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隠し事
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帰ると、ジェスお兄様が出迎えてくれた。
「やあ、ナターシャ。ルナ嬢は元気にしてたかい?」
「はい。私の治癒魔法で痣や傷はもうありませんし、とりあえずご飯も普通のものを与えられているようです。顔色も良くなり、性格もいくらか明るくなったかと」
「そっか。ナターシャには不調はないかい?ターンから貰ったお守りは?」
「今日は無事でした」
「そっか。それは良かった。ところで、ナターシャ」
「はい」
「逆行転生前に第二王子殿下が惚れた相手は、ルナ嬢だね?」
「えっ…はい、どうしてそれを…」
「ルナ嬢に触ったりした時から状況が悪化したりとかした?」
「…平手打ちしてから益々第二王子殿下はルナに傾倒していきましたわ」
「…やっぱり。ナターシャ、祖父上と父上が待ってる。おいで。夕食はその後だよ」
「は、はい」
なんだろう?
お爺様の部屋に入れさせてもらうと、空気が重い。
「ナターシャ。お前に話がある」
「はい、お爺様」
「ルナ男爵令嬢…ルナは、お前の双子の妹だ」
…は?
「…」
「お前が驚くのも無理はない。あの子はな、生まれてすぐに東の女神の呪いを受けてしまった。理由はわからん。きっと美しく育つだろうお前とルナを妬んだんだろう。だが、生まれた時に一番近しい存在であった双子の姉のお前が、たったそれだけの理由でいつか死ぬのは可哀想でな。だからルナを殺すしかなかった。だが、お前の母親の懇願でお前を育てつつ、ルナを娘のいない下級貴族に預けることになった」
なによ、それ…。
「で、でも、私とあの娘は似てないわ」
「色はな。顔立ちはよく似ているんじゃないか?」
そういえば、確かに痩せこけてこそいるけど、どことなく似てなくもないかもしれないけど…。
「双子といっても似てない兄弟も多いんだよ、ナターシャ」
「お父様…」
じゃあ、本当に…?
「なら!今すぐあの娘を引き取ってください!」
「ナターシャ。それをするとナターシャが危ないんだよ」
「ターンお兄様のお守りがあるわ!」
「あれはターンが自らの水属性魔法を込めたものだよ。水属性は浄化の力を持つからね。でも、ずっとそんなことをしていたらターンが倒れる」
「…!」
それは…だめね…。
「ルナの待遇を良くするように男爵家には圧力をかけておく。ナターシャはこれからはあまりルナには近付くな」
「…いやです」
「…は?」
「私はあの娘を見捨てたくないから」
「だが、いつかは呪いがお前を蝕むのだから…」
「どちらにせよあの娘が将来私と同じ学園に進めば同じことです」
「…それは」
「…今決めました。私、東の女神に直談判してきます」
「は?」
「ではそういうことで」
私はお父様とジェスお兄様と部屋の前で盗み聞きしていたお兄様方の制止を無視して馬車を走らせる。お父様とお兄様方はお爺様が止めてくださったので助かった。幸い、東の女神の住処は我が家近くの森の泉。なんとかなるでしょう。
「やあ、ナターシャ。ルナ嬢は元気にしてたかい?」
「はい。私の治癒魔法で痣や傷はもうありませんし、とりあえずご飯も普通のものを与えられているようです。顔色も良くなり、性格もいくらか明るくなったかと」
「そっか。ナターシャには不調はないかい?ターンから貰ったお守りは?」
「今日は無事でした」
「そっか。それは良かった。ところで、ナターシャ」
「はい」
「逆行転生前に第二王子殿下が惚れた相手は、ルナ嬢だね?」
「えっ…はい、どうしてそれを…」
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「…やっぱり。ナターシャ、祖父上と父上が待ってる。おいで。夕食はその後だよ」
「は、はい」
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「はい、お爺様」
「ルナ男爵令嬢…ルナは、お前の双子の妹だ」
…は?
「…」
「お前が驚くのも無理はない。あの子はな、生まれてすぐに東の女神の呪いを受けてしまった。理由はわからん。きっと美しく育つだろうお前とルナを妬んだんだろう。だが、生まれた時に一番近しい存在であった双子の姉のお前が、たったそれだけの理由でいつか死ぬのは可哀想でな。だからルナを殺すしかなかった。だが、お前の母親の懇願でお前を育てつつ、ルナを娘のいない下級貴族に預けることになった」
なによ、それ…。
「で、でも、私とあの娘は似てないわ」
「色はな。顔立ちはよく似ているんじゃないか?」
そういえば、確かに痩せこけてこそいるけど、どことなく似てなくもないかもしれないけど…。
「双子といっても似てない兄弟も多いんだよ、ナターシャ」
「お父様…」
じゃあ、本当に…?
「なら!今すぐあの娘を引き取ってください!」
「ナターシャ。それをするとナターシャが危ないんだよ」
「ターンお兄様のお守りがあるわ!」
「あれはターンが自らの水属性魔法を込めたものだよ。水属性は浄化の力を持つからね。でも、ずっとそんなことをしていたらターンが倒れる」
「…!」
それは…だめね…。
「ルナの待遇を良くするように男爵家には圧力をかけておく。ナターシャはこれからはあまりルナには近付くな」
「…いやです」
「…は?」
「私はあの娘を見捨てたくないから」
「だが、いつかは呪いがお前を蝕むのだから…」
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「…それは」
「…今決めました。私、東の女神に直談判してきます」
「は?」
「ではそういうことで」
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