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おてんば姫のシンデレラストーリーはひたすらに優しい
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カタリナ・ミューズ。ミューズ男爵家の長女。優しい両親としっかり者の兄に大切にされてきた末っ子は、おてんば姫として有名だった。そんな彼女は十五歳になったある日、誕生日パーティーが終わってさあ寝室に戻ろうという時突然胸を押さえて倒れた。一晩高熱に魘された彼女は、翌朝目が覚めると不思議な力に目覚めていた。魔力である。
この世界において魔法は、魔力と想像力が全てである。魔力は大体、十五歳前後に覚醒する。魔力さえ持ってしまえば、あとは想像力さえあればなんでもできる。まあ魔力が足りなければ意味がないが。
そんな魔法は、この世界では恐ろしい力でもありながら聖なる力とされている。だから、カタリナの両親と兄はとても喜んだ。カタリナはカタリナで、元々空想好きで想像力の化身なので割とすぐに魔法を使いこなした。
そんなカタリナは、領地が好きだ。領民が好きだ。そんな男爵領は、最近飢饉に喘いでいた。いや、カタリナのいる国とその隣国が全体的に飢饉に襲われていた。寒波が原因である。そんな中でも、大好きな領民達はカタリナの誕生日を祝って欲しいとなけなしの食料を調達してくれた。カタリナは領民達から大層可愛がられていた。
だからカタリナは、魔法を使いこなせていると判断されてすぐに、領地の畑に向かった。そして魔法で、ぐんぐんと野菜や麦などを育てた。一時間ほどで収穫できるまでにした。しかもめちゃくちゃ美味しく育てた。これには領民達は歓喜した。収穫もカタリナの魔法で瞬時に行った。これで領内の食料不足は一気に解決した。
だがカタリナはここで止まらない。また野菜や麦を一日中魔法を使い大量に育てて、今度は飢饉に喘いでいた別の貴族達に良心的な価格設定で売った。良心的な価格設定と、自領で喘ぐ平民達にも分けることという条件で売り捌いた野菜や麦などはすぐさま売り切れたが、その次、そのまた次の日も売りさばきいつしか国内は飢饉を脱していた。カタリナは気付いていないが、たくさんの貴族や他領の領民達に恩を売っていたことになる。
そして、カタリナとその家族は国王陛下から呼び出されこの度の報酬として子爵位を賜った。良心的な価格設定とはいえ、沢山の野菜や麦を売りさばいたことで自領の平民達やカタリナの家は裕福になっておりそれで十分だったのだが、貰えるものは貰っておいた。
次にカタリナは、隣国も救おうと考えた。今までと同じ要領で野菜や麦を大量に作り、国王陛下から了承を得るとすぐに隣国に良心的な価格設定で野菜や麦を大量に売りさばいた。これにて隣国も飢饉から救われたのである。
カタリナの国と隣国は、元々は関係が非常に良かった。だが飢饉の際に他国から食料を調達するにあたっていざこざがあったらしく、関係が冷え込んでいた。そこにカタリナの良心的な価格設定での食料の輸出。隣国との関係は改善され、むしろ感謝されるまでとなった。
カタリナと家族は、隣国との国交正常化の功績により国王陛下から呼び出され伯爵位を賜った。隣国への輸出でさらに自領の平民達とカタリナの家は裕福になったのだが、貰えるものは貰っておいた。
さて、お金持ちになり伯爵位を賜るとなると流石に今までのおんぼろ屋敷では示しがつかない。ということで、カタリナの魔法で古株の公爵家レベルの立派な庭付きプール付きのかっこいい屋敷に魔改造された。幸いというか、カタリナは前は男爵令嬢であったが他の令嬢方から非常に可愛がられており、いくつかの公爵家や侯爵家にお邪魔したことがあったのでその家々の良いとこ取りの屋敷が完成したのだ。
しかし、ここまで広くすると使用人が必要になる。今の侍女長と執事長だけという人数では圧倒的に足りない。ということで、カタリナは欠損奴隷を買い漁った。具体的には百人。欠損奴隷は、手や足や目など身体の一部を失った奴隷であり、普通の三分の一の値段で買える。今のカタリナの家の財政事情なら余裕だった。
そしてカタリナは、魔法で彼らの欠損を数日かけて治した。さすがに魔力の関係で一日では全員は治せなかったがなんとか数日で全員治した。さらに大量の書類にサインをして彼らを奴隷の身分から平民に戻して使用人として雇った。彼らはカタリナに非常に感謝した。そして崇拝するに至った。侍女長、執事長に自ら教えを請い、すぐに立派な使用人となってくれた。
そしてカタリナはその間せっかく人を治せるならと、貴族や商人などの大金持ちを相手に医者に匙を投げられた末期の患者などを治した。ただし死にかけの者を救うのでさすがに一日一人が限界だった。それでも人を救えたし、謝礼も弾んで貰えたので良かったと思う。カタリナは謝礼を全て家計に入れた。カタリナの家族はカタリナに沢山のお小遣いを渡すがカタリナはお金のかかる趣味がないので使わなかった。
そんなことをしてさらに貴族や商人に恩を売るカタリナは、ある日内密に国王陛下から呼び出された。なんでも国王陛下は病に侵されているらしい。王太子に引き継ぎはしているが、できればあの子がもっと成長してから王位を譲りたい。治してはくれまいかとの依頼だ。
カタリナは頷き、国王陛下を治した。だが、国王陛下の病状は思いの外悪く完全に国王陛下を治したカタリナは魔力不足で倒れた。
事情を唯一知る王太子殿下がカタリナをお姫様抱っこして客間に連れて行きベッドに寝かせて、一日中看病した。父を救ってくれたカタリナに王太子エドワードは非常に感謝し、そして魔力不足で熱を出す彼女の色っぽさに当てられた。エドワードはカタリナに恋をした。
そんなエドワードの胸中を知った国王陛下はカタリナの家族を呼び出し、これまで多くの貴族を病から救った報酬として侯爵位を授け、また王太子エドワードとカタリナの婚約を命じたのである。
カタリナの両親と兄はさすがにびっくりした。行って伯爵位までだろうと思っていたのに侯爵位。しかも王太子殿下と我が家のおてんば姫の婚約。
しかし、王命には逆らえない。ついでに貰えるものは貰っておきたい。ということで、侯爵位を賜り婚約届けにもサインした。
一方、ようやく目を覚ましたカタリナは目の前の王太子殿下にぽうっと見惚れた。いつもなら遠くからしか見られない憧れの王子様。おてんば姫は空想好きで、何度もこの光景を夢見ていた。だから、目の前の王太子殿下に見惚れて…はっと気付いた。これは空想ではない。
「え?え?え?」
「ご機嫌よう、カタリナ嬢。この度は父を救ってくれてありがとう」
「あ、は、はい」
「今までの君の功績を称えて、君の家は侯爵位を賜ったよ。それに見合うだけの財産もあるようだし、よかったね」
「は、は、はい…!ありがとうございます!」
「ふふ。それでね、侯爵家なら王太子とも釣り合いが取れるだろう?僕達も年齢が同じだから何も問題はないね。後は王太子妃教育だけれど…魔法が使える君なら、きっと乗り越えられるね」
「え…」
「君はこの国にとって、もはや手放せない人材になった。だから、この国になんとしてでも縛り付ける必要がある」
「…あの?」
「だからね、君には僕の婚約者…ひいては王太子妃になって貰うことになった」
「…~っ!?」
声にならない悲鳴。しかしエドワードはカタリナに容赦なかった。
「あ、もう婚約届けにお互いの両親がサインして教会に提出してるから逃げられないよ」
「な、な、なっ」
「ついでに言うとね、僕個人も君を好きになってしまったみたいなんだ。これが愛なのか恋なのかはわからないけどね」
「ひぇっ!?」
「悲鳴すら可愛いなんて、僕も末期かな。毎日積極的に口説き落としに行くから、覚悟しておいで」
「お、王太子殿下~、勘弁してください~!王太子殿下がキラキラし過ぎて無理です~!」
情け無い声を上げるカタリナを心底愛おしそうに愛でるエドワードは、更に容赦なく続ける。
「エドと呼んで」
「え、でも」
「エド」
「…え、エド…様」
「よく出来ました」
こうしてなんだかんだで外堀も埋められ猛烈にアタックされ、カタリナはいつのまにか見事に王太子妃にまで上り詰めたのだった。なお、王太子妃教育を受けている間はずっと情け無い悲鳴が聞こえたという。
この世界において魔法は、魔力と想像力が全てである。魔力は大体、十五歳前後に覚醒する。魔力さえ持ってしまえば、あとは想像力さえあればなんでもできる。まあ魔力が足りなければ意味がないが。
そんな魔法は、この世界では恐ろしい力でもありながら聖なる力とされている。だから、カタリナの両親と兄はとても喜んだ。カタリナはカタリナで、元々空想好きで想像力の化身なので割とすぐに魔法を使いこなした。
そんなカタリナは、領地が好きだ。領民が好きだ。そんな男爵領は、最近飢饉に喘いでいた。いや、カタリナのいる国とその隣国が全体的に飢饉に襲われていた。寒波が原因である。そんな中でも、大好きな領民達はカタリナの誕生日を祝って欲しいとなけなしの食料を調達してくれた。カタリナは領民達から大層可愛がられていた。
だからカタリナは、魔法を使いこなせていると判断されてすぐに、領地の畑に向かった。そして魔法で、ぐんぐんと野菜や麦などを育てた。一時間ほどで収穫できるまでにした。しかもめちゃくちゃ美味しく育てた。これには領民達は歓喜した。収穫もカタリナの魔法で瞬時に行った。これで領内の食料不足は一気に解決した。
だがカタリナはここで止まらない。また野菜や麦を一日中魔法を使い大量に育てて、今度は飢饉に喘いでいた別の貴族達に良心的な価格設定で売った。良心的な価格設定と、自領で喘ぐ平民達にも分けることという条件で売り捌いた野菜や麦などはすぐさま売り切れたが、その次、そのまた次の日も売りさばきいつしか国内は飢饉を脱していた。カタリナは気付いていないが、たくさんの貴族や他領の領民達に恩を売っていたことになる。
そして、カタリナとその家族は国王陛下から呼び出されこの度の報酬として子爵位を賜った。良心的な価格設定とはいえ、沢山の野菜や麦を売りさばいたことで自領の平民達やカタリナの家は裕福になっておりそれで十分だったのだが、貰えるものは貰っておいた。
次にカタリナは、隣国も救おうと考えた。今までと同じ要領で野菜や麦を大量に作り、国王陛下から了承を得るとすぐに隣国に良心的な価格設定で野菜や麦を大量に売りさばいた。これにて隣国も飢饉から救われたのである。
カタリナの国と隣国は、元々は関係が非常に良かった。だが飢饉の際に他国から食料を調達するにあたっていざこざがあったらしく、関係が冷え込んでいた。そこにカタリナの良心的な価格設定での食料の輸出。隣国との関係は改善され、むしろ感謝されるまでとなった。
カタリナと家族は、隣国との国交正常化の功績により国王陛下から呼び出され伯爵位を賜った。隣国への輸出でさらに自領の平民達とカタリナの家は裕福になったのだが、貰えるものは貰っておいた。
さて、お金持ちになり伯爵位を賜るとなると流石に今までのおんぼろ屋敷では示しがつかない。ということで、カタリナの魔法で古株の公爵家レベルの立派な庭付きプール付きのかっこいい屋敷に魔改造された。幸いというか、カタリナは前は男爵令嬢であったが他の令嬢方から非常に可愛がられており、いくつかの公爵家や侯爵家にお邪魔したことがあったのでその家々の良いとこ取りの屋敷が完成したのだ。
しかし、ここまで広くすると使用人が必要になる。今の侍女長と執事長だけという人数では圧倒的に足りない。ということで、カタリナは欠損奴隷を買い漁った。具体的には百人。欠損奴隷は、手や足や目など身体の一部を失った奴隷であり、普通の三分の一の値段で買える。今のカタリナの家の財政事情なら余裕だった。
そしてカタリナは、魔法で彼らの欠損を数日かけて治した。さすがに魔力の関係で一日では全員は治せなかったがなんとか数日で全員治した。さらに大量の書類にサインをして彼らを奴隷の身分から平民に戻して使用人として雇った。彼らはカタリナに非常に感謝した。そして崇拝するに至った。侍女長、執事長に自ら教えを請い、すぐに立派な使用人となってくれた。
そしてカタリナはその間せっかく人を治せるならと、貴族や商人などの大金持ちを相手に医者に匙を投げられた末期の患者などを治した。ただし死にかけの者を救うのでさすがに一日一人が限界だった。それでも人を救えたし、謝礼も弾んで貰えたので良かったと思う。カタリナは謝礼を全て家計に入れた。カタリナの家族はカタリナに沢山のお小遣いを渡すがカタリナはお金のかかる趣味がないので使わなかった。
そんなことをしてさらに貴族や商人に恩を売るカタリナは、ある日内密に国王陛下から呼び出された。なんでも国王陛下は病に侵されているらしい。王太子に引き継ぎはしているが、できればあの子がもっと成長してから王位を譲りたい。治してはくれまいかとの依頼だ。
カタリナは頷き、国王陛下を治した。だが、国王陛下の病状は思いの外悪く完全に国王陛下を治したカタリナは魔力不足で倒れた。
事情を唯一知る王太子殿下がカタリナをお姫様抱っこして客間に連れて行きベッドに寝かせて、一日中看病した。父を救ってくれたカタリナに王太子エドワードは非常に感謝し、そして魔力不足で熱を出す彼女の色っぽさに当てられた。エドワードはカタリナに恋をした。
そんなエドワードの胸中を知った国王陛下はカタリナの家族を呼び出し、これまで多くの貴族を病から救った報酬として侯爵位を授け、また王太子エドワードとカタリナの婚約を命じたのである。
カタリナの両親と兄はさすがにびっくりした。行って伯爵位までだろうと思っていたのに侯爵位。しかも王太子殿下と我が家のおてんば姫の婚約。
しかし、王命には逆らえない。ついでに貰えるものは貰っておきたい。ということで、侯爵位を賜り婚約届けにもサインした。
一方、ようやく目を覚ましたカタリナは目の前の王太子殿下にぽうっと見惚れた。いつもなら遠くからしか見られない憧れの王子様。おてんば姫は空想好きで、何度もこの光景を夢見ていた。だから、目の前の王太子殿下に見惚れて…はっと気付いた。これは空想ではない。
「え?え?え?」
「ご機嫌よう、カタリナ嬢。この度は父を救ってくれてありがとう」
「あ、は、はい」
「今までの君の功績を称えて、君の家は侯爵位を賜ったよ。それに見合うだけの財産もあるようだし、よかったね」
「は、は、はい…!ありがとうございます!」
「ふふ。それでね、侯爵家なら王太子とも釣り合いが取れるだろう?僕達も年齢が同じだから何も問題はないね。後は王太子妃教育だけれど…魔法が使える君なら、きっと乗り越えられるね」
「え…」
「君はこの国にとって、もはや手放せない人材になった。だから、この国になんとしてでも縛り付ける必要がある」
「…あの?」
「だからね、君には僕の婚約者…ひいては王太子妃になって貰うことになった」
「…~っ!?」
声にならない悲鳴。しかしエドワードはカタリナに容赦なかった。
「あ、もう婚約届けにお互いの両親がサインして教会に提出してるから逃げられないよ」
「な、な、なっ」
「ついでに言うとね、僕個人も君を好きになってしまったみたいなんだ。これが愛なのか恋なのかはわからないけどね」
「ひぇっ!?」
「悲鳴すら可愛いなんて、僕も末期かな。毎日積極的に口説き落としに行くから、覚悟しておいで」
「お、王太子殿下~、勘弁してください~!王太子殿下がキラキラし過ぎて無理です~!」
情け無い声を上げるカタリナを心底愛おしそうに愛でるエドワードは、更に容赦なく続ける。
「エドと呼んで」
「え、でも」
「エド」
「…え、エド…様」
「よく出来ました」
こうしてなんだかんだで外堀も埋められ猛烈にアタックされ、カタリナはいつのまにか見事に王太子妃にまで上り詰めたのだった。なお、王太子妃教育を受けている間はずっと情け無い悲鳴が聞こえたという。
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