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森の子

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「桜。今回はこの森を抜けるぞ。この森には特に恐るべき妖はいないはずだが、一応森だから用心しておく方がいい」

「はい、柚子さん」

「まあ、何かあっても俺と柚子が守るから、俺たちの側にいてくれ」

「はい、ありがとう、太一」

「ん」

ということで森に入ります。おどろおどろしい森ではなくて、温かくて優しい澄んだ空気の森のようです。とっても落ち着きます。

「桜、素敵な森だな」

「そうですね。居心地がいいです」

「これは森の子に出会えるかもな」

「森の子ですか?」

「ああ。何れ森の神になる妖だ。森から生まれるから森の子。結構可愛いぞ?」

「そうなんですね!会えたらいいな」

どんな子なんだろうとわくわくする。

「お、噂をすればだな。お出ましだ」

木々の間から、突然緑のポニーテールに緑の瞳の小さな小学一年生くらいの女の子が飛び出してきて私に抱きついてきた。

「わわっ!えっと…森の子さん?」

「うん!私緑!よろしくね!」

「えっと、桜です。よろしくね」

「うん!」

「太一だ。よろしく」

「よろしくね!」

「実際にお目にかかるのは初だな。柚子だ。よろしく頼む」

「うん、よろしく!ねえねえ、遊ぼうよ!」

私としては遊んであげたいが、二人はどうなんだろうか?

「いいですか?柚子さん、太一」

「俺は構わない」

「桜がいいならいいよ。森の子…緑もまだまだ遊びたい盛りだろうからな」

「じゃあ、一緒に遊びましょう」

二人が受け入れてくれてちょっとほっとする。

「何して遊ぶ?鬼ごっこ?かくれんぼ?」

「じゃあかくれんぼからやりましょう」

「かくれんぼ!じゃあ私が鬼をやるね!」

「いいんですか?では私達は隠れますね」

「うん!すぐに見つけちゃうからね!」

私達はそれぞれ隠れる。緑さんは探して回る。けれどさすがは森の子。隠れやすい場所は把握済みなようで私と太一はすぐに見つかってしまった。

「うーん。あのお兄さんだけ見つからないなぁ…こうさーん、出てきてー」

「はは、降参されては出るしかあるまいな」

柚子さんはなんと一番高い木の天辺にいた。そりゃあ見つからないわけだ。

「お兄さんすごーい!」

「そうとも。さあ、次は鬼ごっこだ。増やし鬼にしよう」

「いいよ!」

「じゃあ私が鬼役をやろう。みんなは逃げてくれ」

「はーい!」

ということで増やし鬼が始まった。私と太一は速攻で柚子さんに捕まって鬼になった。

「緑さん、朝早いですね」

「普通に足が速い分には追いつけそうだが、あちらに地の利があるのが問題だな」

「これは捕まえるまで一苦労だな。よし、追い込み漁をしよう」

ということで緑さんを三人で囲んで追い詰める。緑さんもさすがに囲い込まれては逃げられない。ということで時間はかかったもののなんとか鬼ごっこも無事終了。

「次は何をして遊ぶ?」

「じゃあお手玉やってみますか?」

「お手玉?」

「知りませんか?これをこうやって…投げて…こうしてくるくる回す遊びですよ」

「わあ、面白そう!やりたい!」

「じゃあまずは三個からやってみましょうか」

「うん!」

緑さんにお手玉を教えると、最初は苦労したものの覚えると一気に開花して五個お手玉で回せるようになった。

「お手玉楽しいね!」

「そうですね」

「次は何をして遊ぶ?」

「次はけん玉をやってみましょうか」

「けん玉?」

「これのことです。これを…こうやって…いろんな技に挑戦するんですよ」

「わあ!面白そう!教えて!」

「ならば俺が教えよう。こういう技があってな…」

「うん!」

緑さんは太一の教えによりすぐに才能が開花して、色々な技をできるようになった。

「面白かったー。お姉さん達ありがとう!」

「いえいえ」

「どういたしまして」

「ところで緑。この辺りに宿はあるか?泊まる場所がないと困るんだが」

「んー?泊まる場所はないけど、うちに泊まっていったらいいよ!」

「緑さんの家に?いいんですか?」

「いいよ!来て!」

「ありがとうございます、緑さん」

「うん!」

案内された緑さんの家は子供が作った秘密基地のような場所だった。けれど今日は雨も降りそうにないし大丈夫そうだ。

「森にもらったご飯、あげる!」

「ありがとうございます、緑さん」

森の木の実を貰って食べる。意外にも美味しい。

「ねえねえ、お姉さん。首飾り好き?」

「嫌いではないですよ?」

「じゃあ、これあげる!」

「わあ、可愛いですね!ありがとうございます!」

「うん、いいよ!」

多分緑さんのお手製であろう、歪な首飾りではあったが気持ちはとても嬉しいので素直に貰って首に飾る。

「似合いますか?」

「うん、可愛い!」

「よかった」

緑さんも喜んでくれているし、元の世界へ帰るまでは付けていようと決めた。

「桜」

「はい、柚子さん」

「その首飾り、緑の加護がついているようだぞ。一度だけ身代わりになってくれる優れものだ」

「え!?そんなすごいものなんですか!?」

「ああ。大事に使うといい」

「緑さん、本当にありがとうございます」

「うん、お姉さん大好き!」

抱きついてくる緑さんを抱きとめる。こんなに小さくて可愛くても、森の子なんだなぁと思う。

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

食べ終えて、寝袋に入る。緑さんが寝ている間ずっと離れてくれなかったが、そこがまた可愛いかった。

朝起きると早速緑さんは木の実を朝ごはんに出してくれた。ここの木の実は美味しい上に、食べれば食べただけ元気になるのでありがたい。そうして緑さんとのお別れ。

「じゃあ、緑さん。さようなら」

「うん、バイバイ!」

「緑、またいつか」

「またな」

「うん、またね!」

こうして旅は続くのでした。
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