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皇帝陛下の愛娘は侍従とデートする
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リリアージュは今日、精一杯のおめかしをしている。今日はニコラとのデートの約束の日だからだ。今日のニコラは侍従のお仕事はお休みをとっており、ただのニコラとしてデートをしてくれる。リリアージュは初めてのデートにドキドキしていた。
一方で、ニコラは珍しく緊張していた。普段はいつ何時もなるべく冷静でいられるように自分を律しているのだが、今回ばかりはそうもいかない。心臓がばくばくと音を立てて、苦しいくらいである。それでも、大切な想い人との初めてのデート。失敗は許されない。ニコラは自分の両頬をパチンと手で叩き、気合いを入れた。今日は絶対にリリアージュを喜ばせる。そして、アピールをしていつかは恋人に…。
そこまで考えて、ニコラは思考を停止する。だめだ、リリアージュ様とお付き合いするとか妄想だけでも幸せ過ぎる。今はデートに集中しよう。ニコラは待ち合わせ場所の中庭に向かった。
リリアージュが中庭にいくと、ニコラが待っていた。いつもの穏やかな微笑みに、安心する。
「ニコラ、お待たせ!」
「リリアージュ様、おはようございます。今日は一段とお美しいですね」
リリアージュはニコラからのストレートな褒め言葉に赤面する。今日のニコラの雰囲気はいつもより随分と甘い。なんだか熱がこちらにまで伝わって来そうだとリリアージュは思う。
「に、ニコラもすっごく素敵だよ!」
「ありがとうございます。今日はデートという形でリリアージュ様のお隣に立つのですから、うんとおしゃれをしてきました。リリアージュ様に気に入っていただけてとても嬉しいです」
ふわりと笑うニコラにリリアージュはときめいた。素敵な男性からここまで好意を向けられている。今までパパのことしか見えていなかったが、世の女性が恋に憧れる理由がわかった気がした。だからこそ、真剣にこの恋に向き合わなくてはと決意を新たにする。
「ニコラは今日は侍従じゃなくて、ニコラとしてデートしてくれるんでしょう?敬語!あと様付け!」
「ああ…いいのかな、リリアージュを呼び捨ててタメ口なんて」
「いいの!」
「…うん、わかったよ。可愛らしいリリアージュからのお願いなら、叶えないわけにいかないからね」
ニコラはリリアージュの頭を控えめに、優しく撫でる。普段はしないニコラの行動に、リリアージュはドキドキした。
「さあ、リリアージュ。手を繋いでいこうか」
「うん!」
ニコラはリリアージュと手を繋いで宮廷を出る。ニコラの用意した馬車に乗り込み、出発した。
「ニコラ、今日はどこにいくの?」
「着いてからのお楽しみだよ。それよりも、リリアージュは髪がサラサラだね」
ニコラはリリアージュの髪を手で梳く。さらりと髪が流れた。
「いつも手入れしてくれるみんなのおかげだよ」
「メイド達が聞いたら喜ぶね。リリアージュは本当に誰にでも優しい。好きだよ、リリアージュ」
隙あらば口説いてくるニコラにリリアージュはまた赤面する。今日のニコラは積極的で、いつもの穏やかな雰囲気とはかけ離れてる。
「に、ニコラ…」
「…少しは意識してもらえたかな。嬉しいよ、リリアージュ。愛してる。僕は誰よりも、君を幸せに出来る自信があるよ」
「…うん、ありがとう」
赤面して、瞳を潤ませるリリアージュに満足したニコラは追撃はやめた。これ以上積極的にすると逆に逃げられると判断したのだ。リリアージュは真っ赤になって下を向いて、けれども全然嫌ではなくて。うるさい心臓を必死に落ち着かせていた。まさかさっきから積極的なニコラも同じくらいドキドキしているとは気付きもせずに。
その後は無言で馬車に揺られたが、決して嫌な沈黙ではなくリリアージュは心臓をなんとか落ち着かせた。着いた先は花畑で、美しい色とりどりの花が咲き誇っている。
「わあ…!綺麗!」
「ここの花畑は最近になって観光地として有名になったんだよ。リリアージュが提言して皇帝陛下が私費で作ったスラム街の更生施設、あったよね?あそこに入所した者達が何もなかった広大なこの土地に花畑を作ったんだよ。すごいよね」
「本当に?話には聞いていたけど、あの更生施設がこんな風に上手くいくなんて、パパはすごいなぁ」
「提言したリリアージュがいてこそだよ」
「それなら、アドバイスしてくれたニコラがいてくれてこそだね!」
「ふふ、リリアージュの役に立てて嬉しいよ。あの時、リリアージュに拾って貰えて本当に良かった。リリアージュの側にいられて、本当に幸せだよ」
「ニコラ…」
「リリアージュ、愛してる」
リリアージュの頬に、ニコラの唇からそっとキスが落とされた。リリアージュは急なことに惚けている。ニコラは微笑んで、リリアージュの手を取った。
「さあ、花畑を見て回ろう。とっても素敵な景色だ、楽しまないと勿体ない」
「う、うん!」
そうして帰らなければいけない時間ギリギリまで、二人は花畑の景色を堪能した。
一方で、その様子を始終見ていたナタナエルは何度も何度も邪魔をしに行こうとしてはルイスから窘められて我慢しており、帰ってきたリリアージュの頬に消毒だとばかりにキスをした。リリアージュはよく分からず受け入れていた。
一方で、ニコラは珍しく緊張していた。普段はいつ何時もなるべく冷静でいられるように自分を律しているのだが、今回ばかりはそうもいかない。心臓がばくばくと音を立てて、苦しいくらいである。それでも、大切な想い人との初めてのデート。失敗は許されない。ニコラは自分の両頬をパチンと手で叩き、気合いを入れた。今日は絶対にリリアージュを喜ばせる。そして、アピールをしていつかは恋人に…。
そこまで考えて、ニコラは思考を停止する。だめだ、リリアージュ様とお付き合いするとか妄想だけでも幸せ過ぎる。今はデートに集中しよう。ニコラは待ち合わせ場所の中庭に向かった。
リリアージュが中庭にいくと、ニコラが待っていた。いつもの穏やかな微笑みに、安心する。
「ニコラ、お待たせ!」
「リリアージュ様、おはようございます。今日は一段とお美しいですね」
リリアージュはニコラからのストレートな褒め言葉に赤面する。今日のニコラの雰囲気はいつもより随分と甘い。なんだか熱がこちらにまで伝わって来そうだとリリアージュは思う。
「に、ニコラもすっごく素敵だよ!」
「ありがとうございます。今日はデートという形でリリアージュ様のお隣に立つのですから、うんとおしゃれをしてきました。リリアージュ様に気に入っていただけてとても嬉しいです」
ふわりと笑うニコラにリリアージュはときめいた。素敵な男性からここまで好意を向けられている。今までパパのことしか見えていなかったが、世の女性が恋に憧れる理由がわかった気がした。だからこそ、真剣にこの恋に向き合わなくてはと決意を新たにする。
「ニコラは今日は侍従じゃなくて、ニコラとしてデートしてくれるんでしょう?敬語!あと様付け!」
「ああ…いいのかな、リリアージュを呼び捨ててタメ口なんて」
「いいの!」
「…うん、わかったよ。可愛らしいリリアージュからのお願いなら、叶えないわけにいかないからね」
ニコラはリリアージュの頭を控えめに、優しく撫でる。普段はしないニコラの行動に、リリアージュはドキドキした。
「さあ、リリアージュ。手を繋いでいこうか」
「うん!」
ニコラはリリアージュと手を繋いで宮廷を出る。ニコラの用意した馬車に乗り込み、出発した。
「ニコラ、今日はどこにいくの?」
「着いてからのお楽しみだよ。それよりも、リリアージュは髪がサラサラだね」
ニコラはリリアージュの髪を手で梳く。さらりと髪が流れた。
「いつも手入れしてくれるみんなのおかげだよ」
「メイド達が聞いたら喜ぶね。リリアージュは本当に誰にでも優しい。好きだよ、リリアージュ」
隙あらば口説いてくるニコラにリリアージュはまた赤面する。今日のニコラは積極的で、いつもの穏やかな雰囲気とはかけ離れてる。
「に、ニコラ…」
「…少しは意識してもらえたかな。嬉しいよ、リリアージュ。愛してる。僕は誰よりも、君を幸せに出来る自信があるよ」
「…うん、ありがとう」
赤面して、瞳を潤ませるリリアージュに満足したニコラは追撃はやめた。これ以上積極的にすると逆に逃げられると判断したのだ。リリアージュは真っ赤になって下を向いて、けれども全然嫌ではなくて。うるさい心臓を必死に落ち着かせていた。まさかさっきから積極的なニコラも同じくらいドキドキしているとは気付きもせずに。
その後は無言で馬車に揺られたが、決して嫌な沈黙ではなくリリアージュは心臓をなんとか落ち着かせた。着いた先は花畑で、美しい色とりどりの花が咲き誇っている。
「わあ…!綺麗!」
「ここの花畑は最近になって観光地として有名になったんだよ。リリアージュが提言して皇帝陛下が私費で作ったスラム街の更生施設、あったよね?あそこに入所した者達が何もなかった広大なこの土地に花畑を作ったんだよ。すごいよね」
「本当に?話には聞いていたけど、あの更生施設がこんな風に上手くいくなんて、パパはすごいなぁ」
「提言したリリアージュがいてこそだよ」
「それなら、アドバイスしてくれたニコラがいてくれてこそだね!」
「ふふ、リリアージュの役に立てて嬉しいよ。あの時、リリアージュに拾って貰えて本当に良かった。リリアージュの側にいられて、本当に幸せだよ」
「ニコラ…」
「リリアージュ、愛してる」
リリアージュの頬に、ニコラの唇からそっとキスが落とされた。リリアージュは急なことに惚けている。ニコラは微笑んで、リリアージュの手を取った。
「さあ、花畑を見て回ろう。とっても素敵な景色だ、楽しまないと勿体ない」
「う、うん!」
そうして帰らなければいけない時間ギリギリまで、二人は花畑の景色を堪能した。
一方で、その様子を始終見ていたナタナエルは何度も何度も邪魔をしに行こうとしてはルイスから窘められて我慢しており、帰ってきたリリアージュの頬に消毒だとばかりにキスをした。リリアージュはよく分からず受け入れていた。
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