43 / 62
皇帝陛下の愛娘は婚約者にファンがたくさんいると知る
しおりを挟む
リリアージュとニコラとの婚約記念パーティーが開かれることとなったのは、婚約から一週間後の今日である。
リリアージュは綺麗に着飾り、ニコラのエスコートで入場する。
会場はお祝いムードが漂うが、一部のご令嬢からリリアージュが不躾な視線を送られているのにニコラ達は気付いた。
「…あのご令嬢、アストリ家とジョルジェット家の…」
「ギャエル家のご令嬢もいますわ」
「ユゲット家の子もいるねー」
「ロランス家のご令嬢もいますね」
「…なんなんだあいつら?」
シモンが睨み付けると、そそくさと人混みに隠れてしまったがリリアージュ以外の五人はすでに彼女達の顔と家名を覚えていた。
「どうかした?」
「リリアージュ様のことをじろじろ見てくるご令嬢がいたんだよ」
「おそらくニコラ様のファンクラブの方ですわ」
「え、ファンクラブ?」
「え、ニコラ気付いてなかったの?ファンクラブあるよ?なんならシモンとラウルにもあるよ」
「マジで?」
「俺も気付いてなかったんですが」
「一部の過激派はリリアージュ様のことを素敵な殿方ばかりをそばに置くとか色々言ってらっしゃいますわね」
「まあ私とエミリアちゃんがその度に言い返しに行って追い払ってたけど、いい加減皇帝陛下に処断してもらった方が早いかもー」
「その方が良さそうですね」
「リリアージュ様の悪口を言うような奴らにファンになられても不快なだけなんだけどな」
「ニコラって結構好き嫌い激しいよな。まあ俺もそいつらは嫌いだけど」
「だろう?僕だって好き嫌いはあるよ」
「俺も苦手ですね、その方たちは」
そんな中でリリアージュはのほほんと言った。
「みんなファンクラブなんてあるんだね!すごいなぁ」
リリアージュは知らない。この六人の中で一番ファンが多いのが自分自身だと。国内のファンクラブだけでも結構な数だが、国外のファンも合わせれば相当な数である。しかし、五人はそれはあえて伝えない。別にリリアージュが意識するべきものではないのだ。
「ふふ。そうですね、リリアージュ様」
「でも、知らない女の子達からファンクラブに入ってます!とか言われてもなぁ」
「正直困るよね」
「気持ちは有り難いですが、ファンの方達に何をしてあげられる訳でもありませんしね」
男子三人はあまり嬉しくないらしい。
「ノンノン。こういうファンクラブはね、推しを追っかけるだけで楽しいのよ。私は何が楽しいのかわからないけど」
「わかってないんかい」
シモンが思わずレオノールにツッコミを入れる。
「んー。でも、追っかけるだけで楽しいなら毎日幸せだよね」
「ですねー」
「追っかけるだけ追っかけてきて話しかけたりとかもしないんだろ?楽しいか、それ?」
「それが楽しいらしいのよ」
「皆様無駄に顔が整ってらっしゃいますものね」
エミリアがぴしゃりと告げる。
「無駄って酷くない?」
「だってそんなに美形だからって恩恵はないのでしょう?」
「むしろ嬉しくもないファンクラブとか出来ちゃうもんねー」
「それを言えばエミリアさんとレオノールさんもそうなのでは?」
ラウルが思わず口を出す。
「うん?ああ、私達のファンクラブもあるみたいだね」
「実害はないので問題ありませんわ、貴方方のファンクラブと違って」
「リリアージュ様の悪口を言うような人いないもんね」
「ぐぬぬ…」
リリアージュの悪口を言うような人がいないならファンクラブがあってもたしかに問題はない。一方で男子三人のファンクラブはリリアージュの悪口を言うような人がいる時点で問題だらけである。
というか、自分達が将来仕えることになる皇女の悪口を言うとか逆にちょっと過激すぎて怖い。親にバレたら、ましてやリリアージュにバレたらとか考えていないのだろうか。
「まあでも、生きてれば誰かに嫌われることはどうしてもあるからね。仕方ないよ」
リリアージュは笑って許す。だからこそ他の五人がなんとかしなければならない。最悪ナタナエルに告げ口することも検討する。
「リリアージュ様は何も悪くありません。なのに悪口を言われるのは問題です」
「そうですわ!リリアージュ様は優し過ぎます!」
「まあそこがリリアージュ様の良いところだけどねー」
「俺も仕方ないとは思えねーな」
「なんなら今からみんなで文句でも言いに行く?」
「そんな大事にしなくていいよ。大丈夫、ね?」
「リリアージュ様…」
そしてナタナエルが遅れて入場してくる。みんなさっと頭を下げた。しかしナタナエルの機嫌は何故か氷点下まで下がっている。それを感じ取った貴族全員、理由が思い当たらず困惑しながらも身体を縮こめるしか出来ることがなかった。
リリアージュはそんなパパに手を振ってみる。ナタナエルは少しだけ機嫌を良くしたが、なおも不機嫌な様子だった。リリアージュは困惑しつつもナタナエルの動向を見守ることにした。
リリアージュは綺麗に着飾り、ニコラのエスコートで入場する。
会場はお祝いムードが漂うが、一部のご令嬢からリリアージュが不躾な視線を送られているのにニコラ達は気付いた。
「…あのご令嬢、アストリ家とジョルジェット家の…」
「ギャエル家のご令嬢もいますわ」
「ユゲット家の子もいるねー」
「ロランス家のご令嬢もいますね」
「…なんなんだあいつら?」
シモンが睨み付けると、そそくさと人混みに隠れてしまったがリリアージュ以外の五人はすでに彼女達の顔と家名を覚えていた。
「どうかした?」
「リリアージュ様のことをじろじろ見てくるご令嬢がいたんだよ」
「おそらくニコラ様のファンクラブの方ですわ」
「え、ファンクラブ?」
「え、ニコラ気付いてなかったの?ファンクラブあるよ?なんならシモンとラウルにもあるよ」
「マジで?」
「俺も気付いてなかったんですが」
「一部の過激派はリリアージュ様のことを素敵な殿方ばかりをそばに置くとか色々言ってらっしゃいますわね」
「まあ私とエミリアちゃんがその度に言い返しに行って追い払ってたけど、いい加減皇帝陛下に処断してもらった方が早いかもー」
「その方が良さそうですね」
「リリアージュ様の悪口を言うような奴らにファンになられても不快なだけなんだけどな」
「ニコラって結構好き嫌い激しいよな。まあ俺もそいつらは嫌いだけど」
「だろう?僕だって好き嫌いはあるよ」
「俺も苦手ですね、その方たちは」
そんな中でリリアージュはのほほんと言った。
「みんなファンクラブなんてあるんだね!すごいなぁ」
リリアージュは知らない。この六人の中で一番ファンが多いのが自分自身だと。国内のファンクラブだけでも結構な数だが、国外のファンも合わせれば相当な数である。しかし、五人はそれはあえて伝えない。別にリリアージュが意識するべきものではないのだ。
「ふふ。そうですね、リリアージュ様」
「でも、知らない女の子達からファンクラブに入ってます!とか言われてもなぁ」
「正直困るよね」
「気持ちは有り難いですが、ファンの方達に何をしてあげられる訳でもありませんしね」
男子三人はあまり嬉しくないらしい。
「ノンノン。こういうファンクラブはね、推しを追っかけるだけで楽しいのよ。私は何が楽しいのかわからないけど」
「わかってないんかい」
シモンが思わずレオノールにツッコミを入れる。
「んー。でも、追っかけるだけで楽しいなら毎日幸せだよね」
「ですねー」
「追っかけるだけ追っかけてきて話しかけたりとかもしないんだろ?楽しいか、それ?」
「それが楽しいらしいのよ」
「皆様無駄に顔が整ってらっしゃいますものね」
エミリアがぴしゃりと告げる。
「無駄って酷くない?」
「だってそんなに美形だからって恩恵はないのでしょう?」
「むしろ嬉しくもないファンクラブとか出来ちゃうもんねー」
「それを言えばエミリアさんとレオノールさんもそうなのでは?」
ラウルが思わず口を出す。
「うん?ああ、私達のファンクラブもあるみたいだね」
「実害はないので問題ありませんわ、貴方方のファンクラブと違って」
「リリアージュ様の悪口を言うような人いないもんね」
「ぐぬぬ…」
リリアージュの悪口を言うような人がいないならファンクラブがあってもたしかに問題はない。一方で男子三人のファンクラブはリリアージュの悪口を言うような人がいる時点で問題だらけである。
というか、自分達が将来仕えることになる皇女の悪口を言うとか逆にちょっと過激すぎて怖い。親にバレたら、ましてやリリアージュにバレたらとか考えていないのだろうか。
「まあでも、生きてれば誰かに嫌われることはどうしてもあるからね。仕方ないよ」
リリアージュは笑って許す。だからこそ他の五人がなんとかしなければならない。最悪ナタナエルに告げ口することも検討する。
「リリアージュ様は何も悪くありません。なのに悪口を言われるのは問題です」
「そうですわ!リリアージュ様は優し過ぎます!」
「まあそこがリリアージュ様の良いところだけどねー」
「俺も仕方ないとは思えねーな」
「なんなら今からみんなで文句でも言いに行く?」
「そんな大事にしなくていいよ。大丈夫、ね?」
「リリアージュ様…」
そしてナタナエルが遅れて入場してくる。みんなさっと頭を下げた。しかしナタナエルの機嫌は何故か氷点下まで下がっている。それを感じ取った貴族全員、理由が思い当たらず困惑しながらも身体を縮こめるしか出来ることがなかった。
リリアージュはそんなパパに手を振ってみる。ナタナエルは少しだけ機嫌を良くしたが、なおも不機嫌な様子だった。リリアージュは困惑しつつもナタナエルの動向を見守ることにした。
12
お気に入りに追加
2,101
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる