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チョコレート

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今日はお金に余裕があるので軽い依頼をいくつかこなすだけにした。何故って、移動のための乗り合い馬車の中で自称おじさん冒険者との賭けポーカーでうちのリオルがたくさん勝ったから。この自称おじさん冒険者、一人称は〝おじさん〟だが実はおじさんでもなんでもなく私と年が近い。というか同じ孤児院出身の私の二つ上のお兄ちゃんだ。Sランク冒険者で、魔法剣士。大剣を背後に抱えてる。不測の事態に備えて腰にも太刀を装備してある。騎士になることを夢見ていたけれど、王国騎士団の実態を知ると冒険者に鞍替えした。今ではどこも同じだと笑って話せるようになったけど、当時はショック受けてたなー。孤児院出身はどこでも差別されるから…。

「ハリスお兄ちゃん、この子は私の愛弟子で血の繋がらない弟のリオルよ」

「リオルなのじゃー。ハリスお兄ちゃん?よろしくなのじゃー」

「おう、よろしくな坊主!リリアの弟ならおじさんにとっても弟だ!可愛い弟にはチョコレートをやろう」

「チョコレート?」

「なんだ坊主、チョコレートも知らないのか?リリア」

「駄菓子を買ってあげることもあるのよ。ある程度お小遣いも渡してる。多分、たまたま目に入らなかったんでしょう」

「そうかい。坊主、甘いから食ってみろ」

「うむ!…んー!美味しいのじゃー!甘くて蕩けてすぐ無くなるのじゃー!茶色くて四角なのに味はまーんまるなのじゃー!ハリスお兄ちゃん、ありがとうなのじゃー!」

「おう。ちゃんとお礼が言えて坊主は偉いな!…リリア。坊主はチョコレートも知らないなんて、どんな環境で育った?」

「…気付いた時にはひとりぼっちだったみたい。山で草…山菜を食べて育ったの。魔獣のいる山だったから、保護してそのまま一緒にいるわ」

「そりゃあ…可哀想になぁ…子減らしか…」

「ん?わしのことかの?わしはリリアと一緒だから幸せじゃぞー」

「…そうか」

ハリスお兄ちゃんはリオルの頭を乱暴に撫でる。

「おじさんもな、境遇はおんなじようなもんだ。リリアもな。でもな、坊主がリリアに救われたように、リリアとおじさんも孤児院ってところの神父様やシスター達に救われたんだ。だからな、もしこのままリリアの愛弟子として、冒険者として成長するなら、いつか孤児院に寄ってみろ。きっと、あそこもお前さんの力になってくれるから。あそこは、力のない子供たちの最後の砦だからな!」

「そうなんじゃのー。リリアもハリスお兄ちゃんもわしと同じ天涯孤独なんじゃのー。しんみりするのー…」

「んじゃあこれ以上しんみりしないように賭けポーカーでもやるか!坊主の賭け金はリリアが出せよー」

「言っておくけど、リオルにはトランプ遊びはある程度教えてあるから簡単には負けないわよ」

「おじさんだって負けないさ!」

「ハリスお兄ちゃんったら…リオル、遊んでもらいなさい」

「んー。いいけど賭けってなんじゃー?」

「気にしなくていいわ。ただ楽しく遊べばいいの」

「そうかのー?」

ということで、ハリスお兄ちゃんは見事にリオルに惨敗。リオルは強くもないが弱くもない。今日はたまたま運が良かっただけだけど、おかげで今日は楽が出来た。ハリスお兄ちゃんは負けた分を取り戻すのにギルドできつい仕事を請け負っていたが、ハリスお兄ちゃんならすぐに稼いでくるだろう。Sランク冒険者は伊達じゃない。

「リリアー。今度は駄菓子屋でチョコレートをうんとこさ買うんじゃー!美味しかったのじゃー!」

「そうね。チョコレートにも種類があるから、色々試すといいわ。ミルクにダークにホワイトチョコ。いちごやバナナなんかのフルーツ味もあるわよ」

「楽しみなのじゃー!」

「せっかくだから、早速今日買っていきましょうか。ハリスお兄ちゃんのおかげで余裕があるし」

「わーいなのじゃー!」

リオルはたくさんの種類のチョコレートに大興奮。駄菓子屋のおばあちゃんも優しく微笑んで時間をかけて選ぶリオルを待ってあげてくれた。今日はいい日だな。
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