1 / 59
可哀想な子を拾った
しおりを挟む
この世の中は不条理で溢れている。
人の命は平等と謳う我が国の国教はその実貴族からの寄付で肥え、飢えた平民や棄民たちを救うことはほとんどない。
貴族はノブレスオブリージュなんて言葉を知らないように、自らの利益ばかりを追求する。
王家は貴族や他国の王族との駆け引きばかりで、下々の者に見向きもしない。
「ああ、なんて可哀想なんだ」
オレのような恵まれた貴族と違い、生まれた時点で貧乏くじ。
とても哀れで、だからオレは貴族としての面子を保つためのお金以外の自分の自由になるお金を領の内外問わず貧民救済に使っている。領外の貧民を救済する時は、その地域の領主に許可をもらうのも忘れない。
オレは一応立場ある公爵様で、使用人たちからも領民たちからも取引のある商人からも評判がいい。
だから表立ってオレの悪口を言う貴族はいないけれど、影では貧民救済なんてバカじゃないかと言われているのは知っている。
だけれど、恵まれた者が持たざる者を助けるのは当たり前のことだろう?
「そう思って、ここまで色々やってきたけれど」
だからと言って、これは予想外。
屋敷の前に、アルビノの子供が捨てられていたと報告があった。
白い髪、白い肌、赤い瞳。
カラフルな髪や目の色の多い我が国でも、アルビノは珍しかったりはする。
だから、保護してあげなければその子がどうなるかなんて分かりきっていた。
「…迎えに行くから、追い払ったりしないでね」
その子を迎えに行く。
本当に見事なアルビノで、さらに顔立ちも整っている。
だけれどその白い肌には沢山の痣があり、髪もボサボサでやせ細っていた。身につける服もボロ切れと言っていい。
彼女は感情のない目をこちらに向けてくるから、優しく手を差し伸べる。
彼女は不思議そうにその手を見つめるので、優しく声を掛けてあげた。
「おいで、今日から君はオレのモノだ」
「…そう、本当に拾ってくれるのね」
「冷めてるなぁ…」
綺麗な声で冷めたことを言うこの子供は、どんな人生を送ってきたのだろう。
養子縁組はしない、貴族籍は与えない。それは安易にしていいことではないから。
だけど、オレのモノとして育てよう。
名目はなんでもいい。奴隷候補でも、侍女候補でも、お嫁さん候補でも。
とにかくこの子供を救うことさえできれば、どうでもよかった。
「…なるほどなぁ。だからそのお嬢さんを引き取ったと」
「そう、さっさと診察してくれる?」
「わかったわかった」
この子をメイドたちにお風呂に入れさせている間に、小さな頃から世話になっているお爺ちゃん先生を呼んだ。
お風呂から上がって、髪を乾かして切りそろえたところでちょうどきてくれた。
この子の服はとりあえずメイドの子供の頃の服を譲ってもらって着せた、あとで買う。
「ふむ、とりあえず痣とボロボロになった身体の中身はワシの回復魔術で治せるな。行くぞ」
お爺ちゃん先生はさらっと彼女の痣と栄養失調でボロボロになった中身を治す。
「胃腸の調子も治してあるから、とりあえず今は飯をたらふく食わせてやれ。それで痩せすぎた身体も戻るじゃろ。感染症とかも治してあるから安心せい。ただ、背中の火傷の跡はちょっとな…ワシでも手に負えんが、塗り薬を処方しよう。貴重な薬だからここまで酷くとも少しずつ綺麗になるはずじゃ」
「ありがとう、これお代ね」
「おーおー、相変わらずすごい額くれるのぉ。いつもなら多すぎると困るところじゃが、今回は薬代が高いからトントンじゃな」
「え、そんな高い薬なの」
「その分よく効くぞー」
お爺ちゃん先生はニコニコ笑うが、この子はにこりともしない。
ただ、何も感じないわけではないらしい。
「ありがとう、お医者様。身体がすごく楽になったわ。本当に感謝しています。お兄さんも」
「このくらいならお安い御用じゃ」
「ほとんど治ってよかったよ」
ポンポンとこの子の頭を撫でてあげれば、一瞬戸惑った表情を浮かべたがすぐに真顔に戻った。
「じゃあ、ワシはこれで帰るからの」
「ありがとう、また頼むよ」
「いい加減引退したいんじゃがなぁ」
ぼやきつつも帰っていくお爺ちゃん先生を見送ってから、この子に声を掛けた。
「じゃあ、次は必要なものを買おうか」
商人にも既に連絡済み。
すぐに来るはずだ。
人の命は平等と謳う我が国の国教はその実貴族からの寄付で肥え、飢えた平民や棄民たちを救うことはほとんどない。
貴族はノブレスオブリージュなんて言葉を知らないように、自らの利益ばかりを追求する。
王家は貴族や他国の王族との駆け引きばかりで、下々の者に見向きもしない。
「ああ、なんて可哀想なんだ」
オレのような恵まれた貴族と違い、生まれた時点で貧乏くじ。
とても哀れで、だからオレは貴族としての面子を保つためのお金以外の自分の自由になるお金を領の内外問わず貧民救済に使っている。領外の貧民を救済する時は、その地域の領主に許可をもらうのも忘れない。
オレは一応立場ある公爵様で、使用人たちからも領民たちからも取引のある商人からも評判がいい。
だから表立ってオレの悪口を言う貴族はいないけれど、影では貧民救済なんてバカじゃないかと言われているのは知っている。
だけれど、恵まれた者が持たざる者を助けるのは当たり前のことだろう?
「そう思って、ここまで色々やってきたけれど」
だからと言って、これは予想外。
屋敷の前に、アルビノの子供が捨てられていたと報告があった。
白い髪、白い肌、赤い瞳。
カラフルな髪や目の色の多い我が国でも、アルビノは珍しかったりはする。
だから、保護してあげなければその子がどうなるかなんて分かりきっていた。
「…迎えに行くから、追い払ったりしないでね」
その子を迎えに行く。
本当に見事なアルビノで、さらに顔立ちも整っている。
だけれどその白い肌には沢山の痣があり、髪もボサボサでやせ細っていた。身につける服もボロ切れと言っていい。
彼女は感情のない目をこちらに向けてくるから、優しく手を差し伸べる。
彼女は不思議そうにその手を見つめるので、優しく声を掛けてあげた。
「おいで、今日から君はオレのモノだ」
「…そう、本当に拾ってくれるのね」
「冷めてるなぁ…」
綺麗な声で冷めたことを言うこの子供は、どんな人生を送ってきたのだろう。
養子縁組はしない、貴族籍は与えない。それは安易にしていいことではないから。
だけど、オレのモノとして育てよう。
名目はなんでもいい。奴隷候補でも、侍女候補でも、お嫁さん候補でも。
とにかくこの子供を救うことさえできれば、どうでもよかった。
「…なるほどなぁ。だからそのお嬢さんを引き取ったと」
「そう、さっさと診察してくれる?」
「わかったわかった」
この子をメイドたちにお風呂に入れさせている間に、小さな頃から世話になっているお爺ちゃん先生を呼んだ。
お風呂から上がって、髪を乾かして切りそろえたところでちょうどきてくれた。
この子の服はとりあえずメイドの子供の頃の服を譲ってもらって着せた、あとで買う。
「ふむ、とりあえず痣とボロボロになった身体の中身はワシの回復魔術で治せるな。行くぞ」
お爺ちゃん先生はさらっと彼女の痣と栄養失調でボロボロになった中身を治す。
「胃腸の調子も治してあるから、とりあえず今は飯をたらふく食わせてやれ。それで痩せすぎた身体も戻るじゃろ。感染症とかも治してあるから安心せい。ただ、背中の火傷の跡はちょっとな…ワシでも手に負えんが、塗り薬を処方しよう。貴重な薬だからここまで酷くとも少しずつ綺麗になるはずじゃ」
「ありがとう、これお代ね」
「おーおー、相変わらずすごい額くれるのぉ。いつもなら多すぎると困るところじゃが、今回は薬代が高いからトントンじゃな」
「え、そんな高い薬なの」
「その分よく効くぞー」
お爺ちゃん先生はニコニコ笑うが、この子はにこりともしない。
ただ、何も感じないわけではないらしい。
「ありがとう、お医者様。身体がすごく楽になったわ。本当に感謝しています。お兄さんも」
「このくらいならお安い御用じゃ」
「ほとんど治ってよかったよ」
ポンポンとこの子の頭を撫でてあげれば、一瞬戸惑った表情を浮かべたがすぐに真顔に戻った。
「じゃあ、ワシはこれで帰るからの」
「ありがとう、また頼むよ」
「いい加減引退したいんじゃがなぁ」
ぼやきつつも帰っていくお爺ちゃん先生を見送ってから、この子に声を掛けた。
「じゃあ、次は必要なものを買おうか」
商人にも既に連絡済み。
すぐに来るはずだ。
433
お気に入りに追加
548
あなたにおすすめの小説
気弱な公爵夫人様、ある日発狂する〜使用人達から虐待された結果邸内を破壊しまくると、何故か公爵に甘やかされる〜
下菊みこと
恋愛
狂犬卿の妻もまた狂犬のようです。
シャルロットは狂犬卿と呼ばれるレオと結婚するが、そんな夫には相手にされていない。使用人たちからはそれが理由で舐められて虐待され、しかし自分一人では何もできないため逃げ出すことすら出来ないシャルロット。シャルロットはついに壊れて発狂する。
小説家になろう様でも投稿しています。
非常識な男にざまぁみろってお話
下菊みこと
恋愛
主人公の男がドクズです、ご注意下さい。ざまぁというか因果応報です。一応主人公以外は落ち着くところに落ち着いて、穏やかな人生に戻っていきますので主人公以外はハッピーエンドのはずです。
主人公は、幼馴染が初恋の相手だった。ある時妻が我が子を出産する時期と、幼馴染の病気が重なった。主人公は初恋の幼馴染を看取ることを選んだ。
小説家になろう様でも投稿しています。
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
お幸せに、婚約者様。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
私の好きな人には、他にお似合いの人がいる。
下菊みこと
恋愛
ものすっごいネガティブ思考で自己中かつ心の声がうるさいおかしな主人公と、一見するとクソみたいな浮気者にしか見えない婚約者のすれ違いからの修復物語。
両者共に意外と愛が重い。
御都合主義なファンタジー恋愛。ふわっと設定。人外好きさんいらっしゃい。
頭を空っぽにして読んでください。
小説家になろう様でも投稿しています。
運命の強制力が働いたと判断したので、即行で断捨離します
下菊みこと
恋愛
悲恋になるのかなぁ…ほぼお相手の男が出番がないですが、疑心暗鬼の末の誤解もあるとはいえ裏切られて傷ついて結果切り捨てて勝ちを拾いに行くお話です。
ご都合主義の多分これから未来は明るいはずのハッピーエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
誤解ありきのアレコレだからあんまり読後感は良くないかも…でもよかったらご覧ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる