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皇帝陛下の愛娘は皇帝陛下を看病する
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「パパ?」
「どうした、リリアージュ」
ティータイム。ナタナエルの変化に、リリアージュはいち早く気付いていた。
「パパ、具合悪いでしょ。大丈夫?おやつはもういいから、お部屋に行こう?」
「このくらいなんてことはない」
「パパ、お願い」
リリアージュの表情に、ナタナエルは早々に白旗を揚げた。
「…わかった。わかったから」
そんな泣きそうな顔をするな、とは声にならなかった。リリアージュは、ナタナエルが少しでも体調を崩すとすぐにこの表情になる。
「大丈夫?歩ける?」
「平気だ」
「手を繋いで行こう?」
「わかった」
「…手が熱い。熱あるでしょ」
「…問題ない」
「大問題だもん!」
こうなると、普段とは逆転してリリアージュが過保護になる。ナタナエルはそんなリリアージュを見て、この子はまだ俺がついていないとダメだと再確認させられる。そしてそれは事実だった。もし曲がり間違って今ナタナエルがリリアージュを残して逝ったら、他に精神的な拠り所のないリリアージュは立ち直れないだろう。友達は大切だが、そういう対象ではなかった。
さらに言ってしまえばリリアージュのこの態度が、ナタナエルがいつまでも子離れ出来ない要因の一つだ。リリアージュがナタナエルを必要としているのが簡単に見て取れるから、いつまでも手を放してやれない。そして、二人ともそれに気付いていない。
だが、それでも日々成長していくリリアージュならばやがては巣立ちの日を迎えられるだろう。二人をいつも側で見ているルイスは、リリアージュの将来を信じている。そして、その期待はきっと裏切られないだろう。だから、今はまだ。もう少しだけこのままで。
「パパ、ベッドに横になって。ニコラ、皮袋に氷を入れて持ってきて。おでこと脇に使うから三つね」
「はい、リリアージュ様」
口を挟まず側に控えていたニコラが指示を受け、皮袋と氷を取りに行く。
「パパ、今日の夜はお粥にしようね。無理しないで仕事は明日に回してね。何かして欲しいことはある?あ、果実水飲む?水分補給してね」
「わかった。大丈夫だ、リリアージュ」
「元気になるまで大丈夫じゃないもん」
言いながらリリアージュはルイスから果実水の入ったコップを受け取り、ナタナエルに渡す。
「パパ、はやく元気になって」
「わかっている」
自分より余程しんどそうな愛娘を見て、何が何でもはやく治すと決め込むナタナエル。本当なら、治癒魔法を使えればいいのだが…残念ながら治癒魔法は〝治癒魔法の魔力適性がある者には効き辛い〟というデメリットがあった。ナタナエルは、治癒魔法が効き辛い。効かない訳ではなく効き辛いだけであるので、ナタナエル自身治癒魔法を朝から掛けていたが…結果はご覧の有り様である。
「リリアージュ様。皮袋に氷を入れてお持ちしました」
「ニコラ、ありがとう!」
果実水を飲んだ後また横になるナタナエルのおでこと脇を、冷たい皮袋が冷やす。
リリアージュはナタナエルの手を握ってただ早い回復を祈った。大したことはないのにそんな大げさなリリアージュに、ナタナエルはそっと頭を撫でてさっさと眠りについた。少しでも体力を回復して、さっさと体調を整えるためだ。
ティータイムの後から、ナタナエルにずっと引っ付いていたリリアージュは眠りもせずに徹夜してナタナエルのおでこと脇を冷やした。ニコラは当然それに付き合って徹夜である。リリアージュの頑張りの成果があり、なんとか朝には熱が下がっていた。ナタナエルが眼を覚ます。
「パパ、おはよう」
「おはよう、リリアージュ。…熱が下がっているな。また一晩中付き合ってくれたのか?」
「うん」
「ありがとう、リリアージュ。…まだ起きるには少し早い。お前もベッドに入って寝ろ」
「うん!」
すっかり本調子に戻ったナタナエルに安心して、リリアージュはナタナエルとの添い寝で眠りについた。ナタナエルはニコラに小さくご苦労と声をかけて、またリリアージュと共に眠る。そんな二人の様子を見て、ニコラはナタナエルにだけは一生勝てそうもないと少し落ち込み、同時に仲のいい二人をとても微笑ましく思った。
「どうした、リリアージュ」
ティータイム。ナタナエルの変化に、リリアージュはいち早く気付いていた。
「パパ、具合悪いでしょ。大丈夫?おやつはもういいから、お部屋に行こう?」
「このくらいなんてことはない」
「パパ、お願い」
リリアージュの表情に、ナタナエルは早々に白旗を揚げた。
「…わかった。わかったから」
そんな泣きそうな顔をするな、とは声にならなかった。リリアージュは、ナタナエルが少しでも体調を崩すとすぐにこの表情になる。
「大丈夫?歩ける?」
「平気だ」
「手を繋いで行こう?」
「わかった」
「…手が熱い。熱あるでしょ」
「…問題ない」
「大問題だもん!」
こうなると、普段とは逆転してリリアージュが過保護になる。ナタナエルはそんなリリアージュを見て、この子はまだ俺がついていないとダメだと再確認させられる。そしてそれは事実だった。もし曲がり間違って今ナタナエルがリリアージュを残して逝ったら、他に精神的な拠り所のないリリアージュは立ち直れないだろう。友達は大切だが、そういう対象ではなかった。
さらに言ってしまえばリリアージュのこの態度が、ナタナエルがいつまでも子離れ出来ない要因の一つだ。リリアージュがナタナエルを必要としているのが簡単に見て取れるから、いつまでも手を放してやれない。そして、二人ともそれに気付いていない。
だが、それでも日々成長していくリリアージュならばやがては巣立ちの日を迎えられるだろう。二人をいつも側で見ているルイスは、リリアージュの将来を信じている。そして、その期待はきっと裏切られないだろう。だから、今はまだ。もう少しだけこのままで。
「パパ、ベッドに横になって。ニコラ、皮袋に氷を入れて持ってきて。おでこと脇に使うから三つね」
「はい、リリアージュ様」
口を挟まず側に控えていたニコラが指示を受け、皮袋と氷を取りに行く。
「パパ、今日の夜はお粥にしようね。無理しないで仕事は明日に回してね。何かして欲しいことはある?あ、果実水飲む?水分補給してね」
「わかった。大丈夫だ、リリアージュ」
「元気になるまで大丈夫じゃないもん」
言いながらリリアージュはルイスから果実水の入ったコップを受け取り、ナタナエルに渡す。
「パパ、はやく元気になって」
「わかっている」
自分より余程しんどそうな愛娘を見て、何が何でもはやく治すと決め込むナタナエル。本当なら、治癒魔法を使えればいいのだが…残念ながら治癒魔法は〝治癒魔法の魔力適性がある者には効き辛い〟というデメリットがあった。ナタナエルは、治癒魔法が効き辛い。効かない訳ではなく効き辛いだけであるので、ナタナエル自身治癒魔法を朝から掛けていたが…結果はご覧の有り様である。
「リリアージュ様。皮袋に氷を入れてお持ちしました」
「ニコラ、ありがとう!」
果実水を飲んだ後また横になるナタナエルのおでこと脇を、冷たい皮袋が冷やす。
リリアージュはナタナエルの手を握ってただ早い回復を祈った。大したことはないのにそんな大げさなリリアージュに、ナタナエルはそっと頭を撫でてさっさと眠りについた。少しでも体力を回復して、さっさと体調を整えるためだ。
ティータイムの後から、ナタナエルにずっと引っ付いていたリリアージュは眠りもせずに徹夜してナタナエルのおでこと脇を冷やした。ニコラは当然それに付き合って徹夜である。リリアージュの頑張りの成果があり、なんとか朝には熱が下がっていた。ナタナエルが眼を覚ます。
「パパ、おはよう」
「おはよう、リリアージュ。…熱が下がっているな。また一晩中付き合ってくれたのか?」
「うん」
「ありがとう、リリアージュ。…まだ起きるには少し早い。お前もベッドに入って寝ろ」
「うん!」
すっかり本調子に戻ったナタナエルに安心して、リリアージュはナタナエルとの添い寝で眠りについた。ナタナエルはニコラに小さくご苦労と声をかけて、またリリアージュと共に眠る。そんな二人の様子を見て、ニコラはナタナエルにだけは一生勝てそうもないと少し落ち込み、同時に仲のいい二人をとても微笑ましく思った。
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