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ワイルドボアのネギ焼き

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私はリリア。SSSランクのソロ冒険者。孤児院出身で、両親の顔すら知らない。でも、私には魔法の才能があった。私は成人後すぐに冒険者として名を馳せ、孤児院に仕送りをしつつ気ままに旅をしている。ピンクのおかっぱヘアーに青い瞳の、細身の私は冒険者としてはかなり目立つのかあっという間に冒険者仲間の間では有名人になった。だからこそ私はソロで頑張っている。面倒は避けたい。

そんな私の今日の依頼は、悪名高い人喰いシルバードラゴンの討伐。火山に生活費を稼ぐため貴重な薬草の採取にいった貧しい人々が、次々と喰われているそう。討伐の証として、指定された死者の形見の品とシルバードラゴンに唯一一枚だけ生えている虹の鱗を差し出す契約だ。その分報酬は高い。孤児院へのしばらく分の仕送りになる。

ということで、私は今そのドラゴンと対峙しているのだけれど…。

「わしを殺すのかの?」

「ええ、人喰いドラゴンを討伐するのが依頼だもの。言い残すことはある?」

「あるぞい」

「聞いてあげる」

「わしは人など食っとらんのじゃ」

「…は?」

泣きながらぽつぽつと零すドラゴンの言うことを纏めると、ドラゴンは実は勘違いされているだけで人を喰ったりなどしていなかった。人を喰っていたのはドラゴンと同じ火山に住むモンスターで、平和主義のドラゴンはずっとお腹が空いても他の生き物を食べることなくその辺の草を食んで暮らしていたのだ。…ということらしい。

それを涙ながらに最期の言葉として語られた私は、『真実の目』という魔法を使いドラゴンの言葉が嘘か調べた。真実だと私の魔法が指し示したので、どうやらドラゴンの言葉は嘘ではないらしい。ということでドラゴン討伐そっちのけでドラゴンの言うところの人喰いのモンスターを探して、本当にいたのでさくっと討伐した。そのモンスターが人間を喰っていた証拠…遺族に指定された形見の品も回収出来るだけ回収した。

人喰いモンスターを討伐して真実を確認した私は、何の罪もないのに人間から忌み嫌われることとなった可哀想なドラゴンに「討伐したことにしてあげようか」と提案する。私も冒険者に成り立ての頃には孤児院の出身というだけで何の罪もないのに除け者にされたり虐められたりした経験があったので、なんとなく仲間意識を持ってしまったのだ。

「どういうことじゃ?」

「つまりは貴方を助けてあげる」

ドラゴンはぼろぼろ泣きながら頷き、私の言う通り私が討伐の証として取ってくるよう指定された一枚の虹色の鱗を差し出した。

「騙すのは申し訳ないけど、誤解を解くのも難しそうだし人喰いモンスターは討伐したしね。問題は貴方のこれからだけど」

「んー。魔力を大量に使うからしばらくドラゴンの姿にも戻れなくなるんじゃがの。それでもよければ、人に化けられるぞい。まあ、そんなことをしたら行き倒れ確定じゃがのう。誰か養ってくれんかのー」

「…どういうこと?」

ドラゴン曰く、永く生きたため魔力だけは高いので、人の姿を取ることができるらしい。

「じゃあ、私がしばらく養ってあげる。旅をしているから付いてきたらいいわ。そのうち魔力も戻って良い住処も見つけたら、ドラゴンに戻って自立してね」

ということで、ドラゴンは人間の子供に化け、私と共に国を旅することになった。…のはいいけど。

「なんで子供の姿?」

「人間に変化するのは大変なんじゃー。必然こうなるのじゃ」

銀髪に青い瞳の髪の長い小さな男の子。服はちゃんと着てる。偉い。

「そう…まあいいけど。貴方名前は?」

「ずっと一人だったからないぞい」

「じゃあ…リオル。貴方は今日からリオルよ」

「ほー。初めての名前なのじゃー!リオル、リオル!お前さんは何という?」

「リリアよ。これからは年の離れた血の繋がりのない貴方の姉よ」

「わかったのじゃ!そういう設定なのじゃー!」

初めての名前に喜ぶ無邪気なリオルを連れて、私は火山を降りて依頼者に「人喰いを討伐した」と伝え形見の品とリオルの虹の鱗を渡した。申し訳ないが、報酬はちゃんと受け取る。じゃなきゃ怪しまれるから。本当はちゃんと説明するべきなのは自覚しているけれど、きっとその説明は受け入れられず他の冒険者にリオルは殺される。だって遺族は人喰いドラゴンの仕業だと固く信じていて、憎しみを募らせているから。それよりもこうするのが一番平和な解決方法なのだ。嘘も方便、許して欲しい。

「さて…リオル、貴方草ばかり食べてたのよね。美味しい食堂が近くにあるから行きましょう」

「食堂?」

「お金を払ってご飯を食べるところよ。私がお金を出すから、好きなだけ食べなさい」

食堂にリオルを連れていく。テーブル席で、果実水を二人分注文してリオルのメニュー選びを待つ。私はワイルドボアのネギ焼き定食にする。

「んー、この水美味しいのじゃー」

「メニューは決まった?」

「リリアと同じがいいのじゃー」

「わかった」

ワイルドボアのネギ焼き定食を二つ頼む。ライスとスープ付きなのが嬉しい。すぐに注文の品は届いた。

「いただきます」

「いただきますなのじゃー」

私と一緒に手を合わせて食べ始めるリオル。その顔はすぐに喜びに溢れた。

「これ美味しいのじゃ!ワイルドボアの肉を焼いたのも美味しいし、ネギ?この草も美味しいし、しょっぱくて辛くて美味しいのじゃ!」

「しょっぱいのは塩で辛いのはコショウよ。この国は比較的豊かだから、香辛料や調味料が豊富なの」

「んー?」

「美味しいものがいっぱいなのよ」

「すごいのじゃ!塩とコショウ大好きなのじゃー!」

「主役はワイルドボアの肉だけどね」

「ワイルドボアすごいのじゃー!」

「パンチが効いてて良いわよね」

「ど直球なのじゃー」

「わかる」

リオルのはしゃぐ姿はなんだかとても可愛い。毎日美味しいものを食べさせてあげようと私は心に決めた。
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