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聖魔力の検査
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「皇帝陛下。そろそろ皇女殿下にも聖魔力の検査をしませんと」
「…まだ早くない?仮に力があるとして、まだ覚醒には時間がかかると思うけど」
「覚醒しておらずとも、体内に聖魔力があるかはわかりますから」
「まあそうだけどさ」
「聖魔力は使えば使うほど磨かれていく魔力。早いうちから把握しておいた方が良いでしょう」
アストリアの聖魔力の検査を側近に進言されるアタナーズ。
聖魔力とは、皇女のみに時々現れる不思議な魔力だ。皇室が特別視される理由の一つでもある。能力としては、光魔法の上位互換である。凄まじい治癒の効果や、強力な結界を張れるなどの効果がある。
しかし残念ながら、そうそう発現するものではない。現に、革命軍に襲われた時誰も聖魔力に目覚めておらず結界が張れなかった。
「…けど、もし万が一聖魔力が確認されたら聖女にならないといけない。幼いあの子には重荷になる」
「そもそも聖魔力などそうそう発現するものではありませんし」
「それはそうだけど」
「皇女殿下には、ガビーがいます。見ていて思うのですが、ガビーはものすごく賢い。聖女として働く際もガビーを連れ歩くようにすれば精神的な負担は減るかと」
「…そうだね。わかったよ、アストリアの聖魔力の検査を早急に行う。明日、中央教会の司教を呼んで」
アタナーズの言葉に、側近はすぐに動く。中央教会に連絡を取り、司教を一人寄越してもらうことになった。
「聖魔力の検査?」
「はい、皇女殿下。聖魔力はわかりますか?」
「皇女にだけ現れる、光魔法より強い魔力!」
「はい、おっしゃる通りです。それが皇女殿下に発現しているか、調べますね」
「よろしくお願いします!」
わくわくしているアストリアに、側で見守るアタナーズはハラハラする。
司教はそんなアストリアとアタナーズ、そしてアストリアを守るんだと言わんばかりにアストリアの前から動かないガビーに心が癒されるのを感じながら、水晶を取り出した。
「お待たせしました。こちらは、魔力の属性を見る特別な水晶となります」
「特別な水晶?」
「はい。こちらに手をかざしていただくだけで、どんな属性の魔力を持つかがわかるのですよ」
「どうやって?」
「属性の色に光るのです。火属性なら赤、光属性なら白、聖魔力ならば虹色などですね」
アストリアは瞳をキラキラさせる。
「面白ーい!」
「では、かざしてみましょうか」
「うん!」
アストリアが手を水晶にかざす。するとわずかに、虹色に光った。
「これは…聖魔力を発現されていますね」
「すごい?」
「すごいです」
「わーい!」
アストリアは無邪気に喜ぶ。司教も拍手をして祝福した。アタナーズの側近はアストリアが聖魔力を持つことをありがたいと思うが、アタナーズの心境を思うと少し複雑だ。ガビーは何かわかっているのか、アタナーズの膝に顔をすりすりした。
そしてアタナーズは。
「…アストリアが聖魔力を。これからは聖女として表に出さないといけないのか」
アタナーズは、できることならアストリアを安全な場所に囲っておきたいのが本音だ。しかし、聖女ともなればそうはいかない。聖魔力を使って欲しい人はいっぱいいるし、聖魔力は使えば使うほど強くなる魔力。絶対これから先、アストリアはあちこちで引っ張りだこだ。
心配で仕方がないという顔のアタナーズに、ガビーがそっと寄り添う。
「…いや、僕も覚悟を決めなくては」
兄としては心配でしょうがないが、皇帝としてはありがたいことは確か。国民達の人気を集めるのと不満を払拭するのにはちょうどいいのだ。今は自分が良き皇帝として国民達から支持されているとはいえ、またいつ人気が落ちるかなんてわからない。
そう思いなおして、アタナーズはアストリアの頭を撫でてアストリアを祝福した。
「…まだ早くない?仮に力があるとして、まだ覚醒には時間がかかると思うけど」
「覚醒しておらずとも、体内に聖魔力があるかはわかりますから」
「まあそうだけどさ」
「聖魔力は使えば使うほど磨かれていく魔力。早いうちから把握しておいた方が良いでしょう」
アストリアの聖魔力の検査を側近に進言されるアタナーズ。
聖魔力とは、皇女のみに時々現れる不思議な魔力だ。皇室が特別視される理由の一つでもある。能力としては、光魔法の上位互換である。凄まじい治癒の効果や、強力な結界を張れるなどの効果がある。
しかし残念ながら、そうそう発現するものではない。現に、革命軍に襲われた時誰も聖魔力に目覚めておらず結界が張れなかった。
「…けど、もし万が一聖魔力が確認されたら聖女にならないといけない。幼いあの子には重荷になる」
「そもそも聖魔力などそうそう発現するものではありませんし」
「それはそうだけど」
「皇女殿下には、ガビーがいます。見ていて思うのですが、ガビーはものすごく賢い。聖女として働く際もガビーを連れ歩くようにすれば精神的な負担は減るかと」
「…そうだね。わかったよ、アストリアの聖魔力の検査を早急に行う。明日、中央教会の司教を呼んで」
アタナーズの言葉に、側近はすぐに動く。中央教会に連絡を取り、司教を一人寄越してもらうことになった。
「聖魔力の検査?」
「はい、皇女殿下。聖魔力はわかりますか?」
「皇女にだけ現れる、光魔法より強い魔力!」
「はい、おっしゃる通りです。それが皇女殿下に発現しているか、調べますね」
「よろしくお願いします!」
わくわくしているアストリアに、側で見守るアタナーズはハラハラする。
司教はそんなアストリアとアタナーズ、そしてアストリアを守るんだと言わんばかりにアストリアの前から動かないガビーに心が癒されるのを感じながら、水晶を取り出した。
「お待たせしました。こちらは、魔力の属性を見る特別な水晶となります」
「特別な水晶?」
「はい。こちらに手をかざしていただくだけで、どんな属性の魔力を持つかがわかるのですよ」
「どうやって?」
「属性の色に光るのです。火属性なら赤、光属性なら白、聖魔力ならば虹色などですね」
アストリアは瞳をキラキラさせる。
「面白ーい!」
「では、かざしてみましょうか」
「うん!」
アストリアが手を水晶にかざす。するとわずかに、虹色に光った。
「これは…聖魔力を発現されていますね」
「すごい?」
「すごいです」
「わーい!」
アストリアは無邪気に喜ぶ。司教も拍手をして祝福した。アタナーズの側近はアストリアが聖魔力を持つことをありがたいと思うが、アタナーズの心境を思うと少し複雑だ。ガビーは何かわかっているのか、アタナーズの膝に顔をすりすりした。
そしてアタナーズは。
「…アストリアが聖魔力を。これからは聖女として表に出さないといけないのか」
アタナーズは、できることならアストリアを安全な場所に囲っておきたいのが本音だ。しかし、聖女ともなればそうはいかない。聖魔力を使って欲しい人はいっぱいいるし、聖魔力は使えば使うほど強くなる魔力。絶対これから先、アストリアはあちこちで引っ張りだこだ。
心配で仕方がないという顔のアタナーズに、ガビーがそっと寄り添う。
「…いや、僕も覚悟を決めなくては」
兄としては心配でしょうがないが、皇帝としてはありがたいことは確か。国民達の人気を集めるのと不満を払拭するのにはちょうどいいのだ。今は自分が良き皇帝として国民達から支持されているとはいえ、またいつ人気が落ちるかなんてわからない。
そう思いなおして、アタナーズはアストリアの頭を撫でてアストリアを祝福した。
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