12 / 23
森の子
しおりを挟む
「桜。今回はこの森を抜けるぞ。この森には特に恐るべき妖はいないはずだが、一応森だから用心しておく方がいい」
「はい、柚子さん」
「まあ、何かあっても俺と柚子が守るから、俺たちの側にいてくれ」
「はい、ありがとう、太一」
「ん」
ということで森に入ります。おどろおどろしい森ではなくて、温かくて優しい澄んだ空気の森のようです。とっても落ち着きます。
「桜、素敵な森だな」
「そうですね。居心地がいいです」
「これは森の子に出会えるかもな」
「森の子ですか?」
「ああ。何れ森の神になる妖だ。森から生まれるから森の子。結構可愛いぞ?」
「そうなんですね!会えたらいいな」
どんな子なんだろうとわくわくする。
「お、噂をすればだな。お出ましだ」
木々の間から、突然緑のポニーテールに緑の瞳の小さな小学一年生くらいの女の子が飛び出してきて私に抱きついてきた。
「わわっ!えっと…森の子さん?」
「うん!私緑!よろしくね!」
「えっと、桜です。よろしくね」
「うん!」
「太一だ。よろしく」
「よろしくね!」
「実際にお目にかかるのは初だな。柚子だ。よろしく頼む」
「うん、よろしく!ねえねえ、遊ぼうよ!」
私としては遊んであげたいが、二人はどうなんだろうか?
「いいですか?柚子さん、太一」
「俺は構わない」
「桜がいいならいいよ。森の子…緑もまだまだ遊びたい盛りだろうからな」
「じゃあ、一緒に遊びましょう」
二人が受け入れてくれてちょっとほっとする。
「何して遊ぶ?鬼ごっこ?かくれんぼ?」
「じゃあかくれんぼからやりましょう」
「かくれんぼ!じゃあ私が鬼をやるね!」
「いいんですか?では私達は隠れますね」
「うん!すぐに見つけちゃうからね!」
私達はそれぞれ隠れる。緑さんは探して回る。けれどさすがは森の子。隠れやすい場所は把握済みなようで私と太一はすぐに見つかってしまった。
「うーん。あのお兄さんだけ見つからないなぁ…こうさーん、出てきてー」
「はは、降参されては出るしかあるまいな」
柚子さんはなんと一番高い木の天辺にいた。そりゃあ見つからないわけだ。
「お兄さんすごーい!」
「そうとも。さあ、次は鬼ごっこだ。増やし鬼にしよう」
「いいよ!」
「じゃあ私が鬼役をやろう。みんなは逃げてくれ」
「はーい!」
ということで増やし鬼が始まった。私と太一は速攻で柚子さんに捕まって鬼になった。
「緑さん、朝早いですね」
「普通に足が速い分には追いつけそうだが、あちらに地の利があるのが問題だな」
「これは捕まえるまで一苦労だな。よし、追い込み漁をしよう」
ということで緑さんを三人で囲んで追い詰める。緑さんもさすがに囲い込まれては逃げられない。ということで時間はかかったもののなんとか鬼ごっこも無事終了。
「次は何をして遊ぶ?」
「じゃあお手玉やってみますか?」
「お手玉?」
「知りませんか?これをこうやって…投げて…こうしてくるくる回す遊びですよ」
「わあ、面白そう!やりたい!」
「じゃあまずは三個からやってみましょうか」
「うん!」
緑さんにお手玉を教えると、最初は苦労したものの覚えると一気に開花して五個お手玉で回せるようになった。
「お手玉楽しいね!」
「そうですね」
「次は何をして遊ぶ?」
「次はけん玉をやってみましょうか」
「けん玉?」
「これのことです。これを…こうやって…いろんな技に挑戦するんですよ」
「わあ!面白そう!教えて!」
「ならば俺が教えよう。こういう技があってな…」
「うん!」
緑さんは太一の教えによりすぐに才能が開花して、色々な技をできるようになった。
「面白かったー。お姉さん達ありがとう!」
「いえいえ」
「どういたしまして」
「ところで緑。この辺りに宿はあるか?泊まる場所がないと困るんだが」
「んー?泊まる場所はないけど、うちに泊まっていったらいいよ!」
「緑さんの家に?いいんですか?」
「いいよ!来て!」
「ありがとうございます、緑さん」
「うん!」
案内された緑さんの家は子供が作った秘密基地のような場所だった。けれど今日は雨も降りそうにないし大丈夫そうだ。
「森にもらったご飯、あげる!」
「ありがとうございます、緑さん」
森の木の実を貰って食べる。意外にも美味しい。
「ねえねえ、お姉さん。首飾り好き?」
「嫌いではないですよ?」
「じゃあ、これあげる!」
「わあ、可愛いですね!ありがとうございます!」
「うん、いいよ!」
多分緑さんのお手製であろう、歪な首飾りではあったが気持ちはとても嬉しいので素直に貰って首に飾る。
「似合いますか?」
「うん、可愛い!」
「よかった」
緑さんも喜んでくれているし、元の世界へ帰るまでは付けていようと決めた。
「桜」
「はい、柚子さん」
「その首飾り、緑の加護がついているようだぞ。一度だけ身代わりになってくれる優れものだ」
「え!?そんなすごいものなんですか!?」
「ああ。大事に使うといい」
「緑さん、本当にありがとうございます」
「うん、お姉さん大好き!」
抱きついてくる緑さんを抱きとめる。こんなに小さくて可愛くても、森の子なんだなぁと思う。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食べ終えて、寝袋に入る。緑さんが寝ている間ずっと離れてくれなかったが、そこがまた可愛いかった。
朝起きると早速緑さんは木の実を朝ごはんに出してくれた。ここの木の実は美味しい上に、食べれば食べただけ元気になるのでありがたい。そうして緑さんとのお別れ。
「じゃあ、緑さん。さようなら」
「うん、バイバイ!」
「緑、またいつか」
「またな」
「うん、またね!」
こうして旅は続くのでした。
「はい、柚子さん」
「まあ、何かあっても俺と柚子が守るから、俺たちの側にいてくれ」
「はい、ありがとう、太一」
「ん」
ということで森に入ります。おどろおどろしい森ではなくて、温かくて優しい澄んだ空気の森のようです。とっても落ち着きます。
「桜、素敵な森だな」
「そうですね。居心地がいいです」
「これは森の子に出会えるかもな」
「森の子ですか?」
「ああ。何れ森の神になる妖だ。森から生まれるから森の子。結構可愛いぞ?」
「そうなんですね!会えたらいいな」
どんな子なんだろうとわくわくする。
「お、噂をすればだな。お出ましだ」
木々の間から、突然緑のポニーテールに緑の瞳の小さな小学一年生くらいの女の子が飛び出してきて私に抱きついてきた。
「わわっ!えっと…森の子さん?」
「うん!私緑!よろしくね!」
「えっと、桜です。よろしくね」
「うん!」
「太一だ。よろしく」
「よろしくね!」
「実際にお目にかかるのは初だな。柚子だ。よろしく頼む」
「うん、よろしく!ねえねえ、遊ぼうよ!」
私としては遊んであげたいが、二人はどうなんだろうか?
「いいですか?柚子さん、太一」
「俺は構わない」
「桜がいいならいいよ。森の子…緑もまだまだ遊びたい盛りだろうからな」
「じゃあ、一緒に遊びましょう」
二人が受け入れてくれてちょっとほっとする。
「何して遊ぶ?鬼ごっこ?かくれんぼ?」
「じゃあかくれんぼからやりましょう」
「かくれんぼ!じゃあ私が鬼をやるね!」
「いいんですか?では私達は隠れますね」
「うん!すぐに見つけちゃうからね!」
私達はそれぞれ隠れる。緑さんは探して回る。けれどさすがは森の子。隠れやすい場所は把握済みなようで私と太一はすぐに見つかってしまった。
「うーん。あのお兄さんだけ見つからないなぁ…こうさーん、出てきてー」
「はは、降参されては出るしかあるまいな」
柚子さんはなんと一番高い木の天辺にいた。そりゃあ見つからないわけだ。
「お兄さんすごーい!」
「そうとも。さあ、次は鬼ごっこだ。増やし鬼にしよう」
「いいよ!」
「じゃあ私が鬼役をやろう。みんなは逃げてくれ」
「はーい!」
ということで増やし鬼が始まった。私と太一は速攻で柚子さんに捕まって鬼になった。
「緑さん、朝早いですね」
「普通に足が速い分には追いつけそうだが、あちらに地の利があるのが問題だな」
「これは捕まえるまで一苦労だな。よし、追い込み漁をしよう」
ということで緑さんを三人で囲んで追い詰める。緑さんもさすがに囲い込まれては逃げられない。ということで時間はかかったもののなんとか鬼ごっこも無事終了。
「次は何をして遊ぶ?」
「じゃあお手玉やってみますか?」
「お手玉?」
「知りませんか?これをこうやって…投げて…こうしてくるくる回す遊びですよ」
「わあ、面白そう!やりたい!」
「じゃあまずは三個からやってみましょうか」
「うん!」
緑さんにお手玉を教えると、最初は苦労したものの覚えると一気に開花して五個お手玉で回せるようになった。
「お手玉楽しいね!」
「そうですね」
「次は何をして遊ぶ?」
「次はけん玉をやってみましょうか」
「けん玉?」
「これのことです。これを…こうやって…いろんな技に挑戦するんですよ」
「わあ!面白そう!教えて!」
「ならば俺が教えよう。こういう技があってな…」
「うん!」
緑さんは太一の教えによりすぐに才能が開花して、色々な技をできるようになった。
「面白かったー。お姉さん達ありがとう!」
「いえいえ」
「どういたしまして」
「ところで緑。この辺りに宿はあるか?泊まる場所がないと困るんだが」
「んー?泊まる場所はないけど、うちに泊まっていったらいいよ!」
「緑さんの家に?いいんですか?」
「いいよ!来て!」
「ありがとうございます、緑さん」
「うん!」
案内された緑さんの家は子供が作った秘密基地のような場所だった。けれど今日は雨も降りそうにないし大丈夫そうだ。
「森にもらったご飯、あげる!」
「ありがとうございます、緑さん」
森の木の実を貰って食べる。意外にも美味しい。
「ねえねえ、お姉さん。首飾り好き?」
「嫌いではないですよ?」
「じゃあ、これあげる!」
「わあ、可愛いですね!ありがとうございます!」
「うん、いいよ!」
多分緑さんのお手製であろう、歪な首飾りではあったが気持ちはとても嬉しいので素直に貰って首に飾る。
「似合いますか?」
「うん、可愛い!」
「よかった」
緑さんも喜んでくれているし、元の世界へ帰るまでは付けていようと決めた。
「桜」
「はい、柚子さん」
「その首飾り、緑の加護がついているようだぞ。一度だけ身代わりになってくれる優れものだ」
「え!?そんなすごいものなんですか!?」
「ああ。大事に使うといい」
「緑さん、本当にありがとうございます」
「うん、お姉さん大好き!」
抱きついてくる緑さんを抱きとめる。こんなに小さくて可愛くても、森の子なんだなぁと思う。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食べ終えて、寝袋に入る。緑さんが寝ている間ずっと離れてくれなかったが、そこがまた可愛いかった。
朝起きると早速緑さんは木の実を朝ごはんに出してくれた。ここの木の実は美味しい上に、食べれば食べただけ元気になるのでありがたい。そうして緑さんとのお別れ。
「じゃあ、緑さん。さようなら」
「うん、バイバイ!」
「緑、またいつか」
「またな」
「うん、またね!」
こうして旅は続くのでした。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる