお父様を支えられるように頑張ります!」
「ありがとう、ブルローネ…」
そして新たな住まいに移った。
新たな職場はなかなか条件が良いらしく、それなりの生活を送っていけている。
お母様がお父様の上司になんかされているのは知っているが、助けられるものでもないので知らないふり。
ああ、私自身もやっぱり汚くて気持ち悪い。
自己保身の塊でしかない、お父様とお母様の罪の子として相応しい醜い中身。
「ブルローネは美しいね」
「ふふ」
醜い私には、醜い男がお似合いだ。
お父様が鉱夫として働き、お母様が専業主婦をする中で…私は寮の近所のパン屋さんで働き出した。
そこで出会ったお客様である男に見初められた。
この男は商人だが、お父様の弟のような真っ当な商人ではない。
その上女性を美術品として扱うタイプの下衆。
「僕たちはお似合いだと思うんだ」
「ええ、私もそう思います」
「本当に?嬉しいな」
下衆同士、お似合いだ。
「ねえ、指輪を捧げても良いかな」
「え?」
「僕と結婚してほしい」
左手の薬指に指輪をはめられた。
ついにこうなった。
ここで頷けばこの男の美術品として、束縛を受ける窮屈な結婚生活が待っている。
だが、生きていくには困らなくなるし贅沢は約束される。
…ただただ、私が心の中で気持ち悪くて仕方がないと吐き気を催す日々を送るだけ。
「もちろんです」
「ありがとう」
微笑みながら、吐き気を抑える。
人を不幸にして成り上がった商人。
人を不幸にして愛を確認した歪んだ私。
なんて気持ちの悪い組み合わせだろう、反吐がでる。
でも、やっぱりお似合いだ。
「…お姉様に会いたい」
「え?」
「あ、いえ。他所に嫁いでから会っていない姉を急に思い出して」
「ああ、そうなんだね。それは寂しいね。その分僕が側にいるからね」
「ありがとうございます」
お姉様の綺麗な心に、触れたい。
お母様はそんなお父様のことを健気に支えるように隣にいた。
私はそんな二人を気持ち悪いなぁと思いつつも、話を聞いた。
なんでもお父様が投資詐欺にあったらしい。
話を聞いて、馬鹿だなぁと思う。
「お父様…どうか気を落とさないで。そんなことでお父様を嫌いになったりしません」
「ブルローネ…!すまない、すまない…」
「いいんです、お父様」
使えない男。
とはいえ、この世界で女性が一人で生きていける方法は少ない。
あの婚約者との婚約はどうせおじゃんなので、適当に新たな結婚が決まるまではこの親に頼るしかない。
媚はまだ売る。
「お父様は鉱夫として働くことにした。寮付きの職場だ」
「そうなのですね!私もお父様を支えられるように頑張ります!」
「ありがとう、ブルローネ…」
そして新たな住まいに移った。
新たな職場はなかなか条件が良いらしく、それなりの生活を送っていけている。
お母様がお父様の上司になんかされているのは知っているが、助けられるものでもないので知らないふり。
ああ、私自身もやっぱり汚くて気持ち悪い。
自己保身の塊でしかない、お父様とお母様の罪の子として相応しい醜い中身。
「ブルローネは美しいね」
「ふふ」
醜い私には、醜い男がお似合いだ。
お父様が鉱夫として働き、お母様が専業主婦をする中で…私は寮の近所のパン屋さんで働き出した。
そこで出会ったお客様である男に見初められた。
この男は商人だが、お父様の弟のような真っ当な商人ではない。
その上女性を美術品として扱うタイプの下衆。
「僕たちはお似合いだと思うんだ」
「ええ、私もそう思います」
「本当に?嬉しいな」
下衆同士、お似合いだ。
「ねえ、指輪を捧げても良いかな」
「え?」
「僕と結婚してほしい」
左手の薬指に指輪をはめられた。
ついにこうなった。
ここで頷けばこの男の美術品として、束縛を受ける窮屈な結婚生活が待っている。
だが、生きていくには困らなくなるし贅沢は約束される。
…ただただ、私が心の中で気持ち悪くて仕方がないと吐き気を催す日々を送るだけ。
「もちろんです」
「ありがとう」
微笑みながら、吐き気を抑える。
人を不幸にして成り上がった商人。
人を不幸にして愛を確認した歪んだ私。
なんて気持ちの悪い組み合わせだろう、反吐がでる。
でも、やっぱりお似合いだ。
「…お姉様に会いたい」
「え?」
「あ、いえ。他所に嫁いでから会っていない姉を急に思い出して」
「ああ、そうなんだね。それは寂しいね。その分僕が側にいるからね」
「ありがとうございます」
お姉様の綺麗な心に、触れたい。
105
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
因果応報以上の罰を
下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。
どこを取っても救いのない話。
ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる